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2019年06月08日

Aさんには守護霊がいない・後

俺達3人を乗せた車は、住職の寺を出発すると順調に距離を稼いだ。



ただ、空は完全に雲に覆われ、辺りは昼間だというのにすっかりと暗く



なってしまい、今、こうして車で逃げているうちも、あの女の子のテリトリー



に居るような嫌な気分がしていた。



Aさんから、



巻き添えにはしたくありませんから、民家の在る道や大通等は絶対に通らないで



くださいね!



と言われた俺は、その言葉の通りに、山道を快調に走っていく。



Aさんの師匠から言われた10分間という限られた時間の中で、どれだけ



効率良く距離を稼ぐか・・・。



その事に集中していた。



その間、Aさんはじっと後部座席に座り腕組をして微動だにしない。



そして、姫はぼんやりと窓の外を見ている。



私ってやっばり駄目ですね・・・。



Aさんがいないと何も出来ない・・・。



そうポツリとつぶやく。



それを聞いた俺は、



いや、そんな事無いと思うよ。



だいたい、Aさんはずっと寝たままだしさ。



姫ちゃんはまだ若いんだし、これから未来が広がってるんだからさ!



そう言って姫を励まそうとした。



そして、こう続ける。



それにしても、あの女の子の姿をしたモノが悪霊たちの集合体だなんて・・・。



やっぱり、あの女の子も何かに体を乗っ取られて利用されてるのかな?と。



すると、微動だにしなかったAさんが、



何を馬鹿な事言ってるんですか・・・・。



あれは別に女の子が体を乗っ取られた姿なんかではなくて、私を油断させる為に



小さな女の子の姿に形を変化させているだけですからね。



まあ、私もまんまとそれにはまってしまいましたけど・・・・・。



それと、すみませんね。私には未来が広がってなくて・・・。



まだ若いつもりなんですけどね?



しかも、ただ寝てるみたいに言わないでくださいね・・・。



しっかりとこれからの対応策を考えていたんですから・・・・。



そう返してきた。



だから、俺は、



で、その対応策っていうのは見つかったの?



見つけられてないんなら寝てたのと一緒だからね・・・・。



そう言うと、Aさんは、珍しくそのまま黙ってしまった。



図星だった。



やはり、この状況で対応策など見つけられる筈は無かった。



だが、申し訳ないとは思ったが、俺はそのまま言葉を続けた。



あのさ…とりあえず、この車は何処に向かって走ればいいんだろうか?



あのお寺って、本来は悪霊にも見つけられないはずなんだよね?



でも、結果としてすぐに見つけられてしまった。



だとしたら、この世に安全な場所なんか存在しないんじゃないの?と。



そして、これも図星だった。



Aさんは、何も言えずに後部差席で固まってしまう。



Aさんの師匠が言った10分という時間はもう目前まで迫っている。



すると、Aさんが口を開いた。



私を此処で降ろしてくれますか?



そうすれば、少なくともKさんと姫ちゃんだけは助かりますから・・・。



それを聞いた姫は、



何を言うんですか~



駄目ですよ。やるのなら私も一緒に降りますから・・・。



と半ベソをかいている。



だから、俺も、



その選択肢は無しだね!



Aさんと姫が居なくなったら俺、困っちゃうからさ・・・・。



だから、他の解決策を探さないと・・・。



そう言うと、Aさんは、少しだけ笑いながら、



そうですね。それじゃ、残りの選択肢にしますか・・・。



Kさんを此処で降ろして、私が運転を代わって此処から姫ちゃんと逃げるっていう・・。



これで全てが丸く収まると思うんですけど?



そう言われてしまった。



しかし、いつもなら、悔しい筈なのに、その時は何故か少し嬉しく感じた。



それだけの憎まれ口が叩けるのなら少しはいつものAさんに戻って来ている



証拠だと感じたから。



そして、俺はもうひとつ大切な伝言を言い忘れているのを思い出した。



あっ、そういえば、Aさんの師匠が言ってたけど?



もう、そろそろアレに頼っても良いんじゃないか?って・・・・。



アレって、何?



とAさんに尋ねる。



すると、Aさんは、しばらく考えた後、突然何かを思い出して、急に不機嫌な顔になる。



あの師匠がそんな事を言ってましたか・・・。



おしゃべりだな・・・・本当に。



本当に要らん事ばかりペラペラと喋って・・・。



私、あいつとは絶対に馬が合わないんですよ!



まあ、あっちも同じ事を考えてると思いますけどね・・・。



だから、またあいつと顔を合わせると思うだけで気が重くなるんですよね・・・。



と浮かない顔をする。



急に機嫌が悪くなったAさんに、俺は恐る恐る尋ねてみる。



あのさ・・・・さっきからあいつとか言ってるのって一体何者なの?



もっと凄い霊能者を知ってるとか?



それとも、姫みたいに、神を使役してるとか?



そう聞くと、Aさんは、しばらくしかめっ面をして黙りこくっていたが、



そうですよね。今はそんな事を言っている場合じゃありませんよね・・・。



まあ、あまり言いたくはなかったんですけど・・・。



あいつって言うのは、私の守護霊の事なんですよ。



でも、いつも喧嘩ばっかりしてて・・・。



しかも、ただの守護霊なら、傷めつけていう事を聞かせられるんですけど、あいつの



力というのは想定外というか、規格外の強さなので・・・。



逆にこちらがやり込められてしまう・・・・。



本当に嫌な奴なんです・・・・。



そして、面倒な相手・・・。



そこまで聞いて、俺と姫は、殆ど同時に、同じ言葉を叫んだ。



え~、なんで?Aさんには守護霊はいないんじゃなかったの?と。



すると、Aさんは、



まあ、居ないのと一緒ですから・・・。



それに、前に会ったのももう数年前になりますから・・・。



まあ、天敵みたいなものですかね!



そう返してきた。



だから、俺は、



あのさ・・・その強力な守護霊って、今どこにいるの?



姫ちゃんの守護霊とはタイプが違うのかな?



もしかして、あの女の子とも対等に闘えるとか?



そう尋ねると、Aさんは、



今、どこにいるかなんて知りませんよ!



まあ、でも霊に距離は関係ありませんから・・・。



呼べば・・・いや、頼めばすぐにでも此処に現れると思いますけどね・・・。



そう嫌そうに呟いた。



だから、俺は真顔でAさんにこう言った。



あのさ・・・・今呼ばなくていつ呼ぶの?



今、俺達って生死の境目に居ると思うんだけど?



と語気を強めた。



すると、Aさんは、



はいはい。分かってますよ。



頼めばいいんですよね。



でも、あいつが現れてKさんや姫ちゃんが嫌な思いしても私は一切責任を



持ちませんからね・・・。



私とは真逆の性格なので・・・・。



それと、出来るだけ、ひと気の無い広い場所へ向かって貰えますか?



巻き沿いは作りたくないですから・・・。



そうぶっきら棒に言い放った。



その言葉を聞いて俺はすぐに山の上へ向かって走り出す。



そして、人気が無く、広い草地を見つけると、其処に車を停止させようとした。



すると、その前方に、先ほどの女の子が突然現れる。



車の進行を阻むように、車の前に立ち塞がった。



あ~あ、やっぱり呼ぶしかないみたいですね・・・。



そう言うと、Aさんは、目をつぶって小さく何かを呟いた。



すると、辺りを暗くしていた雲が突然途切れ、そこから眩いばかりの光が俺達を



乗る車を照らした。



何かに、とてつもなく強力な力で護られている・・・・。



そんな気がした。



そして、そこから光の中をゆっくりと降りてくる様にして何かがこちらに



近づいてくる。



俺にはそれが天使に見えた。



すると、Aさんは、嫌そうな声で、



ほらね・・・・あんな登場の仕方したりするでしょ?



本当なら一瞬でこの車の中に現れる事だって出来る増すし、更に言えばあいつの



力なら此処に姿を現さなくても一瞬で、あの女の子くらいなら消す事だって



出来る筈なのに・・・。



あいつって、本当に自意識過剰なんですよね!



と、本当に、その天使に見える自分の守護霊が嫌いな様だった。



そこまで聞いた俺は、



Aさんの守護霊って、それ程の力を持ってるんだ?



もしかして、Aさんよりも強いの?



と聞いた。



まあ、どっちが上かは分かりませんから。



力のタイプがまるで違いますから・・・。



でも、師匠が以前、言ってましたね・・・。



アレは全てを持ち合わせた絶対的な存在だから、と。



まあ確かに、あいつが何かに負ける姿は想像すら出来ませんけどね。



そう不服そうに呟く。



そして、目の前に立つその女の子も明らかに動揺を隠せない様だった。



明らかに、その天使を恐れている・・・・。



そんな風に見えた。



そして、その天使は地上へと降り立つ。



美しい顔立ちと素晴らしいプロポーション。



薄い絹の様な薄青色の頃もがゆらゆらと風に揺れている様に見えた。



しかし、その顔つきは何処か他人を見下している様な高貴なものに見えた。



すると、Aさんが車から降りようとする。



俺が



何処に行くの?



と聞くと、



守護霊だけにいい恰好はさせられないでしょ・・・。



それに、私がいないと、あいつも力をフルに使えませんからね。



そう言うと、Aさんは、さっさと車を降りて、その天使に近づいていく。



一瞬、Aさんと、その天使が顔を見合わせたように見えた。



どちらも、何処か生意気そうで、上から見下ろしている様な態度。



その時、初めて気付いた。



ああ・・なるほど・・・あの守護霊ってAさんにそっくりなんだ!



だから、お互いに嫌ってるのか!と。



その女の子の姿をしたモノは、何か衝撃はのようなものを体全体から



放出させて抵抗する。



その殆どが一瞬でAさん達の前から消えてしまう。



そして、そのごく一部が飛散してAさんの顔を直撃した。



Aさんは一瞬、顔をしかめる。



顔にはあざの様な跡が残されている。



あんた、私の顔に何してくれるの!



追い詰められて状況が見えなくなってるんじゃないの?



そう叫んだ。



すると、Aさんの隣に立つ守護霊が、一瞬、クスッと笑った様に見えた。



もう勝敗の行方は既に見えていた。



圧倒的な力の差・・・・。



それがひしひしと伝わってくる。



ほら・・・さっさとやるよ!



あんた、足引っ張んないでよ!



とAさんが言うと、Aさんの光とその天使の光が交錯して、まるで虹の様に



見えた。



その光の中で、その女の子は苦しそうにもがいていだか,やがて、砂の像が



崩れていく様に、どんどん形を崩していく。



そして、それらが沢山の黒い霧の様な姿に変わり、その場から逃げようとする。



逃がす訳ないでしょ!



Aさんがそう言うと、その黒い霧も、まるで水蒸気の様にその場で消えていく。



そして、その場から全てが消え去るのにさほど時間は必要としなかった。



そして、まるで時間差で巨大な竜巻でも起こったかのように辺りを凄まじい



烈風が吹き荒れた。



草は千切れ飛び、木々の葉も、一瞬で吹き飛ばされ、そこに残されたのは



まるで、超巨大竜巻が通過した後の様な光景だった。



Aさんと守護霊が一緒になると、こんなに凄いということなのか・・・。



俺は、味方であるAさんとその守護霊の力に一瞬、恐怖さえ憶えた。



そして、全てが終わると、一瞬、目を合わせたAさんと守護霊だったが、



すぐに興味が無いかの様に、視線を外し、そして、その守護霊は再び、空へと



のぼっていき、やがて雲の中に消えていった。



ふて腐れた様に車に戻って来たAさんは、



ほんと、感じ悪い奴・・・・。



態度も最悪だし・・・。



可愛げとかそういうのが欠如してるんですよね。



それを聞いていた姫は、突然、



そんな事無いですよ~、凄い美人だったしスタイルも良くて、まるでAさんと



瓜二つでしたよ~、と興奮冷めやらぬ様子だった。



まあ、確かに俺もそう思った。



そして、それと同時に、見た目だけではなく、きっと性格もそっくりなのだろうと



容易に想像できた。



感じが悪くて態度が悪く、そして可愛げがない・・・。



まさに、Aさんのそのものだった。



つまり、Aさんは、自分自身の性格が嫌いという事なのか?



あえて、俺はそれを口にせず、



でも、あれが守護霊なの?



なんか、天使にしか見えなかったけどね・・・・。



と言うと、Aさんは、



止めてくださいね・・・。



何処であいつが聞いてるか、分かったもんじゃないんですから!



天使なんて言われたら、更に図に乗りますから!



あいつは私と違って口が悪いんですから!



(どうやらAさんは自分の事がよく分かっていないようだ・・・・)



そう語気を強めて必死に否定する姿が、何処か微笑ましく思えた。



それにしても、あれほど凄い守護霊が居るのなら、一緒に行動した方が



得策だと思うのだが・・・。



ちなみに、その天使(守護霊)は、今でも一緒にいる事はないらしい。



まあ、お互いが嫌っていても守護霊を続けているという事は、まあ実は



それほど仲が悪い訳ではないのかもしれない。



そう思った。



そして、姫のお友達達も、しばらくすると元気に戻って来たらしく、住職の寺も



予想通り、何も被害は無かったらしい。



ただ、Aさんの師匠だけは、かなりの気を使い過ぎた様で、それからしばらくは



安静厳守の状態が続いた様だが・・・。



本当にAさんや姫と付き合っていると、退屈しないと言えるのは、きっと今無事で



いられるからなのだろう。



ただ、またひとつ、Aさんの秘密が分かった貴重な体験だったのは間違いない。


そして、それから家に帰った俺は妻から、


草むしりが中途半端で投げ出されてるんだけど?


と厳しいお叱りを受けたのは紛れもない事実である。


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:28│Comments(0)
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