2019年06月08日

最後の電話

これは知人から聞いた話。



彼は元々は九州の出身だそうだ。



そして、昔は九州各地の心霊スポットに遠征しては暇を潰していたのだという。



もっとも、心霊スポットに1人で行く事は無かった。



いつも、Hという友人と一緒に心霊スポットを巡っていた。



彼自身から心霊スポットに行こうと誘う事は無かったらしいが、Hはかなりの



心霊スポットマニアだったらしく、少しでも暇な時間が出来ると、必ず



○○の心霊スポットに行こう、と誘ってきたそうだ。



しかし、彼にとっての心霊スポットというのは、ある意味、遊園地のお化け屋敷よりも



平和な場所だった。



かなりの数の心霊スポットを巡ったらしいが、それでも、実害が及んだ事は



無かったし、実際にはっきりと幽霊というものを見た事も無かった。



白い霧のようなものを見た事は何度かあったらしいが、それでも本物のお化け屋敷



に比べれば、それほどの恐怖は感じていなかった。



そんな彼はある事を境にして、一切心霊スポットの類には近づかなくなった。



そして、これから書くのがその理由である。



その日、彼はいつものように自宅で暇を持て余していると案の定Hから電話が



かかってきた。



○○○の心霊スポットに行かないか?



今回はかなりヤバい場所だと思うから・・・・。



そんな誘い文句だったという。



しかし、今回こそはヤバい・・・というセリフを聞き飽きていた彼は、いつもの様に



二つ返事でOKした。



しかし、その時は何故か車のキーが見つからなかった。



そして、その事をHに伝えようと電話をするが、何故か何度かけても電話は



繋がらなかったという。



彼はどうしようかと悩んだらしいが、まあ、Hも1人で行く様な事はしないだろう、



と思い、その日は家から出なかったという。



妙に空気の生暖かい夜だった。



彼はベッドに入り電気を消すと、数多の中でHの事を考えていた。



まさか・・・あいつ、1人で行ってないだろうな・・・・・。



窓が何者かに爪でコツコツと突かれているような音が妙に気になったが、彼はそのまま



眠りに就いたという。



そして、何事も無く翌朝を迎えた。



そして、その日の夕方頃に、Hから電話が入った。



彼は愕然としたという。



なんと、Hは、1人でその心霊スポットに行ったのだという。



しかし、Hの声からは怒っている様子は伝わって来なかった。



いや、それよりも、Hは何かに脅えていた。



声はか細く、そして震えており今にも泣き出しそうな声に聞こえたという。



彼はすぐにそっちに行くからと言ってから電話を切った。



そして、急いでHの自宅へと向かった。



Hの家に着くと、急いで呼び鈴を押した。



すると、げっそりとやつれた様な姿のHが出迎えてくれた。



そして、彼を自分の部屋へと案内した。



そして、その間も、確かにHは何かに脅えているかのようにビクビクしながら



辺りを見回していたそうだ。



部屋に入ると、彼はすぐにHに聞いた。



いったい、その心霊スポットで何があったのか?と。



実際、彼がそれまでHと一緒に行った心霊スポットでは、怖い体験というものを



した事が無かった。



だから、きっとHは、もっと別の何かに脅えているのだろう、と思っていた。



しかし、Hは、何があったのかに点いては何も言わず、



あの女は言ったんだ・・・・・迎えに行くって・・・・・。



俺を連れていくって・・・・・。



だから、頼む・・・・助けてくれよ・・・・・。



その悲痛な叫びを聞いていると、彼にはHが言っている事が嘘だとはどうしても



思えなかったという。



本当は、彼もこう言いたかったそうだ・・・。



俺が護ってやるから!と。



しかし、彼の部屋からは何か得体の知れない気持ちの悪い空気を感じていた。



そして、彼らが話していると、誰かが窓の外からコツコツと窓を突いている様な



音が終始聞こえていた。



だから、彼はその場からさっさと立ち去る事にした。



大丈夫だよ・・・・



気のせいだから・・・。



それに家の人もいるじゃないか・・・・・。



そんな何の慰めにもならない言葉を残して彼はその部屋を後にした。



それから、彼は逃げるように自分の家に帰ったという。



そして、1人でいる事が何か恐ろしくて、ずっと家族と一緒に過ごしたという。



そして、午後10時を回った頃、彼に電話がかかって来た。



Hからの電話だった。



電話に出た彼は、わざと明るい声で、



ほら何も起こらないだろ?



大丈夫だって!



と言ったそうだ。



すると、電話の向こうからは、Hの涙交じりの声が聞こえてきた。



もう駄目だよ・・・助けてくれよ・・・・。



嫌だ・・・連れて行かないでくれ・・・・・・。



そう聞こえた、次の瞬間、彼は固まった。



うふふ・・・・駄目だよ・・・・・連れていくって言ったでしょ・・・・。



それは紛れもない女の声だった。



それでも、彼は、



なんだ?女性を呼んでるのか?



元気あるじゃないか?



そう声を掛けたが、彼は自分の声も恐怖で震えているのが分かったという。



そして、その後、



やめろ・・・・・やめてくれ・・・・・・・。



悪かった・・・・・どうすればいい・・・・・。



そんなHの声が聞こえた後、受話器からは、



うわぁ~、というHの断末魔の声が聞こえてきたという。



彼はすぐに電話を切った。



自分が恥ずかしい位に震えているのが分かった。



今すぐにでもHを助けに行かなければ・・・と思った。



しかし、先ほどのHの声を聞いてしまった彼は、既に頭の中が恐怖で溢れていた。



結局、彼はそのまま家から出る事も出来ず、その夜は両親に頼み込み何十年ぶりかで



両親と布団を並べて一緒に寝て貰った。



仏壇のある部屋で・・・・。



根拠は無かったが、そうしなければいけない、と思ったという。



そして、その翌日、友人からの電話でHが死んだ事を知らされた。



布団の中で目をカッと見開いたまま死んでいたらしく、そして、葬式の間も



ずっとHの目が閉じる事は無かったという。



自分が一緒に行かなかったからHが死んだ・・・。



Hを死なせたのは自分なんだ・・・・。



彼はそう言って自分を責めた。



そして、それからというもの、彼が心霊スポットの類に近づく事は一切無くなった。



しかし、この話には後日談がある。



ちょうど、俺と知り合った頃、彼は明らかに何かに脅えていた。



いったい何に脅えているのか?と聞いて事があるが、はっきりとした答えを



彼は最後まで言わなかった。



ただ、毎夜、何かが彼の部屋に訪れる様になったのだという。



そして、ある夜、彼の夢の中に死んだHが出てきたという。



見知らぬ不気味な女と一緒に並んで立っていた。



そして、こう言ったのだという。



迎えに行くから・・・・・。



連れていくから・・・・・と。



そしてこの話を俺に話した数日後、彼は行方不明になった。



警察が行方を捜査したがいっこうに見つからなかった。



彼がもしも、連れて行かれたのだとしたら、Hの死から20年ほど経った頃に



何故?という疑問が湧いてしまうのだが・・・・・。



Posted by 細田塗料株式会社 at 23:36│Comments(0)
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