2019年06月08日

ドッペルゲンガー

これは知人女性から聞いた話である。



彼女は車の運転が趣味だそうだ。



確かに乗っている車も、かなり高価な国産のスポーツタイプの車。



そして、暇さえあればサーキットに走りに行ったりジムカーナなどの



競技イベントに参加している。



だから、彼女は自分の運転技術にはかなりの自信を持っていたのだろう。



そんな彼女は仕事では、とある会社で事務員をしているらしく、会社の誰も



彼女がサーキットに行ったりジムカーナに参加している事は知らないそうだ。



そして、その日も彼女は仕事が終わると自慢の愛車に乗って自宅とは逆の方向の



居酒屋を目指していた。



彼女が所属しているジムカーナのチームの定例の飲み会がその居酒屋で



行われるのに参加する為に。



お店に着いた彼女はそのまま駐車場に車を停めて店の中へと入っていく。



既に飲み会は始まっており、その場はかなり盛り上がっていた。



だから、彼女も早速、その場に溶け込んでいった。



しかし、彼女は車で来ている時には、いつも一滴も酒は飲まないと決めていた。



だから、その時も彼女はひたすらウーロン茶を飲んで、皆と一緒に盛り上がっていた。



飲み会はかなり遅くまで続き、彼女がその居酒屋を出たのは既に午前1時を



回っての事だった。



愛車に乗り彼女は家路を急いだ。



翌朝には用事があったため、出来るだけ早く寝たかったそうだ。



しかし、車を走らせていると、何故か周りの雰囲気がいつもは違う事に



気付いた。



それは、他の車が1台も走っていないという事。



その日は金曜日であり、翌日が休みの人も多いから、いつもなら、通りには



ある程度の車が走っているのが普通だった。



しかし、その時、彼女の車の前にも後ろにも車らしきものは、ひとつも



見えなかったという。



なんか変だな・・・・。



そう思いながら彼女は車を走らせていた。



すると、前方の信号に1台の車が停まっている。



そして、近づいていくと、その車はどうやら彼女が今乗っている車と同じ型の車



であり、そしてその色も彼女の車と同じ限定色の赤だという事が分かった。



私とおんなじ車だ・・・・。



初めて見たかも・・・・。



そんな風に思って車に並びかけようとした時、ちょうど信号が青になり、その車は



一気に信号からスタートした。



とんでもない早さだった。



彼女自身、街中のスタートダッシュで他の車に負けた記憶は皆無だったから、



必死にその車の後を追ったという。



しかし、どれだけアクセルを踏んでも、いっこうにその差が縮まらないどころか、



どんどんとその差が広がっていった。



そして、そのままその車は彼女の視界から消えてしまったという。



何、あの車・・・・・。



どうして同じ車なのに、あんなに速いの?



そう思って、彼女は少しがっくりしていたが、すぐに気を取り直して運転に



集中した。



そして、また、前にも後ろにも全く車がいない状態が続いた。



こんなに車が少ない日もあるんだ・・・・。



そんな事を思っていた。



すると、それなりの速度で走る彼女の車の背後から眩しいヘッドライトの光が



ぐんぐん近づいてくるのが分かった。



すると、ちょうど前方の信号が赤になった。



彼女はゆっくりと速度を落とし信号の停止線で止まった。



すると、背後から近づいてきた車も、彼女の横に車を停めた。



彼女は横に並んだ車を見て、思わず、



え?



と声を出してしまった。



信号で彼女の車の横に停止した車は、またしても、彼女と同じ車種であり、



そして、色も全く同じものだった。



これって、さっき前を走ってた馬鹿っ速い車?



そう思った時、彼女は更に驚いてしまった。



はっきりと詳細に見えた訳ではなかった。



しかし、その車の運転席には明らかに女性が座っていた。



しかし、自分の姿と同じようなシルエットの女性が・・・・。



どういう事?



彼女は、そう思うと、信号が青になるのを待った。



今度こそ、絶対に離されないで着いて行こう・・・・。



そう思った。



そして、信号が青に変わるとその車はゆつくりとスタートした。



一気にダッシュするだろうと思っていた彼女は、一瞬拍子抜けしてしまったが、



それでも、その車の背後につくと、ある程度の車間距離を取って、その車の後ろに



着いて行った。



すると、あり得ない事に気付く。



信じられない事だが、今、彼女の前を走っている車は車種や色だけではなく、



車のナンバーまでが、彼女の車と全く同じだった。



彼女は頭の中がパニックになる。



これは、犯罪なのか・・・・。



そうでなければ、理由の説明がつかない・・・・。



そう思っていた時、突然、前を走る車が一気に加速した。



彼女も反射的に、その車に合わせて加速したという。



すると、突然、前を走る車のブレーキランプが点灯するのが分かった。



彼女も急いでブレーキペダルを強く踏んだ。



と、その瞬間、前を走る車が目の前からフッと消えた。



え?



そう思った時にはもう遅かった。



彼女は、減速が出来ないまま、突然目の前に現れた中央分離帯に激突した。



そして、そのまま浮き上がるようになり、次の瞬間、電柱に激突する。



自分の骨が折れる音を初めて聞いたという。



エアバックは装着していたが、何故か作動せず、彼女はハンドルとガラスに



顔面を強打して、そのまま動けなくなった。



自分の体から血が滴り落ちているのが分かったという。



両足は折れているのが、全く感覚が無かった。



早く車から脱出しなければ、と思ったが、体中の感覚が全く無く力も



入らなかった。



そして、何よりも、自分の顔が大きく裂けているのが分かって、訳が分からないまま



彼女は涙を流していたという。



すると、車の中で茫然としている彼女の視界に再び、先ほどの車が現れた。



その時、彼女ははっきりと分かったという。



今、自分が体験したのはドッベルゲンガーという現象なのだということを。



彼女の視界の中に再び現れたその車には、彼女が乗っていた。



いや、正確に言えば、彼女と瓜二つの別人格の女が乗っていた。



そして、嫌な笑いを浮かべながら、じっと彼女を見つめていたという。



そして、そのまま彼女は意識を失い、次に気が付いたのは事故の夜から数日経過



してのことだった。



近くの住民が、大きな音に気付いて救急車を呼んでくれたのだと聞いた。



そして、結局、彼女は両足と片腕、そして顔面に大きな亀裂が入る程の大怪我



をして、生死の境を彷徨ったのだという。



結局、彼女は数か月の入院の後、無事に退院出来たのだが、リハビリの甲斐もなく、



かなりの後遺症が残ってしまい日常生活にも支障が出てしまっている。



そして、彼女はこう言っていた。



あの時、ドッベルゲンガーに遭遇してしまった時点で私は死ぬ事が決まっていた



のかもしれない・・・・。



でも、助かったんだとしたら、それはそれで感謝しないといけないですね、と。



巷でよく耳にするドッベルゲンガーという現象だが、いったい誰が何の為に



そんな事をしているのか・・・・。



その理由は分からないが、もしかしたら、その理由を知ってしまった時が、



その人が死ぬ時なのかもしれない・・・。



そんな気持ちになった話だった。


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:40│Comments(0)
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