2019年06月08日

怖がりな?幽霊

金沢市内に在る24時間営業のスーパーマーケット。



広い駐車場もあり、飲食店も備わっているその店舗は



やはり24時間、客足が途絶える事は無い。



そして、そこに彼女は立っていた。



初めて彼女を見かけたのは、雨の夜。



時刻は午後11時を回っていた。



俺はといえば、仕事が遅くなってしまい、とりあえず半額の弁当でも残って



いないか、とそのスーパーに立ち寄った。



そして、彼女はといえば、いかにも高校生という制服を着て、



傘を差したまま、キョロキョロと辺りを見回していた。



何かを探しているのかな?



そして、



こんな時間に女子高生が何してるんだろ?



俺はそう思ったのを覚えている。



しかし、俺がそのスーパーに行く度に、彼女はいつもその場所に



立っていた。



朝でも昼でもそして真夜中でも・・・。



スーパーの入り口近くの自転車置き場の前。



そんな場所に彼女はいつも、ニコニコと笑って、落ち着き無く立っていた。



雨の日も晴れの日も・・・。



落着き無く、と書いたのは、彼女がせわしなく動き回っていたから。



泣いている子どもがいれば、すぐに駆け寄って必死に頭を撫でていたし、



可愛い犬を連れた客が来ると、その犬を抱きしめる様にして嬉しそうに



笑っていた。



そして、たまに派手に転んだりもする。



本当に無邪気で優しい女の子という感じだった。



そして、スーパーを訪れる客の中には、彼女の姿が見える人も



いるのだろう・・・。



たまに、彼女の姿を見て、不思議そうな顔で通り過ぎていった。



そんな時、いつも彼女は、ごめんなさい、とでもいう様に大きくお辞儀をして



後ろに下がっていった。



そして、いつしか俺の中で彼女は生きている人間ではないという



確信が芽生えた。



なにしろ、いつ、どんな時間に行っても、いつも彼女は其処に立っている



のだから、そう判断せざるを得なかった。



それにしても、彼女は俺が知っている霊達とはまるで異質のものだった。



だから、俺は、Aさんに聞いてみた。



○○町にある24時間スーパーに立っている女の子、知ってる?と。



すると、Aさんは、



ああ、あの娘なら知ってますよ。



凄く良い子なんですよ。



だけど、凄く怖がりなので、いつもあそこに居るんです。



あそこは、いつだって人が居なくなる事が無いし、それに明るい



ですからね!



そう言われて、俺は、



幽霊なのに、怖がりなの?



幽霊って暗い所が好きなんじゃないの?



と聞くと、



ゴキブリじやあるまいし、暗い所が好きな訳ないじゃないですか。



まあ、たまにそういうのも居ますけどね。確かに・・・。



でも、いつも言ってるでしょ。



人間も霊も変わらないって・・・・。



霊だって、元々は人間なんですから、暗い所が怖い霊だって居ますよ。



まあ、あの娘の場合、少し怖がり過ぎなところもありますけどね。



つまり、あの娘は自縛霊なんですよ。



だから、あの場所からは動けないんです。



いや、動かないって言った方が正しいのかもしれませんけど・・・。



そう聞いて、俺はいつもの好奇心が湧いてしまい、その理由を聞いた。



すると、Aさんは、



まあ、それには少し悲しい事情があるんですけどね・・・・。



そう言った後で、こう続けた。



あの女の子は、ずっといじめられていたみたいで・・・。



それで、自殺しようとしていたんでしょうね・・・・。



そこに私が偶然通りかかって・・・・。



そして、自殺というのはどんなに苦しみが続くものなのか、ということや、



自殺する勇気があるのなら、その気持ちを周りの人を幸せにする事に使って



みたらどうか?と説得したんですよね。



で、あの女の子も、それが分かってくれたみたいで、それからは自分の家族や



同級生達に、心から無償の善意や愛を注ぐ事を頑張ったんですよ。



すると、いじめも無くなり、それまであまり感じなかった家族の愛情も感じられる



様になったみたいで・・・・。



まあ、そこまでは良かったんですけどね。



その後、彼女はとある病気にかかってしまって・・・。



それが、俗にいう不治の病というやつで・・・。



でも、あの子は自分の命が残り僅かだと知ってからも、いや、知ってからは更に



家族や友達に素直に愛情を持って接し続けていました。



ボランティアにも率先して行く様になったし、バイトにも精を出して



そのお金をせっせと募金までして・・・・。



そして、彼女が死ぬまでの間、彼女は私の所に何度も足を運んで来たんですよ。



人が死ぬっていうのは、どういう事なのか?というのを知りたかったみたいで。



だから、私は教えてあげたんです。



人は死んでもそれで終わりではないよ、と。



そして、その人がこの世に存在していたという最も大切なものは、寿命の長さや



どれだけ成功したか、ではなく、死んだ後も、それまでに関わってきた



人達の中で大切な記憶としてずっと生き続けられるか、だとという事を。



理不尽な事、泣きたくなる事が沢山あっても、その中でどれだけ自分らしく



生き続けられるか・・・。



その為にはいつも笑っていられる様に努力しなさいね、と。



笑顔は周りにどんどん広がっていくものだから、と。



それを聞いて彼女も元気になれたみたいですけど・・・。



そして、彼女は考えたんですよね。



どうやったら、自分が死んだ後も、家族の負担にならないようにしながら、



家族の姿をたまに見る事が出来るのか?と。



そして、彼女が選んだのが、あの24時間のスーパーなんですよね。



あの子は自らこの世に残る事を選んだんです。



勿論、あちらの世界に行くという選択も出来たはずなんですけど・・・・。



呪いとか恨みを晴らしたいというのではなくて、家族を蔭から見守りたい、



という気持ちで。



それが彼女が望んだ幸せなんでしょうね。



だから、毎日、彼女の母親が買い物に来るそのスーパーに自ら留まってるんです。



だから、Kさんはいつも暇なんですから、あの子と友達になってあげると良い



のかもしれませんね。



まあ、Kさんみたいな、おじさんと友達になってくれるかどうかは判りませんが・・・・。



あっ、それと、勿論、姫ちゃんもあの子とは大の仲良しなんですよ。



そう説明された。



それから、俺はそのスーパーに行く度に、その女の子を見つけると



何故かしっかりと観察するようになってしまった。



そんな悲しい過去があったにも拘らず、彼女はいつも優しい目で立っていた。



いつもキョロキョロとと辺りを見回しては、ホッとした顔をする。



その動きだけで、彼女がとても怖がりな幽霊なのだと納得出来た。



俺はなんだか気持がほっこりと温かくなった気がした。



しかし、それからしばらくして、俺の耳に、ある噂が聞こえてきた。



それは、彼女がいつも立っているあのスーパーで霊障が発生しているというもの。



しかし、俺にはどうしても、あの子がそんな事をするとは思えなかった。



そこで、色々と調べているうちに、ある事実が判明した。



それはあるグループが一人の女子学生を虐めており、それを見兼ねた彼女が



そのグループを驚かせて、その女子学生を助けようとした。



しかし、その時、彼女は自らの顔を肥大させ、不気味な顔で驚かしてしまった



為、その場が大騒ぎになってしまったようだった。



それは彼女が悪いのでは決してなかった。



しかし、そのスーパーも変な風評被害を受けたくはなかったのだろう。



除霊出来る霊能者に頼んで、その悪霊を浄化してしまおうという事になった。



勿論、その悪霊というのは、彼女の事。



そんな馬鹿な、と思い、俺は、その除霊を行うという霊能者の元を訪れた。



かなり力のある霊能者なのは噂に聞いていた。



そして、頼み込んだ。



なんとか、彼女を祓わないで欲しい、と。



すると、彼らは、



人を驚かすという事だけで、十分に悪霊だ!



それに、それなりの報酬ももらっているのだから!



と言って、頑として除霊の中止を断ってきた。



そうなると、俺にはもうAさんに頼るしか残された道は無かった。



Aさんに、その話をすると、



ふうん…そうですか。分かりました。



と、あまりにも反応が悪かったので俺は不安になってしまった。



そして、いよいよ、除霊が行われるという深夜。



俺は急いで現地の24時間スーパーに向かった。



しかし、そこにはAさんの姿はなかった。



そこで、俺はすぐにその女の子の霊に駆け寄って、



今すぐ、此処を離れないと!



消されちゃうんだから!と。



すると、その女の子は首を振ってから大きくお辞儀をしてきた。



なんで?



何も悪い事なんてしてないのに・・・・。



そう思いながらも、俺は再び、その霊能者の元に駆け寄り、何度も懇願した。



なんとか助けて欲しい、と。



すると、その霊能者は笑いながら、



あんたも悪霊にとり憑かれて気が変になってるんじゃないのか?



俺は正義の為にやってるんだよ!



邪魔するならあんたも一緒に消してやろうか?



と声を荒げた。



ふうん・・・そうなんだ。消しちゃうんだ・・・なんか笑える・・・。



背後からそんな声が聞こえた。



それは明らかにAさんの声だった。



俺が振り向くと其処にはAさんと姫が立っていた。



Kさん、こんばんは。お久しぶりですね(笑)



私もよくこのスーパーに来るんですよ~



一緒ですね~



私はこのスーパーのお寿司コーナーが好きなんですよね!(笑)



Kさんも、お寿司ってお好きなんですか?(笑)



と姫は、いつものゆっくりとした口調で笑いかけてくる。



だから、俺は、



いや、今はそんな呑気な事言ってる場合じゃないから・・・・。



そう言うと、姫は笑って、



大丈夫ですよ・・・。



Aさんも私も、あの子を助ける為に来たんですから・・・・。



と返してきた。



そして、Aさんは、



誰が誰を消すって?



なんでも簡単に、消す、とか言って、馬鹿なんじゃないの?



悪霊かどうかも見分けが付かないんなら、霊能者なんて名乗る資格ないよ!



そして、この娘が選んだ幸せを誰にも邪魔する権利なんて無いんだ!



言っておくけど、その女の子の霊も、そしてそこにぼーっと立っている、あんた



が消すって言った、このおじさん(俺のこと?)も



どちらも私達の大切な仲間だから・・・。



まあ、そのおじさん(俺の事?)の方はたいして大切じゃないから別に良いけど・・・・。



だから、ちょっとでも手を出したら、次の瞬間、あんたが消えちゃう事になるからね!



そして、Aさんは、こちらを振り返ると、



姫ちゃん、お願い。アレ、やってね!と姫に合図を送った。



すると、姫は、大きく頷いてから、静かに、



お願いね。出てきて手伝って・・・・。



と言った。



その瞬間、大きな白い狐が目の前に現れる。



巨大な白い狐は尾が九つに分かれ、異様に怖い顔をしている。



思わず、その霊能者も恐怖で後ずさりする。



すると、Aさんは、



一応、ちゃんと、この九尾が見えてるんだ?



はい。これで私達もあんたの事を驚かしたんだから、悪者って事になるんでしょ?



どうぞ!消してみれば?



えっと、正義の為・・・だったっけ?



すると、その白く巨大な狐は、更にその霊能者の近寄り、不気味に喉を鳴らした。



その瞬間、その霊能者は、その場から腰を抜かしたように逃げて行った。



はい、ありがと!



姫がそう言うと、その巨大な白い狐は、先ほどまでの恐ろしい顔から一転して



笑っているかのような可愛い顔になる。



俺は姫に近づき、



ここまで姫の言う事を聞くんだ?



凄いよね。使役って言うんだったけ?



そう言うと、姫は笑いながら、



別に上下関係なんてありませんよ。



ただの友達・・なんです(笑)



そう俺に説明した。



すると、Aさんは、ぶっきらぼうに、



終わった~、じゃあ、帰ろう!



そう言って、さっさとその場から立ち去ってしまった。



ただ、俺は知っている。



その後、Aさんと姫が、そのスーパーを説得して除霊を断念させた事を。



そして、実は、その際、そのスーパーに来ていたお客さんの中からも、除霊を



中止する様に沢山の歎願が集まったらしい。



確かに、視える人達にとって、あの子は恐ろしい存在どころか、心癒してくれる



貴重な存在なのは言うまでも無かったから・・・・。



俺と同じように・・・・。



そして、その後もそのスーパーは繁盛を続けている。



そして、今日もあの女の子の霊は、あの場所で家族に会えるのを楽しみに



ニコニコと笑いながら待っているのだろう・・・・。


Posted by 細田塗料株式会社 at 23:44│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count