2019年06月09日

呪いの代償

彼女の身の回りで怪異と呼ばれる現象が起こり始めたのは、ほんの



1か月ほど前の事だった。



新しい彼氏と付き合いだした彼女にとって、最初それは単なる偶然として



片付けられる程の些細な怪異だった。



夢の中に数年前に亡くなった祖母が出てきて彼女に対し悲しそうな顔で



危険が迫っているからすぐに逃げなさい・・・・。



そう告げたのだという。



そして、その翌日、彼女は突然、車のハンドルが効かなくなり、そのまま



ガードレールに衝突した。



必死にブレーキを踏んだおかげで彼女自身には怪我は無かったが、それでも



車は異様なほど壊れておりそのまま廃車になったという。



そして、それからは加速度的に怪異が頻発するようになった。



駅の階段を降りている時、突然後ろから強く押された彼女は、そのまま階段を



転がり落ちてしまう。



しかし、防犯カメラには彼女以外の者は誰も映ってはおらず、そのまま単独事故



として処理されてしまう。



また、仕事の帰り道、歩道を歩いていると突然彼女の耳に祖母の声が聞こえた。



一瞬、立ち止まる彼女の頭上から何かが落下してきて彼女の



眼の前の歩道へ激突した。



それは自然に落下するはずもない鉄製の板だった。



それを見た時、彼女は蒼ざめたという。



もしも、そのまま歩いて、自分に当たっていたら間違いなく死んでいた・・・・。



それほどの衝撃音を伴って鉄の板は歩道に落下したのだから。



彼女はすぐに警察に届けたのだが、やはり犯人は見つからず、そのままうやむやに



なってしまう。



さすがに偶然が続いたとは思えなかった彼女だったから、一番先に彼氏である



男性に相談した。



男性もとても心配してくれて、彼女の動揺も少しだけ和らいだという。



しかし、それが更に事態を悪化させてしまう事になった。



彼女はまた夢を見たという。



その夢の中では祖母が泣いており、



私にはもうお前を護ってあげる事は出来ない・・・・・。



ごめんね・・・・。



そう言って泣き続ける祖母を見ていると彼女自身も辛くなってしまったという。



そして、それからの怪異は危険極まりないものになっていく。



彼氏と一緒に車に乗っていた時、突然、交差点で車が彼女の乗る助手席側のドア



に突っ込んできた。



そのまま意識を失った彼女は、すぐに病院へと運ばれたが、軽く打撲だけで



大きな怪我は無かったという。



また、彼氏と一緒に海に行った時も、彼女は突然、海中から足を掴まれ、



そのまま溺れそうになった。



しかし、それに気付いた彼氏と監視員の男性によって無事に助け出されたというが



どうやらその時、彼女は海中から自分の足を引っ張る女の姿を目撃していた



らしいのだが、何故か彼女はその事を彼氏には言わない事にしたという。



それからも、横断歩道を渡っていた時、突然、車が突っ込んできたり、また、



家の中で寝ていた時、異臭に気付いた彼女がとっさに起きて確認すると、



ガスの元栓が開いてガスが漏れていた事もあったという。



しかし、何故か彼女の体には奇跡的に大きな怪我は無かった。



だから、彼女は運勢が悪いのだと思い、神社へ行ってお祓いを受けたり、



お守りを身に付けたりして、運気を変えようと努めたという。



しかし、ある夜、彼女が寝ていると、突然、何かが布団の上に乗っている感覚で



目が覚めたという。・



ハッとして蒲団の上を見ると、何かが間違いなく蒲団の上に乗っている。



誰?



彼女は思わず、そう声を出したそうだが、次の瞬間、



2本の腕が伸びてきて彼女の首を掴んだ。



氷のように冷たい腕だった。



そして、彼女の首を掴んでいる両手は少しずつ力が込められ、彼女は布団の中で



ジタバタと暴れたという。



しかし、次の瞬間、彼女の体は全く身動きが出来なくなり、そのままじわじわと



絞められていく首は、どんどんと感覚が無くなっていき、そして、呼吸をする事も



出来なくなったという。



その時、彼女は、死を覚悟したという。



苦しさで涙が溢れて前が見えなくなっていた。



そして、はっきりと聞いたという。



お前のせいで・・・・お前さえいなければ・・・・・。



そして、その瞬間、その何かの顔が彼女の目の前に迫ってきた。



間違いなく女の顔だった。



鬼女の様な恐ろしい顔だったという。



結局、そのまま意識を失った彼女は、朝になって奇跡的に息を吹き返した。



夢だったの?



そう思った彼女は、すぐに起き上がると洗面所の鏡の前に走った。



すると、鏡に映った自分の首筋にははっきりとした二つの手形が付いており、



紫色に変色している痕を見て、彼女は思わず悲鳴を上げたという。



それから、彼女は、仕事を休み、神社仏閣に相談したり、霊能者といわれる



人にも相談したそうだが、簡単な除霊の様な事をされただけで、何の解決にも



ならなかったという。



それから、彼女は数日間、毎夜現われる女に首を絞められ続けた。



そして、その数日で彼女は別人のようにやせ細り、全く生気の無い顔に



なってしまつた。



しかし、彼女は彼氏にだけは相談しなかったという。



彼女には何となくだが、分かったのだという。



毎夜、現れる女は、きっと彼氏に関係した女なのだということを・・・。



そして、これは本当に偶然なのだが、俺はある日、街で偶然、彼女とバッタリと



遭う事になった。



仕事関係の知人ではあったが、彼女から声をかけられるまではそれが、誰なのか、



全く分からなかった。



彼女の様子が、まるで悪霊にでもとり憑かれている様な顔だったから、俺は



心配で彼女から話を聞いた。



そして、その場でAさんに電話をかけると、Aさんは、



リア充の事なんか知りませんよ・・・・。



なんでいつも私ばかりに頼るんですか!



とブツブツ言っていたが、それ相応の条件を提示すると、



それじゃ、今からすぐに行きますから!



と態度が一変した。



Aさんは、すぐに待ち合わせのファミレスに到着すると、彼女を見るなり、



ああ・・・これはヤバいかねしれませんね・・・・。



そう言った。



だから、俺は、



あっ、やっぱり悪霊にとり憑かれてる?



と返すと、



本当におめでたい人ですね?



なんでもかんでも悪霊のせいにするもんじゃありませんよ・・・・。



と、冷たい眼で俺を見る。



だから、俺が、



それじゃ、何なの?



と聞くと、



これって、間違いなく、呪いというやつですね・・・・。



しかも、相手は生き霊まで飛ばしてくる程ですから、かなり厄介ですね。



そう言って、彼女の方を見て、



誰かに恨まれてる心当たりってありますか?



と聞くと彼女に、力なく首を横に振った。



すると、Aさんは、ゆっくりと目を閉じて俯いて何かを呟いた。



そして、しばらくすると、目を開けて、



貴女を呪っている相手が判明しました。



しかも、自分がやっているのか、誰かに依頼したのかは分かりませんが、コドク



という呪法まで使っています。



普通はここまではしないんですけどね・・・・・。



凄まじい恨みの念です・・・。



そう言って、俺の方を向いてAさんは、こう言った。



それじゃ、Kさん、このままじゃ彼女の命が危ないので・・・・。



亡くなられたおばあさんが彼女を必死で護ろうとしてくれていますが呪いの力が



強すぎて、もう限界です・・・。



だから、これからすぐに彼女を姫ちゃんの所に連れて行ってください。



あの娘の側なら、どんな強い呪いもそうそう近づけるものじゃないですから。



良いですか?私が連絡するまでちゃんと、姫ちゃんと一緒に彼女の側を



離れないでくださいね・・・・。



その間に、私は・・・・。



そう言って、Aさんは、彼女の家の住所を聞くとさっさとファミレスを



出ていってしまった。



俺は急いで彼女を姫の所に連れていくと、



お久しぶりですね、Kさん。



Aさんから事情は聞いていますから、連絡が来るまではここで私と一緒に楽しく



過ごしましょうね!



そう言って、楽しくもない手芸を一緒にやらされてしまった。



そして、それから3時間ほど経った頃、Aさんから連絡が入った。



再び、Aさんと落ち合うと、



もう大丈夫です!



全て処理しましたから!



そう言ってくれた。



だから、俺は、



相手に対してそうとうなお灸を据えたんだよね?



と聞くと、Aさんは笑いながら、



そんな事してませんよ・・・。



私は、彼女にかけられた呪いを開放して無力化しただけですから・・・。



でも、相手は今頃、大変な事になってるでしょうけど・・・・。



きっと、相手自信は何も危険を知らないで安易に彼女を呪ったんでしょうけど、



相手にかけた呪いは、一度解放されてしまうと、そのまま呪いをかけた本人



の元に返ります。



私が何もしなくても勝手に返っていくんです・・・・。



そして、返ってきた呪いは、更に恐ろしいものになります。



どんな方法でもその呪いを消す術はありませんからね・・・・。



あれほどの呪いですから・・・まあ、きっと生きてはいないでしょうね・・・。



自業自得ですから仕方ありませんけど・・・・。



そう言ったAさんの顔は何処か虚しそうに感じた。



ちなみに、その後、彼女はすぐに元気に回復し、それ以後は怪異は一切



発生していないそうだ。


Posted by 細田塗料株式会社 at 18:22│Comments(0)
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