2019年06月09日

逆恨み

これは知人女性が体験した話である。



その時、彼女は客先に向かう為、駅で電車を待っていたのだという。



昼間という事もあり駅のホームにもそれほど沢山の人はいなかった。



あ~あ、毎朝の通勤もこれくらいの込み具合なら楽なのに・・・・。



そんな事を思いながら、彼女はぼんやりと線路を見つめていた。



ホームのスピーカーからは特急が通過するというアナウンスが聞こえてきた。



と、その時、彼女の視界の前に1人の女性の姿が現れた。



そして、そのまま、ふらふらと駅のホームを線路の方へと向かっていく。



眠たいのか、何処か体調が悪いのか、は分からなかったが、その歩き方は



とても不安定なものに感じたという。



何かがおかしい・・・・・。



そう感じた彼女は、そのまま、じっとその女性の動きを凝視し続ける。



いつもは他人に無関心な彼女だったから、その時の自分の行動が不思議だった



という。



そして、次の瞬間、けたたましく鳴り響く特急電車の警笛が聞こえたと同時に



彼女はその女性めがけて走りだしていた。



彼女は、その女性に駆け寄ると肩を掴んで、その女性の体を強く引き寄せた。



しかし、その女性は彼女の手を振りほどくような動きをしながら、



離して!・・・・離せって!・・・・・



と暴れた為、思わず彼女の体も線路の方へと持って行かれる。



もしかしたら、自分もその女性と一緒に線路に落ちてしまうのではないか、と



考えたという。



しかし、どうやら、彼女と同じように、その女性の挙動を不審に思っていた1人の



男性が彼女と、その女性の二人を強く力で引き戻してくれたという。



ホームのコンクリートの上に尻もちをついた彼女だったが、何とか無事に



その女性の自殺を止める事が出来たのだという。



それから、その女性と男性と一緒に色々と事情聴取をされた挙句、その女性は警察へと



連れて行かれることになった。



ぐったりとうなだれるその女性の視線が、じっと救助した彼女とその男性に注がれた。



凄まじい恨みのこもった暗い眼で見つめられて、彼女は思わずぞっとしたという。



そして、その日は、一緒に救助した男性と名刺交換をしてから彼女はその場を



離れた。



その際、その男性に、



もしかしたら、厄介な事になるかもしれませんから名刺交換だけでもしておきませんか?



と言われた言葉が彼女には気になっていたという。



勿論、。彼女にはその言葉の意味など分かる筈もなかったが・・・。



それから、数日後、突然、その男性から電話がかかってきたという。



そして、とても暗い声でこう言われた。



あの時の女性はあの日の翌日、別の駅のホームから電車に飛び込んだそうです。



線路の横に転がっていた顔は、満足そうに笑っていたそうです・・・・。



もしかしたら、私と貴女は、とんでもない失敗をしてしまったのかもしれません。



実は、あの女性が電車に飛び込んだ日からずっと、何かに見られている気がするんです。



あの日、自殺を止めた時に、あの女性から感じたのと同じような恨みのこもった



視線を・・・・。



もしかしたら、気のせいなのかも・・・・・・・。



そう思おうとしましたが、ついに一昨日の夜、あの女の人が枕元に立ったんです。



絶対に許さない・・・と。



そして、昨日と今日、ずっとあの女が私の近くにいるんです・・・・。



私と貴女は決して悪い事をした訳ではない・・・。



でも、現実には、あの女の人から恨まれてしまっています・・・。



どうか、貴女だけでも何処か遠いところへ逃げた方が良い・・・。



それだけをお伝えしたくて・・・・。



そう枯れそうな声で呟いたという。



だから、彼女は、



そんなの気のせいですよ・・・。



元気出してくださいね!



そう言った時、彼女は電話の受話器のすぐ近くからゲラゲラと笑う女の笑い声を



聞いてしまい、挨拶も出来ずに電話を切ってしまった。



それからは、余計な事は考えないように生活していた彼女だったが、さすがに



その男性の事が気になってしまい、男性の携帯へと電話をかけてみた。



すると、電話に出たのは、女性の声であり、その後、彼の妻だと名乗った。



そして、彼と電話を代わって欲しい、と頼むと、妻の口からは、か細い声で、



夫は、3日前に電車に飛び込んで死にました・・・・。



そう彼女に告げたという。



彼女は茫然としてしまったという。



自分と一緒に人助けをしたあの男性が死んでしまった・・・。



しかも、あの女性と同じ様に電車に飛び込んで・・・・。



そして、男性が電話で言っていた言葉を思い出して、どんどん恐怖が増していった。



あの男性が言っていたのは本当に気のせいなのだろうか・・・・・と。



そして、その恐怖はすぐに現実のものとなった。



最初にその女が現れたのは、その日の真夜中だったという。



寝苦しさに目覚めた彼女は、自分の体が動かない事にすぐに気付いた。



そして、唯一、動く眼で部屋の中を見回した。



すると、彼女が寝ている左側に誰かが立っているのが分かったという。



上半身だけで浮かんでいるその女の顔は間違いなく、あの日の駅で助けた



女の顔だった。



そして、その女は小さく何かをつぶやきだす。



身動き出来ず、声も出せない彼女は、視線を逸らそうとするのだが、それも叶わず



恐怖に震えていると、その女はゆっくりと自分の顔を彼女の側まで近付けると、



絶対に許さない・・・・・。



そう言ったという。



その恐怖に彼女は意識を失い、気が付くと朝になっていたのだという。



夢だと思いたかったが、部屋の中を見ると、その女が立っていた場所には、



ベットリとした赤黒い液体が足の形で残されていた。



それから、彼女は、いつも、その女の影に怯えて生活するようになってしまう。



朝、顔を洗って鏡を見ると、彼女のすぐ後ろにその女が立っているのが見えた。



リビングでテレビを見ていても、気が付くとその女がすぐ隣に立って彼女を



見下ろしながら睨んでいた。



風呂に入っていても、何かにひっばられて溺れそうになり、食事をしていても



気が付くとその女がテーブルの対面に座って、こちらを睨んでいる。



その中でも最も恐ろしかったのは、悪夢を見る様になった事だという。



夢の中で気が付くと彼女はふらふらと駅のホームを歩いており、そこに



通過する特急電車が入ってくる。



自分の意志とは関係無く、彼女の体は、ホームの白線を越えて、今まさに目の前に



迫ってくる電車に向かってホームへと飛び降りる。



ホームにいる者達の悲鳴とともに、けたたましい電車の急ブレーキの音が聞こえ、



彼女の体はホームへ落ちた痛みの後、何も聞こえなくなった。



ただ、聞こえてくるのは自分の体が電車の車輪の巻き込まれ、砕け、そして



ちぎれて、肉片へと変わっていく音だけ・・・・。



痛みは全く感じなかった・・・。



しかし、そのリアルすぎる夢は彼女の精神を蝕んでいくには十分過ぎるインパクト



があった。



毎夜、繰り返される悪夢に、彼女は精神を病んでしまう。



仕事にも行けなくなり、食事をしてもすぐに吐き出し、どんどんと痩せていった



彼女の姿は、とても痛々しく、そしてに来ている人間には見えなくなっていた。



もう、その頃には他人との接触を拒むようになり、ずっと部屋の中に籠る生活



を送る様になる。



寝ているのか起きているのかすら、自分でも分からない様な生活・・・。



彼女はいつしか、死んで楽になりたい・・・と思う様になってしまう。



そんなある日、彼女は実際に電車に飛び込もうとしたところを寸での所で



周りの人達に助けられた。



自分でも、どうして自殺しようとしたのか、分からなかったが、不思議と、



自殺するのを助けてくれた人達に対して恨みの気持はあったが、感謝する



気持ちは起きなかったという。



そして、その時、彼女はこう思ったという。



きっと、あの時助けた女の人も、きっと今の自分と同じ気持ちだったのかも



しれない、と。



きっと、あの男性も、そんな事を思いながら電車に飛び込んだのだろう、と。



私はなんて余計な事をしてしまったんだろう・・・・。



あのまま、あの女の人を死なせてあげれば良かった・・・と。



そう、きっと彼女も間違いなく、自殺に導かれた男性と同じ運命をたどる



はずだったのかもしれない。



しかし、その時、彼女に声をかける人がいた。



あんた、何やってるの?



というか、かなり重症だね。



分かった・・・・私に付いて来て!



それは、Aさんの声だった。



さすがに彼女の窮地を察した俺がAさんに彼女を助けてやってほしい、



と頼み込んだのだ。



Aさんは彼女を富山の住職の寺に連れていき、そこで3日間、住職による



除霊を受けさせた。



そして、Aさんはといえば、その女が自殺した駅へと向かい、かなり手こずった



らしいが、何とかその女の霊を完全に消滅させることに成功した。



その後の彼女は、それまでの生活が嘘のように元気になり、今では以前にも増して



しっかりとした生活を送れている。



そして、、俺はAさんに、聞いてみた。



どうして、あの時、二つ返事で引き受けてくれたのか?と。



すると、Aさんは、



まあ、面倒くさかったんですけどね・・・。



でも、話を聞いているうちに、なんかむかついて来てしまって・・・・。



正しい事をした人間が恨まれる理不尽があってはいけないんです・・・。



人はそれぞれが何らかの悩みを抱えて生きていて、辛くても死にたくても



自分の為だけじゃなくて、誰かの為に頑張るんです・・・。



だから、自殺は絶対にしてはいけない事!



それに負けて自殺した上に、助けようとした人間まで連れて行こうとするなんて



言語道断です!



その女の霊は、私にもこう誘ってきました。



一緒に死のう・・・・きっと楽になれるから・・・・って。



だから、私は言ってやりましたよ。



あんた、馬鹿じゃないの?



自殺しても、永遠に苦しみ続けるだけ・・・。



そんな事に私まで巻き込むんじゃないよ!って。



助けてくれた人を恨むのなら自殺へ逃げた自分の弱さを恨みなさい!って。



まあ、完全に消滅させましたから、自殺を繰り返して苦しまなくても



良くなりましたけどね・・・・。



でも、完全に「無」になってしまいましたから・・・・。



もう、何も出来ませんよね・・・・。



嬉しさも悲しみも、何も感じられません・・・・。



それって、もしかしたら一番苦しい事なのかもしれません・・・・。



そう話してくれた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 18:37│Comments(0)
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