2019年06月09日

バケモノ

バケモノという言葉の定義は色々あるのだと思う。



容姿が人間離れしている状態のモノ・・・・。



その能力が常識を逸脱しているモノ・・・・・。



今回は、そんなバケモノについての俺の体験談を書いていこうと思う。



その時、俺は困り果てていた。



以前、付き合いのあった心霊スポットマニアの仲間から、無理難題を押し付けられ



そして、それを拒みきれずに、承諾してしまった。



その無理難題というのがとても厄介なものだった。



それはもうかなり昔の話になる。



以前、その仲間たちと頻繁に心霊スポットに出向いていた俺は、とある心霊スポット



を探索した際、仲間の大切なバッグをその場に置いて逃げてきてしまった。



勿論、そのバッグを取りに戻っていたとしたら今の俺はここには居ないのだと思う。



それくらい危険な場所だった。



その当時は、その場に居た全員が命が助かった事だけを喜び合ったのだが、時間が



経つにつれて、やはりそのバッグを失った事が惜しくなったのかもしれない。



バッグの中には高価なカメラやライトが入っていたそうで、勿論、そんな物を



俺が弁償する余裕など無かった。



それに、その場所というのは今では完全にいわくつきの場所になってしまっており、



その場所に行くだけで呪い殺されると言われるほどの禁忌の場所として



心霊スポットマニアの間でも認識され、そして敬遠されてきた。



だから、俺が1人でそんな場所に行ける筈もなければ、Aさんや姫をそんな



危険すぎる場所に同行させる訳にもいかなかった。



勿論、唯一、相談できる相手である、富山の住職には、その悩みを打ち明けてみた。



すると、帰って来た返事は、



ああ・・・あそこはどう考えても無理だろ?



だから、俺が一緒に行ってもどうしようもないぞ・・・。



悪い事は言わないから諦めるんだな・・・・。



そんな言葉だった。



だから、俺自身、気付かないうちにかなり暗い顔をしていたのかもしれない。



ある日、Aさんから電話がかかって来た。



俺が電話に出ると、



相変わらず暗い声ですよね・・・・。



そんなんじゃ、不幸ばかりが寄ってきますよ?



それに、こんなに綺麗な女の子が電話かけてきたんですから、もう少し位



嬉しそうな声でしゃべったらどうてすか?



と言われた。



俺は、



え?何の用?



それに、綺麗な女の子って誰なの?



Aさんの横に綺麗な女の子でも待機させてくれてるの?



そう返した。



すると、しばらくの沈黙の後、



まあ・・・・今日は勘弁しておきますけどね・・・・・。



ところで、今度の日曜日は私も姫ちゃんも空いてますから!



何か私達に頼みたい事があるんなら、今回だけは無条件で力を貸しますけど?



そう言われた。



ただ、俺としてはこんな事にAさん達を巻き込みたくはなかったから、



いや、別にAさん達に、頼む様な事は無いけど・・・・。



と返すと、



まあ、Kさんの顔を見てれば分かりますから・・・。



それじゃ、今度の日曜日に迎えに来てくださいね!



そう言われて電話は切れた。



俺はそれからかなり悩んでしまったのだが結局、他の解決策が見つからず、



Aさんの好意に甘える事に決めた。



前日の夜から眠れなかった俺は、そのまま殆ど寝ない状態のまま、Aさん



を車で迎えに行った。



Aさんは珍しくマンションの前で待っていたくれた。



そして、俺に難題を持ち込んできた昔の仲間と合流して現地へと向かう。



車の中で、俺はAさんに事情を説明しようとしたが、俺が話しだす前に、



大丈夫ですよ!・・・・わかってますから・・・・・。



それだけ言うと、持参したお菓子を口いっぱいに頬張って楽しそうにしている。



しかし、これだけAさんとの付き合いも長くなると、色んな事が分かってくる。



それは、厄介な時ほど、Aさんが食べるお菓子の量が増えるという事。



そして、今回もAさんは大量のお菓子を食べまくっている。



そうやって少しでも気持ちを落ち着かせているか?と思うと余計に申し訳ない



気持ちでいっぱいになる。



そして、俺はある事に気付いてAさんに聞いてみた。



あのさ・・・・姫は今日は来ないの?と。



すると、Aさんは、



ああ・・・あの娘は今日は別行動です・・・・。



そう言われてしまった。



そして、いよいよい現地に到着した。



目の前に広がっている森は相変わらず不気味な雰囲気で、当時の恐怖が



ふつふつと蘇ってくる。



俺はAさんの後に続いて歩き、一緒に来たかつての仲間は車の中で待機する



事になった。



暗い森を歩いてく。



音が消えて様な空気の中、俺とAさんの足音だけが響く。



そして、Aさんがお菓子を食べている音も・・・・。



だから、俺はAさんに聞いてみた。



あのさ・・・やっぱりAさんでも怖いの?と。



すると、Aさんは前を向いたままで、



私、新発売のお菓子には目が無いんです!



それに今食べているのは、大当たりのお菓子で!



完全に噛み合わない会話に、背中が寒くなる。



森を抜けると、小さな洞窟が口を開けていた。



あの時の悪夢が蘇る・・・・。



あの時、奇跡的に助かった俺達だったが、その時の恐怖はいまだに鮮明に



覚えていた。



だから、俺はAさんにこう言った。



あのさ・・・引き返すなら今のうちなんだけど?と。



すると、Aさんは、



こんな辺鄙な所まで来たのに引き返す訳ないじゃないですか・・・・。



それに、Kさんは、此処でコテンパンにやられたんでしょ?



それなら、今度はやり返さないと!



そう言ってどんどんと前へと進んでいく。



洞窟の中に入ると、そこには朽ち果てた木材で作られた小さな手摺が前方へ



と続いていた。



やはり、この場所はあの時のままだった。



いや、きっと以前来た時よりも空気が重くそして、冷たく感じた。



やはり、此処は人間が決して近付いてはいけない場所なのだと背筋が凍りつく。



そして、その緊張感とは対照的に、Aさんはマイペースでお菓子を口へと



運び続けている。



このまま100メートル程行くと、行き止まりになっていて、其処には大きな



祠が在ったはずだった。



そして、当時、それを見た途端、俺達は異形のモノ達に追われる羽目になった。



あれらの異形のモノ達にAさんは対応出来るのだろうか?



このままAさんまで巻き込むのだけはどうしても避けなければいけない。



そう思った時、目の前に女の下半身だけが洞窟の天井からぶら下がっているのが



見えた。



俺は咄嗟に、



Aさん、ヤバい!逃げよう!



そう叫んだ。



すると、Aさんは、無言のまま前へと進んでいき、天井からぶら下がっている



下半身を掴み、それを一気に引きずり落とす。



あ~、ウザい!



邪魔なのよ、あんた達!



呆気に取られている俺を無視したまま、Aさんはどんどんと前へ進む。



その様はまさに無人の野を行くかのように無敵だった。



目の前に立つ異形のモノ達を突き飛ばし、蹴り飛ばし、罵声を浴びせ、



罵る・・・・。



霊体は触れない・・・という一般常識を完全に覆した様な無法状態。



俺はその時、自分自身、意外な感覚に襲われていた。



あれほど恐れていた異形のモノ達が、今では可哀想に思えてしまう。



そして、本当に恐ろしいバケモノはこちら側に居たのだ、という事に



改めて気付かされた。



すると、後ろから、誰かが駆け足で近付いてくるのが分かった。



新手の偉業なのか?



そえ思った俺はAさんにこう叫んだ。



何かが後ろから近づいてくる!



どうする?と。



すると、Aさんは冷めた声で、



え?ああ・・・たぶん、姫ちゃんですよ・・・・。



とぼそりと言った。



そして、俺が振り返ると、確かに姫がこちらへと走ってくるのが見えた。



そして、姫は俺の前で立ち止まると、



あっ・・Kさん、お久しぶりです・・・・。



少し怖かったですけど私もKさんの為に頑張りましたから~



そう確かに言った。



だから、俺は



え?何を頑張ったの?



と聞くと、今度はAさんが、



この辺り一帯の浄化と、そして此処に居るモノ達が此処から逃げられない様に



強い結界を張ってもらったんですよ!



と、ぶっきらぼうに答えた。



そして、Aさんと姫は、二人並んで洞窟の奥へと突き進んでいく。



その頃には洞窟の中には、何かのうめき声のようなものが鳴り響いていたが、



俺の視線は今、目の前に居る二人に釘づけになっていた。



暴言を吐きながら、どんどんと異形の霊達を消していくAさん。



そして、



すみませ~ん・・・・。



ごめんなさ~い・・・・。



と言いながら、一瞬で霊達を消し去っていく姫。



まさにバケモノと呼ぶにふさわしい2人の姿だった。



そして、あっさりと突き当りまで進んだ二人は、さっさと其処に置いてあった



バッグを手に取ると、何事も無かったかのように世間話をしながら戻ってくる。



洞窟の中にはもう怪しい気配も重たい空気も、そして冷たさも全てが



消え去っていた。



そして、バッグを仲間に渡した時、彼の態度も完全に豹変していた。



まるでバケモノでも見るかのような畏怖の眼でAさんと姫を見ているその瞳は



完全に怯えきったものだった。



そして、そこから車で帰る際に、俺はAさんにこう言われた。



まあ、今回の事はしょうがないですけどね・・・・。



でも、普通ならKさんほど強い守護霊を持っている人なら、あんな場所なんて



どうって事無いはずななんですけどね?



だいたい、その当時、Kさんが助かったのも奇跡でも偶然でもなく、その強い



守護霊のお蔭なんですから・・・・。



そんだけ強い守護霊が付いていたら、ほとんどの霊は何も手出し出来ませんから。



まあ、宝の持ち腐れ状態ですよね!(笑)



そう言って笑われた。



それから、俺は車を運転しながら、Aさんから馬鹿にされ、そして姫から



慰められながら、の時間を過ごす事になった。



まあ、でも、こんなバケモノ達となら、一緒に過ごすのも悪くない・・・。



そして、このバケモノ達が、いつまでも俺の側に居てくれる時間が続けば



良いのにな・・・・。



そう思わせてくれた体験だった。


Posted by 細田塗料株式会社 at 19:01│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

count