2019年06月18日

存在しない部屋

これは知人女性が体験した話。

彼女はその時、郊外のマンションから市街地のマンションへと引っ越しした。

元々は市街地のマンションを物色していたのだが、家賃が高く経費もかなり

高額だったから、断念して郊外にある新築の賃貸マンションに住んでいた。

しかし、ある時、仕事で偶然通りかかった市街地の不動産屋で信じられない程安価な

家賃のマンションが目にとまった。

正直なところ、現在住んでいるマンションからだと会社までの通勤に1時間以上

掛っていたが、そのマンションからなら、20分も掛からなかった。

その辺は決断の速い彼女だったから、すぐにその不動産屋に飛び込んで色々と

詳しい話を聞いたという。

勿論、それだけ安いのだから事故物件の可能性もあるな、と思いつつ説明を

受けていると、どうやらその類の理由で安いのではないという事が分かった。

要はその部屋の隣には非常階段があり、其処を利用する人の靴音が部屋の中に

入り込む為、その迷惑料としてかなり安価な設定にしていると

聞かされた。

しかし、その部屋はちょうど角部屋にあたり、住環境としては申し分なかったから、

彼女はすぐにそのマンションを契約したのだという。

引っ越し当日、彼女は引っ越し業者は使わず、友人達にバイト料を払って

引っ越し作業を手伝ってもらう事になった。

元々、殺風景な部屋に住んでおり大きな家具など皆無だったから、引っ越し作業は

順調に進み、夕方にはほとんどの作業が終わったという。

だから、その日の夜は友人達と買い出しをして一緒に飲み明かそうという事になった。

翌日も休みだったことから

酒宴は盛り上がり、気が付くと既に深夜11時を回っていた。

そして、誰かがこんな提案をした。

これから同じ階にどんな人が住んでるのか、見に行ってみない?

彼女の部屋はマンションの6階だったらしく、これから生活していくマンションの

同じ階にどんな人達が住んでいるのか、というのは彼女自身もとても興味があった。

だから、二つ返事でその提案に乗った彼女は、友人達と一緒に静かに玄関から

廊下へと出た。

マンション自体は新しいものだったが、何故か廊下の灯りは今にも切れそうに

点滅を繰り返していた。

これは管理人さんに言って直して貰わなきゃ・・・・・。

そんな事を考えながら彼女達は出来るだけ迷惑にならないように静かに廊下を

進んだ。

しかし、どれだけ進んでも窓から明かりが漏れている部屋は一つも無かった。

明日は休みなんだからこんなに早く寝る筈はないのに・・・・。

そんな事を考えながら彼女達はどんどん廊下を進む。

そして、廊下の突き当たり近くまで来た時、その階に在る部屋からは誰かが

住んでいる気配が感じられない事に気付いたという。

きっともう寝ちゃったんだよ・・・・。

今日と明日がお休みだから、きっとみんな何処かへ旅行にでも行ったのかも?

そんな言葉を掛けられたが、彼女の不安は増すばかりだった。

すると、突然エレベータが止まる音と扉が開く音が聞こえてくる。

彼女達は息をのんでどんな人が降りてくるのかをじっと見ていた。

しかし、そのままエレベータはドアを閉めて下へと降下していった。

誰かがボタン押し間違えたのかなぁ?

そんな事を話していると突然廊下の一番奥の部屋のドアがゆっくりと開いた。

そして、そこから体を半分だけ覗かせた女が、じっとこちらを見ているのが

分かった。

すみません…引っ越してきたばかりで・・・・・。

煩かったですか?

彼女はそう話しかけた。

しかし、女は何も答えず、何かをぶつぶつと呟きながら指を動かしている。

あの・・・すみません・・・・。

彼女はそう言ってその部屋に近づこうとしたがすぐに止めた。

その女は何かを数える様に指を折りながらぶつぶつと呟いていた。

そして、その指を折った数は、その時その場にいた彼女達の数と同じだったという。

それを見て彼女は何か嫌な予感を感じ、その場から逃げる様にして部屋へと

戻った。

彼女の異様な態度を察して友人達も一緒に部屋へと戻って来た。

その場にいた全員が何も喋らなかった。

全員が何か異様な雰囲気を感じていたという。

もう酒を飲む気にはなれなかったから、その夜はもう寝ることにしたという。

1人きりならとても寝る気にはならなかったが、友人達が一緒にいる事で

彼女も少しは気丈でいられた。

お酒のせいか、寝つきは良かったという。

しかし、彼女は真夜中に突然目が覚めた。

時計を見ると時刻は既に午前2時を回っていた。

どうして自分はこんな時間に起きてしまったのか?

そんな事を考えていると、突然、非常階段を歩く足音に気付いた。

ああ…不動産屋さんが言ってたのは、この足音の事なんだ・・・・。

そう思ったがすぐに不自然さに気付いた。

エレベータが一体誰が設置されているというのに、一体誰がこんな真夜中に

非常階段など利用するというのか?

しかも、彼女の住む6階には誰もいないのは既に確認済みだった。

そう…あの女を除けば・・・・。

彼女は先ほど見たドアの隙間から体半分だけを覗かせた女の姿を思い出して

しまい、一気に恐怖が襲ってきた。

誰か、起きてる?

彼女は誰に語りかけるでもなくそう言った。

すると、熟睡していると思っていた友人達がその言葉に応えてくれた。

誰も寝てはいなかった・・・・。

それが心強かったと同時に一層不安感を掻き立てた。

あの音・・・なんだろ?

誰かが言った。

しかし、それからは誰も喋らなくなった。

カンカンカンカン・・・・カンカンカンカン・・・・・。

非常階段を歩く靴音にその場にいた全員が聞き耳を立てていた。

なんか、あの足音、降りてきて必ずこの階で止まってない?

友人の1人がそう言うとその場にいた全員が凍りついた。

実はそのマンションは6階建てであり、その上には屋上しかないのは分かっていた。

そして、当然、屋上には簡単には昇れないようになっている。

それがどうして屋上から降りてきてこの6階で足音は止まるのか?

すると、突然、部屋の窓がノックされた。

6階に在る部屋の窓がノックされるなどあり得ない事だった。

しかも、非常階段からその部屋の窓まではかなりの距離があり、手を伸ばしたとしても

到底届く距離ではなかった。

彼女達は先ほどの女が体を異様に伸ばして窓をコツコツとノックしている姿を

想像して恐怖した。

全員が部屋の中央に集まって息を殺した。

すると、しばらくすると窓をノックする音は聞こえなくなる。

ホッと胸をなでおろしていた時、今度は突然玄関のチャイムが鳴った。

玄関のモニターを確認するが誰もいない。

だから、友人の1人が玄関の側まで行って覗き穴から外を確認した。

大きな悲鳴が部屋中に鳴り響いた。

其処には大きく口を広げた女が玄関ドアに張り付くようにしてうねうねと

動いていた。

結局、朝方まで玄関のチャイムは鳴り続け、そして明るくなった頃、

静かになった。

そして、彼女を含め友人たち全員が一睡も出来ぬまま朝を迎えていた。

朝になり、窓を確認すると窓には人の指の跡が無数に残されていた。

彼女達はそのまま不動産屋に電話をかけて、すぐに来て欲しいと連絡した。

しばらくすると不動産屋が一人ではなく数人でやって来てチャイムを鳴らした。

彼女達がドアを開けて外へ出ると、ドアにはベッタリと手の跡が幾つも

残されていた。

彼女達は昨夜見た女の部屋へ不動産屋を連れていき、昨夜起こった事を詳しく

説明しようと廊下の突き当たりの部屋へと歩いていく。

しかし、其処には部屋と呼べるものは存在していなかった。

彼女たち全員が間違いなくその眼で見た部屋。

昨夜確かに存在していた女のいた部屋は

跡形もなく消えていた。

玄関ドアがあった場所にはコンクリートの壁しか存在しておらず、

そこには人の形のシミだけが不気味に浮かび上がっていた。

それを見た彼女は、もうこんな所に住んでいられない、と不動産屋に契約の

解除を申し出たが、意外な事にそれは二つ返事で受理されたという。

そして、その際、彼女は不動産屋にこう聞いたという。

あの6階には私以外に誰も住んではいないのですか?と。

すると、不動産屋は少し困った顔をしながら、

あの階の他の部屋はまだ契約解除はしていません・・・・。

ただし、もう誰も住んではいませんが・・・・。

何があったかは分かりませんが、

皆さん、逃げる様にして部屋から出ていってしまって・・・・。

それ以来、顔も見ていないんですよ・・・。

だから、家賃はきちんと頂いてます・・・。

そう言われたという。

彼女はそのから友人の家を泊まり歩く事になり、次のマンションが見つかると

今度は引っ越し業者に全てお任せで引っ越しを済ませた。

そして、それからしばらくの間、そのマンションは住人を募集していたが、

1年ほど前に突然取り壊されたという。

勿論、彼女にはその理由は分かっているようだが、決して他言はしていないのだという。

あの時の話を誰かに話してしまったら、あの女が今住んでいるマンションにも

やって来るような気がして・・・・。

彼女は蒼ざめた顔でそう話してくれた。


Posted by 細田塗料株式会社 at 20:46│Comments(3)
この記事へのコメント
あっ!
すみませんでした。
こちらのほうがよろしいんですね。
私、早とちりしたみたいで、、(;^_^A
では、失礼しました。
Posted by タッチン at 2019年06月19日 19:23
大阪のYさん、
ひろたさん、
surfさん、
しゃねるさん、
シェフの掟さん、
ともさん、
Kさんの怖い話はブログのほうで再開されました。
もしよかったらもとのブログのほうにお越しいただいたらと思いまして、、(^^)ニコ
Posted by タッチン at 2019年06月19日 19:17
Kさん、北陸地方の方々 ご無事ですか?
夜の地震は特に怖いですよね。
皆様 ご無事でありますように。
Posted by ひろた at 2019年06月18日 22:59
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