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2016年01月23日

この世には存在しない駅

サインディスプレイ部  営業のKです。

今夜は、このあと、仕事関係の新年会です。

趣味関係の新年会も、まだ終わってないのが幾つもありますので、

一体いつになったら新年会の呪縛から解き放たれるんですかね(涙)

そういう訳(どういう訳?)で

今夜も怖くない話(いやいや、怖い話)

いってみます。



昔は、バイクでわざと知らない道を走り、知らない所へ行くのが

ひとつの趣味になっていた。

今みたいにカーナビも無ければ、スマホのGPSもない時代だったので、

小さなポケット地図だけ持って出かけ、二股に分かれている道では、その時の

気分で進む道を決め、そして時には、その土地に泊まったりもした。

その土地その土地で見たり聞いたりする事が時に新鮮で、時に懐かしくもあり、

まるで小さな冒険みたいで、止められなかった。

あの体験をするまでは。

その日、俺は、いつもの様に目的地は決めず、ぶらり気ままにバイクを走らせた。

行く方向としては、山陰地方。

何度か、行った事があるが、なんともいえず、古く懐かしい感じがして、

凄く好きな場所だ。

いつものように、宿の予約もしないで、気ままにバイクを走らせる。

特に問題も無く、快調に予定のコースを進み、昼前には、

天橋立の近くまでたどり着く。

そして、そこからが、楽しみの始まりである。

俺は、その場所以降は、あえて標識は見ないようにして、その時の

思いつきで走る道を決め、どんどんバイクを走らせた。

そして気付くと、全く知らない土地に入り込んでいた。

電柱も木製であり、また、町並みもどこか古すぎるくらいで、あたかも

タイムスリップでもしたかのような感覚だった。

だが、当然、怖さは無かった。

なにしろ自分が望んだ世界そのものが、目の前に広がっていたのだから。

ただ、1つだけ、違うものがあった。

それは、あまりにも自分が理想としていた景色すぎるということ。

いくら田舎とはいえ、さすがに電気も通っていない訳も無く、現代的な

ものが幾つか有って当然なのだが。

それが全く無かったのである。

まるで、自分の幼少期に見た田舎そのもの。

俺は少しだけ違和感を感じたが、心の中に沸いてきたワクワク感を

押さえる事は出来なかった。

こんな場所が今も残っていたなんて!と驚嘆しながら、ゆっくりと

バイクを走らせる。

しかし、どれだけ走っても、人の姿が全く無かった。

いや、人だけではない、犬も猫も、生き物の気配が全く感じられない。

そうして、しばらく走ると、目の前に駅が現れた。

実は、最初は駅だとは気付かなかった。

なにしろ、全て木製の建物であり、レトロを通り越して、廃墟と

化していたから。

では、何故、それが駅だと気付いたかというと、列車らしきものが

停車していたから。

俺はバイクをその駅の壁沿いに駐車し、少し探索してみる事にした。

駅ならば、少なくとも人の一人や二人は、必ずいるであろう。

そういう理由からである。

ヘルメットとグローブを外し、片手に持ちながら、駅の中へと入る。

駅の中は、昼間だというのにかなり暗く、なかなか目が慣れなかったが、

しばらくすると、少しづつ見えるようになった。

確かに木造とはいえ、駅の構内といった雰囲気はあるのだが、何かが

おかしかった。

そう、券売機や改札が見当たらないのである。

普通、まあ田舎だからということで、券売機は無いとしても、代わりに

切符を売る窓口があるのが普通であるし、また、当然、切符を買った者

だけを乗車させる為に、改札も不可欠の筈である。

が、その駅には、その二つともが欠落していた。

そして、相変わらず、人が誰も居ない。

俺は、それなら駅のホームとか列車になら人が居るだろう、と思い、

改札が無いのをいいことに、ホームへの木製の階段を上がる。

だが、やはりホームには誰も居なかった。

列車自体は、発車待ちという感じで、振動や音が伝わってくるのだが、

肝心の駅員はおらず、列車の運転席の窓のカーテンもしっかりと

閉じられている。

俺は、取りあえずホームの端まで歩いてみようと歩を進めると、前方に

自動販売機らしきものが。

喉も渇いていたので、俺は小走りにその自動販売機に駆け寄った。

すると、今ではもう、骨董屋でしかお目に掛かれないような年代ものの

ジュースの自販機があり、その中には、瓶ジュースが並んでいる。

俺は先程までの、人間探しも忘れて、自販機に硬貨を入れる。

それにしても、いまどき、50円というのも妙だったのだが。

が、俺の期待に反して、投入した硬貨は、音を立てて返却口へと

戻ってくる。

おいおい。

そう思い、顔を上げると、誰かの視線に気付く。

辺りを見回すと、誰も居ない。

しかし、更によく周りを見てみると、どうやら列車に乗っている人が

こちらを見ている事に気付いた。

俺は、出来るだけ自然に、そして、何事もないかのように、少しずつ列車の

窓に近づいた。

近づくにつれて、その窓から俺を見ているのが、女性だという事が分かった。

もうなんでもいいから、人間に会いたいというある種の寂しさを抱いていた

俺だったが、かなり列車の窓に近づいたところで、歩を止めて息を呑んだ。

アレは人間ではない。

いや、少なくとも生きている人間ではない、というのがすぐに分かった。

何故なら、その女の首は、あり得ない角度に曲がっていたから。

そして、それと同時に、列車の幾つもの窓から、沢山の目が俺を見ていた。

そして、それは勿論、人間のものではなかった。

皆、それぞれに、体の一部が欠落したり、折れてぶら下がっていたり、

中には、自分の首から上を、自分の手で抱えている者もいる。

この列車は、マズイ。

直感的にそう思った俺は、すぐに駅の構内に降りる階段へと向かう。

が、その間も、どこからかヒソヒソと話す声が聞こえている。

あの列車は、死者を乗せる為の列車としか思えない。

早歩きで歩きながら、駅のホームに掛かっている行き先などを書いたプレートを

見つけたのだが、そこには、読めない漢字で、○○駅(終点)と書かれていた。

終点という事は、こいつらみんな、ここで降りるってことか?

さらに歩く足が速くなる。

そして、俺が階段を降り始めると同時に、列車のドアが開く音がした。

もうなりふり構っては居られなかった。

必死で走り、自分のバイクまでたどり着くと、俺はバイクを始動した。

その際、先程までは、誰も居なかったのが嘘のように、子供やお年寄りが

俺のバイクにまとわり付いた。

が、そんな事に構っている余裕は無かった。

俺は、勢い良くバイクを発進させる。

その時、正直、俺は、助かった、と思った。

が、まだ全然助かってはいなかった。

早くこの得体の知れない土地から離れなければ、と思い、バイクの

スピードを上げる。

が、しばらく走ると、前方に先程の駅が見えた。

駅の前には、先程の亡者達が、手招きしたり何か叫んだりしている。

が、俺には、止まったらお終い、という思いしかなかった。

だから、今度は、先程とは別の道を選んだ。

そして、しばらく走る。

すると、先程の駅がまた現れた。

それから、何度駅の前を通ったことか。

俺は、半ば諦めてバイクを止めようとしたのだが、やはり本能的に

止まったらもう全てが終わる(死んでしまう)という恐怖から、

どうしても止まる事は出来なかった。

そして、もう数え切れないくらい、駅の前を通過した時、しばらく

走ると、前方に人影があった。

50代くらいの女性だった。

が、不思議とその女性からは、怖いという感覚よりも、もっと優しい

気が伝わってきた。

そして、その女性は、必死に指を差しながら、叫んでいる。

どうやら、指差す先にある原っぱに行けと言っているようだった。

もう走れる道は全て試して駄目だった俺は、その女性の指示に

従ってみる事にした。

そして、その原っぱに入る直前、その女性の顔を見たのだが、

昔、俺が小さい時によく可愛がってくれた叔母さんにとても酷似していた。

その叔母さんは、俺がまだ小さい頃に亡くなってしまっていたのだが。

俺は、そのまま原っぱにバイクで突っ込んだ。

さすがにオンロードバイクで原っぱを走ると、何度も転びそうになった。

が、必死で耐えて持ちこたえていると、前方に道路が見えた。

民家や人の姿もあった。

俺は、戻って来れた事を確信した。

その後は、きっちりと国道だけを走り、金沢市の自宅までノンストップで

走った。

そして、走っている間も、ずっと考えていた。

あれは、きっと亡くなった叔母さんが助けてくれたに違いない、と。

そして、もう行き当たりばったりのバイク旅は止めようと心に誓った。

この駅は、実在した。






Posted by 細田塗料株式会社 at 19:50│Comments(1)
この記事へのコメント
営業のKさん

この記事も興味深いです、本当に不思議な体験ですね。

山陰には友人もいますし、仕事でも何度も訪れました・・・確かに田舎ですが、そんなレトロ地区には遭遇していませんし、ましてや異界の終点駅にも。

今ほどビジネスホテルやコンビニが充実していなかった為に、現場である公園の駐車場で車中泊が多かったのですが、特に他府県ナンバー・・・警察のパトロールによる職務質問が難儀でしたよ。

レース活動に夢敗れ、仕事と結婚生活に追われる中、ヤマハの中型2ストローク機最後のR1ーZを手に入れました。
全て懐かしいユーゾーのクロスチャンバーとケンソーのバクダンキット、そしてオービックのバーハンドルに変更して走りましたが・・・今はV500に胸踊らせる(笑・・・私ですが。
Posted by 中西 at 2017年05月16日 21:34
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