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2018年11月10日

初めて転倒した夜

大学時代は神戸で過ごした。



ただ、大学の2回生までは、借りていた寮の関係から、西区という



神戸という地名が持つ都会的なイメージとはかけ離れた場所で生活していた。



周りには緑が広がっており、はっきりと言ってかなりの田舎だった。



まあ、それでも、舞子からも近く明石駅からも近かったので、



全く不便の無い場所ではあったのだが・・・。



神戸で最初に驚いたのは、地震が多いという事だった。



実は金沢というところは地震がかなり少ない。



たまに、震度1くらいの地震があっただけで、翌朝の話題になってしまう



くらいだから、相当なものだ。



だから、最初に寮に入った時、頻発する地震に驚いてしまった。



思わず部屋から逃げ出して、寮の前にあるコンビニに飛び込んで、



今、揺れませんでした?



と聞くと、



え?揺れたけど、それがどないしたん?



と聞き返され、神戸恐るべし、と思わず思ってしまった。



それからの俺は、地震と金沢訛りによって苦しめられる事になった。



それはさておき、大学時代は、すぐにバイクの免許をとった。



今考えると、小学校、中学校、高校、大学といつも兄と同じ大学に



通っていた。



偶然と言えば、あまりにも不思議なものである。



再び、それはさておき・・・・。



バイクの免許は取得しのだが、やはり大きなバイクは高価であり、夏休みに



400ccのバイクを買うまでは、50ccのアメリカンに乗っていた。



確か、ヤマハのバイクだったと思うが・・・。



しかし、そんな俺とは対照的に、友達になった奴らは、すぐに400ccの



バイクを購入した。



実際、それはすごく羨ましかったのだが、一番困ったのは、そのバイクで



色んな所に行くのに、50ccの俺のバイクでは到底追いていくのがとても



大変だったという事。



ホンダCBX400、カワサキGPZ400、スズキGSX400R、ヤマハFZ400、



そして、ヤマハRZ350、という錚々たる当時のスポーツバイクに、50ccの



アメリカンバイクが追いていけるはずもなかった。



それでも、彼らは、文句を言いながらも、ペースを合わせてくれたり、ずっと



先の方まで行ってから、俺を待っていてくれたのだから、感謝しなければ



いけないが・・・・。



そして、俺が人生で初めてバイクで転倒したのは、ある夜の事だった。



その時、CBXに乗る友人が、夜景を見に行こうと誘ってきた。



時刻は既に、午前0時を回っていた。



エアコンの無い部屋の暑さに耐えかねていた俺は、その誘いに乗った。



バイクは駐車場から少し離れた所まで押していき、そこで初めてエンジンを



かけた。



50ccバイクの割にうるさい排気音の為に、いつも苦労させられる。



ギアをローに入れてゆっくりとバイクをスタートさせる。



田舎という事もあり、車の通りは殆ど無かった。



CBXに乗る友人も、目的はあくまで夜景を見に行くということなので、



俺の速度に合わせて走ってくれている。



住宅街を走っているか、やはり時刻が遅いせいなのか、道には誰一人



歩いていなかった。



自分のバイクのうるさいエンジン音だけが、やけに耳についた。



俺はかなり無理をして走っており、友人も決して速く走ろうとしていた



訳ではなかった。



しかし、排気量の差というのはやはり大きく、友人のバイクは少しずつ



離れて行ってしまう。



そして、閑静な住宅街を抜けて、いよいよ通り道にある、某大学の



近くを走っていた時、それは突然、俺の目の前に現れた。



ヘッドライトが照らす前方の道に突然、道路脇に一人の女が立っているのが



確認できた。



だから、俺は少しだけ右に寄ってその女から離れた場所を走り抜けるつもり



だった。



すると、その刹那、その女がおれのバイクに向かって飛び込んできた。



まさに一瞬の出来事だった。



その女は突然、俺の目の前の空中に浮かぶと、そのまま俺の前方に覆いかぶさる



様にしてハンドルにしがみついてきた。



俺はいったい何が起こったのか、全く分からなかった。



俺の目の前には、その女の顔が大きく視界を塞いでいた。



その女には眼球の無い眼と大きな口しか存在していなかった。



鼻も耳も眉も全てが欠落していた。



ただ、頭部には長い髪の毛が、ただ風になびいていた。



そして、その女の口が笑ったように見えた。



その瞬間、俺はヤバい、と思い、全力でブレーキレバーを握った。



タイヤのロックする音と、路面を滑るような音が聞こえ、次の瞬間、俺は



バイクとともに、路面の上を滑っていた。



焼けるように肌が痛かった。



暑いという理由でライダージャケットの腕の部分をまくっていたのを



俺は後悔した。



それと同時に、俺は恐怖していた。



まだ、その女はしっかりとバイクにしがみつくようにして前方視界を



塞いでいた。



それなりの速度で走っていたバイクは転倒してもその速度を落とすことなく



アスファルト路面の上を滑り続けていた。



俺は、体を無理やりひねると、バイクの蔭に身を隠すような体制をとった。



何故か、そうしなければいけないのだと思った。



そして、次の瞬間、突然、その女の姿が消え、俺の視界が開けた。



俺の目の前には、ガードレールの切れ目が迫っていた。



うわぁ!



ヘルメットの中でそう叫んだが、俺には滑り続けるバイクを止める事など



出来る筈も無かった。



バイクはそのままガードレールの下のコンクリート部分にぶつかって、そのまま



ガードレールに突き刺さる様にして止まった。



俺は痛みと恐怖で固まっていた。



ガードレールに突き刺さった自分のバイクを見て、涙がこぼれてきた。



前方を走っていた友人が慌てて戻ってくるのが分かった。



そして、俺に走り寄ると、



お前・・・よく死ななかったな・・・・。



まあ、生きててくれて良かった・・・。



あのバイクの様にガートーレールに突き刺さっていたのが、お前だったら、



間違いなく死んでたぞ!



そう言われて思わず、ぞっとした。



そして、ゆっくりと立ち上がった俺は、アスファルトの上に血の跡が続いている



事に気付いた。



ハッとして自分の腕を見ると、半袖のジャケットから出ていた部分が路面に



擦れて、俺の腕を削ったのだという事が理解できた。



結局、そのバイクはそのまま廃車になった。



そして、俺はといえば、アスファルトで削った腕には、路面の小石や砂利が



沢山入り込んでしまっていたらしく、それから、腕の肉が腐って削げ落ちて行き



腕の骨が露出する寸前までになってしまった。



その時の1日2回の病院での包帯交換と薬を塗る治療は、想像を絶する痛み



だったのを今も覚えている。



そして、俺はその後、ある噂を先輩から聞いた。



どうやら、その某大学の近くでは原因不明の死亡事故が多発しているらしく、



特にバイクに乗っている者は絶対に夜間は通らない道なのだということを。



勿論、その後、俺も二度とその道は通らないようにしていたが、やはりそれからも



原因不明の事故が多発しているのはよく耳に入ってきた。



そして、その事故はきっと、あの女が引き起こしているのだろう・・・・。



あの眼球の無い眼と大きな口しか存在していない顔の女が・・・・。



そう思えて仕方なかった。



そして、この話には後日談がある。



俺がその場所で人生初めてのバンクでの転倒を体験した日から1年も経たない



うちに、友人がバイクで亡くなった。



一緒に何度も六甲山へ走りに行ったりしていたが、とても速くそして何より



上手かった。



そして、その友人がバイクで事故死したのが、俺が転倒したのと同じ場所だった。



どうして、実家が灘区にあり、そこから大学に通っていた友人がそんな時刻に



その場所を走っていたのか、は分からない。



ただ、友人の葬儀に参列し、出棺前に最後の別れをさせて貰った際、友人の



顔を見た俺は愕然としてしまった。



その顔は大きくひしゃげ、そしてフルフェイスのヘルメットを被っていたにも



拘わらず、両目は潰れ、歪んだ大きな口が開いたままになっていた。



ただの偶然・・・なのかもしれない。



しかし、それ以来、俺の友人は誰もその道を利用する者は居なくなった。



それが、例え昼間であったとしても・・・・。



  


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2018年11月10日

トンネルで待ち合わせ

これは友人から聞いた話である。



その時、彼は心霊スポットとして有名な、とあるトンネルに



向かっていた。



そのトンネルは既に、離れた所に新しいトンネルが出来ており、車の



通行は全くと言って良いほど無かった。



実は、その時、彼は1人の友人とそのトンネルで待ち合わせをしていた。



やはり、1人きりで心霊スポットと言われているトンネルに行く勇気



など無かったし、動画の撮影も兼ねていたから、友人を誘ったのだという。



そして、時間帯は昼間にした。



実は、そのトンネルには照明という物が無かったから、さすがに夜に



行くには怖すぎる。



それに、その時は昼間の外の明るさと、トンネルの中の暗さを対比



させて撮影したかったのだそうだ。



そして、トンネルに到着した彼は車をトンネルの入り口近くの



空きスペースに停めた。



そして、友達が到着するのを待っていたという。



しかし、待てど暮らせど、友人はなかなかやって来ない。



もしかして忘れてるのかな?と思った彼は友人に電話を掛けた。



しかし、何度かけても何故か電話は繋がらす・・・・。



そして、彼が到着してから1時間ほどが過ぎた頃、彼は友人が



来ないものと諦めた。



そこで、彼は1人でトンネルの入り口へと近づく。



トンネルの中は予想通り真っ暗で彼の恐怖心を煽った。



やっぱり今日は止めておこう・・・・。



そう思って車に引き返そうとした時、突然、トンネルの向こうから



おーい・・・・おーい・・・・。



という声が聞こえた。



彼はハッとして振り返ると、トンネルの向こう側の入り口に誰かが



立っていた。



トンネルの長さは100メートル以上あったので、細かい部分は



分からない。



ただ、その声は、どう考えても約束していた友人の声だった。



相変わらず、こちらに向かって手を振りながら



おーい・・・・おーい・・・



という声が聞こえてくる。



あいつ、もしかしてトンネルの反対側から来たのか?



そう思った彼は、トンネルの向こう側に立つ相手に向かって、



○○か~?と聞いた。



すると、その声は、



あ~、そうだよ。ごめん・・・遅くなって・・・・。



ところで、怖いからお前が、こっちに来てくれないか~?



と言ってくる。



しかし、怖いのは彼も同じだったから、彼は



お前こそ、早くこっちに来いよ!



こっち側の入り口で待ち合わせしたはずだぞ!



と返した。



すると、向こう側の友人は、



それなら、二人同時に進んで、真ん中で落ち合うのはどうだ~?



と言ってくる。



彼は、仕方なく、



分かったよ!



これから、そっちに向かうから、お前もスタートしろよ!



そう言うと、トンネルの中へと入っていった。



向こう側から、返事は無かったが、目視で確認すると、どうやら



友人も向こう側の入り口からこちらに向かってきている様だった。



トンネルの中は、とても寒く、10メートルも進むと、辺りは



完全に闇の中になる。



彼は持参した懐中電灯を取り出してスイッチを入れた。



大金をはたいて買った業務用の懐中電灯はかなり明るく、恐怖心も



少しは和らぐ。



相変わらず向こう側からは友人がこちらに向かって歩いている。



しかし、彼はその時、不思議な事に気が付いた。



懐中電灯を持っているからこそ、こうして足元を確認しながら



歩いていけるが、友人は懐中電灯すら点けていない。



そんな状態で、歩いてこられるものなのか?と。



彼は既に入り口から30メートルくらいは進んでおり、友人との距離は



後50メートルくらいしか無かった。



そして、彼は友人に声を掛けた。



こんな暗い中を明かりも無しに、よく歩けるもんだな?と。



しかし、友人は黙ってこちらに歩いてくる。



何かとても嫌な予感がしたという。



そして、その時、彼の背後から車が止まる音が聞こえた。



そして、間髪いれずに、



ごめん・・・遅くなって・・・・。



連絡しようと思って何度も電話掛けたんだけど繋がんなくて・・・・。



それは紛れもなく友人の声だった。



そして、彼はそこで当然、進むのを止めた。



恐怖で固まってしまったと言った方が正しいのかもしれない。



彼の頭の中には、



今、声を掛けてきたのは間違いなく友人だった。



だとしたら、前から歩いて来るのは一体誰なんだ?



そして、



そういえば、確かに、先ほどから違和感を感じていた。



友人は暗闇の中を無用心に歩いてこられる奴ではない。



そして、そんなに無口な奴では決してなかった。



そんな思いが頭の中で、ぐるぐると駆け巡っていた。



そして、次の瞬間、彼は、



うわぁ~



という大声を上げて、今歩いてきた入り口の方へと走り出していた。



トンネルの入り口では、友人が、



どうした?・・・・何があった?



と叫んでいる。



そして、その声に混じって、彼の背後からは、



タッタッタッ・・・・・・。



という何かが背後から追いかけてくるような足音が聞こえてくる。



ヤバイ!逃げろ!



彼は友人に叫んだ。



しかし、友人には何も見えていない様で、ポカンとした顔をしている。



彼はやっとの思いでトンネルから外に出ると、友人の元に駆け寄った。



後ろから誰かが追いかけてきてたんだ!



見えなかったか?



彼は友人にそう言った。



しかし、友人は、何も見ていないと言う。



そこで、彼は友人に撮影の準備をするように告げた。



そして、二人でカメラやライトを車から取り出していると、背後で



何かが動いた気配がした。



ハッとして二人が振り向くと、そこには、目の前にいる友人の顔に瓜二つの顔が



あった。



”顔があった”、と書いたのは、そっくりなのは顔だけで、首から下は、



黒い靄のようになっていたから・・・・。



うわぁ~



彼らはその場から走って逃げた。



車は、その場に置いたままだったが、そんな事を気にしている余裕は無かった。



そして、そこからしばらく走って振り返ると、そこには誰もいなかった。



彼らは恐る恐る、自分達の車の場所まで戻ると、車に乗ったまま、トンネルの



入り口までやって来た。



そして、前方をライトで照らす。



すると、向こう側のトンネルに誰かが立っており、



お~い・・・・お~い・・・・。



と大声で叫んでいた。



彼らはそのままバックして、各々の車に乗って、その場から急いで



走り去ったという。



そのトンネルで見たモノが一体何なのか、は分からないが、少なくとも



彼ら二人が一緒に見た、もう1人の友人の顔は、まるでコピーでも



したかのように、友人に瓜二つだったという。



ちなみに、友人が約束の時間に遅れたのも、そのトンネルに向かっている



途中、急に車が動かなくなってしまったということだった。



そして、何度も彼に電話を掛けたが、何故か、圏外表示になって



つながらなかったという事だ。



そして、どうして、ソレが友人の顔をして、彼の前に現れたのか・・・。



今でも分からないという事だ。
  


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2018年11月10日

無視し続ける男

彼の特技は絶対に相手に視線を合わせない事だそうだ。



そんな彼は常に霊というものを無視する事に徹している。



霊感が無い訳ではない。



むしろ、普通の人よりも霊感はかなり強い方だと思う。



では、何故、霊を無視するのか?



それは、彼の考え方に依るものらしい。



つまり、霊というものは決して物理的攻撃が出来る訳ではない。



だから、目を合わせない。



無視し続けてさえいれば安全だ・・・・。



そういう考えらしい。



まあ、確かに彼の考え方にも一理ある。


(ただ、実際に物理的な攻撃をしてくるモノも確かに存在するのだが・・・・。)



特に彼の場合、よく霊を引き寄せてしまう事も多いらしく、その経験



から、彼なりに考えだしたのが、霊が現れても徹底的に無視し続ける、



という事なのかもしれない。



そんな彼は、よく金縛りにあう。



最初の頃は思わず目を開けてしまったりして、怖い思いをいた事も



あるらしいが、最近では完全に寝たフリに徹している。



確かに、自分の体の上に誰かが乗っているのが分かったり、自分の



足を掴んで引っ張られる様な感覚があるらしいが、それも、為すがまま



になっていると、やがて収まるのだという。



執拗に自分が寝ている周りを歩き回ったり、耳元で囁きかけたりも



してくるらしいが、それも寝がえりを打ったりする動作で難なくクリア



出来るのだという。



外出した際にも、よく霊を見てしまう事があるらしい。



最初は思わず目が合ってしまったりして、後を憑いてこられる事もあったらしいが、



最近では、すぐに視線を逸らす癖がしっかりと身に付き、余程でないと



危険な目には遭わないという事だ。



そんな彼がある日曜日の午後、とるあ用事を済ませ、帰宅の途についていた時の事。



いつも使う国道は渋滞で全く動く様子がなかったので、彼は脇道に入り、



裏通りを走る事にした。



その道は裏通りとは言っても、道幅も広く、人の往来もかなり在るという見通しの良い



道。



一本、道を入るだけでこんなに空いてるのに、渋滞になんか巻き込まれていられない、



と思いつつ、車を快調に走らせていた。



すると、前方の歩道に誰かが車に向かって手をあげていた。



それが男性だったら気にも留めなかっただろう・・・。



しかし、そこに立っていたのは女性であり、スタイルもよくそして



顔もまさに彼の好みにピッタリの美人だったという。



彼は思わずブレーキを少しだけ踏んでスピードを落とした。



まさか、そんな綺麗な女性が自分に対して手を挙げる筈は無い、と思って



いたが、そんな美人は滅多に見られるものではなかったから、しっかりと



顔を見てやろう、と思ったという。



しかし、車が近づいていくと、どうやら、その女性は彼に対して手を挙げて



いるのだと分かった。



彼は不思議な気持ちで車を停めて、助手席の窓を開けて、その女性に声を



かけた。



どうかしましたか?と。



すると、その女性は、



すみません、何か急に酷いめまいに襲われてしまって・・・。



タクシーを拾って病院に行こうと思ってるんですが、タクシーが1台も



来なくて・・・・。



それで、駄目もとで、貴方の車に乗せて行ってもらえないか、と



思いまして・・・。



と言ってきた。



どうして酷いめまいがしているのに、平然と立って手を挙げていたのか?



という疑問は彼には浮かばなかった。



何しろ、彼の好みにピッタリの女性だったのだから・・・。



彼は二つ返事で、



良いですよ・・・・。



どうぞ、乗ってください。



病院まで送らせて貰いますから!



と返したという。



すると、その女性は、本当にすみません、と言いながら彼の車の助手席に



乗ったという。



彼は、乗るとしてもきっと後部座席だろう、と思っていたから、とても嬉しかった



という。



まるで、こんな綺麗な女性とドライブデートしてるみたいじゃないか、と喜び、



車を発進させた。



女性が告げた病院はそれほど遠くはなかった。



だから、彼は少しでも長くその女性を助手席に乗せて走っていたかったので、



出来るだけスピードを出さないように走った。



すみません…本当に助かりました・・・・。



女性にそう言われるて、彼も悪い気はしなかった。



いや、むしろ、これを機会に、この女性と付き合えたりしたら最高だろうな、



と思っていたほどだった。



だが、彼が思っていたよりも案外早く、女性が指定した病院が見えてきた。



その時、その女性が突然、



あの・・・すみません。



ちょっと急いで貰えますか?



と言ってきた。



彼は、



もう目の前なのに、どうして?



と思ったらしいが、その女性の言うとおり、車の速度を上げた。



その時、突然、助手席から、



視えてるし、聞こえてるんだね・・・・やっぱり・・・・。



そう聞こえてという。



先ほどまでの女性とは違う野太い声だったという。



思わず、助手席の方を見た彼の眼には、ボロボロに汚れた服を着た顔面の



割れた女が助手席に座り、こちらを見ているのが映った。



彼は固まった。



そして、その女の手が、彼が持つハンドルまで手を伸ばすと、一気に



ハンドルを助手席側に大きく切った。



彼の眼にはそれがまるでスローモーションのように映った。



そして、車が病院の敷地の壁に激突した瞬間、その女は助手席から消えたという。



彼は、そのまま、その病院に事故による怪我で入院した。



そして、事故による怪我とは別に、ずっと高熱にうなされ続ける事になった。



結局、彼はそのまま2か月以上、入院してようやく退院出来た。



相変わらず、彼は霊を無視し続けているが、道端で女性を見つける事が



あっても、それ以来、決して停まらない様にしているという事だ。
  


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2018年11月10日

彼女が遺したもの

これはAさんから聞いた話である。



Aさんの友達に幼稚園の保母さんをしている女性がいた。



同じ小学校、そして中学、そして高校を卒業して、同じ大学に入った。



しかし、それまでは彼女の事は意識した事が無く、初めて話したのは



大学に入ってからだという。



そして、話してみると、何故か2人は不思議と馬が合ったのだという。



どちらかといえば、冷たい印象のAさんだが、何故か彼女の前では



素直になれたという。



彼女自身は、おっとりしたタイプで誰にでも優しく接して、決して他人を



罵倒したりはしない。



まさに、Aさんとは真逆の人間性といえるのかもしれない。



それでも、二人はいつも一緒に居たのだという。



お互いが決して依存せず、それでいて繋がりは強い。



まさに理想的な関係かもしれない。



彼女とAさんは、大学でもかなり成績は優秀だったらしい。



スポーツをしても芸術面でも、そして勉強でも二人はまさに好敵手だった



らしい。



そして、好敵手といえるのはそれだけではなかった。



実は、その彼女というのが、霊感、いや飛び抜けた霊能力を持っていた



のだという。



それこそ、Aさんでも一目置くほどの霊能力を・・・・。



それは、Aさんもそうだったように、彼女も家系全体に霊感や霊能力に長けた



女性が多かったらしく、そんな能力があるという事自体、何も不自然に



思ってはいなかったようだ。



そして、やはり彼女もAさんと同じように永い家系の中でも、ずば抜けて



霊能力が強かった。



Aさんは、それをこう表現していた。



私達はまさに盾(たて)と矛(ほこ)の関係でしたね、と。



私が霊的な攻撃に長けているのとは逆に、彼女は防御に長けていたんです。



彼女の真似は私には出来ないし、私の真似も彼女には出来ない。



どちらが強いかなんて馬鹿な事を試した事は無いですけど、私と彼女が



タッグを組めば、それはもう怖いもの無しでしたね、と。



あのAさんに、そこまで言わせるのだから、きっと凄い能力の持ち主だった



に違いない。



勿論、大学を卒業してから、彼女は幼稚園の保母さんを目指して改めて



勉強を始め、Aさんは、そのまま教師の道に進んだ。



そして、お互いが別々の道を進むようになってからもAさんと彼女には



親交が続いていたようだ。



その後、Aさんは霊的な修行に励み、力をどんどんと増していき、彼女は



結婚して幸せな家庭を持った。



そして、すぐに彼女は妊娠した。



ただ、妊娠というものは女性の体質をも変えてしまうものなのかもしれない。



それまでは、絶対的な護りの力を有していた彼女の霊能力がどんどん弱まって



いった。



その原因が何なのか、全く分からなかった。



それでも、Aさんは、自分の時間を全て彼女に掛けるようにして、必死に彼女を



護った。



Aさんは言った。



それまで、付け入る隙を全く見せなかった彼女だから、その能力が弱まっていく



という事は、それまでに近寄る事が出来なかった悪霊たちが一斉に彼女を



ターゲットにしてしまうのだ、と。



そして、Aさんの言うとおり、彼女の体は悪霊に浸食され、そして



蝕まれていく。



それはAさんの力をもってしても防ぎようがない程に・・・・。



それまでは決して怪奇現象など起こった事も無い病院が明らかな心霊スポットと



化してしまった。



昼夜問わず、霊を目撃する者が続出し、夜ともなれば、当たり前の様に廊下を



歩いているだけで人外のモノにすれ違った。



それが原因なのかは分からないが、窓から飛び降りて自殺する事件まで起きてしまう。



そして、彼女の周りには、いつも何かがやって来たという。



それは看護師の姿をしている事もあれば、医師の姿、患者の姿をしている事もあった。



また、カーテンを閉めている窓からは、一晩中、ノックをする音が聞こえてきた。



だから、Aさんは、彼女の為に、ずっと病院に泊まり込むようになった。



しかし、それでも怪異は収まるどころか増え続ける一方だった。



その時、Aさんは自分の無力さを痛感したという。



いつも、悪霊を攻撃し撃退する事ばかりに専念し、防御というものを



学んでこなかった自分の愚かさを責めた。



そして、自分は彼女がいてこそ、初めて力を振るえていたのだと実感した。



彼女の体はどんどんと弱っていき、出産すら出来ないのではないか、という



状態になった。



しかし、彼女は頑として、子供を産むという選択をした。



それは、自分の命と引き換えになってしまう事なのかもしれないというのに。



そして、予定日より早く彼女は分娩室に入った。



かなり早すぎる時期ではあったが、彼女は医師たちを説得して出産に臨んだ。



そして、Aさんに、こう頼んだという。



無事に生まれてきたら、その子を護ってね、と。



もしかしたら、彼女自身が自分の死期を予感していたのかもしれない。



その言葉の通り、彼女はそれから間もなくして亡くなった。



無事に出産を終えると同時に・・・・。



その時、Aさんは、自分に言い聞かせたという。



これからは何があっても、ずっと彼女の子の傍を離れない・・・。



そうしなければ、生まれてきた子供まで悪霊たちに連れて行かれてしまう、と。



しかし、初めて、彼女の子を見た時、Aさんは、それが要らぬ心配だった



と気付いたという。



とにかく、生まれて間もない赤ちゃんが、それこそ凄まじい程の霊気を



漂わせていた。



悪霊など、全く寄せ付けない程の・・・・。



それはきっと彼女が自分の子供に託した力だと思うんですよ。



自分の死期を悟った彼女が、自分の子供に残してあげられる最大の遺産。



だから、彼女の子供は私なんかが護ってあげる必要なんて無いんです。



Aさんは、嬉しそうにそう言っていた。



その時の子供は今は父親と東京に住んでいるという。



だから、東京は何があっても大丈夫です!



だって、あの彼女の子がいるんですから!



そう言っていたのが印象に残っている。
  


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2018年11月10日

廃線路を走るモノ

これは知人から聞いた話。



知人とは仕事上の付き合いなのだが、何かと気が合って、たまに



一緒に飲みに行ったりしている。



そして、彼は能登に住んでいる。



能登は残念ながら交通の便が良いとは言えない。



車があれば全く問題無いのだが、バスや電車で行こうとするとその不便さには



閉口してしまう。



彼自身は、当然車を所有しているから問題無いのだが、彼の家は七尾市の



郊外に新築で購入したものらしく、喫煙家の彼としてはなかなか不便な



思いをしているそうだ。



それはやはり、家族の手前、家の中では煙草を吸う事が出来ないということ。



もっとも、そんな事はよくある話なのだが・・・。



ただ、彼の状況が少し他の人と違うのは、家のすぐ横に廃線になった列車の



線路がいまだに残されているということである。



確かに、能登に行くと、いまだにはっきりと線路が残されている場所が



多いのは以前から知っていた。



元々、七尾市で生まれ育った彼にとって、それまではそんな事など気にした



事は無かったという。



しかし、廃止された線路の近くに住んでみると、やはり少々不思議な事が



起こるのだという。



彼はもしかしたら霊感が強いのかもしれないが、よくベランダに出て



煙草を吸っているとかなり向こうの線路を列車が通っているのを何度も目撃



した事があるという。



勿論、それは夜間に限っての事なのだが、それでも、どこか頼りない明かりを



残しながら列車が走り過ぎていくのを見ると、まるで自分が別の世界にでも



紛れ込んでしまったかのように感じて恐ろしくなる。



そして、その話を家族にしても、誰も彼の話を信じてはくれなかった。



ただ、過去に何度か寝ている時、彼は振動の様なものを感じて目を開けると、



家の近くの線路を走っていく列車の音と振動がはっきりと分かったという。



そして、思わず蒲団から起き上がった彼が見たのは、蒲団に包まりながら



恐ろしそうな顔で目を開けている妻の顔だった。



その時、彼は感じた。



妻も列車の話を信じてはくれないが、間違いなく、その時は列車が通り過ぎていく



音と振動をはっきりと感じていたのだ、と。



それからは、少しだけ気が楽になったそうだが、一度だけ本当に恐ろしい体験を



したのだという。



そして、それはこんな内容だった。



その日、彼は仕事から帰宅し、いつもの様に食事と風呂に入って、いつもより



早い時間に床についた。



特別疲れていたという訳ではなかったが、何か気持ちが落ち着かなかったという。



そして、蒲団に入り目をつぶっていたがなかなか寝付けない。



それでも、2時間ほど布団の中でぼんやりと過ごしていると知らないうちに



寝てしまったそうだ。



そして、何故か真夜中に目が覚めた。



時計を見ると、午前2時半くらいだった。



彼は一度寝ると朝まで起きないというのが、自慢だったらしいのだが、



その時には何故かはっきりと目が覚めてしまったという。



妻は隣でいつものように寝ていた。



彼は、仕方なく煙草を持つと、そのまま寝室の横にあるベランダに行った。



勿論、煙草を吸う為に・・・。



ベランダに出ると、さすがに車が1台も走っていなかった。



それにしても、秋だというのに虫の音が全く聞こえてこない。



虫も寝てるのかな・・・・。



そんな事を考えながら彼は煙草に火を点けた。



肺の奥まで煙を吸い込んで、そして思いっきり吐き出す。



まさに至福の瞬間だった。



煙草の白い煙が秋の冷たい空気に溶けていく。



そして、その時、彼はずっと遥か向こうを走っていく列車の明かりの様なものを



見つけた。



もう、この地域には列車など走ってはいない筈だった。



いつもは気持ち悪く感じる、正体不明の列車も、その時の彼には、どこか



懐かしいものに感じられた。



あの列車は何処から来て、何処まで行くんだろうか・・・・・。



そんな事をぼんやりと考えながら彼は、その遠ざかる明かりを見ながら煙草を



吸い続けた。



その時、突然、彼は何かの視線を感じて、その場に固まった。



誰かに見られている・・・・。



しかも、一人や二人ではなく、もっと大勢に・・・・。



彼は恐る恐る視線を落とすと、そこには真っ黒な列車が線路の上で停車していた。



1度、視線をその列車に向けてしまうと、もうそこから視線を外す事は



出来なかった。



怖い筈なのに、どうしてもその列車を見てしまう自分がいた。



すると、列車の中には沢山の人が乗っており、乗客の殆どが彼を



凝視していた。



睨んでいるというのではなく、ただ、じっと見つめている様に見えた。



羨ましそうな眼・・・。



そんな表現がピッタリくる顔だった。



そして、列車に乗っているそれらの乗客は皆、同じ服装をしていたという。



藁の袋に穴を開けて着ている様な服装。



それが、まるで囚人服の様に見えて、彼は更に恐怖した。



それでも視線はどうしても外す事は出来なかった。



そして、そうやって列車の車内を見ているうちに、彼はある事に気付いた。



それは、列車の乗客の中に、周りのモノ達とは様子が違う人間がいる、



という事。



他の乗客たちはまるで生気の無い、死人の様な顔をしていたのだが、その中の



ごく少数の人間は、まるでその列車から逃げ出そうともがいている様に



見えた。



彼はとっくに煙草を吸い終えて、火が消えた煙草をただ口にくわえている



だけだったが、彼にはその煙草を口から離す事も、そして体を動かす事も



出来なかった。



そのまま、そんな時間がどれくらい過ぎただろうか・・・。



突然、その列車は静かにゆっくりと動き出した。



離れていく列車の窓からは沢山の顔がいつまでも彼の顔を見つめていた。



そして、もう列車の窓すら分からない位の距離まで離れた所で彼の体は



金縛りが解かれたかのように自由になった。



しかし、彼は体の力が抜けてしまい、そのまま茫然とその列車が見えなくなる



まで、見つめ続けていたという。



そして、そのまま彼は寝室に戻り布団に入ったが、朝まで一睡も出来なかった。



その時の恐怖で頭の中が混乱していた。



そして、無事に朝になったが、彼はその夜見た列車の事は家族には一切



喋らなかった。



別に信じてくれないから、という理由ではなかった。



何故か、その列車の事は、他の人に話してはいけないのだと感じたからだった。



ただ、その事があってから、彼は何度か同じような体験をした。



真夜中に目が覚めて、ベランダで煙草を吸おうと思い窓に近づいた時、何か違和感を



感じてカーテンの蔭から外を見ると、そこにはあの列車が停まっていた。



同じように生気の無い人達を乗せて、そして逃げ出そうと足掻いている



人を乗せて・・・・・。



そんな事が数回続いてから、彼はもう2度とベランダで煙草を吸うのを



辞めて、今では台所の換気扇の前だけが彼の喫煙場所になっている。



そして、彼は最後にこう言っていた。



きっとあの列車は俺の事を迎えに来ているんだと思う。



だから、今度またベランダで煙草を吸っていて、あの列車に出会ってしまったら、



その時には今度こそ、あの列車に連れて行かれてしまうような気がする、と。



そして、あの時見たように自分も、その列車から必死で逃げだそうと足掻いたまま



何処かへ連れて行かれるんだろうな、と。
  


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2018年11月10日

激流

これは友人から聞いた話。



彼は山や川などの動画を撮影するのが趣味だ。



しかも晴天だけではなく大雨や雷雨の中での撮影がとても好きなのだという。



人の力など全く及ばない程の凄まじい迫力を撮影していると、静かな時に



見せる表情とは違った自然本来の姿が見えるからだという。



自然とは本来、畏敬の存在であり、決して優しいばかりではない、というのが



彼がいつも言っている事。



そして、それはもしかしたら、以前、彼が撮影したこんな動画のせいなのかも



しれない。



その日は数日前から激しい雨が降り続いており、彼は増水し激しい流れに



なった大きな川を撮影しに行った。



良い場所を探して山の中を車で移動していた彼の前に、突然、川の中に



取り残された人が必死に流れに逆らいながら立ち続ける姿が現れた。



それは、どうやら前日からキャンプに来ていた二人組の男性であり、



既に現場には通報を受けたレスキューと警察が到着していたという。



そして、必死に救助活動を続けるレスキュー隊員達だったが、二人の男性は



なかなかその場から救い出される事が出来なかった。



様々な方法で二人を助けようと懸命に動き回るレスキュー隊員の甲斐も無く、



何度やっても、二人の男性を川から救い出す事が出来ない。



川の水面もどんどんと上昇していき、彼が見ているうちに、二人の男性の



胸元まで届きだした。



そのうち、男性2人は動くのを止めて川の流れの中にじっと立ち尽くすだけで



精一杯になった。



彼は必死にカメラのファインダーを覗きながらも、心の中で



頑張れ!・・・・頑張れ!



と、二人を応援し続けた。



彼は少し小高い丘の上から、その様子を撮影していたが、其処から見ていると



まるで二人の男性が川の中で何かを待っている様にも見えたという。



そんな筈はない、と思い、カメラをズームして二人の表情を見ていると、



諦めと、そして何かに陶酔している様な顔に見えた。



こんな状況でどうしてあんな表情が出来るんだろう?



彼はそう思いながら、ファインダーを覗いていたが、ある瞬間、二人男性が



少し笑ったような顔になったのだという。



そして、上流を見つめる二人。



彼も思わず、彼らが立ち尽くしている川の少し上流をカメラで追った。



え?



どうして?



彼はそう思ったという。



川の中を大きな着物のようなものが流れて来ていた。



それは、激流の中をまるで優雅に舞うかのように、川の中をヒラヒラと



流れてくる。



その場にいた全員の動きが止まった。



だから、彼はきっとレスキュー隊員や警察にも、その着物のようなものが



視えているのだと思った。



どうして、あんな着物が川の中を流れて来るんだ?



彼はそう思ってじっと、その着物をカメラで追っていたが、どうやらそれは



着物ではなかった。



着物を着た誰がが川の中を泳いでいる。



しかも、激流の中、ゆっくりと、そして確実にその着物を着たモノは、



彼ら2人の方へとユラユラと近づいていく。



女に見えた。



着物を着て優雅に舞っている女の姿に見えた。



少なくとも、彼の眼には・・・・。



だから、彼は、その姿を茫然とカメラの中に追った。



そして、それは彼がカメラを通して見ている前で、ゆっく撮り彼らに近づき、



次の瞬間、彼ら2人を水中に引っ張り込んだ。



嬉しそうに笑う女の顔。



そして、観念し絶望した様な2人の男性の顔。



二人は声を上げる暇も無く、一気に水中へと消えていき、そしてその着物と



一緒に下流へと流されていった。



まさに一瞬の出来事だった。



ずっとカメラで二人を追っていた彼は、カメラを通して起こった事実に



恐怖し体が固まってしまったという。



そして、すぐに下流が捜索されたが、結局、二人の水死体はそれから



2週間程経った頃、海へと続く河口付近で発見されたという。



そして、実は俺もその時撮影したというビデオを見せて貰った事がある。



すると、そこには、彼が話してくれた通り、明らかに人間の女に見える何かが



はっきりと映っていた。



激流に飲み込まれる男性の顔とは対照的に、本当に嬉しそうな顔をした女が・・・。



きっと、あの二人は何か川に悪さをした為に、連れて行かれたに違いない・・・。



山の主である、あの女に・・・・・。



彼はそうこわばった顔で、言っていた。



そして、これは後日談なのだが、その後、数ヶ月後に改めてそのビデオを



友人に頼まれて見せたところ、ビデオの映像からは、すっかりその女の



姿が消えてしまっていたそうだ。

それは、まるで、不自然な特撮映像の様に見えたという。



やはり、その姿を映像に残す事は禁忌なのかもしれない。
  


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2018年11月10日

危険なバイト

友人に危険なバイトばかり好んでやっている男がいる。



それは自殺や殺人が起こったいわくつきのアパートやマンションに



一定期間住み込むというものだったり、立ち退きを巡って争っている



場所に住みこんでヤ○ザさんと対峙したり、また何日間も泊りがけで



薬の治験のドナーになったり、と枚挙に暇が無いほどだ。



では、何故そんなに危険なバイトばかりを選んでいるのかといえば、



勿論、バイト料が破格なのだという。



実際、そんなバイトでかなり危険な目に遭った事も一度や二度ではないが、



それでもほんの数日間で、下手をすれば数か月分のバイト料が稼げる



危険なバイトというのは、彼の生活には無くてはならないモノになってしまっていた。



そんな彼がかつて経験した中で一番怖かったという話を聞かせてくれた。



それが、これから書く話になる。



ある時、彼の元に奇妙なバイトの話が舞い込んできた。



そこは係争地でもなく、心霊スポットでもなく、ただの古い洋館。



その洋館自体は既に空家になっているらしく、其処へ行って建物の窓を



全て開けてくるというだけ。



しもか、其処に行く人数には制限はなく何人で行っても構わない、という



ものだった。



それでいて、そのバイト料は破格。



彼はすぐにそのバイトに飛びついたという。



しかし、バイト料を独り占めしたい彼は、単独でそのバイトに出向いた。



彼も一瞬、嫌な予感はしたらしい。



なにしろバイト料が破格過ぎる。



しかし、そのバイトの依頼主が大手観光業者だったこともあり、バイト料自体は



確実に手に入る事。



そして、彼自身が霊感というものがまるで無く、たとえその洋館が心霊スポットだったと



しても、きっと自分には何も感じられず見る事も無いだろう、という確信が



あったのだという。



しかし、彼もわざわざ危険を楽しむ事はしない。



だから、夜を避け、ある日の午前中にその洋館に向かった。



その洋館は、街から少し離れた小高い丘の上にあった。



彼はその洋館の前に車を停めた。



しかし、その場所にはバイトの依頼主である大手観光業者も、仲介業者も



誰一人として来てはいなかった。



こんなんじゃ、本当にバイト料がもらえるんだろうか?



だいたい、俺が窓を開けて、そして後からそれを確認しにくるとしても、



本当に俺が窓を開けたのだと信用して貰えるのだろうか?



本当にいい加減だな・・・・。



そう思ったという。



しかし、そのバイトの仲介をしてくれた者は、いつも彼に仕事を回してくれ、



そして、その支払いに関しても信用できる相手だった。



だから、彼はそのまま洋館へと入っていく事にした。



事前に渡されていた大きなカギで、玄関の大きな扉の鍵を開けた。



とても重たいそのドアは、ギィーッと嫌な音を立ててゆっくりと開いた。



建物の中からは、かび臭い匂いがした。



洋館には電気の供給が止められている事を自然に聞かされていた彼は



背中のリュックから大きな携帯用のライトを取り出して、それを点けた。



ライトが建物の中を照らしだすと、そこには視界不良になる程の埃が



舞っているのが確認できた。



彼はすかさず、業務用のマスクを取り出すと、それを口にあてがった。



玄関のドアは万が一の為に開けたままにしておいた。



そして、ゆっくりと歩き出した。



歩を進める度に床からは大量の埃が舞いあがった。



彼は思った。



明かりも無く、埃で視界も確保できない・・・。



こんな危険な状態だから、きっと高価なバイト料が支払われるんだろうな、と。



1階は洋館らしく、応接セットが置かれ、シャンデリアが天井から下がる



広間の様になっていた。



彼はその広間の窓から順に開けていこうとした。



しかし、窓は異常に固く締められており、暗闇なのもあってか、なかなか



要領を得なかった。



そこで、彼は2階から窓を開けていく事にした。



2階なら少しは視界も確保できるかもしれない、と。



そして、絨毯が敷き詰められた階段をゆっくりと上っていく。



それにしても、こんな古い洋館の窓を開けるのがそんなに重要な事なのか?



そもそも、依頼主はこの洋館をどうしようというのか?



そんな事を考えながら階段を上っていくとちょうど階段の真ん中辺りまでのぼった時、



突然、バターンという大きな音がした。



彼は固まった。



そして、ゆっくりと振り返ると、やはり玄関のあの大きな扉が閉まっていた。



あんな重く大きなドアが勝手に閉まるものなのか?



彼はそう考えたが、それ以上に深刻な問題があった。



それは、建物の中が完全に真っ暗になってしまったという事だった。



右も左も分からない程の暗闇の中に彼が持っているライトの光だけが



伸びていた。



彼はそのままその洋館から逃げ出したくなっていたが、やはりお金の力



というのは凄いものだ。



彼の恐怖を一瞬にして払拭してしまう。



彼はそのまま階段を上っていった。



いざとなれば、階段を駆け下りてあのドアから飛び出せばいいだけ・・・。



自分にそう言い聞かせながら・・・・・。



階段をのぼりきると、そこには長い廊下が真っ直ぐに伸びていた。



そして、その一番奥に窓らしきものが見えた。



彼はゆっくりと歩を進める。



しかし、その刹那、ライトが突然消えてしまう。



うわっ!



彼は思わず声を出してしまった。



彼はライトのスイッチを何度も押したが全く反応が無い。



どうして、こんな時に・・・・。



辺りは完全に漆黒の闇となり視界は全く効かない。



これでは、前にも巣城にも進める筈が無かった。



だから、彼は必死に恐怖と闘いながら、自分の目が暗闇に慣れてくるのを待った。



視界が全く駄目になると不思議なもので人間というのは聴覚が異常に敏感に



なるらしい。



彼が暗闇の中で必死に我慢していると、何処からか囁くような声や、何かが



床の上を這っている様な音が聞こえてきた。



彼は必死になって自分に言い聞かせた。



気のせいだ・・・・・どうせおれには霊感なんか無いんだから、と。



すると、彼の目の前で信じられない事が起こった。



暗闇の中で、ゆっくりとドアが開き、そして、その部屋の中から漏れてくる



弱い明かりが廊下をぼんやりと照らしたのだ。



彼は背中に冷たい汗が流れるのを感じた。



この洋館は空家になっているんじゃないのか?



確かに依頼された時も、そう説明されていた。



だとしたら、今、ドアを開けたのは誰なんだ?



そして、この洋館で何をしているというのか?



考えれば考える程答えは見つからなかった。



彼はしばらくその場に茫然と立ち尽くしていたがそれでも明かりが見えているのが



その部屋だけなのだとしたら、そちらに行ってみるしかない、と



覚悟を決めた。



視界が見えない中で唯一ぼんやりと浮かび上がったドアから漏れる部屋の明かり



を頼りにして、少しずつゆっくりと彼は進んだ。



誰かいるのかもしれない・・・・。



そんな気持ちが彼に出来るだけ音をたてないような歩き方をさせていた。



彼は何かにつまずきそうになりながらも、ようやくその部屋のドアまで



辿り着く。



部屋の中からはまるでレコードでも聴いているかのようなクラシック音楽が



聞こえてきた。



やっぱり誰かいるんだ・・・・・。



彼はドアのノブに手を掛けると、そのままゆっくりと、そして少しだけ



ドアを開いた。



部屋の中は、ぼんやりとした明りに包まれており、その中に一つだけ木製の



リクライニングチェアーが置かれており、そして、その椅子には誰かが



背中を向けて座っていた。



彼はまるで吸い寄せられるように、部屋の中に体を半分だけ入れると



あの・・・・すみません・・・・。



と声を掛けた。



しかし、反応が無かった。



彼は、ゆっくりと部屋の中に入ると、その椅子に向かってフラフラと



近づいていく。



そして、その椅子までちょうど2メートル位の距離まで近づいた時、突然、



リクライニングチェアーがくるりとこちらを向いた。



彼は絶叫していた。



それまで出した事の無いほどの大声で。



喉が潰れるのではないか、と思える程の絶叫で彼は叫び続けた。



その椅子には人間らしきものが座っていた。



最初は老人に見えたがすぐにそれは間違いだと気付いた。



まるでミイラのようにしわがれた女が、だらりと在り得ない角度まで首を



横に曲げながら彼を見て笑った。



まるで獲物がようやくやって来たとでも言わんばかりのギラギラした、そして



殺人鬼の様な眼で、それは間違いなく笑っていた。



そして、次の瞬間、その女の口が開き、何かを言おうとした。



と、その瞬間、彼の体は弾かれた様にその場から走りだした。



もう視界がどうこうと言っていられる状況ではなかった。



彼は自分を鼓舞する為なのか、うおーっと大きな声を出しながらドアを



飛び出し廊下へと転がり出る。



先ほどまで一切の視界が確保できなかった廊下がぼんやりと明るく



なっているように思えた。



そして、それと同時に彼は見てしまう。



廊下の両端に、立っている男女の姿を・・・。



その男女は、まるで、その洋館に仕えている使用人のように、真っ黒な服



を着こみ、まっすぐに立っている。



ただし、その顔は、腐乱したかのように、所々が緑色に変色しており、



その眼だけが彼の動きを追う様に動いていた。



彼は急いで起き上がると、そのまま階段めがけて走った。



怖かったが、それ以上に助かりたい気持ちが強かった。



廊下に並んだ男女は階段にも並んでおり、彼はその間を通り抜けて1階



へと駆け降りた。



そして、玄関のドアに向かって必死に走った。



途中、何度か転んだが、すぐに立ち上がりまた走り出した。



それくらいに命の危険を感じていた。



とにかく、この洋館から出なければ・・・・。



彼の頭の中にはそれしかなかった。



玄関のドアまで辿りついた彼はドアノブを掴んで力いっぱい回した。



しかし、ドアノブは全く動かない。



まるで何かで固められたかのようにびくともしなかった。



くそ!・・・・くそ!くそ!・・・・・。



彼は怒鳴るようにして渾身の力でドアノブを回す。



しかし、やはりドアノブは1ミリも動かなかった。



こんな事をしていたら捕まってしまう・・・・。



いや、殺されてしまうかもしれない・・・・。



そう考えると、彼は心臓が破裂しそうなほど早く波打っているのが分かった。



ここが駄目なら、他に脱出出来るところは?



彼は必死に考えた。



そして、先ほど広間の窓を開けようとした時、窓こそ開かなかったが、その造り



自体はそれほど頑丈なものには見えなかった事を思い出す。



そして、彼は窓の方へ移動しようと振り返った。



心臓が止まりそうになった。



其処には彼の目の前に立ち並ぶ様に、先ほどの女と、そして廊下に立っていた



男女が彼の顔を覗き込んでいた。



彼は再び絶叫しそうになったが、それよりも先に、彼の意識は一気に



失われた。



そして、それから、どれくらいの時間が経過したのだろう。



彼は暗闇の中で目を覚ました。



彼は何が起こったのかという事も考えようともせず、そのままドアノブに



飛びついた。



ドアノブは軽く回った。



彼は重い扉を一気に開けると、そのまま洋館の外に出た。



そして、急いで乗って来た車に乗り込むと、エンジンをかけ、



中からドアをロックした。



考える余裕など無かった。



早くこの場から逃げなければ・・・・。



それだけを考えていた。



すると、突然、前方がぼうっと明るくなった。



彼は思わずその明かりを見た。



そこには、窓から彼を見つめる無数の朽ち果てた顔があった。



どの顔も気持ち悪いくらいの満面の笑みを浮かべていた。



彼は、急いで車を発進させるとそのままその場から走り去った。



しかし、恐怖のあまりスピードを出し過ぎていたのかもしれない。



丘を下っている途中、ガードレールを突き破って、そのまま崖の下まで



車は落ちて行った。



彼は、その後、大きな音に気付いた近くの住民によって警察に連絡され、



そして、数時間後に救助されたが、体にはかなりの大怪我をしていた。



ただ、医者によると、事故による怪我とは到底思えない不可解な傷が体中に



付いていたという。



まるで、何か鋭利なもので体中をなぞられたように深い1本線の傷が



体中を埋め尽くしていたということだった。



彼は結局、バイト先から何故か慰謝料として、満額ではなかったが、かなりの



金額の見舞金をもらった。



そのせいか、彼は退院した後も、いまだに危険なバイトを続けている。



そして、体の怪我は治ったが、何故か体に付けられた1本線のの深く太い



傷跡だけはいつまで経っても消えないそうだ。



まるで、何かの目印の様に・・・・。
  


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2018年11月10日

名前をつけるということ

愛着があるものには、とかく名前を付けたがる人が多い。



ペットもそうだろうと、車やバイクにも名前を付けたりする。



そうする事でより一層、愛着が深まるのだとしたら、それは



決して悪い事ではないのだろう。



しかし、人の形をしたもの・・・・。



つまり人形などに名前を付ける場合は、それなりの覚悟をした方が



良いのかもしれない。



今回はそういう話である。



そして、これは俺の知人が体験した話である。



彼は趣味で石を収集している。



休みの日になると、山や河原に出掛けては珍しい模様の石を探す。



彼は、珍しい石の種類に興味がある訳ではなく、石についた独特の変わった



模様が好きなのだという。



その石にどうやって、そんな模様がついたのか、と思いを巡らせていると



時間を忘れる程楽しいらしい。



そんな彼がある日、川原で珍しい模様の石を見つけた。



その模様はどの角度から見ても、人間の顔、それも女性の顔のように見えた。



彼は嬉しくなってその石を家へと持ち帰ると、収集した石を入れておく



標本ケースの中に大切にしまった。



そして、彼は余程嬉しかったのか、友人達に連絡をし、その石を見せて回った。



勿論、その中には俺も居たのだが、正直、その石に浮かび上がった顔のような



模様というのは、~の様に見える、というレベルではなく、まさに女性の顔に



しか見えないという位、はっきりと石の上に若い女性の顔が浮かび上がっていた。



だから、その時、俺は彼に進言した。



この石は、持っていてはいけない類の石かもしれない・・・。



だから、出来るなら、元在った場所に返して方が良い、と。



そして、他の友人達も、その石を見ると皆、気味悪がったらしく、彼に



こんな石は早く捨てたほうが良い、と忠告したのだという。



しかし、彼のその石に対する執着はとても強かったらしい。



いや、友人達から批判された事で却って、彼の気持ちに拍車をかけてしまった



のかもしれない。



彼はある日、その石に名前をつけた。



あえて、名前は伏せておくが、彼にとってはとても大切な存在だった祖母と



同じ名前だった。



そして、その石を標本ケースにはいれず、常に肌身離さず持ち歩く様に



なった。



革製の高価な袋に入れて、愛用のセカンドバッグの中に入れて・・・。



その頃、彼は言っていた。



その石を持っていると、とても幸運が訪れるのだと。



何をやっても上手くいき、誰にも負ける気がしない。



やはり、この石が俺の元に来たのは間違いなく運命だったんだ!と。



確かにその頃の彼は仕事でも好成績が続き、会社でも昇進し、やる事為す事



全てが上手く行っていたのは事実だった。



だから、周りの友人達も、本当にその石が幸運の石なのだとしたら、それはそれで



素晴らしい事だ、と喜んでいた。



しかし、ある日、彼は車を運転している時、何処からか女性の声が聞こえたという。



車の外を見ても、そんな女性の姿など何処にも無かった。



更に、趣味の石集めに行く度に、何故か危険な目に遭う様になった。



そして、決定的だったのは、彼が彼女とドライブしている時、突然何処かから



”死ね”という声が聞こえ、そのまま彼の運転する車は彼の意志とは違う



方向に向かっていき、助手席からガードレールに激突した。



彼には怪我はなく、彼女だけが救急車で運ばれた。



命に別条はなかったが、それでも、かなりの重症だったという。



そして、不可思議な事はそれからも続いた。



彼が、病院へと彼女を見舞いに行こうとすると、必ずと言ってよいほど



車が故障して動かなくなった。



それでも、諦めず、タクシーで病院に向かおうとすると、今度はそのタクシーが



事故を起こしてしまう。



ドライバーの話では、彼が事故を起こした時と同じように、ハンドルが全く



効かなかったという。



さすがに彼も、これはおかしいと思い始める。



そして、ふと思い出したようにバッグの中に入れておいた石を取り出すと、



なんとその石には、以前とは比べ物にならない程、はっきりと、そして



細部にわたるまで明瞭な若い女性の顔が浮き出ていたという。



しかし、以前、石に浮かび上がっていたのは、無表情な顔だったのだが、



その時、彼が見た石には明らかに憎悪に満ちた女性の顔が浮かび上がっていたという。



それを見てしまうと、それまでの不可解な出来事が全てその石を持っているせい



なのではないか、という気持ちになってしまい、彼はその石を標本ケースではなく、



次回、石を収集しに行った時に、その場所に捨てる石ばかりを入れてある段ボール箱



の中に無造作に入れてしまったという。



そして、それから、しばらくして、彼も病院へと入院する事になった。



車を運転中、突然、対向車線から車が突っ込んできて、彼の車と正面衝突したのだ。



そして、その時、彼は一瞬、対向車の助手席にニタニタした笑みを



浮かべた若い女が座っているのを見た。



しかし、その後、警察から聞かされた話では、衝突してきた車には男性1人



しか乗っておらず、その男性も突然、ハンドルもブレーキも全く効かなく



なってしまい、そのまま彼の車に突っ込んでしまったと供述しているとの事



だった。



そこで、彼は俺に相談してきた。



病院へと見舞いに行った俺は、それまでに彼が体験した様々な不可思議な



出来事を詳しく話した。



そして、そのうえで、何とか出来ないものか?と相談してきたのだ。



勿論、俺はいつものAさんに相談した。



すると、Aさんは、



人の顔がはっきりと浮かび上がってる石を拾ってくるところが、本当に



馬鹿としか言えませんよね!



しかも、名前を付けた。



いいですか?



名前を付けるというのは、人であれ生き物であれ、そして物であっても、



名前を付けたものとの間には、間違いなく関係が出来てしまうんです。



契約とか、繋がりといっても良いかもしれませんけどね。



そして、自分で名前を付けた物に対して、溺愛したり、嫌ったり・・・。



そんな事をされたら、とてえ物であっても気分の良いものではありませんから。



しかも、顔がはっきりと浮かび上がっている石となると、かなりの確率で



何らかの因縁がある筈ですから・・・・。



まあ、自業自得というやつですね・・・・。



そう言われてしまった。



しかし、見舞いに行った時、彼が事故による怪我とは関係なくやせ細り、



生気が無かった事を話すと、さすがのAさんも、



それじゃ、急がなきゃいけないですね!



とりあえず、その石を私の所まで持って来てくれますか。



話はそれからですね。



そう言った。



だから、俺は彼に家の鍵を借りて、片づけてあるという場所から石を取り出して



急いでAさんの所まで持って行った。



その石を見た時、Aさんは少し驚いた顔をしていたが、



わかりました。



確かに預かりましたから。



また、連絡しますから・・・。



そう言って、俺はその場から帰った。



そして、それからAさんから何の連絡も無いので心配になってこちらから



連絡してみると、Aさんは、いつものように面倒くさそうに、



ああ…あの石ですか?



然るべき処理をしましたけど?



と言ってくるので、



また、粉々に砕いたりしたんじゃないの?



憂さ晴らしついでに・・・・。



と返すと、Aさんは



そんな危ない事出来る訳ないじゃないですか?



本当に、あの石の事、軽く考え過ぎですよね。



あんな危険な石を砕いたりしたら、それこそ、祟られてKさんのお友達は



すぐに殺されちゃいますよ?



それに、それだけでも終わりそうもないですし。



だから、然るべき場所で厳重に保管されてます。



毎日、お経を唱えて貰いながら少しずつ呪いを弱めていくしかありませんから。



あっ、ちなみに、富山の住職のところではありませんから・・・。



だって、富山の住職には一目見るなり、無理だ!って言われましたから。



だから、Kさんは、これ以上、あの石には関わらない方が身の為ですよ。



知らない方が良い事なんて、この世には沢山在るんですから・・・。



そう言われてしまった。



ちなみに、その後、友人の所に連絡すると、怪異はピタッと収まり彼も



順調に回復しているという事だった。



  


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2018年11月10日

預かった荷物

これはある意味、現在進行形の話である。



俺の友人に白山市の山間部に住んでいる男がいた。



とても真面目で律義なタイプであり、友人から頼まれると嫌とは言えない



男だった。



彼の仕事は不動産の管理。



彼の親戚に沢山のアパートやマンションを金沢市内に所有している者がいるらしく、



彼はその親戚から頼まれてアパートやマンションを管理していた。



とはいえ、忙しいのは、部屋に入居した時や退出した時であり、それとて、



大した仕事ではないらしく、地元である金沢市を離れて白山市の山間部の



旧家を買い取って、其処で1人で住んでいた。



だから、彼はいつもは日向ぼっこをして一日過ごしたり、気が向けば猟に



出掛けたりしながらのんびりと生活していた。



勿論、そんな暮らしが彼には理想そのものだったらしく、傍から見ていても



年齢の割に老けて、そして落ち着いて見える彼にはとてもピッタリの



生活に思えた。



そんな彼がある時、友人から頼まれごとをした。



それはある荷物を友人が海外旅行に行っている間、預かって欲しいというもの。



その友人というのはかなり昔に親交があっただけで、それほど親しかった訳では



なかった。



それでも、困った顔で頼まれると、断れないのが彼の良い所でもあり、



悪いところだ。



結局、彼は友人が海外旅行に行っている2週間、その荷物を預かる事にした。



その荷物とは大きな風呂敷包みがひとつ。



50センチ四方の箱らしく、重さはそれほどでもなかったという。



何が入っているのか?



どうして荷物を他人に預けなくてはいけないのか?



と聞いたらしいが、友人はその質問に対して、はっきりとした答えは



言わなかった。



その友人が言った言葉はただひとつだけ。



"何があっても絶対にこの荷物の中身を確認しないで欲しい・・・。



それだけだった。



元々、彼も預かった荷物の中身になど全く興味が無かったから、当然その



頼みを了承し、絶対に荷物には手を触れないと約束した。



その友人も彼のまじめな性格を良く知っているのか、とても安心した顔で



彼にその荷物を託し、翌日から海外旅行に出掛けて行った。



そして、その翌日から不思議な事が起こり始める。



彼が昼間、縁側でウトウトしていると急に電話で起こされた。



慌てて電話に出ると、耳障りな程のノイズが聞こえてきた。



電話の相手は唐突だった。



すみません・・・・荷物を預かってませんか?



四角い木箱に入った荷物・・・・。



大切なものなんです・・・・返してください・・・・。



そう、ゆっくりとした低い声で言った。



その声は中年の女の声であり、どこかエコーがかかった様な声であり、



とても遠くからの電話に感じた。



唐突に、そんな事を言われた彼は、



どちらにおかけですか?



すみませんけど、間違い電話じゃないですか?



そう言うと、電話はそのまま切られてしまった。



彼は再び縁側まで戻って来ると板の間に横になった。



そして、考えた。



あの女は何者なんだ?



そもそも、どうして俺が荷物を預かっている事を知っているんだ?



それにしても、どうして俺の電話番号まで知っているんだ?



彼は何か薄気味悪いものを感じたが、それでも彼の性格なのか、すぐに



そんな事は忘れて、すぐに出掛ける用意をした。



その日は、定期的に管理するアパートやマンションを巡回する予定日だった。



そして、彼は金沢市内で仕事を終えると、久しぶりに片町に飲みに出た。



そして、午前1時頃、店を出ると、運転代行を使って白山市の家に向かった。



正直、代行で無理して帰るよりも、一晩カプセルホテルに泊って翌朝帰った



方が安くつくはずなのだが・・・・。



代行業者の車が走り去り、彼が家に入ると、けたたましく電話が鳴っていた。



彼は急いで家に上がると、そのまま電話に出た。



すみません・・・・荷物を預かってませんか?



四角い木箱に入った荷物・・・・。



大切なものなんです・・・・返してください・・・・。



それは昼間の電話の女だった。



時刻は既に午前3時近くになっていた。



こんな時刻に電話を掛けてくるなんて非常識にも程がある・・・・。



彼は少しムッとした声で、



あの、今何時だと思ってます?



だいたい貴女は誰なんですか?



普通はそちらから名乗るのが常識じゃないですか?



そう返したという。



すると、



すみません・・・・荷物を預かってませんか?



四角い木箱に入った荷物・・・・。



大切なものなんです・・・・返してください・・・・。



と、また同じ言葉を繰り返してきた。



彼は完全に酔いが醒めてしまい、かなり頭に血がのぼっていた。



だから、いつもの彼らしくなく、



いい加減にしないと警察を呼ぶぞ!



あんた、頭がおかしいんじゃないのか?



だいたい、とうやって俺の電話番号を知ったんだ?



新手のストーカーか何かか?



そう電話の向こうの女に向って怒鳴った。



すると、



すみません・・・・荷物を預かってませんか?



四角い木箱に入った荷物・・・・。



大切なものなんです・・・・返してください・・・・。



と、また同じ言葉を繰り返すだけだった。



彼は完全にに切れてしまい、



いい加減にしろよ!



だいたい、あの荷物はあんたの物じゃないだろうが!



そう言って彼はハッとした。



すると、電話の向こうから少し嬉しそうな声で、



やっぱり荷物・・・・あるんですね・・・・・そちらに・・・・。



今から返して貰いに行きます・・・・。



そう言って電話が切れた。



彼は暗い部屋の中で茫然としていた。



荷物の事をうっかり話してしまったのは完全に彼のミスだった。



だとしても、これから此処に来る、というのはどういう意味なんだ?



電話番号だけでなく住所まで知っているというのか?



それに、今から取りに来るって言ったが、あの女はそんなに近くの場所から



電話をしてきたのか?



考えれば考える程、答えは見つからなかった。



その時、突然、玄関の引き戸が叩かれた。



彼はドキッとして心臓が止まるかと思った。



恐る恐る玄関に近づくと、引き戸から女の姿が透けて見えていた。



着物を着た女。



しかも、黒い着物であり、彼にはそれが喪服に見えたという。



彼は息を潜めて様子を窺った。



そして、彼は恐怖で頭がいっぱいになっていた。



そして、彼が家に着くなり電話の音が聞こえたので、玄関の鍵をかけていない



事に気付いた。



その時、突然、玄関の向こう側から声がした。



ごめんください・・・・・。



荷物を返して貰いに参りました・・・・。



その声は間違いなく先ほどの電話の女だった。



どうして、こんなに早く此処に来られるんだ?



いったい、この女は何処から電話をかけていたんだ?



そう考えると、恐怖で体が固まった。



彼は女の声に応えず、静かに奥の間に行き、厳重に管理している猟銃を



取り出して弾を込めると、そのまま玄関へと戻った。



勿論、実弾が入った猟銃を人に向けるなど絶対にしてはいけない事だと



分かっていたが、彼にはその女がどうしても人間の女には思えなかったという。



彼は猟銃をしっかりと抱えて、玄関に戻る。



いつも猪や熊を狩っている猟銃を持っているというだけで彼はかなり



勇気が湧いてきた。



彼は玄関に戻り、再び、引き戸の方を見た。



ひっ!



思わず声が出そうになる。



玄関の引き戸がほんの少しだけ開けられており、その隙間から女がこちらを



覗いていた。



その顔は人間というには余りにも細く長い顔であり、まさにキツネそのもの



といった顔をしており、その顔がじっと動かないままこちらを覗き込んでいる。



彼は固まったまま動けなくなっていた。



それでも恐怖に支配されているのを見透かされないように勇気を振り絞って



大声を上げた。



一歩でも家の中に入ったら、この銃で撃ち殺すからな!



自分でも声が震えているのが分かったという。



すると、女は、先ほどまでの声とは全く違う気味の悪い声で、



かえせ・・・・かえせ・・・・かえせ・・・・かえせ・・・・かえせ・・・。



そう繰り返した。



彼はその場にへたり込むように座ると、それでもしっかりと銃口を



その女の方へと向け続けた。



そして、腹に力を入れて出来るだけドスの効いた声で、



お前、この銃が怖くないのか?



撃たれたら死ぬんだぞ?



そう叫んだ。



すると、その女は、彼の言葉がおかしくてたまらない、といった感じで



そんなもので、私は殺せませんよ・・・・・。



それよりも、荷物を此処に持って来てください・・・・。



出来るだけ痛くないように・・・・・してあげますから・・・・。



そう聞こえた。



彼は、最後の言葉がよく聞こえなかった。



しかし、



痛くないように、”殺してあげる”もしくは、”食べてあげる”と言った様にも



聞こえた。



確かに、その女は銃など恐れている素振りは微塵も無かった。



確かに、その女が人間ではないのだとしたら、もしかしたらこんな猟銃など



何の役にも立たないのかもしれない・・・。



そう考えると、再び、彼に恐怖がのしかかってきた。



彼は生れて初めて、死というものを身近なものに感じたという。



このまま、俺は殺されてしまうのかもしれない・・・・。



そんな事を考えていた。



そして、そのまま時間だけが流れていった。



女は、何度も何度も、同じ言葉を繰り返していた。



荷物を此処に持って来てください・・・・。



という言葉を・・・。



しかし、彼はその言葉に反応する事は無かった。



それはもしも、荷物を持って玄関の引き戸を開ければ、たちまち、彼はその女に



殺されてしまうのだろうと確信していたから・・・。



だから、彼はそのまま沈黙を守った。



決してその女の言葉には反応しない様にした。



そして、時間が経過し、朝日が昇り始め、辺りが明るくなり始めたころ、その女は



玄関の引き戸から離れ、そのまま何処かへ消えていった。



それからというもの、毎日、その女は彼の家にやってきた。



昼間にその女が来る事は無かった。



来るのはいつも真夜中。



しかも、いつも玄関の引き戸の前で立ったまま同じ言葉を繰り返すだけ。



そのうちに、彼はある事に気付いた。



それは、その女は玄関からしか、家の中に入れないのだという事。



そして、自分からは決して玄関の引き戸を開ける事が出来ないのだという事。



鍵が掛っていようがいまいが、自分からは家の中に入っては来れない。



そう思うと少しだけ気が楽になった。



ただ、その女が家の外にやって来ると、家中の明かりが全て消えてしまい、



完全に真っ暗闇になってしまう。



それが、一番困る事なのだという。



それから、随分経つが、旅行に行った友人からは何の連絡も入らないのだという。


勿論、連絡もつかない・・・。


友人はどうなってしまったのか?



そして、彼はいまだに、荷物の中身が何なのかを確認する事はしていない。



俺にはその荷物の中身が何か曰くつきの物に思えて仕方ないのだが・・・。



きっと、今夜もその女は彼の家にやって来るのだろう・・・。



もしも、何か実害が及ぶような事になれば、その時にはAさん達に相談



してみなければ・・・。



そう思っている。

  


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2018年11月10日

野宿

知り合いに小型バイクに乗っている人がいる。



彼は古い型の125ccのバイクに乗っており、そのバイクで日本中を



ツーリングしている。



確かに大型免許は持っていないが、せめて400ccくらいのバイクに乗れば



もう少し楽に長距離を走れるだろうに、と考えてしまうが、彼に聞くと



そうではないのだという。



そもそも、日本人の体形と体力で大型バイクに乗っても、乗りこなすなど



程遠いだろうし、高速道路にしても法定速度はせいぜい100km/h。



そんな日本で大型バイクに乗っていてもストレスが溜まるだけだと



彼は言う。



まあ、確かに、一理あるのは確かなのだが・・・。



それに、彼は1日にそれ程の距離は走らないのだという。



あくまでのんびりと自分のペースで。



そんな彼のツーリングは、その殆どが野宿だという。



駅の構内、それが駄目なら駅の軒先。



それでも無理なら公園か橋の下で寝袋に包まって寝るそうだ。



決して快適とはいえないが、それでもそんな風に一夜を過ごしていると



まるでその地域の住民になったかのような気持ちになれるのだそうだ。



しかし、野宿といえば、やはり怖いのが人間。



たまに、悪戯心でちょっかいを出してきたり、中には言い掛かりをつけてくる



輩もいるらしいが、そこは平和主義でのんびりとした性格の彼らしく、



大事に至った事は無いのだという。



しかし、一度だけ不可解で気味の悪い体験をしたらしく、その時の事を



ゆっくりと話してくれた。



そして、これから書くのがその時聞いた話だ。



彼はその時、山陰のとある町にいた。



そして、近くのスーパーで半額の弁当を買い込んで、いつものように野宿を



する事にした。



彼は事前に目星をつけておいた無人駅の駅舎の前にバイクを停めると、早速



寝袋を出して、その夜泊まる場所を確保した。



時刻は既に午後9時を回っていた。



季節はちょうど秋。



夜は少し肌寒かった。



彼は買ってきた弁当をさっさと食べ終わると、昼間の疲れが出たのか、急に



睡魔に襲われてしまう。



いつもは初めての土地に緊張してしまい、なかなか寝付けないのだが・・・。



彼は気力を振り絞って、防犯の為のラジオを点けると、そのまま寝入ってしまう。



それから何時間が経過しただろうか。



彼は寒さで突然目を覚ました。



目覚めた時、彼は寝袋には入っておらず、ラジオも何故か消えていた。



そして、気が付けば、外にはシトシトと雨が降っていた。



時計を見ると、まだ午前3時頃だった。



彼は喉が渇いている事に気付き、近くにあったペットボトルに手を伸ばした。



その時、彼の手はペットボトルの手前で止まった。



誰かが駅から100メートル位離れた森の中から彼を見ているのが分かった。



そして、彼も思わず、そちらの方を凝視した。



小さな女の子だった。



こんな時間に?



彼はいぶかしく思い、更にその女の子に注視した。



どうやら、その女の子は学校の帰りだと言わんばかりに赤いランドセルを背負い



手さげ袋を持ったまま、こちらを見ていた。



おさげの髪型が少し古めかしく感じたという。



女の子は、森の木の蔭に座り、そこからじっと、こちらを見ている。



なんで、こんな時間にあんな小さな子が1人でいるんだ?



彼はその時は特に恐怖は感じず、それだけを考えていた。



もしかしたら、迷子?



そう考えた彼は、女の子に向かって優しく声を掛けた。



どうしたの?



お父さんとお母さんは?



しかし、女の子は彼の声が聞こえないかの様に全く反応が無い。



彼はまた声をかける。



しかし、やはり反応が無い。



その時、彼は思ったという。



下手に声を掛けたりして不審者として通報されたら大変だ!・・・・と。



だから、彼は女の子に向かって



気をつけて帰りなよ!



とだけ声を掛けると、今度は寝袋にちゃんと包まって再び眠ろうとした。



しかし、やはり、近くから女の子が見ていると思うだけでなかなか寝付けない。



だから、彼は女の子が、まだその木の陰に座っているのか、と確認しようと



寝返りをうった。



すると、先ほどより半分くらいの距離まで女の子が近づいていた。



え?



彼は慌てて起き上がろうとした。



しかし、何故か寝袋のチャックが開かなかった。



彼はまるで芋虫にでもなったかのように、その場でもがいていた。



それはほんの数秒の事だった。



そして、再び、彼がその女の子を見た時、その女の子は彼から10メートル



位の場所まで近づいて来ていた。



その時、初めて彼は状況の異常さに気付いたという。



辺りには明かりは殆ど無く、駅から漏れる明かりだけしかない暗さ。



その中でその女の子だけが、まるで暗闇に浮かび上がるかのようにはっきりと



視えていた。



そして、先ほどから降り続いている雨が勢いを増しているというのに、



その女の子は一切濡れている様子が無かった。



更に、決定的だったのは、彼が、女の子が木の陰に座っているのだと



思っていた姿は、アスファルトの上でも同じように見えていた。



つまり、その女の子には上半身しか存在していなかった。



彼はもうパニックになってしまい、必死に寝袋のチャックを開けようともがくのだが



チャックは全く開こうとはしなかった。



あの女の子はどうして上半身しか無いんだ?



上半身だけで、どうやって、こんなに瞬間的にこちらに近づいて来れるんだ?



そして、こちらに近づいてきているという事は、俺に向かって来ている



という事なのか?



そう考えると、頭が変になりそうなほど恐怖でいっぱいになった。



彼は、また芋虫のように転がりながら何とか寝袋から脱出しようと



何度も試みた。



そして、何度目かの時、彼の背中が何かにぶつかった。



彼は首だけをそちらの方へと向けた。



そこには、先ほどの女の子が上半身だけで彼を見ていた。



ひっ!



彼は思わず悲鳴を上げそうになった。



と、次の瞬間、彼の体は何かに押されるようにして濡れたアスファルトの上を



転がされているのが分かった。



それは、凄まじいスピードで彼の体を森の方へと移動させていく。



彼は恐怖で固まり、その女の子の顔など見る余裕は無かった。



だから、為すがままにアスファルトの上を転がっていった。



女の子が、彼の体をゴロゴロと転がしていく。



しかも、上半身だけの姿で・・・・。



そんなものを見てしまったら、即座に意識を失いそうだった。



どうして、こんな小さな女の子にそんな力があるのか・・・・。



そんな事は考えるだけ無駄だった。



彼にはもう、その女の子が生きた人間ではない事などとうに分かっていた。



すると、寝袋の足の部分がアスファルトに擦れて破れかけているのが分かった。



彼は足をジタバタさせて、その破れかかった穴を更に大きくしようとした。



彼は顔まで寝袋の中に入れて、必死に足に力を入れて何度も寝袋を蹴り続けた。



その時、鈍い音がして足が冷たいアスファルトに触れているのが分かった。



彼は少しずつ体を下の方へと移動していき、一気に寝袋から脱出する事に



成功した。



体中が酷く痛んだ。



しかし、それ以上に心配な事があった。



彼は恐る恐る振り返ると、先ほどまで彼が入っていた寝袋を転がしていた



であろう、女の子の方を見た。



その女の子も、急に寝袋が軽くなった事に気付いたのか、その場にじっと



動かずにいた。



彼は心の中で必死にお経のようなものを唱えた。



彼も、そして女の子もじっとして動かなかった。



雨が彼の体温をどんどんと奪っていく。



こっちには来ないでくれ・・・・。



彼は本気でそう祈った。



彼には、もう反抗する力など全く残っていなかった。



すると、その女の子は、まるで濡れたアスファルトの上を滑るかのように



上半身だけで森の方へとゆっくり進んでいき、そしてそのまま森の中に



消えていった。



彼は痛む体を引きずるようにして、駅の軒下まで歩いた。



そのままバイクでその場から逃げ出したかったが、何故かその時は、そんな事を



すれば、再びあの女の子が追いかけてくる様な気がしたという。



だから、彼は駅の前にあるジュースの自動販売機の前に座ってそのまま



朝まで過ごしたという。



自動販売機の明かりだけでも、かなり心強いものに感じた。



此処にいれば大丈夫・・・・。



そう思わせる何かがあった。



彼は安心したのか、それとも疲労の為か、そのまま再び眠りについた。



そして、空がうっすらと明るくなり始めた頃、彼は再び眠りから醒めた。



誰かが彼の前にいるのが分かった。



しかし、辺りは徐々に明るくなってきたいるのが分かっていた彼は



きっと誰かが心配して声をかけようとしているんだ・・・・。



そう思った。



しかし、いっこうに声を掛けてくる気配は無かった。



彼は、ゆっくりと瞳を開けた。



すると、彼の顔のすぐ目の前に、あの女の子の顔があった。



彼の顔を覗き込むようにしていたが、彼が目覚めたのを見て、その女の子は



不気味な笑みを浮かべた。



その時、彼は初めて絶叫して、その場で意識を失った。



そして、次に目が覚めたのが、通勤の為に無人駅にやってきた会社員に



揺り起こされた時だったという。



彼の体と、そして森の間のアスファルトの上に点々と石が置かれていたという。



それが何を意味するのかは全く分からなかったが、彼はそのまま急いで



バイクに乗ってその場から離れた。



いつもは、決してスピードを出さない彼も、その時ばかりはかなりのスピードを



出して出来るだけ遠くに逃げなければ、と必死になって走ったという事だ。



その後、彼の身に怪異は起こってはいないが、いまだに、その時の悪夢を



見てしまうという事である。
  


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2018年11月10日

本当に危険な話

これは俺の体験談。



俺には絶対に誰にも話せない話というものを幾つか知っている。



その話に登場してくる人物、そして俺にこの話を聞かせてくれた人、そして



俺と一緒にこの話を聞いた者、全てに怪異が起こり霊障に悩まされ、



中には命を落とした者も一人や二人ではない。



そして、命を落とさないまでも、大怪我をしたり事故に遭った者まで含めると



それはほぼ100%になってしまう。



だから、俺はこれらの幾つかの話を絶対に伝えるつもりは無い。



語りもしたくないし、文章を読んで欲しくも無い。



ただ、それでも、不思議なもので、こういった禁忌の話をいつか忘れてしまう



事を心配している自分も確かに存在しているのだ。



だから、俺は何度かそういった話を出来るだけ正確に、そして詳細に



文章として残しておこうと思った。



決して人に見せない、それでいて、貴重な話として・・・・。



そして、これはそんな話を書いていた時に経験した話だ。



俺が知っている本当に危険極まりない話というのは全部で9話存在する。



そして、そんな話の中にも、その危険度は同一ではなく、人が多数亡くなった話も



あれば、人が死なないまでも、怪我人が続出した話もある。



その日は朝からとても天気がよく窓から差し込んでくる陽の光も眩しい



くらいに穏やかな秋の日だった。



そんな明るい雰囲気が俺の気持ちを魔が差したかのような衝動に突き動かした



のかもしれない。



俺はそのいくつかの話の中でも最も危険だと認識している話を書き記して



みようと思ってしまった。



他の家族も、既に出掛けており家には誰もいない。



万が一、何かが起こったとしても、自分だけが被害を被れば良い・・・。



そう思っていた。



話を書くのはいつもワープロソフトを使っている。



俺は、既に起ちあがっているたパソコンを一度再起動させる。



怖い話を書く時にはいつもこうするのが、自衛手段。



やはり、特定の話では、保存できなかったり途中でパソコンが固まったりという



トラブルを避ける為に自然に身についたルールだ。



ノートに書き留めてあった話を記憶を交えて文章に変えていく。



いつもと同じ作業なのに、必要以上に緊張している自分を感じながらも



キーボードを打ち続ける。



そもそも、そんな誰の目に触れる事など絶対に無い話を書き留めようとしている



しているという矛盾。



勿論、それらの禁忌の話は全て、墓場まで持っていくつもりなのに・・・。



それこそが、もしかしたら、俺に何かが作用していたのかもしれない。



前半の経緯の部分を書いているうちに、少しずつ天候が変わっていく。



あれわど晴れていた空が、明らかに曇っていた。



しかし、何故か俺にはその話を書くのが止められなかった。



いつもより、快調に筆が進み、どんどんと話の佳境に入っていく。



まるで、自分が書いているのではなく、誰かに書かされているかのような



錯覚に陥ってしまう。



その時、突然、階下からドンドンという音が聞こえた。



まあ、そんな事は怪談を書いている時には良くある事。



俺は特に気にも留めないでそのまま書き続ける。



窓を全開にして書いているせいか、部屋の中が異常に寒く感じた。



俺はまだ秋だというのに、部屋の暖房を点けた。



しかし、何故かエアコンから流れてくる風は、異常に冷たい。



俺はエアコンのリモコンを確認するが、しっかりと暖房と表示されている。



そのうち、暖かくなるのだろうと思い、俺はそのまま書き続けた。



すると、突然、1階の玄関のドアが開いたような音が聞こえる。



妻と娘が帰宅したのかと思って自室の窓から確認するが、妻の車は



駐車場には停まっていなかった。



確かに聞こえたんだけどなぁ・・・・。



そう思ったが、俺は再びパソコンに向かい話の続きを書き始める。



すると、今度は階段から、ミシッという音が聞こえ、その後、トンッという



音が聞こえた。



さすがに俺は部屋から出て確かめたかったが、それは叶わなかった。



部屋の外から、誰かの囁くような話し声が聞こえてきていた。



ひそひそ・・・・ひそひそ・・・・・。



その声は小さな声ではあったが、何故かとても不気味な声に聞こえる。



そして、俺の部屋は2階。



窓の外には人が立てる場所など存在してはいない。



だから、俺は椅子から立ち上がれなかった。



何かがすぐ傍にいる・・・・。



そんな確信があった。



その時、俺が思っていたのは、何故か早くこの話を書き上げなければ!



それだけだった。



そうすれば、先ほどからの不可思議な音や気配から解放される。



そう思っていた。



だから、俺は必死でパソコンの画面を睨み、話を書き続けた。



そうしていると、窓の外から聞こえてくる囁き声が、部屋の中から



聞こえてくるようになる。



そして、それと同時に、何かが階段をあがって来る音もはっきりと聞こえだした。



トンッ・・・・・・・・・トンッ・・・・・・・。



それはゆっくりだが、確実に階段を上がって来ていた。



1段・・・2段・・・・・3段・・・・・・4段・・・・。



どんどんと俺の部屋に近づいてきている。



俺は、さすがに耐えられなくなってしまい、椅子から立ち上がろうとした時、



俺は背後から強い気配を感じた。



誰が俺の背後にいる。



俺の肩越しに何かがパソコンの画面を見ている。



部屋の中には線香を焚いたような匂いが満ちていた。



俺は動けなかった。



そして、先ほどから聞こえていた囁き声が俺の耳元で聞こえ始める。



その時、俺は初めてその囁き声が何を喋っているのか、が分かった。



はやく・・・・・はやく・・・・・はやくかこうよ・・・・。



そう聞こえた。



そして、その時、階段を上がって来ていた足音がついに2階へと到達した。



そして、何かが俺の部屋のドアをノックする。



コンコンコンコン・・・・・コンコンコンコン・・・・・。



俺は固まってしまう。



何をすれば良いのかを必死に考えた。



先ほどまで晴れていた空は完全に暗くなり、部屋の中も、まるで異世界の



様相を呈していた。



そして、ドアがゆっくりと開き始める。



背後からはケラケラとした笑い声が聞こえてくる。



その時、俺はAさんから以前教えて貰った言葉を思い出した。



呪いの言葉でも、呪文でも、最後に『○禁』という文字を付け加える事でそれを



無効化出来るという事を。



俺は、出来るだけ悟られないように、そろそろ終わりを迎えようとしている



その話の次の行に、大きく『○禁』と付け加えた。



すると、次の瞬間、背後の気配は消え、ドアをノックする音も消えてしまった。



俺は、そのまま一気に書いていた文章全てを選択し、そのまま削除した。



部屋はいつもの状態に戻り、外の天候も、晴れ間が見え始めた。



そして、俺は禁忌の話を文章として残す事は辞める事にした。



そして、これからも、それらの話を書く事はないだろう・・・。



なにしろ、あの『○禁』という文字が効力を持つのは一度きりらしいから。



今度やって来たら防ぎようがない・・・・。



それほど危険な気配を感じた。



やはり、それらの話は禁忌として、記憶の中だけに留めておくのが良さそうだ。



きっと、それらの話のすぐ傍らには、あいつらがいつも潜んでいるに



違いないのだから。



しかし、俺はドアが開いた時、少しだけ隙間から見えた顔を見てしまった。



笑った般若の様な顔を・・・・。



これで、またしばらくの間、熟睡は出来ないだろう。



そして、Aさんにも家中に貼る護符を新たに作りなおして貰わなければ・・・。



一度家の中に入って来たモノは必ずまた入って来るのはそれまでの経験で



知っているから・・・・。
  


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2018年11月10日

エアコンが効かない車

これは知人から聞いた話。



その時、彼女は車を買い替えようとしていた。



いつもは新車しか買わない彼女だったが、その時はどうしても乗りたい



車があり、それは既に型遅れの旧モデルになってしまっていた。



だから、今回は仕方なく中古車を探すことにしたのだという。



それは少し変わった形の車だった。



可愛いというか旧車っぽいというか、とにかく古い車の割には



人気があったらしい。



つまり、彼女と同じように、その車に乗りたいと思っている人が



沢山存在するということで、当然のごとく、中古車の相場としては



異様に高いものになっていた。



しかし、どれだけ探しても彼女の予算に合う金額で、その車種を見つける



のは、かなり無理があった。



中古車雑誌、インターネット、ディーラーなどを回ったが、やはり



その車は台数が少ない上に、たまに見つけたとしても、とんでもない



高価格で売られているものばかりだった。



そうして、彼女が諦めかけていた時、偶然、近所に買い物に出た際に



小さな中古車店に、その車種が置かれているのを発見した。



彼女はすぐに、その店に飛び込み、その車の売値を聞いてみた。



すると、その車は、彼女の予算でもお釣りがくるほどの安値で



売られている事が分かった。



あまりにも安過ぎるので、彼女も一応、その車が事故車かどうかを



確認したが、はっきりと事故車ではない!と断言してくれたので、



彼女は安心し、その場で契約をしてしまった。



彼女がそれまで乗っていた車の下取り金額もあって、追い金は少ない金額



で済んだという。



夢にまで見た車を実際に買えた事で彼女は完全に舞い上がっていた。



納車の日までがとても長く感じ、彼女はその間に、新しいシートカバーや



フロアマットを購入して、その時を待った。



そして、納車の日、中古車店の人が、家まで車を運んできてくれて、



そのまま以前乗っていた車は下取りとして、そのまま持ち帰ったという。



本当に良い買い物が出来た、と彼女は心から喜んでいた。



彼女はすぐに友達数人に声を掛けて、その車でドライブに出かけた。



やはり人気車種ということもあり、色んな場所で彼女の車はそれなりに



注目され、彼女の優越感を満たしてくれた。



それにしても、その車は走行距離も少なく、あまり使用感も無かった。



とても綺麗な車で、車内も車外もまるで新車の様だった。



彼女にとってはまさに理想の車だった。



そして、夏が近づいた時、困ったことが起きる。



エアコンが全く効かないのだ。



最初の頃は我慢していた彼女だったが、さすがに気温が高くなってくると



我慢の限界が来てしまう。



購入した中古車店に持ち込もうと思ったが、その中古車店は彼女が



その車を購入した直後、閉店した様だった。



だから、仕方なく、彼女はディーラーに持ち込んだ。



クーラーが全く効かないんです。



そう言って診てもらったらしいが、サービスマンが調べた結果、



エアコンは正常に動いており、クーラーガスの量も問題無い、と



言われてしまう。



そんな筈はないからもう一度ちゃんと診て欲しいと頼んだが、実際



彼女の目の前で作動させたエアコンは、きちんと涼しい風を



送り出していた。



なんで?



彼女は、信じられないといった感じでディーラーを後にした。



しかし、車を走らせていると、やはりエアコンが全く効かない。



というよりも、エアコンの効きを最大にしているにも拘わらず、吹き出し口



から出てくる風は、ぬるいというよりも、どんどんと熱くなっていく。



本当に焼けるような暑さだったという。



彼女は、何度もディーラーや修理工場に車を持ち込んだが、どこで



診てもらっても、やはり異常なしという返答しか返ってこなかった。



それでも、彼女はその車が好きだったので、乗り続けた。



夏場はさすがにきつかったが、なんとか根性で乗り切ったという。



そして、季節が秋になった頃、彼女の車でドライブに出かけた友人が



変な事を言った。



この車、何かね焦げ臭くない?と。



それは確かに、彼女も以前から感じていた事だったが、走行には支障が



無かったので気にしない事にしていた。



しかし、友人から指摘されてしまうとさすがに不安になった。



そして、またしても修理工場に持ち込んだ。



車が、焦げ臭いんです・・・と。



しかし、調べた結果は、どこも異常は無かった。



エンジンに焼きつきの兆候も無かったし、クーラントの量も問題無し。



ブレーキかと思ったが、そこもやはり何の異常も無かった。



それでも、彼女は、



安かったんだから、我慢しなきゃ・・・・。



そう思って、そのまま乗り続けた。



そんな時、車で遠出する用事があり、彼女は高速道路を走っていた。



少し疲れたのでPAで仮眠を取ることにした。



季節はもう秋の終わりだった。



彼女は、そこで自分が炎に包まれている夢を見た。



炎は、全身にまわり、彼女の皮膚が焼けたように溶けだすのが



見て取れた。



そして、夢から目覚めた時、彼女は凄まじい暑さの車内にいた。



思わず、車外に飛び出ると、そこは肌寒いほどの気温だった。



どうして?



真夏でもないのに・・・・。



しかも、天候も曇っており、日差しで車内の温度が急激に上がるなど



考えられない事だった。



だとしたら、この車内の温度は何なのか?



全身が低温火傷を負ったかのように、ヒリヒリしていた。



そして、車内で見た夢の事も気になった。



確かに熱い車内で寝ていたのだから、そんな夢を見たとしても



不思議ではないのかもしれなかったが、その夢はあまりにもリアル



過ぎた。



彼女は、今度はディーラーではなく、お寺を回った。



もしかして、これまで起きてきて不可思議な事は、全て霊的な事



なのではないか、と思ったから。



すると、何か所目かのお寺に出向いた時、彼女は、驚くべき言葉を



告げられた。



それは、この車で過去に、車内に取り残された幼児二人が、死んでいる、



そして、その二人の幼児は、今もこの車の中でもがき苦しんでいる。



そんな事実だった。



さすがに信じがたい話ではあったが、その話が本当だとしたら、それまでの



不可思議な症状も説明がついた。



彼女はすぐにその車を中古車屋に持ち込んだ。



すぐに買い取って欲しい・・・と。



人気車だから、当然高値ですぐに買い取ってくれると思っていた。



しかし、中古車屋の対応は、意外なものだった。



車の車体番号を調べた店員は、



この車は買い取れませんね!



と冷たい対応だった。



どうしてですか?



人気車種だと思うんですけど?



と彼女が言うと、店員は、冷たい目で、



あのね…車っていうのは、ある意味、車体番号で管理されてるんです。



だから車の色を変えてもナンバーを変えても分かっちゃうんですよね。



この車は、過去に人が死んでいるという事実も。



特にこの車での車内置き去りの死亡事件は、かなり大きく報道



されましたから、この業界の者なら、誰でも知っていますよ。



この車で、夏の暑い日に、親に置き去りにされた幼児二人が、この車



の中で干からびて死んでいたという事件を。



お客さんも、何も知らないでこの車を買わされたんでしょうけど、



でも、何軒の車屋を回ったとしても、この車を買い取ってくれる



店は一軒もありませんよ。



何しろ、いわくつきの呪われた車ですからね。



だから、この車を手放したいんでしたら、中古車屋ではなくて、



解体屋さんに持っていかれるしかない、と思いますけどね。



そう言われたという。



彼女は自分が、騙されたというショックと、本当にそんな車が実在している



のだという恐ろしさで、しばらくは車に乗れなくなったという事だ。



そして、その車は、言われたとおり、解体屋に持って行ったらしいが、



解体屋でも、なかなか引き取ってはくれなかった、という事である。
  


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2018年11月10日

水泳記録会

これは俺が体験した話。



俺は母親の影響なのか、昔から水泳が得意だった。



確か、幼い頃に、プールの中に母親に故意的に落とされたのが初めての



プール体験だった。



今にして思えば、酷い事をする母親だと思ってしまうが、実は母親も



祖母にそうやって泳げるようにされたらしく、きっと私の子供だから



水の中に入れば、なんとかして泳ぐんじゃないか?



という安易な考えで俺をプールに落としたらしいのだが。



ただ、幸か不幸か、その時、なんとなく沈まずに水面に浮かんでいたら



らしく、まんまと母親の作戦に乗ってしまった形になった。



まあ、そのお陰で、それから水泳というものが得意になったし、船で



沖へ出て海に飛び込んで泳ぐなんて事も出来るようになったのだが。



そして、俺が小学校5年の時だったと思うが、通っていた小学校で



1000メートルの遠泳に挑むという行事があった。



遠泳といっても、海を泳ぐわけではなく、あくまで市営の50メートル



プールを10往復するというものだったが、なかなか参加者がおらず、



毎年1~2名くらいが無事に1000メートルを泳ぎ切り、校長から



表彰されていたらしい。



そして、勿論、俺はその年のチャレンジに参加希望を出した。



その年のチャレンジには俺の他に2名のエントリーがあった。



当日は、平日の授業を午前中で切り上げて市営プールに向かう。



実は、俺が一番魅力に感じ、このチャレンジに参加した理由はそこに在った。



何しろ、他の生徒がしっかりと授業を受けているには、自分はさっさと



授業を切り上げてプールで泳いでいれば良いのだから・・・。



1000メートルの遠泳は、3人が50メートルプールのコースに、



手前、真ん中、奥という形で別れて泳ぐ形になり、それぞれに一人の専属の



計測員が付くというものになった。



とにかく、50メートルを10往復するまでの間に足を点いたり、休憩



したりしなければ、途中で泳ぎ方を変えても良い、というものだったから、



俺的には、これは楽勝かな、と思った。



なにしろ、1000メートル泳ぐのにどれだけ時間が掛っても問題無し、



というルールだったのだから正直簡単すぎて笑ってしまう。



そして、いよいよ、スタート。



クロールで泳ぐ者もいたが、俺は一番疲れない平泳ぎを選んだ。



進むのが遅いから、付き添っている計測員には悪いと思ったが、やはり



のんびりと泳いでいると気持ち的にも楽だった。



そして、ちょうど10往復を過ぎた頃になると少しずつ体が重くなってきた。



それにしても、さすがに50メータープールは長い。



いつもは、海などでも平気で泳いでおりプールでの1000メートル



くらいは楽なものだ、と高をくくっていたが、なかなか体が前へと



進んでくれない。



体も疲れてきたので、俺は少しだけ潜水してみる事にした。



すると、水面に顔を出して泳いでいるのと違って、潜水すると、体が



どんどん前に進む。



しかも、何故か疲れも感じない。



これだ!



と思った俺は、それから潜水を多用する事にした。



勿論、計測員はしっかりとそれを見ていたが特に注意される事も無かった。



そして、何度目かの潜水の際、俺はプールの底に手を着いてみようという



暴挙に出た。



ただ、泳いでいるのが退屈になっていたのだから仕方ない。



そして、無事、水面にと上がって来た俺が見たのはそれまでとは



違う風景だった。



まず、計測員の姿が見えなかった。



そして、他のコースを泳いでいるはずの者も見えない。



それどころか、先ほどまで明るく晴れていた天気が、完全に変わり、



まるで夕方の様な暗くどんよりとした天気になっていた。



しかし、そんな事を気にしてはいられなかった。



とにかく泳ぐのを止めれば、そこで即、中止になってしまう。



俺はもやもやした頭のまま、更に泳ぎ続けた。



そして、また、潜水しようと水中に潜った時、そこは別の世界に見えた。



プールの深さは、本来なら2メートルちょっと、という感じの筈だったが、



その時、見たのは、底が見えない程深い水深。



そして、何故か俺の横に立つ様に、その深いプールの底にしっかりと



足をついた女の水着姿の下半身が見えた。



どんだけ足が長いんだよ?



それに、なんで計測中に、こんな女がいるんだよ?



そう思いながら、再び水面に上がった俺は、そこで一人の女が水面から



上半身を出してニコニコと笑っているのが見えた。



見た事もない女だった。



このプールの関係者かな?



そう思い、泳ぎ続けている俺は、ふとある事に気付いた。



ちよっと待て!



あの長い下半身と水面から出ていた普通の上半身。



そんな比率の人間っているのか?



そう思うと、急に恐ろしくなってきた。



相変わらず、その女は泳いでいる俺の横に付き添う様にしてプールを歩いて



移動している。



そして、その女が話しかけてくる。



大丈夫?



疲れたら、私につかまればいいから・・・・。



その言葉を聞いた時、俺は更に恐怖が増した。



掴ればいいから・・・・という言葉が



捕まればいいから・・・・にしか聞こえなかった。



俺は、それから、一気に泳ぐペースを上げた。



1秒でも早く、このプールからさっさと上がりたかったから。



相変わらずその女は、張り付くように俺の横を歩いている。



手を差し伸べて、疲れたら休んでいいんだよ!



とさえ、言ってきた。



その言葉は、俺には恐怖でしかなかった。



ずっと、女がすぐ横にいる。



それが怖くて仕方なかった。



相変わらず、プールの周りには誰も居らず、俺とその女の二人だけ。



しかし、必死で泳いだお陰で、目標の1000メートルまであと1往復



を切っていた。



俺は最後の力を振りはぼって必死に泳いでいた。



もう、平泳ぎなどというものはとっくに止めて、クロールで必死に泳ぐ。



すると、何かが俺の足に絡み付いてくるのが分かった。



そして、体が重くなる。



いや、重くなるという表現は間違っていた。



まるで、水中から何かに引っ張られているという感覚だった。



しかし、俺は恐怖で、それらを確認する事はしなかった。



もし、確認して、そこに得体の知れない無数の手があったら、きっと



そこで、もう泳げなくなってしまうと思ったから・・・・。



そして、俺は何とかそのまま無事に1000メートルを泳ぎ切った。



しかし、俺は一瞬、考えた。



計測員も誰もいない。



居るのは、訳の分からない女だけ。



そんな状態で、誰が1000メートル泳いだと証明してくれるのか?と。



しかし、その瞬間、



やったな!



おめでとう!



という声が聞こえ、顔をあげると、そこはいつもの市営プールの風景に



戻っており、計測員もしっかりとプール脇に立っていた。



結局、その時、1000メートルを無事に泳ぎ切ったのは俺だけだった。



校長先生から色紙と賞状をもらい、副賞として、文房具のセットも



貰ったような気がする(別に欲しくはなかったが・・・)



しかし、俺はその時思った。



小さな頃から海での不思議な体験はあった。



だから、海という所は不思議なところだとしっかり認識していた。



しかし、同じように水で満たされたプールという場所も、もしかすると



とても危険な場所なのかもしれない、と思った。



そして、あの時、もしも、途中で力尽きてしまっていたら・・・・。



そう考えると、恐ろしくてしばらくは一人では寝られなかった。
  


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2018年11月10日

霊障を引き起こすもの

友人は、その頃、突然、霊障に悩まされる様になった。



全くの突然に・・・・。



彼女自身、特に変わった事をした訳でもなく、全く心当たりが無いという。



最初は、ただ夢の中に見知らぬ女が出てくる様になっただけだった。



そして、その女は夢の中で、彼女を恨めしそうに見つめながら、じっと



立ち尽くしているだけだった。



ただ、その姿の異様さは、尋常ではなく、まるで拷問でもされかかのように



ボロボロにやせ細った体と、頬がこけるほど痩せてはいるが、体とは



似つかわしくない程の大きな顔は、その皮膚すら所々がめくれて



頭蓋骨が露出している状態であり、彼女はいつも、その女が夢の中に



現れると、大きな悲鳴を上げながら、飛び起きるという繰り返し。



それだけでも、彼女にとっては十分辛いものだったのだが、それに



追い打ちをかけるように相次いで訃報が届いた。



それは、親戚の相次ぐ死だった。



性別もも居住地も関係なく、そして、死因もバラバラではあったが、



間違いなく、彼女の家系の人間だけが次々に死んでいった。



だから、それが霊的な物が作用したものなのか、今ひとつ確信が



持てなかったという。



しかし、ある日、仲の良かった従姉妹から電話が掛ってくる。



どうやら、その従姉妹も、彼女と同じ夢に悩まされ続けており、昨夜の夢で



その女が初めて口を開いたのだという。



明日、お前は死ぬのだ・・・と。



だから、私は、もう駄目かもしれない。



○○ちゃんには、ちゃんと伝えてあげないと、と思って。



だから、なんとかしてあの女から逃げのびて・・・・。



その声は、少し震えていたという。



そして、電話を切った彼女だったが、



このままではいけない!



従姉妹を救わなければ!



そう思いなおして、再び彼女から従姉妹に電話をかけた。



しかし、もう電話は繋がらなかった。



そして、その日の夕刻、彼女は従姉妹の訃報を聞いた。



自分の部屋で首を吊っての自殺だった。



しかし、その顔は恐怖で歪んでいたという。



それから、彼女は、仕事も休み、部屋に籠って誰とも接触しないように



なつた。



もしかして、誰か周りの人にも怪異が及んでしまったら・・・。



そう考えての行動だった。



しかし、一人で自分の部屋に居ても、考えるのは夢の中に出てくる



女への恐怖ばかりであり、彼女はこのままでは死ぬよりも先に



自分の頭がおかしくなってしまう。



そう考えた。



そして、悩んだ末に俺に相談してきたようだ。



ただ、もうその頃の彼女は、以前の彼女の姿を知っている俺にとっては



かなり異様に映った。



疲れ果てて、ガリガリに痩せたその姿は、以前の元気な彼女からは



想像出来ない姿だった。



だから、俺は、Aさんに必死で頼み込んだ。



友達を助けて欲しい!と。



そう言うと、



私のプライベートの時間も邪魔しないで欲しいもんですけどね?



と憎まれ口を叩いていたが、彼女の姿を見ると、すぐに態度が変わった。



あんた何考えてるの?



どうして、こんなになるまで放っておいたの!



そう叱咤するAさんにも、彼女はただ、うなだれて、ごめんなさい、と



小さな声で呟く事しか出来なかった。



すると、Aさんは、それから何軒か、電話をしていた。



そして、俺の方を向くと、



これは、一刻を争いますね。



とりあえず、今日の予定は全てキャンセルしましたから・・・・。



そう言ってくれた。



それにしても、そんなにヤバいの?



と聞く俺に、Aさんは、彼女のすぐ隣に立つ様に俺に言った。



彼女の隣に立つと、何やら、彼女と面した体がとても熱くなった。



あれ?あれ?



と思っていると、Aさんは、



いつまで横に突っ立ってるんですか?



さっさと離れてくださいね!



そう言って俺を叱りつけた。



そして、



今、体が熱くなったでしょ?



普通の人なら死んでるかもしないレベルです。



良かったですね。



強い守護霊がついててくれて・・・・。



でも、今回は、その強い守護霊でも、分が悪い相手ですね。



まあ、Kさんには何も見えてないでしょうけど・・・・。



そう冷たく言われた。



そして、



今、彼女に憑いているのは、その女の本体ではありません。



それでも、これだけの力があるんですから、これは相当な



相手かもしれませんね・・・。



そう言われて、俺は思わず、ぞっとしてしまう。



そして、Aさんは、今からすぐに彼女の父親方の実家に行かなくては



いけないと説明する。



彼女に聞くと、それは此処から車で1時間も掛からない場所だということで



そのまま俺の車に3人が乗り、実家へと向かった。



彼女の姿を見ると、実家の人間はみな、そのやせ細った姿に驚いていたが、



俺にしてみれば、実家の方たちも彼女に負けず劣らず、病的に痩せこけて



いるのが気になった。



そして、もうひとつ気になったのは、実家に工事業者が沢山入っていた事。



尋ねてみると、どうやら家の改築を行っているとの事だった。



そして、Aさんも、それが気になっていた様で、すぐに大きな庭の方



をいぶかしげに見ていた。



そして、Aさんは、実家の人にこう聞いた。



庭に何か建ててるんですか?



それと、その為に、庭にある何かを撤去とかしませんでしたか?と。



すると、家の家主らしき人が、



今、忙しいのに余計な事を持ち込まんでくれよ!



ただでさえ、親戚が複数人亡くなってしまって悲しみにくれてるというのに!



そう返してきた。



しかし、Aさんは、その言葉に切れるか?と思いきや、なんとか我慢した様で、



すみません。



大切な事なんです。



何を建てていて、その為に何を撤去したのかだけでも教えて貰えませんか?



すると、その家主らしき男性は、



うちの娘が婿を貰う為に新居を建ててるだけだよ!



その為に、庭にあった井戸と祠を取り壊しただけだ!



そあ憮然と言ってのけた。



そして、次の瞬間、Aさんの声が響き渡った。



あんた、馬鹿でしょ?



井戸の横に祠が在るっていう事は、その井戸から何かが出て来られないように



封印しているんだって事もわからないの?



せっかくあんたのご先祖が苦労して封印したものをあんたが、またこの世に



放ってしまったんだ!



そして、その馬鹿の為に、沢山の血族が死んでいってるんだ!



娘婿の為に、家を建ててる場合じゃないでしょ!



その声を聞いて、工事業者の手も止まったが、その家主も、びっくりして



固まってしまう。



そして、Aさんは更に続ける。



ところで、祠は1つだけでしたか?



もしかして、複数在ったなんて事ありませんよね?



そう聞くと、家主は、



いや、古い井戸を取り囲むようにして全部で4つの祠があったが・・・。



そう弱々しく言った。



そして、それを聞いたAさんは、大きなため息をついて、



あんた達なんか、護りたくも無いけどね。



ただ、彼女はどうしても助けないといけないみたいなので。



そう言うと、俺の方を向いて、



Kさん、急いで姫ちゃんを連れて来て貰えますか?



これは私の想像をはるかに超えてました。



本当は長い時間を掛けて再び封印するしかないんですけど、そんな悠長な



事をしてたら、彼女は死んでしまいます。



だから、交渉してみますよ。



駄目もとで・・・。



その為には、出来るだけ相手を動揺させるだけのものを見せつけないと。



そうなると、私には姫ちゃんしか思い浮かばないので・・・。



そう真面目な顔で言った。



俺は急いで姫に連絡すると、姫は、



Aさんに会えるんならどこへでも行きますよ~



待ってますから、早く来てくださいね~



と相変わらずのゆとりキャラだった。



しかし、今回ばかりはそのゆとりキャラが俺の恐怖心も和らげてくれたのは



言うまでも無かった。



俺は車を飛ばし、姫を迎えに行くと、すぐに実家へと車を走らせた。



そして、その道すがら、姫には事情を説明する。



最初は、笑って聞いていた姫も、かなり険しい顔つきになっていく。



俺が、



どうしたの?急に・・・。



と聞くと、姫は少しだけ笑って、



今、Kさんの守護霊ちゃんから、もっと詳しく話を聞いてました。



かなりの相手なのだと・・・・。



それを、説得しなくてはいけないのなら、私もAさんの足手まといに



ならないように全力で挑むだけです!



私の守護霊も、そして友達にも全力で手伝ってもらわないと!



そう力強く言ってくれた。



そして、車が実家に到着すると、既に工事関係の業者は全て退去していた。



そして、Aさんが、井戸が在ったであろう場所から少し離れた所に



何やら、地面に突き立てている。



あっ、Aさん、姫、連れてきたよ!



ところで、何してるの?



と聞くと、



さっき、説明しませんでしたっけ?



その女霊を説得しなくちゃいけないって・・・・・。



女の本体はもう、この井戸から出てしまっているんですけど、でも、



この井戸は、その女が封印されていたと同時に、その恨みの念を増幅



していった大切な場所でもあるんですよ。



だから、この場所で呼べば、必ず、その女はやって来る筈なんです!



そう言った。



そして、。姫の方を見たAさんは、



ごめんね。変な事に付き合わせてしまって。



恨むんならKさんを恨んでね!



それにしても、かなり力が入ってるよね。



凄いじゃない・・・・もうオールスター総動員って感じで。



これなら、なんとか説得出来るかもしれないね・・・。



そう言って、少しだけ笑った。



そして、のんびりしている暇は無いからね。



もう家の人も工事業者も退去させたから・・・。



だから、交渉が決裂しても、被害を負うのは私たちだけで済むから。



それじゃ、いきますかね・・・・。



そう言って、井戸の在った場所に近づこうとするので、俺が、



あの…俺も退避してればいいのかな?



と聞くと、



本当に面白い人ですよね。Kさんって・・・・。



私達は誰に頼まれてこんな危ない橋を渡ってると思ってるんですか?



それに、もしかしたら、Kさんの守護霊の力も借りなくちゃいけなくなるかも



しれませんしね・・・。



だから、Kさんは、そこでじっと見守っててください。



分かりましたね?



そう子供を諭す様に言われてしまう。



しかし、Aさんと一緒にいると、明らかにあれの霊感というものは増幅



されるのだろうか・・・・。



先ほどまで見えなかったものが、全てはっきりと見える。



Aさんを覆う凄まじい光。



そして、光を纏った姫の周りを固めている異形のモノ達。



それが味方だと知っていなければ悲鳴を上げてしまいそうな姿だが、



それも、その時には、何より心強い味方だと認識出来た。



噂には聞いていたが、姫の守護霊を見るのは初めてだった。



そして、凄まじい大きさの尻尾が九つに割れた狐、と双頭の巨大なヘビ。



そして、大きな白い犬。



どれも恐ろしい形相をしている。



そのどれもが、1体で、十分にこの世を滅ぼしてしまいそうな力が



在るようにすら見えてしまう。



そして、黒い光がやって来て、Aさん達の光りに重なった。



それから、どれ位の時間が経過しただろうか?



もう既に日が沈み始めている。



その時、突然、目の前に広がっていた光が消えた。



そして、疲れ果てた様に、俺の所にやって来るAさんと姫。



やっぱり、私、説得っていうのは性に合わないのかもね・・・・。



つい、ケンカ腰になっちゃうからさ・・・。



そんな事無いですよ~。



やっばりAさんの力って凄かったです。



私なんかまだまだですね・・・。



そんな会話が聞こえてきた。



俺がどうだった?と聞くと、Aさんはぶっきらぼうに、



まあ、何とかなつたから、ここに戻ってこれたんですけどね?



良いですよね・・・・ただ、のんびりしてただけの人は・・・。



そう冷たく返された。



すると、姫が、



でも、ちゃんと説得できましたから、Kさんのお友達ももう大丈夫ですよ。



そう言ってくれた。



そして、先ほどまで凄まじく恐ろしいものに感じていた姫を守護するモノ達の



姿もどこか、のんびりとした顔に見えた。



そして、巨大なモノ達も、ゆつくりと薄くなっていき、次第に消えていく。



俺が、



あのさ…俺、初めて見たんだけど、あれが姫の守護霊なんだ?



凄いね~



それに、友達っていうのも、凄過ぎるし・・・・。



そう言うと、



まあ、Kさんが姫ちゃんを怒らせでもしたら、すぐにあいつらに食われる



っていう事ですから・・・。



と冷たく返された。



そんな事しませんよ~



姫は必死に否定していたが・・・・。



そして、それ以後、彼女を含め、彼女の親族で怪異や不幸が発生する事は



無くなった。



それを聞いて、俺が、



良かったね。御苦労さま。



とAさんに言うと、



Kさん、勘違いしてませんか?



私と姫ちゃんは、あの女を説得しただけなんですから。



貴女を滅しない代わりに、もう、あの親族には関わるな、と。



だから、あの女はまだ、この世の中に存在し続けています。



そして、滅しないと、約束したからには、もう滅する事は出来ないんです。



それがルールなので・・・。



そう言った。



そして、



私は、その女の霊も心配ですけど、もっと心配なのは、呪われて死んでいった



親族の霊ですかね。



新たな呪いが始まらなければいいんですけど・・・・・。



そう言われて、俺は思わず背筋か冷たくなった。



  


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2018年11月10日

海辺のコテージ

これは友人が体験した話である。



そのコテージはとても人気があった。



海のすくそばに建ち、波の音が近くに聞こえる。



窓からは完全なオーシャンビューが広がっており、そこから見えるのは



砂浜と何処までも続く海だけ。



コテージの内部は南国をイメージした木目と白い壁で構成され、その広さ、



そして調度品の豪華さ等から、それなりに高額な利用料にも拘わらず、



いつも予約でいっぱいだった。



それが、偶然のタイミングなのか、ある日、何気なくそのコテージの予約ページ



を見ていた彼が発見したのは、『空き棟あり』の表示だった。



彼はそれを見て、すぐに予約を入れるとすぐに予約を確定する事が出来たという。



そして、ずっと前からそのコテージに泊まりたい、と言っていた彼女に慌てて



電話をかけると、ちょうどその日は家族との泊りがけの用事があり、無理だ、



という返事が返ってきた。



しかし、奇跡的に取れた予約だったので、彼は残念ではあったが、そのまま



予約をキャンセルせず、友人を誘ってそのコテージで一泊する事にした。



しかも、その友人というのは女性。



まあ、男性の友達を誘っても全て断られてしまった末の苦肉の策であり、



勿論、彼には何の下心も無かったそうなのだが・・・。



それでも、彼は彼女に断られた事で、それなら思いっきり人気コテージを



満喫してやろうと思い、当日が待ち遠しかったらしい。



そして、いよいよ当日になり彼は車に乗って1人コテージを目指した。



どうやら、女性の友人というのは、その日の午前中まで仕事だったらしく、



午後から彼と現地で合流する事になっていたそうだ。



彼は午前10時頃にコテージに到着すると、いそいそと管理事務所に立ち寄った。



そして、そこで、彼は管理事務所の男性から、以下の事を聞かされた。



午後5時以降は管理事務所には誰も居なくなるという事。



そして、何故か、その日、そのコテージに泊まるのは彼のグループだけであり、



他のコテージは全て空いているという事。



そして、最後に、



今日は、午後5時以降は絶対に1階の窓や玄関を開けないようにお願いします。



と、厳しく何度も繰り返し言われたという。



しかし、彼がその理由を聞いても、はっきりとした理由は教えて貰えなかったという。



彼は、とりあえず、管理事務所の男性に、わかりました、と言うと、そのまま



コテージの鍵をもらい、自分達が泊まる予定のコテージへと向かった。



全部で10棟ほど建っているコテージのちょうど真ん中の建物だった。



彼は事前にコテージのHPやネットで色々と調べていたのだが、実際に



観るコテージはとても豪華で、そしてお洒落な建物であり、コテージの裏は



全て海に接しているほどの状態であり、まさに夢に描いた通りのコテージ



だったという。



彼は早速、買い込んできた食材を冷蔵庫に入れて家の中を探索した。



1階には全面オーシャンビューの浴室があり、入口からまっすぐ伸びる



廊下の両脇にはトイレとゲストルーム、そしてその一番奥には広すぎる



リビングがあった。



そして、2階はといえぱ、階段を囲むように3つの寝室があり、そして



その奥には外に出られるテラスがあり、そこからは一面の海原が見渡せた。



これなら、利用料金が高いのもしょうがないな・・・。



彼はそう思ったという。



彼と一緒に泊まる予定の女性は到着が夕方になるという連絡が入っていた。



彼はやる事も無いので、冷蔵庫から買ってきたビールを取り出すと、



一気に3本ほど飲み干した。



海からの風がとても気持ち良かった。



彼は知らぬ間にウトウトしてしまい、そしてそのまま1階のリビングの



ソファーで寝入ってしまう。



夢を見たという。



彼が寝ていると、誰かが彼の名前を呼ぶ声が聞こえる。



彼はその声に応えるようにして起き上がると、その声の主を探しだす。



とても美しい女の声だった。



すると、彼が、ふと海の方を見ると、水平線の向こうから何かがこちらに



近づいてくるのが分かった。



そして、それを目を凝らして見ていると、どうやら海の上を平然と走って来る



1人の女性の姿だった。



彼はその様子を見ても特におかしいとは感じず、そのまま、その女性がこちらに



近づいてくるのを見守っていたという。



すると、最初は美しい姿に見えていた女性が、こちらに近づくに従って、



おぞましい化け物の様な姿になっていく。



彼は慌てて、開けていた窓を閉めようとするのだが、何故か窓は固くて動かない。



それでも、渾身の力で窓を閉めると、必死に窓の鍵を閉めた。



そして、再び、顔を上げた彼の視界にはもう、その化け物はいなかった。



見間違いだったのか・・・・。



そう思った時、突然、彼は肩を叩かれる。



あの女だ・・・・中に入られてしまった・・・・。



そう思った時に彼は夢から覚めた。



嫌な汗を体中にかいていた。



しかし、その汗は怖い夢を見たせいだけではなかった。



開けておいた筈の窓が全て閉まっており、そして鍵も掛けられていた。



当然、彼は窓を閉めた記憶も鍵をかけた記憶も無かった。



だから、



俺はまだ夢の中にいるのか?



そんな風に思ったという。



すると、突然、玄関のチャイムが鳴った。



彼は思わずドキッとしてしまい、ソファーから立ちあがった。



しかし、時計を見ると既に午後6時を回っていた。



やっと来たか・・・・・。



そう思い、彼は急いで玄関に向かった。



えらく遅かったんだな・・・。



そう言いながら玄関のドアを開けると、そこにはやはり彼が誘った友人が



立っていたという。



しかし、いつもは元気いっぱいという感じの女性なのだが、その時には何故か



一言も喋らず、暗い顔をしていたという。



どうした?



何かあったの?



彼がそう聞くと、その友人は、



なんでもない・・・・。



と一言だけ返してきた。



彼はそれが少し気にはなったが、せっかくのコテージなのだから中を見れば



その友人のテンションも上がるだろうと思い、中へと案内した。



中に入り、リビングに案内したが、その友人は相変わらず暗い顔をしていた。



まあ、とりあえず、ビールでも飲もうよ!



そう言って彼はビールを友人に手渡した。



しかし、テレビを見ても食事をしても友人は一度たりとも笑顔を見せなかった。



そのうちに、彼はその友人がまるで別人のように感じてしまい、何故か



怖くなってしまい、彼女を1階のリビングに残し彼は早々に2階へと



あがっていった。



2階へ上がり、自分の寝室に入ると、彼は無性に腹が立ってきた。



せっかくのコテージの楽しい時間が台無しだ、と。



これなら、いっそ1人で来た方が良かった、と後悔していた。



しかし、そんな疲れもあってか、彼はそのまま寝室で寝てしまう。



気が付いたのは真夜中の午前1時過ぎだった。



ふと、友人の事が気になった彼は、寝室を出て階段を降りていった。



1階の明かりは消えていた。



だから、彼は友人がきっと2階に上がって寝ているのだろうと思った。



そして、1階に降りてリビングに行って彼は固まった。



誰かがリビングの大きな窓から外を眺めていた。



それは友人の後姿だった。



彼は一瞬、ドキッとしたが、それでも着ている服が月明かりに照らされており



それは間違いなく友人の服装だったから、ほっと胸を撫で下ろした。



どうしたの?



こんなに真っ暗にして・・・・・



やっぱり何かあったの?



そう聞くと、背中を見せている友人の背中が小刻みに震えた。



もしかして、泣いてるのか?



そう思い、彼はもう一度、声をかけようとした。



すると、その瞬間、窓際で背中を見せたまま立っていた友人がこちらを向いた。



一瞬、何が起こったのか分からなかった。



そして、次の瞬間、めまいを伴って恐怖が襲ってきた。



振り返った友人の顔は笑っていた。



まるで、私の顔はどう?



とでも言いたげに不気味に笑っていた。



その顔は、顔が腐っている様な感じで、両目が大きく離れ、そして眼は



大きく吊り上っていた。



彼は恐怖で固まった体で必死に後ろへと後ずさりした。



本能が彼に危険を知らせていた。



そして、恐怖で顔をひきつらせている彼の顔が楽しくて仕方ないといった感じで



その女は突然、ゲラゲラゲラと笑いだした。



その声に彼は突然、我に返り、その場から一気に階段を駆け上がると、自分の



寝室に入り中から鍵をかけた。



部屋の明かりを点けようとしたが、スイッチは反応しなかった。



その女が追いかけてくる様な音は聞こえなかった。



彼は必死に携帯を取り出して友達に助けを求めようとした。



しかし、昼間は確かに繋がっていた携帯は、完全に圏外と表示されていた。



彼は何がどうなっているのか、理解出来なかった。



それでも、とにかく逃げなくては!と思い、寝室の窓から下を見た。



とても飛び降りて、ただで済む高さではなかった。



ロープがあれば何とか降りられそうだったが、そんな物など寝室に置いて



ある筈もなかった。



と、その時、突然、彼の視界に不思議なものが見えた。



それは、海の向こうから海面を白い道の様なものがコテージの裏まで続いて



いた。



あれはなんだ?



もしかして、俺はまだ夢から醒めていないのか?



そんな事も考えたが、明らかに彼はしっかりと起きており、恐ろしい現実を



思い知らされた。



それにしても、あれは本当に友人なのか?



服装は同じだが、明らかに顔は異形のモノだった。



だとしたら、やはり暗闇で俺が見間違えただけなのか?



そんな事を考えていた。



すると、突然、彼の寝室のドアがノックされた。



コンコン・・・・コンコン・・・・。



彼は息を殺して体を硬直させた。



すると、突然、声が聞こえてきた。



どうしたの?



突然、逃げだしたりして・・・。



私はもう元気になったから・・・・。



リビングで一緒に飲み直そうよ!



それは確かに友人の声だった。



しかし、彼は先ほどの恐怖ですぐには判断がつかなかった。



すると、また、



本当にごめんね・・・。



私が元気が無かったからだね・・・。



だから、私の顔が怖い顔に見えたんだね・・・。



と言ってくる。



間違いなく、それは友人の声。



彼は、やはり俺の見間違いだったのかも・・・。



そう思うと、ドアの方へ近づいて、



ごめん…今、開けるから・・・。



そう言って、ドアの鍵を一瞬だけ開けてすぐに戻した。



カチッという音がした。



その瞬間、ドアのレバーがガチャガチャと動かされるのが分かった。



そして、それと同時にまた、ゲラゲラゲラゲラという下品な笑い声が聞こえた。



やはり、俺を追いかけてきたんだ・・・・。



この部屋に入ろうとしているのか・・・・。



そう思うと、恐怖が更に押し寄せてきた。



彼は部屋の中で武器になりそうなものを必死に探した。



そして、部屋の隅に立てかけてあった金属製の天窓を開ける為の棒を手に取った。



こんな物でも、手に持っているだけで少しは勇気が出てきた。



そして。彼は思いついた。



こんな部屋に隠れてていてもいつかは部屋に入って来られるのではないか?



それならば、この棒を使って天窓から屋根に出られないか?と。



彼は椅子をベッドの上に重ねて置いた。



すると、ギリギリだが天窓に手が届きそうだった。



彼は急いで天窓を開けると、そのまま椅子を積み重ねて何とか屋根に出る事が



出来たという。



そして、上から椅子を崩し、誰も登って来られないようにした。



そして、天窓を閉じると、彼は屋根の上でようやく一息ついた。



ここにいれば助かるかもしれない・・・。



それにいざとなれば、この金属の棒で・・・・。



そう思うと少し安心したのか、彼は何故か睡魔に襲われてしまう。



彼は何とかそのまま朝まで起きていようとしたらしいが、やはり睡魔には



勝てず、そのまま眠ってしまったという。



どけだけ眠っていのだろうか・・・。



彼は顔に当たる心地よい風に、思わず目を覚ました。



其処は紛れもなくリビングだった。



そして、彼は誰かの膝枕で寝ているのが分かったという。



恐る恐る彼は視線を動かして上を見たという。



すると、そこには見た事も無い女・・・・。



いや、女というにはあまりにも恐ろしい顔をした老女が彼の頭を両手で



撫でていたという。



その恐ろしい顔は今でもはっきりと覚えているという。



そして、彼はそのまま再び意識を失った。



そして、朝になって、管理事務所の男性に発見された時には、彼はコテージの



裏の海に体半分が海に浸かった状態で寝かされていたという。



彼はそのまま病院に搬送されたが、体には異常は見られなかった。



ただ、彼が寝室として使っていた部屋は全てがズタズタに引き裂かれていた。



そして、不思議な事に、その日、約束したはずの友人の姿はその場には無く、



後日、聞いてみたところ、そんなコテージに行く約束などしていない、と



はっきりと言われたという。



だとしたら、彼は誰と約束をし、そして当日、そのコテージに現れたのは



一体誰なのだろうか?



ちなみに、彼はその後、管理事務所を訪問し管理人に問いただしたという。



どうして、あの日だけコテージが空いていたのか?



そして、自分が見たモノはいったい何なのか?と。



しかし、管理人は話をはぐらかすだけで何も答えてはくれなかったという。



そして、今でもそのコテージは1年の殆どを満室状態という人気で運営



されているが、やはり彼が泊まった日と同じ月日には、誰も予約を入れない



のだという。



そのコテージには一体何があったのか・・・・。



いつかは、調べてみたいと思った。
  


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2018年11月10日

最終電車とスマホ

これは友人の身に起こった話。



その時、彼は駅へと走っていた。



会社の飲み会が長引いてしまい、最終電車に間に合うように



必死だったのだ。



いつもは車通勤だったから、電車に乗る事に慣れていない彼は、本当は



時間に余裕をもって飲み会を退席するつもりだった。



なにしろ、彼がその日飲んでいた白山市のとある駅から、彼の家がある



小松市粟津駅までは電車の本数も限られていた。



もしも、次の電車に乗れなければ、そのまま朝まで駅で過ごすしかなかった。



しかし、なかなか言い出すタイミングが見つからず、予定の時刻をかなり



過ぎての退席になってしまった。



正直、時間的にはかなり厳しかった。



必死で走ってはいたが、日頃の運動不足もあり、なかなか体が前へと



進まない。



そんな感じで走っていると、ちょうど駅が見えだした頃には最終電車の



発車時刻になってしまった。



彼は、急いで駅に駆け込むと、券売機で切符を買い、ホームに降りた。



電車の発車が遅れてくれているのを祈るしかなかった。



しかし、彼の祈りが通じたのか、彼が乗る予定の電車がまだ



ホームに停まっていた。



彼は、一気に走りだし、そして間一髪、その電車に乗った。



彼が乗るのを待っていたかのように、電車の扉が閉まったというのだから、



本当に運が良いとしか言えない。



彼は、一気に走ったので、息切れが激しかったが、それでも、なんとか



その最終電車に乗れた事を喜んでいた。



そして、電車に乗り込む時には気にしなかったが、バタバタと大きな音で



乗り込んでしまった事が恥ずかしくなってしまい、そっと周りを



見まわした。



しかし、彼の乗り込んだ車両には誰一人乗ってはいなかった。



彼はホッとして、ポケットから携帯をスマホを取り出して、ゲームを



始めた。



そして、彼は思っていた。



それにしても、最終電車とはいえ、時刻はまだ午後11時前。



それなのに、車両に誰も乗っていないなんて、どれだけ需要が



無いんだろうか、と。



そして、スマホで、3分ほどゲームを続けていた彼は、ふと違和感を



感じて視線をあげた。



彼が視線をあげた視界の中は全ての席が乗客で埋まっていた。



彼は思わず、車両内を見回した。



すると、彼が座っている席以外は全ての席が乗客で埋まっていた。



なんで?



彼は、不思議でしょうがなかった。



というのも、彼が電車に乗ってから、どこの駅にもまだ停車しては



いなかった。



何処かの駅に停車して、一気に客がなだれ込んできたのなら理解出来るが、



いったい、この沢山の乗客は何処からやってきたのか?と。



彼は、それまで、車両に一人きりという事もあり、座席に寝転ぶ様にして



スマホでゲームをしていたが、さすがに他の乗客の前で、そんな



恰好で座るわけにもいかない。



彼は座席に、しっかりと座りなおすと、再びゲームを始める。



しかし、どうも落ち着かなかった。



まるで、誰かに監視されているかのような視線を感じていた。



だから、彼はもう一度、車両内の客をまじまじと見た。



すると、老若男女、様々な乗客が乗っているのに、その全員が



うつむいてスマホの画面を凝視している。



それも、操作をしている様子は無く、全員が、ただスマホの画面を



見つめているだけだった。



どの顔にも感情というものは感じられず、まるでロボットかマネキン



の様に見えたという。



彼は、その時、



自分も他人から見たら、あんな風に見えているのかもしれないな・・・。



そんな事を思って、少し複雑な気持ちになった。



だから、その時は、電車に乗っている間だけでもスマホを見ない様に



しようと思ったという。



それにして、不思議だった。



他の乗客たちは、皆、スマホの画面を凝視しているというのに、先ほどから



感じる視線は何なのか、と。



だから、彼はもう一度、自然な感じで辺りを見回した。



しかし、やはり他の乗客たちは全員、スマホを見たままだった。



そして、彼は少し悪戯心を出してしまう。



スマホノ自撮りモードで車内を見てみたらどうなるのか?と。



だから、彼は再び、スマホを取り出すと、カメラモードを自撮りにして



車内を見渡した。



彼は思わず固まってしまった。



そこには、先ほどまで画面から視線を外さなかった乗客全員が、



間違いなく彼の方を睨んでいた。



其処には、怒りの様な恨みの様な感情が感じられたという。



どうして?



俺が何かしたのか?



彼は思わず頭がバニックになった。



それと同時に、得体のしれない気持ち悪さを感じたという。



どうする?



どうする?



彼は必死に考えていた。



すると、その時、彼が降りる筈のひとつ前の駅に電車が到着する



旨のアナウンスが流れた。



彼は迷う事も無く、開いたドアから一気にホームへと飛び出した。



彼の他に、その電車から降りる者は誰もいなかった。



しばらくすると、その電車はそのまま静かに、そのホームから



走り去っていった。



彼はホッとしてホームのベンチにへたり込んだが、結局、そのまま



朝まで、その駅の外にあるネットカフェで過ごす羽目になったという。



そして、話はそれで終わらない。



それから、彼のスマホには、気が付くと、全く知らない番号が電話帳に



追加されている様になった。



その番号には名前が無く、番号のみが追加されているのだが、その番号は、



携帯番号でも固定電話の番号でもなく、とても奇妙な番号なのだという。



一度、その番号から彼に電話がかかって来た事があるのだが、勿論、



彼はその電話には出なかったという。



そして、彼は、その見知らぬ番号がどんどんと増えていくうちに、さすがに



気持ち悪くなってしまい、今では携帯もスマホも一切持たないように



なったという事である。
  


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2018年11月10日

結界を張る人達

これは、富山の住職から聞いた話。



どうやら、この日本という国には、いまだに科学では証明出来ない



事が本当に多く起こっているようだ。



よく、科学で証明出来ないものは実在しないのと同じ、という言葉を



耳にするが、それは単なる人間の奢りにしか聞こえない。



実際、人間は海に関して、まだほんの僅かしか分かっていないし、



地下、そして宇宙ともなれば、全く分かっていないに等しいのかも



しれないからだ。



そして、現実として、霊的なものに悩まされ生きた心地もしない毎日を



送られている方も多いのだろう。



ただし、人間としても、全ての人がただ漠然と生活を送っている訳では



ないようだ。



この現代において、自らの静かな生活というものを捨てて、修行に



明け暮れ、そして、その力をこの国の安定の為に費やしている



人達がいるのだという。



それも、1団体というものではなく、複数の集まりが、それぞれの



修行のもとに、力を高め、日本全土を覆うようにして結界を



張っているのだそうだ。



それぞれの団体や集まりが相まみえたり親交を交わす事は無いようだが、



それぞれの方達が目指している目的は、ただ一つ。



すべての人が霊的なモノに脅えないで暮らせる世界を作ること。



本当に頭が下がる思いである。



そして、それを俺に教えてくれたのは懇意にしてもらっている



富山の住職だ。



そして、どうやら富山の住職の昔の仲間も、その団体に所属し、日々、



日本中を移動しているのだそうだ。



富山の住職も、似た様な事をしているが、それはあくまで個々の案件に



対しての対処に限定されるものだし、何より、すぐに結果が出ない



であろう、日本全国に結界を張る、という気の遠くなりそうな



試みとは全く別のものだという。



実際、日本全土に結界を張るという作業は、日本中を一回りして



終わりというものではないらしい。



常に日本中を移動しつつ結界を張って、それを維持していく。



きっと、その作業は一生かかっても成し得ないものだろうし、それを



いずれは次の世代の者達が引き継いでいくことになるのだろう。



まさに終わりなき献身としか言えない。



そんな古き友人と、富山の住職は会って酒を飲み、お互いの思いを



ぶつける事もあるのだという。



その友人というのもかなりの能力の持ち主らしく、大抵の霊ならば



簡単に除霊し、浄化に持っていく事が出来るのだという。



お互いに厳しい修行をこなし、幾多の経験を積んできた二人。



そして、酒の席で必ず話題にのぼるのが、Aさんと姫の事だという。



友人は、住職に対して、いつも、自分たちの行動に参加しないか?



と誘ってくるらしい。



もうこの日本には、それ程の霊力を有した者などいないのだから、



お前は貴重な人材なのだ、と。



しかし、住職はいつも、その誘いを固辞している。



そして、そんな時、必ず住職が言う言葉は、



今の日本だって捨てたものじゃない・・・。



若い者にも、有能な霊能者は沢山いるし、中には常識では考えられない



能力者もいる。



だから、今は、そんな若者達を見ている方が楽しい。



という言葉である。



そして、その言葉の後には、必ず、Aさんと姫の話をするらしい。



かたや、若いのに、自分など足元にも及ばない様な霊能者であり、



かたや、修行も殆どしていないにも拘らず、化け物じみた霊力を



持っているのだと。



そして、その二人は女性であり、日頃は普通に働いたり学校に通ったりしている



のだと。



すると、いつも、その友人に、馬鹿馬鹿しい、といって笑われるらしい。



だからといって、住職も、決して笑われたことに反論はしない。



まあ、お前にも今に分かるよ・・・。



そう言って、話を終わらせるのだという。



そして、俺が、



どうして?もっと、ちゃんと説明してやればいいじゃん?



と言うと、



まあ、こんなものは、口で幾ら説明したって分かって貰えるもんじゃないしな。



何しろ、最初は俺自身も信じられなかったくらいだから・・・・。



自分はあれほど苦しい修行をしてきたのに、どうして?



って、感じで。



それに、実際、この日本には、あいつらが知らないとてつもない霊能者が



まだまだ埋もれてると俺は思ってるから・・・。



Aさんの師匠もその力は計り知れないし、それにお前に憑いている



守護霊だって、あの二人がいるから目立たないが、相当なもの



なんだから・・・・。



まあ、お前は全くそれを自覚していないけどな(笑)



そう言って笑った。



そして、それから数ヶ月後、富山の住職から面白い話を聞いた。



Aさんと姫が、住職の寺で修行めいた事をせっせと行っていた時、



偶然、その友人が寺を訪ねてきたのだという。



血相を変えて、寺に駆け込んできた友人が、



おい!この寺で今、大変な事が起こってるんじゃないのか?



それにしても変なんだ。



凄まじい妖気と、とてつもなく強い結界が共存してる・・。



お前も分かってるだろうが、そんな事は起こり得ない事なのに・・・。



それなのに、お前は平然と構えている。



その理由を教えてくれ!



と、住職に食って掛かった。



そこで、住職は、



だから、前から何度も話してるだろ?



これが、お前が知らなかった現実ってやつだよ!



そう言うと、住職は笑いながら奥にいたAさんと姫をその友人に



紹介したそうだ。



え?今忙しいんですけど、何か?



とぶっきらぼうなAさんと、



うわ~、ちょうど休憩したかった所なんですよ~



あっ、お客さんですか~



はじめまして。



こんにちは~。



と、いつも通り、呑気な姫。



そして、それとは対照的に、完全に固まり目を白黒させている住職の友人。



こんな・・・・こんな事が本当にあるのか!



そう言って、二人をまじまじと見つめている友人に対して、



あの…見世物じゃないんですけど?



何か文句でもあります?



と好戦的なAさん。



そして、



そんな言い方したら駄目ですよ~



もっとフレンドリーに・・・・。



とマイペースな姫。



きっと、その友人も、Aさんや姫から感じるオーラが見えたのだろう。



更に、姫の背後にいるモノ達も・・・・。



しばらく開いた口が塞がらなかった友人だったが、しばらくすると、



うーん・・・・本当に世の中は広いもんだな・・・。



しかも、こんなレベルの霊能者が、こんな場所にいるなんて!



奇跡としか言えないかもしれない・・・。



そう言っていたという。



そして、Aさんも姫も、どこの宗派にも属しておらず、ある意味、



かなりの部分を独学でやってきたという事を聞いて更に



驚いていたという。



そして、最後には、こんな言葉を残していったという。



これじゃ、馬鹿らしくてこの地方に結界を張る意味なんて



無くなるよ、と。



それを聞いて、俺も、



確かに人格に問題はあるが、Aさんや姫がいれば、きっと



それ自体が結界となって、この辺り一帯は安泰なんだろうな、と



納得してしまった。
  


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2018年11月10日

友達という力

最初にその女の子を見た時、その大人びた雰囲気に圧倒された。



その女の子とは、友人の看護師の依頼で会う事になった。



その女の子は、ちょうど大学生くらいだろうか・・・。



内臓疾患で入院していた彼女は、いつしか自分は死ぬのだと思い始めたらしい。



実際には命に別条があるほどの病気ではなかった様だが、長い入院と



リハビリ、そして何度かの手術が必要な事は間違いなかった。



いつしか、学校に通う事も無くなり、病院での生活が当たり前になった。



そして、そんな暮らしをしていると、塞ぎこんでしまうのは理解できた。



しかし、そんな彼女の思いが、どんどん病気を悪化させ、精神的にも



追い込まれてしまう。



病状は悪化の一途をたどり、命さえ危ぶまれた。



そして、精神的にも病んでいった彼女には死神のようなものが見える



様になっていく。



そして、自分で出した答えが、



自分はもうすぐ死んでこの世から無くなるんだ・・・・。



というものだった。



ただ、彼女には実際に死神が見えていた様であり、時折、悲鳴のように



叫ぶこともあり、周りは患者たちは彼女を避け、医師や看護師すら、



ある意味、彼女に対して一定の距離を置くようになっていった。



そんな彼女を見かねて、俺の友人の看護師が俺に助けを求めてきた。



本当に死神がいるのか?



いるとしたら、その死神というものから彼女を救う事は出来ないのか?と。



そこで、俺はいつものAさんに相談した。



その時、何故かAさんは、いつもとは違い、すぐに快く協力してくれる事に



なった。



そして、俺と一緒に病院に行き、彼女に面会した俺達だったが、その時、



Aさんは、



ああ・・・・これは難しいかもしれないですね・・・・。



とだけ言った。



俺達は場所を変えて、話す事にした。



俺はAさんに聞いた。



本当に彼女には死神が憑いているのか?と。



すると、Aさんは首を振りながらこう言った。



そりゃ、病院ですから死神もいますけどね・・・。



あいつらにとっては最高のテリトリーですから。



でも、彼女には死神はついていませんよ。



死神っていうのは、死んだ人、これから死んでいく人を導くものであって、



決して人を殺せる力はありませんしね・・・。



それに、いくら私でも死神とは対峙したくはありませんから。



アレは、霊とか、そういうもの値は違って、必然の存在であり、ある意味、



神ですから・・・。



浄化も出来ないし、消滅させることも出来ない。



だから、私でも勝ち目はありませんから・・・。



でもね・・・たまにいるんですよ。



いくら死神といっても感情があるみたいで・・・。



つまり、死んでしまう予定の人の寿命を延ばしてしまったり・・・。



そんな事をしたら、自分の身が危なくなるのに・・・ですよ。



だから、あいつらもそんなに嫌なだけの存在ではないんですよね。



人の生死を司ってる神ですから・・・。



だから、一生懸命生きようとしている者を助けたり、またその逆も



ありえますから・・。



要は生きたい、完治したい、と思わない者は、死亡者の候補リストに



載せられます。



そうなってしまうと、なかなか回復もしないし、病状は悪化の一途・・です。



つまり、今の彼女がそうなんですよね。



あの子も眼は行きたいという力が欠如しています。



もう諦めてしまってるというか、勝手に自分の死を悟ってるというか・・。



だから、このままでは本当に危険かも知れませんね・・・。



昔の私と同じ・・・です。



そう言った。



俺はすかさず、その言葉に聞き返した。



同じって、どういう事?と。



しかし、Aさんは、ぶっきら棒に



まあ、人にはそれぞれ色々な過去があるって事ですよ。



だから、という訳ではありませんけど、私は彼女を救いたいと思ってます。



Kさんはどうしますか?



と逆に聞き返された。



俺は、



勿論、俺も協力するに決まってるじゃない!



と言うと、Aさんはニッコリと笑って、



それじゃ、彼女に友達が出来るように力を貸してあげてください。



きっとあの子には友達といえる仲間がいないはずだから・・・。



それがどれだけ強い力なのかを先ず彼女に理解してもらわないと・・。



私は私にしか出来ない事をしますから・・・。



そう言われた。



俺は考えた末に病院内を回り、彼女と相性が良さそうな人を見つけては



声をかけた。



彼女と友達になってくれませんか?と。



毎日、仕事中、そして仕事が終わってから病院に行き、彼女の友達になって



くれる人を探し続けた。



本当の友達が一人でも見つかれば・・・。



そう思いながら。



そして、しばらく仕事が忙しくてなかなか病院に行けない日が続いたあと、



久しぶりに彼女の元を訪れた俺は思わず驚いてしまった。



彼女の病室が、友人達の溜まり場になってしまっていた。



同じ患者さんもいれば、私服の学生も、そして社会人らしき人もいた。



それを見て、看護師さん達も立場上、注意をしていたが、その顔は



どこか嬉しそうだった。



そして、彼女自身の顔も、それまでとは全く別人のように明るく自然に



笑顔がこぼれるようになっていた。



それを見て、安心した俺は、その場から立ち去ろうと廊下へ出た。



すると、廊下の向こうからAさんがこちらへと歩いてくる。



そして、その横にはにこにこと笑った姫の顔もあった。



本当に薄情な人ですね・・・。



全然、顔も出さないで・・・。



と冷たい目で見つめるAさん。



Kさん、お久しぶりです!



お元気そうで何よりです(笑)



と相変わらずの姫。



そして、Aさんは彼女の病室を見て、少しほほ笑むと俺をそのままその場から



連れ出して別の場所へと移動した。



そして、



もう大丈夫ですね!



あれだけ素敵な笑顔が出来ればもう大丈夫です!



彼女の事を大切だと思ってくれる人達のパワーが沢山彼女に注がれてますから。



どんな薬よりも、そういう力って凄いパワーを持つんです。



不可能を可能に帰る程の力を・・・。



とAさんが言う。



俺は得意げな顔で、



あのさ…今回は俺の大活躍って感じかな!



彼女に友達が沢山出来るように頑張ったんだからさ!



そう言うと、Aさんは、冷たい顔をして、



それはあくまできっかけだけですよ。



友達がたくさんできたのは、あくまで彼女の力なんですから・・・。



それに、彼女に纏わりついていた負のオーラを祓って、陽の気で満たしたのは



彼女自身の力。



まあ、私はなにもしてませんけどね!



と言い放つ。



すると、その後ろから姫が、



あの・・kさん。



Aさんも、かなり頑張ったんですよ~



病院中から負の要素を払拭したり・・・・。



それに、さっきは、死神に直談判してましたから。



あの子に何かしたら、私が黙ってないから・・・って。



例え、死神が相手でも、ただでは済まさないって。



まあ、死神さんも困った顔をしてましたけどね(笑)



それを聞いた、俺は、



やっぱり、あの子、死神に目を付けられていたの?



と聞くと、Aさんは、面倒くさそうに、



ああ・・・そういう予定は無いっ、て断言してましたから大丈夫です!



それに、彼女には大好きだった祖父母がずっと付いていてくれてますから、



もう安心ですね!



やっぱり負のオーラを取り払った私の功績という感じですかね・・・。



と自慢げに言っていた。



結局、その後、彼女は何度かの手術にも耐え、リハビリも頑張って予定よりも



早く退院し、今では普通の女性よりも元気な生活を送っているほどだ。



  


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2018年11月10日

真夜中のトイレ

これは俺の友人が体験した話である。



彼は、高校の教師をしながら、休日はバンド活動に勤しんでいる



30代。



結婚して奥さんと一人のお子さんと一緒に金沢市北部の一戸建てに



住んでいる。



その家というのは、中古物件として掲載されていたものを思い切って



購入したらしいが、綺麗にリフォームされており立地も良い割には



かなりのお買い得価格だったという。



しかし、彼ら家族が住むようになって、怪異というのは殆ど起きて



いないという事だから、きっとその家が安かったのは別の理由が



あったのだろう。



そして、殆ど起きていないと聞いた俺は、それじゃ一度くらいは



不思議な事が起こったの?ときいたところ、話してくれたのが



これから書く話だ。



彼の家は国道から20メートル位、入った場所にある。



建物は2階建てで1階にはリビングと和室、そしてキッチン、



トイレ、浴室があり、2階にはちょうど3部屋あり、家族それぞれが



自分の部屋として使っている。



結婚当時は、夫婦一緒に寝ていたそうだが、子供が出来てからは



夫婦は別々の部屋で寝るようになり、今でもそれは続いている。



彼は寝付きもよく、一度寝ると、朝まで起きる事が無いそうだ。



そして、その日の夜も、彼はすぐに寝てしまう。



それも、買ってきた本を読んでいる時、そのまま知らぬ間に寝てしまった



のだという。



そして、彼は夜中に突然目が覚めた。



明かりを消した記憶は無かったが、何故か部屋は真っ暗だった。



だから、彼は、きっと妻が消してくれたのだろう、と思っていた。



そして、彼はそのまま起き上がると部屋を出て1階のトイレに



行く事にした。



決して新しい家ではなかったから、廊下や階段を歩くと、必ずミシミシと



大きな音がする。



だから、彼は出来るだけ音が出ないように静かにゆっくりと部屋から



出た。



そして、廊下の電気を点けて階段をゆっくりと降りていく。



階段にも明かりはなく、1階の廊下の明かりのスイッチも2階には



無かったから、彼は暗い階段を更に真っ暗な1階の廊下に向けて



降りていかなければならない。



正直、彼は、夜中に1階へ降りるのは好きではなかった。



子供がいる手前、怖がっていると悟られる訳にはいかなかったが、



どれだけ、この家に住んでいても慣れる事がなかった。



ただ、それも、1階へ降り、そこにある明かりを点ければすぐに



解消される恐怖ではあったのだが・・・。



だから、彼はその時も、ほんの少しの辛抱だと思いながらゆっくりと



階段を降りていった。



そして、問題無く1階の廊下へ着いた。



そこで、いつも玄関に向かう廊下の方を見て、誰もいないのを確認してから



明かりを点けるのがいつものパターンだった。



彼はいつもの様に、玄関へと続く廊下にチラッと顔を向けた。



心臓が止まるかと思ったという。



いつもは誰もいる筈のない廊下に間違いなく誰かが立っていた。



女だったという。



色は分からなかったが、長いドレスを着た女が、間違いなく玄関の



横に立っていた。



人間というのは不思議なもので、いつもは幽霊が怖いと思っていても、



いざ、そういう場面に遭遇すると、それは幽霊ではなく、誰かが



家の中に侵入している、と判断してしまうらしい。



彼は、恐ろしくて廊下の明かりをつける事が出来ず、そのまま



階段を降りたところにあるトイレの明かりを点けると、急いでトイレの中に



逃げ込み、中から鍵をかけた。



もう用を足す余裕など無かった。



トイレの中で、彼は必死に、あの女は何者だ?と考え始める。



どうやって、家の中に入ってきた?



何が目的なんだ?



泥棒?・・・それとも不審者?



そんな事を考えていると、彼は究極の答えに辿り着く。



女だったら俺にも勝ち目はあるんじゃないのか?と。



だから、彼は深呼吸して気持ちを落ち着かせた。



トイレの外から聞こえてくる音は一切聞き漏らさない様にした。



しかし、トイレの外からは何も聞こえてこない。



彼は、思い切って、トイレの鍵を開けてゆっくりと開いていく。



本当は、思いっきり勢いよく開けたかったが、それ程の勇気は無かった。



もしも、誰かがいても、ゆっくり開けていけば、すぐにまた閉められる。



そう思っていた。



そして、トイレのドアが半分ほど開き、廊下から音が聞こえてこないのを



確認して彼はトイレから出て、廊下の電気を点けた。



しかし、何故か廊下の電気は点かなかった。



仕方なく、彼は再び、玄関の方を見ると、そこにはもう誰もいない。



しかし、やはり怖かった彼は、そのまま玄関を確認せず、さっさと階段を



あがって自分の部屋に入ろうと思った。



やはり素手というのは心許なかったし、部屋に戻れば、護身用の木刀も



ある。



玄関を確認するのなら、一度部屋に戻ってから・・・。



そう思っていた。



彼は、階段をのぼり始める。



今度は、わざと大きな音が鳴る様に、力強くのぼった。



すると、何か声の様なものが聞こえた気がした。



彼はよせば良いのに、わざわざ振り返って階段下の廊下を確認した。



其処には、先ほど玄関横に立っていたであろう女の姿があった。



じっと彼の方を見上げていたという。



彼は恐怖のあまり大きな悲鳴を上げそうになったが、全く声が



出なかったという。



なんだ?



どうなってるんだ?



そう思った瞬間、階段下にいた女が彼めがけて一気に階段を駆け上がって来る。



一瞬の出来事だった。



気が付いた時には、彼は階段に尻もちをつき、女の顔がすぐ目の前にあった。



昼間見たらきっと美人だったのだと思う。



しかし、夜中、真っ暗な階段で、しかも間近で見る女の顔は、十分な



恐怖を彼に与えた。



しかも、その女はドタドタと階段をのぼって来たにも拘わらず、誰も



起きてくる気配は無かった。



そして、次の瞬間、その女は彼が固まる目の前で、大きな声で笑った。



思わず耳を塞ぎたくなるような不気味で甲高い笑い声だった。



そこで、彼は意識を失った。



そして、朝になり、起きてきた妻に発見されたという事だった。



しかし、彼はその夜の事を家族の誰にも話さなかったという。



何故?



と聞く俺に、彼は、



だって、その話をして家族がこの家に住めないって言い出したら



大変ですから・・・。



新しく家を買う余裕も無いし・・・・。



だから、トイレに行って寝ぼけてそのまま階段で寝てしまったという事に



しておくのが一番なんですよ・・・。



そう言って笑った。



ちなみに、彼がその家で怪異に遭遇したのは、その時、一度きり



なのだという。



だから、もしかしたら、寝ぼけていたのかも?



と言っていたが、その後、彼に聞いた話では、朝になって、自分の部屋に



行くと、彼の部屋の明かりが点いたままになっており、部屋中に物が



散らばっていたのだという。



几帳面な彼が、寝ぼけていたとしてもそんな事をするとは到底



思えないのだが・・・。
  


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2018年11月10日

同級生はお花屋さん

これは花屋を営んでいる同級生から聞いた話である。



彼女とは中学時代、すっとクラスが一緒だった。



勿論、それ以上でも以下でもないのだが、高校を卒業してすぐに家業の



花屋を継いだ彼女とは、それからなんとなく付き合いが続いている。



妻と結婚する前、そして結婚した後も、記念日などに花を贈ろうと



思った時、いつも利用させて貰っているのが彼女の店である。



たいして仲が良かった訳でもないのに、同級生だったというだけで、



予算を超えた花を用意してくれたり、無理な注文を聞いてくれたり、と



俺としては本当に大助かりである。



そんな彼女が体験した話をひとつ。



それは、ちょうど一昨年の秋だったという。



その日の仕事が終わり、店じまいをしていると、ひりとの女性がふらっと



店にやってきた。



もう、閉店時間は過ぎていたが、その女性の様子が少しおかしかったらしく、



彼女はそのまま様子を見る事にした。



様子がおかしいというのは、何かぼんやりと焦点の定まらないような眼を



していたという事。



そして、その女性は店内をゆっくりと進み、バケツの中に無造作に入れられている



花をじっと見つめていたという。



彼女は、



何かお探しの花でもありますか?



と声を掛けたのだが、返事は無かったという。



そして、相変わらず、バケツの中の花をじっと見つめている。



その時、彼女は直感的に、



あっ、この女の人、もしかしてお金が無いのかな・・・・。



そう思ったという。



しかし、商売はともかくとして、花が好きな人には悪い人はいない、というのが



持論の彼女は、その女性に対して



あの・・・この花でよろしければ差し上げますよ!



そう言ったという。



そして、その花を新聞紙で包むと、その女性に差し出した。



その女性は小さくお辞儀をすると、そのままゆっくりと店を出ていったという。



そして、その日から毎日、店じまいをしていると、必ずその女性がお店に



現れるようになった。



そして、いつもバケツの入れてある廃棄するつもりの花をじっと


見つめているのだという。



勿論、彼女は、その度に、どうせ捨てるんだから、と思い、その花を女性に



手渡してあげたという。



ショートカットでOL風に見える容姿だったが、どこか寂しそうな



顔を見て彼女はいつも心配していたという。



もしかしたら、凄い悩みを抱えているのか?



もしかしたら、とても貧乏な暮らしなのか?



だから、彼女は自分の心の中でどんどんとその女性に対する興味が高まって



いくのを感じていた。



そんな日が2か月くらい続いた日、その日はいつもよりも早い初雪が



降った日だったという。



いつものように、雪が降る中、店じまいをしていると、いつものように、



その女性が現れた。



その頃には店に入る際には小さく会釈をしてくれるようになっていた。



彼女も、毎日やってくるその女性の為に、あらかじめ、あげる花を



用意する様になっていた。



雪の中なのに大変ですね?



寒くありませんか?



いつも同じ服装で現れるその女性に、彼女はそんな言葉をかけた。



そして、いつものように花を差し出すと、いつものように小さく会釈



をして、その女性は花を受け取った。



女性は、ふらふらと店の外に出ていく。



そこまではいつもの光景だった。



だが、その時、彼女は決めていた事があった。



もしも、こんな雪の中でも、花を受け取りに来たとしたら、今夜こそ、



彼女が何故毎日花を貰いにくるのかを確認しよう、と。



彼女は急いで店を出ると、その女性が歩いて行った方向へと走った。



女性にはすぐに追いつく事が出来た。



尾行しているのを気付かれないようにある程度の距離を保って歩いた。



それにして、降りしきる雪の中でも傘すら差さない。



彼女は、更にその女性の事が分からなくなった。



女性は、とぼとぼと車の通行の少ない道を選ぶ様にして歩いていく。



そして、そこから大通りに出た所にあるガードレールの前で立ち止まった。



すると、彼女の方を向いて、今度は大きくお辞儀したという。



尾行がばれていたの?



そう思っている彼女の前で、その女性はゆっくりと薄い霧のようになっていき、



降りしきる雪の中に消えていった。



彼女は唖然としてしまった。



放心状態といっても良かった。



自分の目の前で人が一人消えてしまったのだから・・・。



しかし、次の瞬間、彼女は全てを把握した。



その女性が消えたガードレールには大きな凹みと傷が出来ており、その下には



無造作に花が置かれていた。



それは紛れもなく、彼女がその女性に渡してきた花だったという。



そこで事故があったの事は知っていた。



そして、運転していた女性が亡くなったの事も知っていた。



しかし、まさか、その女性が自分の事故現場に供える為の花を自分の店に



貰いに来ていたなんて・・・・。



だが、その女性が生きている人間ではない事を裏付けるように、女性が



歩いてきた跡には、足跡はひとつも付けられてはいなかった。



不思議ではあったが、怖さは感じなかったという。



そして、翌日からは、彼女が毎朝、その場所に花を手向ける様にした。



捨てる予定の花ではなく、立派な花束を毎日・・・。



そして、生前にはあった事も無いその女性の為に、しっかりを手を合わせて



お参りした。



すると、その日から、もうその女性が店に来る事はなくなったという。



そんな彼女だが、もう一度、その女性に遭いたいと思っている。



だって、その女性って、小さく会釈した時に少し嬉しそうに笑ってくれたんだから。



とても素敵な笑顔だったんだよ・・・・。



そう言って、その女性を思い出して嬉しそうだった。


そんな彼女は、それからもずっと毎日、そのガードレールに素敵な花束を


備え続けているということだ。


これからも、ずっと・・・・。
  


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