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2018年11月10日

最終電車とスマホ

これは友人の身に起こった話。



その時、彼は駅へと走っていた。



会社の飲み会が長引いてしまい、最終電車に間に合うように



必死だったのだ。



いつもは車通勤だったから、電車に乗る事に慣れていない彼は、本当は



時間に余裕をもって飲み会を退席するつもりだった。



なにしろ、彼がその日飲んでいた白山市のとある駅から、彼の家がある



小松市粟津駅までは電車の本数も限られていた。



もしも、次の電車に乗れなければ、そのまま朝まで駅で過ごすしかなかった。



しかし、なかなか言い出すタイミングが見つからず、予定の時刻をかなり



過ぎての退席になってしまった。



正直、時間的にはかなり厳しかった。



必死で走ってはいたが、日頃の運動不足もあり、なかなか体が前へと



進まない。



そんな感じで走っていると、ちょうど駅が見えだした頃には最終電車の



発車時刻になってしまった。



彼は、急いで駅に駆け込むと、券売機で切符を買い、ホームに降りた。



電車の発車が遅れてくれているのを祈るしかなかった。



しかし、彼の祈りが通じたのか、彼が乗る予定の電車がまだ



ホームに停まっていた。



彼は、一気に走りだし、そして間一髪、その電車に乗った。



彼が乗るのを待っていたかのように、電車の扉が閉まったというのだから、



本当に運が良いとしか言えない。



彼は、一気に走ったので、息切れが激しかったが、それでも、なんとか



その最終電車に乗れた事を喜んでいた。



そして、電車に乗り込む時には気にしなかったが、バタバタと大きな音で



乗り込んでしまった事が恥ずかしくなってしまい、そっと周りを



見まわした。



しかし、彼の乗り込んだ車両には誰一人乗ってはいなかった。



彼はホッとして、ポケットから携帯をスマホを取り出して、ゲームを



始めた。



そして、彼は思っていた。



それにしても、最終電車とはいえ、時刻はまだ午後11時前。



それなのに、車両に誰も乗っていないなんて、どれだけ需要が



無いんだろうか、と。



そして、スマホで、3分ほどゲームを続けていた彼は、ふと違和感を



感じて視線をあげた。



彼が視線をあげた視界の中は全ての席が乗客で埋まっていた。



彼は思わず、車両内を見回した。



すると、彼が座っている席以外は全ての席が乗客で埋まっていた。



なんで?



彼は、不思議でしょうがなかった。



というのも、彼が電車に乗ってから、どこの駅にもまだ停車しては



いなかった。



何処かの駅に停車して、一気に客がなだれ込んできたのなら理解出来るが、



いったい、この沢山の乗客は何処からやってきたのか?と。



彼は、それまで、車両に一人きりという事もあり、座席に寝転ぶ様にして



スマホでゲームをしていたが、さすがに他の乗客の前で、そんな



恰好で座るわけにもいかない。



彼は座席に、しっかりと座りなおすと、再びゲームを始める。



しかし、どうも落ち着かなかった。



まるで、誰かに監視されているかのような視線を感じていた。



だから、彼はもう一度、車両内の客をまじまじと見た。



すると、老若男女、様々な乗客が乗っているのに、その全員が



うつむいてスマホの画面を凝視している。



それも、操作をしている様子は無く、全員が、ただスマホの画面を



見つめているだけだった。



どの顔にも感情というものは感じられず、まるでロボットかマネキン



の様に見えたという。



彼は、その時、



自分も他人から見たら、あんな風に見えているのかもしれないな・・・。



そんな事を思って、少し複雑な気持ちになった。



だから、その時は、電車に乗っている間だけでもスマホを見ない様に



しようと思ったという。



それにして、不思議だった。



他の乗客たちは、皆、スマホの画面を凝視しているというのに、先ほどから



感じる視線は何なのか、と。



だから、彼はもう一度、自然な感じで辺りを見回した。



しかし、やはり他の乗客たちは全員、スマホを見たままだった。



そして、彼は少し悪戯心を出してしまう。



スマホノ自撮りモードで車内を見てみたらどうなるのか?と。



だから、彼は再び、スマホを取り出すと、カメラモードを自撮りにして



車内を見渡した。



彼は思わず固まってしまった。



そこには、先ほどまで画面から視線を外さなかった乗客全員が、



間違いなく彼の方を睨んでいた。



其処には、怒りの様な恨みの様な感情が感じられたという。



どうして?



俺が何かしたのか?



彼は思わず頭がバニックになった。



それと同時に、得体のしれない気持ち悪さを感じたという。



どうする?



どうする?



彼は必死に考えていた。



すると、その時、彼が降りる筈のひとつ前の駅に電車が到着する



旨のアナウンスが流れた。



彼は迷う事も無く、開いたドアから一気にホームへと飛び出した。



彼の他に、その電車から降りる者は誰もいなかった。



しばらくすると、その電車はそのまま静かに、そのホームから



走り去っていった。



彼はホッとしてホームのベンチにへたり込んだが、結局、そのまま



朝まで、その駅の外にあるネットカフェで過ごす羽目になったという。



そして、話はそれで終わらない。



それから、彼のスマホには、気が付くと、全く知らない番号が電話帳に



追加されている様になった。



その番号には名前が無く、番号のみが追加されているのだが、その番号は、



携帯番号でも固定電話の番号でもなく、とても奇妙な番号なのだという。



一度、その番号から彼に電話がかかって来た事があるのだが、勿論、



彼はその電話には出なかったという。



そして、彼は、その見知らぬ番号がどんどんと増えていくうちに、さすがに



気持ち悪くなってしまい、今では携帯もスマホも一切持たないように



なったという事である。
  


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2018年11月10日

結界を張る人達

これは、富山の住職から聞いた話。



どうやら、この日本という国には、いまだに科学では証明出来ない



事が本当に多く起こっているようだ。



よく、科学で証明出来ないものは実在しないのと同じ、という言葉を



耳にするが、それは単なる人間の奢りにしか聞こえない。



実際、人間は海に関して、まだほんの僅かしか分かっていないし、



地下、そして宇宙ともなれば、全く分かっていないに等しいのかも



しれないからだ。



そして、現実として、霊的なものに悩まされ生きた心地もしない毎日を



送られている方も多いのだろう。



ただし、人間としても、全ての人がただ漠然と生活を送っている訳では



ないようだ。



この現代において、自らの静かな生活というものを捨てて、修行に



明け暮れ、そして、その力をこの国の安定の為に費やしている



人達がいるのだという。



それも、1団体というものではなく、複数の集まりが、それぞれの



修行のもとに、力を高め、日本全土を覆うようにして結界を



張っているのだそうだ。



それぞれの団体や集まりが相まみえたり親交を交わす事は無いようだが、



それぞれの方達が目指している目的は、ただ一つ。



すべての人が霊的なモノに脅えないで暮らせる世界を作ること。



本当に頭が下がる思いである。



そして、それを俺に教えてくれたのは懇意にしてもらっている



富山の住職だ。



そして、どうやら富山の住職の昔の仲間も、その団体に所属し、日々、



日本中を移動しているのだそうだ。



富山の住職も、似た様な事をしているが、それはあくまで個々の案件に



対しての対処に限定されるものだし、何より、すぐに結果が出ない



であろう、日本全国に結界を張る、という気の遠くなりそうな



試みとは全く別のものだという。



実際、日本全土に結界を張るという作業は、日本中を一回りして



終わりというものではないらしい。



常に日本中を移動しつつ結界を張って、それを維持していく。



きっと、その作業は一生かかっても成し得ないものだろうし、それを



いずれは次の世代の者達が引き継いでいくことになるのだろう。



まさに終わりなき献身としか言えない。



そんな古き友人と、富山の住職は会って酒を飲み、お互いの思いを



ぶつける事もあるのだという。



その友人というのもかなりの能力の持ち主らしく、大抵の霊ならば



簡単に除霊し、浄化に持っていく事が出来るのだという。



お互いに厳しい修行をこなし、幾多の経験を積んできた二人。



そして、酒の席で必ず話題にのぼるのが、Aさんと姫の事だという。



友人は、住職に対して、いつも、自分たちの行動に参加しないか?



と誘ってくるらしい。



もうこの日本には、それ程の霊力を有した者などいないのだから、



お前は貴重な人材なのだ、と。



しかし、住職はいつも、その誘いを固辞している。



そして、そんな時、必ず住職が言う言葉は、



今の日本だって捨てたものじゃない・・・。



若い者にも、有能な霊能者は沢山いるし、中には常識では考えられない



能力者もいる。



だから、今は、そんな若者達を見ている方が楽しい。



という言葉である。



そして、その言葉の後には、必ず、Aさんと姫の話をするらしい。



かたや、若いのに、自分など足元にも及ばない様な霊能者であり、



かたや、修行も殆どしていないにも拘らず、化け物じみた霊力を



持っているのだと。



そして、その二人は女性であり、日頃は普通に働いたり学校に通ったりしている



のだと。



すると、いつも、その友人に、馬鹿馬鹿しい、といって笑われるらしい。



だからといって、住職も、決して笑われたことに反論はしない。



まあ、お前にも今に分かるよ・・・。



そう言って、話を終わらせるのだという。



そして、俺が、



どうして?もっと、ちゃんと説明してやればいいじゃん?



と言うと、



まあ、こんなものは、口で幾ら説明したって分かって貰えるもんじゃないしな。



何しろ、最初は俺自身も信じられなかったくらいだから・・・・。



自分はあれほど苦しい修行をしてきたのに、どうして?



って、感じで。



それに、実際、この日本には、あいつらが知らないとてつもない霊能者が



まだまだ埋もれてると俺は思ってるから・・・。



Aさんの師匠もその力は計り知れないし、それにお前に憑いている



守護霊だって、あの二人がいるから目立たないが、相当なもの



なんだから・・・・。



まあ、お前は全くそれを自覚していないけどな(笑)



そう言って笑った。



そして、それから数ヶ月後、富山の住職から面白い話を聞いた。



Aさんと姫が、住職の寺で修行めいた事をせっせと行っていた時、



偶然、その友人が寺を訪ねてきたのだという。



血相を変えて、寺に駆け込んできた友人が、



おい!この寺で今、大変な事が起こってるんじゃないのか?



それにしても変なんだ。



凄まじい妖気と、とてつもなく強い結界が共存してる・・。



お前も分かってるだろうが、そんな事は起こり得ない事なのに・・・。



それなのに、お前は平然と構えている。



その理由を教えてくれ!



と、住職に食って掛かった。



そこで、住職は、



だから、前から何度も話してるだろ?



これが、お前が知らなかった現実ってやつだよ!



そう言うと、住職は笑いながら奥にいたAさんと姫をその友人に



紹介したそうだ。



え?今忙しいんですけど、何か?



とぶっきらぼうなAさんと、



うわ~、ちょうど休憩したかった所なんですよ~



あっ、お客さんですか~



はじめまして。



こんにちは~。



と、いつも通り、呑気な姫。



そして、それとは対照的に、完全に固まり目を白黒させている住職の友人。



こんな・・・・こんな事が本当にあるのか!



そう言って、二人をまじまじと見つめている友人に対して、



あの…見世物じゃないんですけど?



何か文句でもあります?



と好戦的なAさん。



そして、



そんな言い方したら駄目ですよ~



もっとフレンドリーに・・・・。



とマイペースな姫。



きっと、その友人も、Aさんや姫から感じるオーラが見えたのだろう。



更に、姫の背後にいるモノ達も・・・・。



しばらく開いた口が塞がらなかった友人だったが、しばらくすると、



うーん・・・・本当に世の中は広いもんだな・・・。



しかも、こんなレベルの霊能者が、こんな場所にいるなんて!



奇跡としか言えないかもしれない・・・。



そう言っていたという。



そして、Aさんも姫も、どこの宗派にも属しておらず、ある意味、



かなりの部分を独学でやってきたという事を聞いて更に



驚いていたという。



そして、最後には、こんな言葉を残していったという。



これじゃ、馬鹿らしくてこの地方に結界を張る意味なんて



無くなるよ、と。



それを聞いて、俺も、



確かに人格に問題はあるが、Aさんや姫がいれば、きっと



それ自体が結界となって、この辺り一帯は安泰なんだろうな、と



納得してしまった。
  


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2018年11月10日

友達という力

最初にその女の子を見た時、その大人びた雰囲気に圧倒された。



その女の子とは、友人の看護師の依頼で会う事になった。



その女の子は、ちょうど大学生くらいだろうか・・・。



内臓疾患で入院していた彼女は、いつしか自分は死ぬのだと思い始めたらしい。



実際には命に別条があるほどの病気ではなかった様だが、長い入院と



リハビリ、そして何度かの手術が必要な事は間違いなかった。



いつしか、学校に通う事も無くなり、病院での生活が当たり前になった。



そして、そんな暮らしをしていると、塞ぎこんでしまうのは理解できた。



しかし、そんな彼女の思いが、どんどん病気を悪化させ、精神的にも



追い込まれてしまう。



病状は悪化の一途をたどり、命さえ危ぶまれた。



そして、精神的にも病んでいった彼女には死神のようなものが見える



様になっていく。



そして、自分で出した答えが、



自分はもうすぐ死んでこの世から無くなるんだ・・・・。



というものだった。



ただ、彼女には実際に死神が見えていた様であり、時折、悲鳴のように



叫ぶこともあり、周りは患者たちは彼女を避け、医師や看護師すら、



ある意味、彼女に対して一定の距離を置くようになっていった。



そんな彼女を見かねて、俺の友人の看護師が俺に助けを求めてきた。



本当に死神がいるのか?



いるとしたら、その死神というものから彼女を救う事は出来ないのか?と。



そこで、俺はいつものAさんに相談した。



その時、何故かAさんは、いつもとは違い、すぐに快く協力してくれる事に



なった。



そして、俺と一緒に病院に行き、彼女に面会した俺達だったが、その時、



Aさんは、



ああ・・・・これは難しいかもしれないですね・・・・。



とだけ言った。



俺達は場所を変えて、話す事にした。



俺はAさんに聞いた。



本当に彼女には死神が憑いているのか?と。



すると、Aさんは首を振りながらこう言った。



そりゃ、病院ですから死神もいますけどね・・・。



あいつらにとっては最高のテリトリーですから。



でも、彼女には死神はついていませんよ。



死神っていうのは、死んだ人、これから死んでいく人を導くものであって、



決して人を殺せる力はありませんしね・・・。



それに、いくら私でも死神とは対峙したくはありませんから。



アレは、霊とか、そういうもの値は違って、必然の存在であり、ある意味、



神ですから・・・。



浄化も出来ないし、消滅させることも出来ない。



だから、私でも勝ち目はありませんから・・・。



でもね・・・たまにいるんですよ。



いくら死神といっても感情があるみたいで・・・。



つまり、死んでしまう予定の人の寿命を延ばしてしまったり・・・。



そんな事をしたら、自分の身が危なくなるのに・・・ですよ。



だから、あいつらもそんなに嫌なだけの存在ではないんですよね。



人の生死を司ってる神ですから・・・。



だから、一生懸命生きようとしている者を助けたり、またその逆も



ありえますから・・。



要は生きたい、完治したい、と思わない者は、死亡者の候補リストに



載せられます。



そうなってしまうと、なかなか回復もしないし、病状は悪化の一途・・です。



つまり、今の彼女がそうなんですよね。



あの子も眼は行きたいという力が欠如しています。



もう諦めてしまってるというか、勝手に自分の死を悟ってるというか・・。



だから、このままでは本当に危険かも知れませんね・・・。



昔の私と同じ・・・です。



そう言った。



俺はすかさず、その言葉に聞き返した。



同じって、どういう事?と。



しかし、Aさんは、ぶっきら棒に



まあ、人にはそれぞれ色々な過去があるって事ですよ。



だから、という訳ではありませんけど、私は彼女を救いたいと思ってます。



Kさんはどうしますか?



と逆に聞き返された。



俺は、



勿論、俺も協力するに決まってるじゃない!



と言うと、Aさんはニッコリと笑って、



それじゃ、彼女に友達が出来るように力を貸してあげてください。



きっとあの子には友達といえる仲間がいないはずだから・・・。



それがどれだけ強い力なのかを先ず彼女に理解してもらわないと・・。



私は私にしか出来ない事をしますから・・・。



そう言われた。



俺は考えた末に病院内を回り、彼女と相性が良さそうな人を見つけては



声をかけた。



彼女と友達になってくれませんか?と。



毎日、仕事中、そして仕事が終わってから病院に行き、彼女の友達になって



くれる人を探し続けた。



本当の友達が一人でも見つかれば・・・。



そう思いながら。



そして、しばらく仕事が忙しくてなかなか病院に行けない日が続いたあと、



久しぶりに彼女の元を訪れた俺は思わず驚いてしまった。



彼女の病室が、友人達の溜まり場になってしまっていた。



同じ患者さんもいれば、私服の学生も、そして社会人らしき人もいた。



それを見て、看護師さん達も立場上、注意をしていたが、その顔は



どこか嬉しそうだった。



そして、彼女自身の顔も、それまでとは全く別人のように明るく自然に



笑顔がこぼれるようになっていた。



それを見て、安心した俺は、その場から立ち去ろうと廊下へ出た。



すると、廊下の向こうからAさんがこちらへと歩いてくる。



そして、その横にはにこにこと笑った姫の顔もあった。



本当に薄情な人ですね・・・。



全然、顔も出さないで・・・。



と冷たい目で見つめるAさん。



Kさん、お久しぶりです!



お元気そうで何よりです(笑)



と相変わらずの姫。



そして、Aさんは彼女の病室を見て、少しほほ笑むと俺をそのままその場から



連れ出して別の場所へと移動した。



そして、



もう大丈夫ですね!



あれだけ素敵な笑顔が出来ればもう大丈夫です!



彼女の事を大切だと思ってくれる人達のパワーが沢山彼女に注がれてますから。



どんな薬よりも、そういう力って凄いパワーを持つんです。



不可能を可能に帰る程の力を・・・。



とAさんが言う。



俺は得意げな顔で、



あのさ…今回は俺の大活躍って感じかな!



彼女に友達が沢山出来るように頑張ったんだからさ!



そう言うと、Aさんは、冷たい顔をして、



それはあくまできっかけだけですよ。



友達がたくさんできたのは、あくまで彼女の力なんですから・・・。



それに、彼女に纏わりついていた負のオーラを祓って、陽の気で満たしたのは



彼女自身の力。



まあ、私はなにもしてませんけどね!



と言い放つ。



すると、その後ろから姫が、



あの・・kさん。



Aさんも、かなり頑張ったんですよ~



病院中から負の要素を払拭したり・・・・。



それに、さっきは、死神に直談判してましたから。



あの子に何かしたら、私が黙ってないから・・・って。



例え、死神が相手でも、ただでは済まさないって。



まあ、死神さんも困った顔をしてましたけどね(笑)



それを聞いた、俺は、



やっぱり、あの子、死神に目を付けられていたの?



と聞くと、Aさんは、面倒くさそうに、



ああ・・・そういう予定は無いっ、て断言してましたから大丈夫です!



それに、彼女には大好きだった祖父母がずっと付いていてくれてますから、



もう安心ですね!



やっぱり負のオーラを取り払った私の功績という感じですかね・・・。



と自慢げに言っていた。



結局、その後、彼女は何度かの手術にも耐え、リハビリも頑張って予定よりも



早く退院し、今では普通の女性よりも元気な生活を送っているほどだ。



  


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2018年11月10日

真夜中のトイレ

これは俺の友人が体験した話である。



彼は、高校の教師をしながら、休日はバンド活動に勤しんでいる



30代。



結婚して奥さんと一人のお子さんと一緒に金沢市北部の一戸建てに



住んでいる。



その家というのは、中古物件として掲載されていたものを思い切って



購入したらしいが、綺麗にリフォームされており立地も良い割には



かなりのお買い得価格だったという。



しかし、彼ら家族が住むようになって、怪異というのは殆ど起きて



いないという事だから、きっとその家が安かったのは別の理由が



あったのだろう。



そして、殆ど起きていないと聞いた俺は、それじゃ一度くらいは



不思議な事が起こったの?ときいたところ、話してくれたのが



これから書く話だ。



彼の家は国道から20メートル位、入った場所にある。



建物は2階建てで1階にはリビングと和室、そしてキッチン、



トイレ、浴室があり、2階にはちょうど3部屋あり、家族それぞれが



自分の部屋として使っている。



結婚当時は、夫婦一緒に寝ていたそうだが、子供が出来てからは



夫婦は別々の部屋で寝るようになり、今でもそれは続いている。



彼は寝付きもよく、一度寝ると、朝まで起きる事が無いそうだ。



そして、その日の夜も、彼はすぐに寝てしまう。



それも、買ってきた本を読んでいる時、そのまま知らぬ間に寝てしまった



のだという。



そして、彼は夜中に突然目が覚めた。



明かりを消した記憶は無かったが、何故か部屋は真っ暗だった。



だから、彼は、きっと妻が消してくれたのだろう、と思っていた。



そして、彼はそのまま起き上がると部屋を出て1階のトイレに



行く事にした。



決して新しい家ではなかったから、廊下や階段を歩くと、必ずミシミシと



大きな音がする。



だから、彼は出来るだけ音が出ないように静かにゆっくりと部屋から



出た。



そして、廊下の電気を点けて階段をゆっくりと降りていく。



階段にも明かりはなく、1階の廊下の明かりのスイッチも2階には



無かったから、彼は暗い階段を更に真っ暗な1階の廊下に向けて



降りていかなければならない。



正直、彼は、夜中に1階へ降りるのは好きではなかった。



子供がいる手前、怖がっていると悟られる訳にはいかなかったが、



どれだけ、この家に住んでいても慣れる事がなかった。



ただ、それも、1階へ降り、そこにある明かりを点ければすぐに



解消される恐怖ではあったのだが・・・。



だから、彼はその時も、ほんの少しの辛抱だと思いながらゆっくりと



階段を降りていった。



そして、問題無く1階の廊下へ着いた。



そこで、いつも玄関に向かう廊下の方を見て、誰もいないのを確認してから



明かりを点けるのがいつものパターンだった。



彼はいつもの様に、玄関へと続く廊下にチラッと顔を向けた。



心臓が止まるかと思ったという。



いつもは誰もいる筈のない廊下に間違いなく誰かが立っていた。



女だったという。



色は分からなかったが、長いドレスを着た女が、間違いなく玄関の



横に立っていた。



人間というのは不思議なもので、いつもは幽霊が怖いと思っていても、



いざ、そういう場面に遭遇すると、それは幽霊ではなく、誰かが



家の中に侵入している、と判断してしまうらしい。



彼は、恐ろしくて廊下の明かりをつける事が出来ず、そのまま



階段を降りたところにあるトイレの明かりを点けると、急いでトイレの中に



逃げ込み、中から鍵をかけた。



もう用を足す余裕など無かった。



トイレの中で、彼は必死に、あの女は何者だ?と考え始める。



どうやって、家の中に入ってきた?



何が目的なんだ?



泥棒?・・・それとも不審者?



そんな事を考えていると、彼は究極の答えに辿り着く。



女だったら俺にも勝ち目はあるんじゃないのか?と。



だから、彼は深呼吸して気持ちを落ち着かせた。



トイレの外から聞こえてくる音は一切聞き漏らさない様にした。



しかし、トイレの外からは何も聞こえてこない。



彼は、思い切って、トイレの鍵を開けてゆっくりと開いていく。



本当は、思いっきり勢いよく開けたかったが、それ程の勇気は無かった。



もしも、誰かがいても、ゆっくり開けていけば、すぐにまた閉められる。



そう思っていた。



そして、トイレのドアが半分ほど開き、廊下から音が聞こえてこないのを



確認して彼はトイレから出て、廊下の電気を点けた。



しかし、何故か廊下の電気は点かなかった。



仕方なく、彼は再び、玄関の方を見ると、そこにはもう誰もいない。



しかし、やはり怖かった彼は、そのまま玄関を確認せず、さっさと階段を



あがって自分の部屋に入ろうと思った。



やはり素手というのは心許なかったし、部屋に戻れば、護身用の木刀も



ある。



玄関を確認するのなら、一度部屋に戻ってから・・・。



そう思っていた。



彼は、階段をのぼり始める。



今度は、わざと大きな音が鳴る様に、力強くのぼった。



すると、何か声の様なものが聞こえた気がした。



彼はよせば良いのに、わざわざ振り返って階段下の廊下を確認した。



其処には、先ほど玄関横に立っていたであろう女の姿があった。



じっと彼の方を見上げていたという。



彼は恐怖のあまり大きな悲鳴を上げそうになったが、全く声が



出なかったという。



なんだ?



どうなってるんだ?



そう思った瞬間、階段下にいた女が彼めがけて一気に階段を駆け上がって来る。



一瞬の出来事だった。



気が付いた時には、彼は階段に尻もちをつき、女の顔がすぐ目の前にあった。



昼間見たらきっと美人だったのだと思う。



しかし、夜中、真っ暗な階段で、しかも間近で見る女の顔は、十分な



恐怖を彼に与えた。



しかも、その女はドタドタと階段をのぼって来たにも拘わらず、誰も



起きてくる気配は無かった。



そして、次の瞬間、その女は彼が固まる目の前で、大きな声で笑った。



思わず耳を塞ぎたくなるような不気味で甲高い笑い声だった。



そこで、彼は意識を失った。



そして、朝になり、起きてきた妻に発見されたという事だった。



しかし、彼はその夜の事を家族の誰にも話さなかったという。



何故?



と聞く俺に、彼は、



だって、その話をして家族がこの家に住めないって言い出したら



大変ですから・・・。



新しく家を買う余裕も無いし・・・・。



だから、トイレに行って寝ぼけてそのまま階段で寝てしまったという事に



しておくのが一番なんですよ・・・。



そう言って笑った。



ちなみに、彼がその家で怪異に遭遇したのは、その時、一度きり



なのだという。



だから、もしかしたら、寝ぼけていたのかも?



と言っていたが、その後、彼に聞いた話では、朝になって、自分の部屋に



行くと、彼の部屋の明かりが点いたままになっており、部屋中に物が



散らばっていたのだという。



几帳面な彼が、寝ぼけていたとしてもそんな事をするとは到底



思えないのだが・・・。
  


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2018年11月10日

同級生はお花屋さん

これは花屋を営んでいる同級生から聞いた話である。



彼女とは中学時代、すっとクラスが一緒だった。



勿論、それ以上でも以下でもないのだが、高校を卒業してすぐに家業の



花屋を継いだ彼女とは、それからなんとなく付き合いが続いている。



妻と結婚する前、そして結婚した後も、記念日などに花を贈ろうと



思った時、いつも利用させて貰っているのが彼女の店である。



たいして仲が良かった訳でもないのに、同級生だったというだけで、



予算を超えた花を用意してくれたり、無理な注文を聞いてくれたり、と



俺としては本当に大助かりである。



そんな彼女が体験した話をひとつ。



それは、ちょうど一昨年の秋だったという。



その日の仕事が終わり、店じまいをしていると、ひりとの女性がふらっと



店にやってきた。



もう、閉店時間は過ぎていたが、その女性の様子が少しおかしかったらしく、



彼女はそのまま様子を見る事にした。



様子がおかしいというのは、何かぼんやりと焦点の定まらないような眼を



していたという事。



そして、その女性は店内をゆっくりと進み、バケツの中に無造作に入れられている



花をじっと見つめていたという。



彼女は、



何かお探しの花でもありますか?



と声を掛けたのだが、返事は無かったという。



そして、相変わらず、バケツの中の花をじっと見つめている。



その時、彼女は直感的に、



あっ、この女の人、もしかしてお金が無いのかな・・・・。



そう思ったという。



しかし、商売はともかくとして、花が好きな人には悪い人はいない、というのが



持論の彼女は、その女性に対して



あの・・・この花でよろしければ差し上げますよ!



そう言ったという。



そして、その花を新聞紙で包むと、その女性に差し出した。



その女性は小さくお辞儀をすると、そのままゆっくりと店を出ていったという。



そして、その日から毎日、店じまいをしていると、必ずその女性がお店に



現れるようになった。



そして、いつもバケツの入れてある廃棄するつもりの花をじっと


見つめているのだという。



勿論、彼女は、その度に、どうせ捨てるんだから、と思い、その花を女性に



手渡してあげたという。



ショートカットでOL風に見える容姿だったが、どこか寂しそうな



顔を見て彼女はいつも心配していたという。



もしかしたら、凄い悩みを抱えているのか?



もしかしたら、とても貧乏な暮らしなのか?



だから、彼女は自分の心の中でどんどんとその女性に対する興味が高まって



いくのを感じていた。



そんな日が2か月くらい続いた日、その日はいつもよりも早い初雪が



降った日だったという。



いつものように、雪が降る中、店じまいをしていると、いつものように、



その女性が現れた。



その頃には店に入る際には小さく会釈をしてくれるようになっていた。



彼女も、毎日やってくるその女性の為に、あらかじめ、あげる花を



用意する様になっていた。



雪の中なのに大変ですね?



寒くありませんか?



いつも同じ服装で現れるその女性に、彼女はそんな言葉をかけた。



そして、いつものように花を差し出すと、いつものように小さく会釈



をして、その女性は花を受け取った。



女性は、ふらふらと店の外に出ていく。



そこまではいつもの光景だった。



だが、その時、彼女は決めていた事があった。



もしも、こんな雪の中でも、花を受け取りに来たとしたら、今夜こそ、



彼女が何故毎日花を貰いにくるのかを確認しよう、と。



彼女は急いで店を出ると、その女性が歩いて行った方向へと走った。



女性にはすぐに追いつく事が出来た。



尾行しているのを気付かれないようにある程度の距離を保って歩いた。



それにして、降りしきる雪の中でも傘すら差さない。



彼女は、更にその女性の事が分からなくなった。



女性は、とぼとぼと車の通行の少ない道を選ぶ様にして歩いていく。



そして、そこから大通りに出た所にあるガードレールの前で立ち止まった。



すると、彼女の方を向いて、今度は大きくお辞儀したという。



尾行がばれていたの?



そう思っている彼女の前で、その女性はゆっくりと薄い霧のようになっていき、



降りしきる雪の中に消えていった。



彼女は唖然としてしまった。



放心状態といっても良かった。



自分の目の前で人が一人消えてしまったのだから・・・。



しかし、次の瞬間、彼女は全てを把握した。



その女性が消えたガードレールには大きな凹みと傷が出来ており、その下には



無造作に花が置かれていた。



それは紛れもなく、彼女がその女性に渡してきた花だったという。



そこで事故があったの事は知っていた。



そして、運転していた女性が亡くなったの事も知っていた。



しかし、まさか、その女性が自分の事故現場に供える為の花を自分の店に



貰いに来ていたなんて・・・・。



だが、その女性が生きている人間ではない事を裏付けるように、女性が



歩いてきた跡には、足跡はひとつも付けられてはいなかった。



不思議ではあったが、怖さは感じなかったという。



そして、翌日からは、彼女が毎朝、その場所に花を手向ける様にした。



捨てる予定の花ではなく、立派な花束を毎日・・・。



そして、生前にはあった事も無いその女性の為に、しっかりを手を合わせて



お参りした。



すると、その日から、もうその女性が店に来る事はなくなったという。



そんな彼女だが、もう一度、その女性に遭いたいと思っている。



だって、その女性って、小さく会釈した時に少し嬉しそうに笑ってくれたんだから。



とても素敵な笑顔だったんだよ・・・・。



そう言って、その女性を思い出して嬉しそうだった。


そんな彼女は、それからもずっと毎日、そのガードレールに素敵な花束を


備え続けているということだ。


これからも、ずっと・・・・。
  


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2018年11月10日

猫○目の交差点

石川県に猫の目ICという所がある。



正式には、のと里山海道(旧能登海浜道路)の柳田ICという名前



らしいが、俺が小さな頃から、そこは何故か猫の目と呼ばれている。



現在、のと里山海道という名称になったにも拘わらず、相変わらず、



柳田IC(猫の目)と案内板には書かれている。



実は、ここにある猫の目の交差点というのは、ずっと昔から事故多発地帯。



そして、それと同時に、そこには女の幽霊が現れるというのが、かなり



有名な話である。



だから、子供の頃、俺はそこを通るのが嫌だった。



父親が運転する車であり、厳格な父にはそんな我儘が通用する等とは



思ってはいなかったが、それでも、出来る限りの抵抗をした。



勿論、それは最初の頃は単に噂が恐ろしかっただけだったのだが、そのうち、



その交差点を通ると、必ず俺には、その女の幽霊と言われているものが



見えていたからなのだ。



その女は、いつも同じ場所にはいなかった。



あっ、今日はいない・・・。



そう思っても、交差点の別の道の脇に、その女は立っていた。



まるで何かを探しているかのように・・・・。



良く霊感が強くなっていくと、幽霊がまるで普通に生きている人間と



同じように見える、という話を聞く。



それは、俺の同意見だ。



別に透けている訳でもなく、普通にも街の中に景色に、当たり前の様に



存在している。



じっと動かないものをいれば、同じ場所を何度も行き来しているものも居る。



服装だって、きっと生きていた時と同じ普通の服装であり、俺の様な



中途半端な霊感では、その見分けすらつかない程である。



しかし、その交差点に出る霊は違っていた。



一目見ただけでそれが人間ではないと分かる違和感。



白装束を着て、細い体で、じっと立ち続けている。



その顔は、俗にいう幽霊画というものに出てくる様な不気味さ。



だから、霊観の在る人が、その姿を見てしまったら、思わず悲鳴を



あげてしまうかもしれない。



そして、車が信号で止まると、スーッと滑るように車に近づいて



車内を覗き込む。



その様子は、例え自分の車に近づいてきたのではなくても、とても不気味な



ものだ。



だから、俺は極力、その道を通らないように、父親に頼んだ。



しかし、頑固な父は決して俺の頼みをきいてはくれなかった。



確かに、その頃の道路事情は、かなり限定されていたから、その交差点を



通らないと、母親の田舎にいけなかったというのも、その理由では



あるのだが・・・。



しかし、慣れというものは、不思議なもので何度も、その女の幽霊を



見ているうちに、俺は気持ちに余裕が出てきたのかもしれない。



だから、いつしか、その交差点を通ると、



あっ、またあの女の人がいる・・・・。



とぼんやりと眺める事もあった。



そして、そうやって見たいると、その女の幽霊の特徴みたいなものが



少しだけ分かってきた。



・片足が悪いのか、移動するときには、足を引きずるようにしていた。



・髪に隠れて見えないだけだと思っていたその女の眼は、片目しか



無かった。



・白装束だと思っていたその女の服装は、実は薄い青色だった。



などなど、良く観察したな、と自分でも驚くほどである。



ただ、やはり信号で止まった車の方へ近づいてくる習性があるのか、



自分の乗った車が信号で止まった時には、じっと俯いたまま、車が



動き出すのをひたすら待った。



そして、一度だけ、車が動き出し、安心して顔をあげると、車の横に



張り付くようにして、その女の顔があった時には、思わず大きな声を



あげてしまった。



そして、これは俺が社会人になってからの話だ。



その時、母親の実家に届け物があり、俺は、うっかりとその交差点を



利用してしまった。



そして、最悪な事に、信号にも掴まってしまう。



俺は焦って、その女の姿を探した。



しかし、交差点の何処を見回しても、その女の姿はなかった。



長い年月の間に、風化していったのかな?



信号が青になる。



俺は、ホッとして車を発進させた。



怖い怖いと思ってるから、怖くなるんだ・・・・。



そう思った俺は何気にルームミラーを見た。



すると、そこには、紛れもなく、白装束を着た、あの女が後部座席に



座っていた。



後部座席に姿勢よく座り、まっすくに前を向いたまま、カッと目を見開いて



いる、その女の姿に



俺は、思わず、



ヒッ!



と小さな声が漏れてしまう。



そして、俺は、もう一度、ルームミラーを確認した。



すると、やはり、その女は先ほどと変わらず、まっすぐに前を向いている。



その姿を見た時、俺はある噂を思い出した。



それは、その女の幽霊を車に乗せてしまったら間違いなく事故を



起こしてしまうという事だった。



俺の頭は完全にパニックになっていた。



どうする?



どうすれば良い?



考えた結果、俺は、その交差点の近くにある、有名なお寺に車を



走らせることを思いついた。



何の根拠も無かった。



しかし、それ以外に何も妙案は浮かばなかった。



俺は事故を起こさないように、それでいて、少しでも早くその女を



車から降ろしたい一心で、慎重に、そしてそれなりの速度で車を



走らせた。



そして、そのお寺の門が見えてきたとき、俺が運転する車は俺の意志ではなく



ひとりでに速度を落とし、そのまま停車した。



恐る恐る、ルームミラーを見た俺の目に、もうその女の姿は無かった。



そして、横を見ると、先ほどまで、車の後部座席に乗っていたばすの



女が、お寺の境内に続く石の道をゆらゆらと歩いているのが見えた。



俺は、静かにゆっくりと車を方向転換させて、その場から車で



立ち去った。



そして、それから無事に母親の実家に届け物をして、帰路に着いた。



帰りは生憎の雨模様だった。



そして、金沢市に入った頃にはかなりの土砂降りになっていた。



俺は走り慣れた道をいつものように走っていた。



すると、突然、車が水たまりに乗ってしまったのか、そのままクルリと



スピンして、中央分離帯を乗り越え、反対車線に飛び出した。



それでも、それなりにスピードも出ていたのか、車はそのまま止まらなかった。



何故かワイパーを掛けているのに、前方の視界が全く見えなかった。



俺は、ただひたすらブレーキペダルを踏み続けていた。



そして、かなりの距離を走った後、車は停車してくれた。



恐怖でドキドキしていた俺は、すぐに車から出て、状況を確認した。



すると、中古車屋のショールームのガラスまであと50センチ位のところで



車はギリギリ停車していた。



あのまま、ガラスに突っ込んでいたら・・・。



もしかすると、あの女を乗せたからなのか?



そんな事を考えると、その夜は恐怖で全く眠れなかった。



その交差点では現在でも幽霊の目撃談が後を絶たない・・・・。
  


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2018年11月10日

入鹿池

これは仕事関係の知人女性から聞いた話。



彼女は現在、30歳。



デザイン事務所に勤め、忙しい日々を送っている。



そんな彼女は大学は名古屋市にあるデザイン関係の大学に



通っていたのだという。



まあ、いつの時代でも大学生というのは暇な時間が出来ると、



少し危険な物に惹かれてしまうのかもしれない。



その時も彼女は男女4人で犬山市にある入鹿池という所へ向かったという。



目的は勿論、心霊スポット探索。



どうやら、その入鹿池という場所は、名古屋近辺でもかなり有名な



心霊スポットであるらしい。



男の子の声が聞こえたり、姿が見えたり、トランペットを吹く少年が



目撃されたり・・・。



その他にもその場所で自殺した女子高生の姿が目撃されることもあるそうで



昼間は釣り人で賑わうらしいその場所も夜にはガラリと姿を変える。



実際、過去にはボートの転覆事故で亡くなった方もいるらしいのだが。



そして、どうやら、その近くには天○神社という心霊スポットもあるらしい。



新興宗教の施設らしいのだが、そこでも数多くの心霊の目撃情報が



あるのだという。



先ずは其処に行ってみようという事になり、彼らは車でその



神社を目指した。



そして、其処はどうやら私有地ということなので、途中で車を



道端に停め、山道を歩いて神社を目指した。



その時のメンバーは男2人と女2人。



一応、安全の為に、男二人が、女二人を挟む形で進んでいった。



そして、神社の入り口まで来た時に、ちょうど番目を歩いていた女性に



異変が起こる。



急に酷い頭痛に襲われ、気分が悪くなり、寒気すら感じていた。



そこで、彼らは仕方なく引き返すことにした。



そして、車まで戻っている途中、その女性は、彼らにこんな話しをしたらしい。



自分は元々、霊感体質であり、すぐに霊障を受けてしまう。



だから、きっと此処から離れれば体調も戻ると思うから、と。



そして、その言葉の通り、車に戻る頃には、その女性の体調はすっかり



良くなった様に見えた。



しかし、その女性は、こう言った。



やっぱり、この土地には来るべきじゃなかった。



やっぱり近づいちゃいけない土地なんだよ、と。



しかし、その女性の体調が回復すると、他の3人は、それじゃ、次の場所に



移動しようと提案してきた。



勿論、それが、入鹿池だったらしい。



回復したとはいえ、体調が悪くなっていた女性は、必死でそれに



反対した。



涙ながらに・・・。



そして、他の3人にこう話した。



先ほど、神社への山道を歩いていた時、突然、白い着物を着た



女がスーッと近寄ってきたのだと。



そして、それが自分にまとわりつくようにくっ付いてきた瞬間、



一時的に意識が飛んだのだと・・・。



もう少しで憑依されるところだった。



そして、もしも自分が憑依されてしまったら、あなた達にどんな



危害を加えるかも分からない。



だから、一刻も早くこの場所から出来るだけ遠くに離れないと



大変な事になる、と。



しかし、他の3人は、どうやら、それを逆に面白いと感じたらしい。



そんな体験、なかなか出来るもんじゃないから・・・・。



それなら、尚更の事、皆でお前の事をしっかりと護ってやるから!



そう意気込んでしまった。



結局、その女性は説得されて半ば強引に車で入鹿池まで連れて来られる。



そして、まず、怪異が多く発生しているというボート乗り場へ行ってみよう



という事になった。



しかし、その女性はそれを拒否し、車の中で待っているから、と彼らに



言った。



さすがに、それ以上の無理強いは出来なかったので、彼らは3人で



車を降りてボート乗り場へと向かった。



ボート乗り場は、まさに異様な雰囲気があり、これなら、幽霊が出るのも



当然だと思ったが、結局、そこで彼らは何も見たり聞いたりする事は



無かった。



そして、30分ほどして、その女性が待つ車の方へと戻ってきた。



車の中には、ドアをロックしたまま、その女性が後部座席に座っていた。



しかし、その女性の様子がおかしい。



戻ってきた彼らを見ることも無く、一言も喋らない。



何か思い詰めた様な暗い顔をしている。



もしかして、また気分が悪くなったの?



と問いかけても全く返事が無かった。



その時、助手席に座る男性が、後部座席を手持ちのカメラで撮影した。



ただ、なんとなく写真を撮ってみただけだった。



しかし、その時、突然、車で待っていた女性が大声でゲラゲラと



笑い出した。



そして、写真を撮った助手席の男性の服を掴んで、グイッと引っ張った。



凄まじい力だった。



必死に抵抗した男性の服は見事に破れた。



そして、またゲラゲラと笑ったかと思うと、突然、静かになり、



いつものその女性の声で、



お願い・・・逃げて・・・・押さえ切れない・・・。



とボソッと呟く。



それでも、何が起こったのか、全く理解出来なかった彼らは、その様子



を呆然と見ているだけだった。



すると、今度は、その女性は、後部座席の隣に座った女性に向かって、



自分の顔を近づけて、



何か見たいのか・・・・・ここにいるぞ・・・・・。



そう言って、今度はその女性の首を絞めようとする。



男性二人は、車から降りて、助手席のドアを両側から開き、必死でその女性



の両手を掴んだ。



すると、また、女性は静かになり、



はやく・・・・はやく・・・・・



と搾り出すように言ったという。



何とか、後部座席の女性を助け出した彼らは、そのまま車から少し離れた



場所で立ちつくしていた。



すると、突然、後部座席のドアが開いて、その女性が飛び出してきた。



そして、そのまま走って池のほうへと走り去っていった。



それから、。3人は車の中に入って、ドアの鍵を全てロックし、早く朝が



来るのを祈っていた。



本当は、一刻も早くその場所から離れたかったが、その女性一人を残して



帰るわけにも行かず・・・。



かといって、その女性が走っていった池の方へ探しに行く勇気も無かった。



だから、車の中で朝を待ってから、その女性を探しに行く、というのが、



その時、彼らが選んだ選択だった。



そして、車の中で震えながら固まっていると、しばらくして朝が来た。



不思議なもので、朝になってしまうと、先ほどまで感じていた恐怖は



かなり弱まっていた。



そして、3人でその女性を探しに行くと、その女性は、池の辺で



体半分だけ池の中に入った状態で倒れていた。



急いで揺り起こすと、何事も無かったかのように普通に起きたという。



そして、それから急いで、その場から離れた彼らだったが、



やはり、その女性だけは、普通ではなかったという。



そして、その時、撮影したデジカメの画像を確認して、彼らは



絶句した。



助手席から後部座席に座る二人の女性の姿を撮影したその写真には



明らかに、二人の女性の真ん中に、見知らぬ女がかっと目を見開いて



カメラを睨みつけていた。



その写真を見て、確信した彼らは、その女性を有名なお寺に



連れて行き、除霊をしてもらったという事だ。



それから、その女性には怪異は発生していないという。
  


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2018年11月10日

病院から覗くもの

これは友人と俺が体験した話。



その時、彼は自動車専用道路の対面通行地帯を走行している時、



突然、センターラインを超えてきた車と正面衝突した。



その時の事故画像で、事故の凄まじさがよく分かった。



どちらの車も原型をとどめてはいなかったし、車内には大量の



血が飛び散っていた。



彼は事故の瞬間、相手の運転手の顔がまるでスローモーションのように



良く見えたという。



相手の車には女性ドライバーが運転しており、引き攣った顔と恐怖に



歪んだ顔が衝突の瞬間まで続き、ぶつかる瞬間には、ほんの一瞬だが



まるで事故相手の彼を恨むかのように、恐ろしい顔で睨んでいた



のだという。



そして、そのまま病院のICUに入れられた彼は、それから数日後、



無事に峠を越え、個室の一般病室に移った。



そこで、彼は初めて知った。



相手の女性ドライバーが即死だったという事実を。



車の損傷具合からは、彼の方が厳しいと思わざるを得なかったが、



結果として彼だけが生き残る形になった。



そして、現場で野事故の状況、そして目撃者の証言などから、彼が



罪に問われる事は無かった。



ぶつかった2台の車は、いずれも、彼が走っていた車線の中で事故を



起こしていたし、目撃者の証言も、突然、対向車線を走る女性ドライバーが



センターラインを大きく超えて彼の車にぶつかっていったというもの



だったのだから、それは当然の事なのだろう。



それでも、彼は、過失が無いとはいえ、相手の女性が自分との事故で



即死したという事実に対して、罪の意識にさいなまれた。



そして、事故で衝突する寸前までの相手女性の顔が脳裏に焼きついて



離れる事がなかった。



だから、彼自身、一刻も早く病院から退院し、相手女性のお墓にお参りに



行きたかったのだが、それは叶わなかった。



彼自身、事故の際、車に挟まれ、レスキューの必死の救出活動のお陰で



一命は取り留めたものの、右足は複雑骨折し、右手も骨折、そして



内臓器官もそれなりに損傷していたのだから・・・・。



彼は一般病棟に移されたとはいえ、体の自由は全く利かず、体の



いたるところに、管が差し込まれた状態だった。



そして、それは彼が一般病室に移されてから3日ほど経った頃だった。



彼は両手、両足が動かない状態であり、本も読むことが出来ない。



かといって、テレビを観る気にもなれない彼は、ぼんやりと



窓から見える風景を眺める事しか出来なかった。



毎日、ベッドに横になっている状態では、なかなか夜も眠りに就けない。



そして、その夜も彼は、夜になって消灯の時間になると、窓から見える



町の風景をぼんやりと眺めていた。



事故を起こしてからというもの、まるで俗世間から隔離されたような



生活が続いており、彼は窓から見える町の明かりが、とても恋しく



感じてしまうようになっていたから・・・・・。



外を走る車のヘッドライトも、ビルの広告塔の明かりも、彼にとっては



外界がとても近く感じられるものだった。



その時、ふと、小さく囁くような声が耳元で聞こえた。



やっと見つけた・・・・・。



そう聞こえたという。



彼は思わず病室の中を見回すが、其処には誰もいない。



そして、もう一度、窓の方へと視線を戻すと、そこには何かが



窓に張り付くようにして、窓の外に立っていた。



彼は一瞬にして凍りついた。



その姿は紛れもなく、彼との事故で即死したという女性の顔に



他ならなかった。



彼は状況がすぐには飲み込めなかった。



相手の女性は死んだはず・・・・。



そして、此処は4階にある病室。



それなのに、どうして彼女は其処に立っているんだ・・・・・。



そして、しばらく考えがまとまらなかった彼がひとつの結論に達した時、



彼は、急いで手元にあったナースコールのボタンを押した。



すぐに看護師が駆けつけてきて、彼に聞いた。



どうしましたか?



そして、彼は窓の外に立っている女の事を必死で看護師に訴えた。



その時には、先ほど見えていた窓の外の女の姿は跡形も無く消えており、



看護師は、彼に一言二言嫌味を言ってから、病室から出て行った。



それから、彼は、恐怖のあまり、必死に目をつぶって一夜を過ごした。



耳元からは、また女の声が聞こえるようになっていたが、彼は



眠れないまでも、何とかその姿を見ないように必死で目をつぶるしか



なかった。



朝になった。



彼は眠たい眼で、ふと窓の方を見た。



絶句した。



そこには、昨夜の女が、相変わらず窓の外に立って、彼の方を



睨んでいた。



彼はすぐにナースコールを押して看護師を呼んだ。



そして、窓を方を見ながら、そこに女が立っている、と訴えた。



しかし、看護師は、



何言ってるんですか・・・。



何処にも誰もいないじゃないですか・・・。



そう言って、彼の言葉を遮った。



その時、確かに彼の目には見えていた。



しかし、看護師の目には何も見えていないのだと悟った。



だから、彼は、看護師にこう言った。



分かったから、せめて絶対に窓だけは開けないで欲しい、と。



看護師は不思議そうな顔をしたが、彼の必死の形相に、



そうですか。



それじゃ、窓だけは゛絶対に開けない様にしますね!



と返してくれた。



それからは、彼は絶対に窓の方を向かないようにした。



相変わらず、彼の耳にはその女の声が聞こえていたが、看護師に頼んで



出来るだけ大きな音でラジオを鳴らすことで、気を紛らわせる様に



して必死で耐えた。



彼の元に、両親や友人がお見舞いに来た時も、窓の外に誰か立っていないか?



と聞いたのだが、誰も皆、不思議そうな顔で、



此処の病室って4階にあるの知ってる?



誰も窓の外に立てるはずないだろ?



と言われてしまう。



それならば、と病室のブラインドを下ろすように頼んだが、看護師が



来ると、



あらあら・・・こんなくらい部屋だと気分も滅入っちゃいますよ!



と叱られて、ブラインドを上げられてしまう。



それでも、彼が窓を方を見ると、相変わらず、その女が恐ろしい形相で



彼を睨みつけていた。



だから、彼はそれからも何度も看護師に頼んだ。



窓の外に死んだ女が立っているから、病室を変えて欲しい・・・。



誰か除霊の出来るお坊さんか霊能者を呼んで欲しい、と。



すると、看護師は、怪訝な顔をして、



そんな気持ちの悪い話、しないでくれませんか・・・・。



そんな事ばかり言ってると、精神科の治療も受ける事になりますよ?



と、いつも冷たくあしらわれた。



その頃になると、彼はかなり心が弱っていた。



女が囁く声は、いつも



悪いのはお前だ・・・・。



お前のせいで私は殺された・・・。



だから、一緒に連れて行く・・・・



そんな声に変わっていたのだから。



そして、昼間見えている女が夜には見えなくなっていた。



それは、夜、女が現れなくなったのだと最初は喜んでいたらしい。



しかし、彼はすぐにそれが、そうではない事に気付く。



病室が消灯されてから、それはすぐに始まった。



誰かが廊下を這いずる音が聞こえてくるようになった。



ズルッ・・・ベチャ・・・・ズルッ・・・・ベチャ・・・。



その音はまるで、彼の耳元で聞こえるように大きく彼の頭の中を



駆け巡る。



そして、その音は彼の病室の前まで来ると、急に動きを停止した。



そして、ドアがほんの少しだけ開き、其処から、女が顔を覗かせる。



頭は潰れ、芽は飛び出しており、窓の外の女とはまるで別人のようだった。



というよりも、男が女か、人間であるかすら、分からない様な不気味に



潰れた顔が、そこから覗いていた。



そして、それから、スライド式の病室のドアを、ガタガタと揺らした。



まるで、彼を怖がらせて楽しむかのように・・・・。



そして、その音は、朝が来るまでずっと続き、彼を苦しめ続ける。



だから、仕方ないのかもしれない。



その頃になると、彼はこう思い始めてしまう。



事故の原因はともあれ、あの女を殺してしまったのは自分だ。



そして、あの女の姿が自分にしか見えないというのは、もしかしたら、



自分の死期が近いから、なのかもしれない。



だとしたら、自分はあの女に連れて行かれるのが一番良いのかもしれない、と。



そして、そんな風に考えると少しは恐怖も薄れてくれたのだという。



そんな時に、知人から彼の事故を聞いた俺は、慌てて彼が入院する



病室にお見舞いにいった。



そして、俺が病室に入った時、真っ先に視界に入ってきたのが、彼ではなく



その女の姿だった。



だから、俺はこう言った。



大丈夫か?



なんか、凄いのが窓に張り付いてるけど?



すると、彼は驚いた様に、俺に聞き返す。



K・・・お前、あの女の姿が見えるのか?と。



だから、俺は、



見えるも何も、凄い形相で、睨んでるけど・・・。



お前、何か悪いことでもしたの?



と聞くと、



ああ・・・あれは事故で死なせてしまった相手の女だ。



俺はあの女を殺してしまったんだから・・・。



そう返すので、俺は、



でも、事故の過失は、相手の女なんだろ?



何で、お前がそんなに自分を悪く言う必要があるんだ?



と返した。



そして、俺は、彼から、これまでの経緯を聞いた。



そして、強い理不尽さを感じた俺は、彼にこう聞いた。



もしも、助けて欲しいなら頼んでみるけど?と。



すると、彼は、既に自暴自棄になつているのか、



もう遅いよ・・・。



きっと、俺はこのまま死ぬんだろうから・・・・。



それに、あんな恐ろしい女に、誰が立ち向かえるんだ?



と言ってくるので、



まあ、そういう奴もいるんだよな・・・。



霊の方が逃げ出してしまうような・・・そんな奴が。



まあ、とにかく分かったよ。



何とか頼んでみる・・・。



だから、しっかりと気持ちを持ち直してくれよ!



そう言って病室を後にした。



そして、Aさんに連絡を取ると、どうやら仕事で出張に出ているらしい。



ただ、Aさんは、こう言ってくれた。



話を聞いた限りでは、急いだ方が良いですね。



だったら、姫ちゃんに頼んでみますか・・・。



あの子も、そろそろ、こういう事にも挑戦しにいと・・・・。



そう言うので、俺は少し不安になり、



まあ、姫が凄いのは分かるけどさ・・・。



でも、除霊とか出来るのかな?



本当に大丈夫?と。



すると、Aさんは、



あの子が祓えないものがあるとしたら、それは神様くらいのものでしょ?



いや、もしかしたら、神様でもあの子なら、やってしまうかも・・・。



どちらにしても、もう姫ちゃんに頼るしかないと思います。



私から連絡しておきますから・・・。



そう言って電話が切れた。



すると、しばらくして俺に電話が掛かってきた。



姫だった。



Aさんから連絡があり、内容は分かったから迎えに来て欲しい、と



言われた。



俺は急いで姫を迎えに行くと、そのまま病人に直行した。



そして、彼の病室に入ると、姫は思わず、



キャッ!



と声を上げる。



そして、



あの女の人、凄く怒ってるみたいなんですけど、大丈夫ですかね?



そう言われ、



あのね・・・これから姫ちゃんに祓ってもらいたいのがあの女の人



なんだけど?



そう言うと、



ああ・・・そうなんですよね・・・勿論分かってます。



でも、かなり怒っていらっしゃいますよね・・・・・・。



と俺の不安を増幅させる。



だから、俺は姫にこう言った。



やっぱり、Aさんが戻ってくるまで待とうか?と。



すると、



いいえ、大丈夫です。



そんな事をしたら、きっとAさんに怒られますから・・・。



それに、Aさんが言っていたように、あまり時間の余裕は無いみたいですから。



そう言って、窓を方へと顔を向ける。



しかし、やはり怖いのか、すぐに視線を俺の方へと戻してくる。



こうして見ていると、本当に何処にでもいる普通の女子高生だな、と



妙に納得してしまう。



すると、姫が俺にこう言った。



今、窓に張り付いているのは、その女の人の実態ではないみたいです。



ということは、やはり、夜まで待つしかないですね・・・。



ですから、Kさんも、ちゃんと最後まで付き合ってくださいね。



やっぱり1人では心細いものですから・・・・。



そう言うと、お腹が空いているらしく、病院の食堂へ行って何か



食べたいと言ってきた。



俺は勿論、頷き、彼を病室に残したまま、二人で食堂へと向かう。



食堂に着くと、姫はショーケースに並んだ食べ物を、まるで子供のように



喜んで見つめ、



わぁ・・・何でもあるんですね・・・。



最近の病院って凄いですね!



と大喜びしている。



そして、結局、食堂ではカレーライスとアイスコーヒーを頼んで



美味しそうに食べている。



その間、何度か、俺に向かって話しかけるので、俺が、



え?



と答えると、



いえ、Kさんじゃなくて、守護霊さんとお話してますから・・・。



と言われてしまう。



そして、ちょうどAさんからも電話が掛かってきたらしく、何やら二人で



話し込んでいた。



そして、電話が終わった後、姫は元気に



Aさんは、私の好きなようにすればいいって仰ってくれました。



だから、私は全力でがんばってみますね!



と元気に答えてきた。



そして、夜になり、病棟の明かりが落とされた。



それまで、彼の病室で、あれと姫は椅子に座り、仮眠を取っていたのだが、



何処からか聞こえてくる、何かを引き摺るような音に、目が覚めた。



Kさん、起きてますか?



えっ・・ああ、勿論・・・・。



そうですか・・・・あの・・・私、段々怖くなってきたんですけど、



どうすれば良いですかね?



そう聞かれた俺は、咄嗟に、



取りあえず、「人」という字を書いて飲み込んでみるとか・・・。



そう言うと、姫は、笑いながら、



それって、緊張してる時の対処法じゃなかったですか?(笑)



でも、お陰で少しは、恐怖感も和らぎました。



それじゃ、一緒に頑張りましょうか!



そう言ってくるので、俺は、



え?俺も一緒に頑張らなくちゃいけないの?



と聞くと、



満面の笑みを浮かべて、



はい!勿論です!



と言われてしまい、俺はこの期に及んで、不安感に襲われてしまう。



そうしているうちに、廊下から聞こえてくる音は、ずいぶんと



大きくなっており、はっきりと



ズルッ・・・・ベチャ・・・・ズルッ・・・ベチャ・・・



と聞こえてくる。



その音だけでも、その姿を思わず想像してしまい、俺は固まってしまった。



しかし、どうやら姫は本番には強いようだ。



部屋の入り口の引き戸の側まで行き、廊下を覗く。



すると、キャッという声が聞こえて、姫はすぐに部屋の中へと



顔を戻して、こう言った。



なんか、凄いのがこちらに向かって這ってきてますけど・・・・。



その時、俺は本心では後悔していた。



やはり、Aさんが戻ってくるのを待つべきだったと・・・・。



俺と姫は二人がかりで必死に、入り口の引き戸を押さえた。



とりあえずは、部屋の引き戸を開けさせなければ大丈夫だろう、という



安易な考えのもとに・・・・。



廊下を這いずる音が、引き戸の前で止まった。



俺と姫は、引き戸を押さえる手に、更に力を込める。



しかし、次の瞬間、いとも簡単に、引き戸は開けられてしまう。



そして、そこから、ぬっと顔が現れた。



目の位置も鼻の位置も、そして、どこが頭なのかすら判別がつかないほど



潰れ歪んだ顔。



その顔を見た時、俺は完全に固まり恐怖で萎縮してしまった。



しかし、どうやら姫は違ったようだ。



突然、開き直った様に引き戸から手を離した姫は、引き戸の隙間から



覗いた顔に向かって語りかける。



本当に痛かったんですよね。



怖かったんですよね・・・。



でも、事故は貴方の過失によるものなんです。



それを理解して頂けませんか?



そして、こちらの男性を許してあげる事は出来ませんか?



そう優しく語りかけた。



俺は、その時、思った。



これが、姫のやり方なのかな?



Aさんとは違い、霊に寄り添う事で、説得を試みるというのが・・・。



しかし、次の瞬間、引き戸の隙間から覗く顔が、怒りに変わるのを感じた。



そして、引き戸を掴むと、そのまま完全に開けてしまった。



そして、姫に向かい、



お前に何が分かる・・・・。



悪いのはあいつだ・・・・。



そう言って、姫の肩を掴んできた。



その時、姫の顔も、何かが吹っ切れたように感じた。



そして、次の瞬間、姫は、何処かに向かって、



出番です・・・お願いします・・・・。



そう言った様に聞こえた。



すると、次の瞬間、窓の外で何かが蠢いているのが分かった。



それは、オロチと呼ぶにふさわしいほどの巨大な金色の蛇と、宙に



浮かぶ真っ白で大きなキツネ。



そのキツネの尻尾は完全にいくつかに分かれている。



そして、姫がこう続ける。



窓の外にいるのは、私のお友達です。



貴方の出方次第では、貴女にあの子達と闘ってもらうことになります。



どうしますか?



すると、その女は、明らかに戦意を喪失したかのように、ゆっくりと



頷き、そして、そのまま消えていった。



すると、姫が元気な声で、



はい!終わりましたよ!



と俺たちに言ってきたが、俺も彼も、その巨大な蛇とキツネを呆気に



とられたように、ただ呆然と見つめていた。



あっ、ごめんなさい・・・。



そう言うと、姫は、外に向かって、



ありがとうございます・・・・もう大丈夫ですから・・・。



そう言うと、蛇とキツネは、跡形もなく夜の闇の中に消えていった。



俺が、驚いた声で、



今のが姫ちゃんに憑いている守護霊なの?



と聞くと、



いえ、あれは守護霊ではなくて、ただのお友達ですから(笑)



今回は、説得する為に、わざと恐ろしい姿を見せましたけど、どの子も



皆、優しいんですよ。本当は!



そう言って、笑った。



ちなみに、Aさんが戻ってきてから、その時の話をすると、



そうですか・・・好きなようにすればいい、とは言いましたけど、



そんな方法を使いましたか・・・・。



やはり、自分の力にまだ自信が無いのかもしれないですね・・・。



それにしても、姫ちゃんが使役している蛇とキツネを使ったのに



病院自体が破壊されなかっただけでも奇跡かもしれませんね・・・。



と、他人事の様に言った。



さすがに、興味が沸いた俺は、姫が使役している蛇とキツネの



事について、更に質問したのだが、Aさんは、



Kさんは、知らないほうが良いですね。



知ったら、姫ちゃんが怖くなって近づけなくなるかもしれませんから・・・。



そう言われてしまった。
  


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2018年11月10日

いわくつきのビル

これは会社を経営している知人から聞いた話である。



彼の会社は社員も10人以下とそれほど大きくはない。



ただ、それまで使っていたビルの老朽化に伴い、色々と不便な



事も多くなってきたので、会社の移転を決めた。



ただ、彼の会社の業務内容からすれば、そこそこ広い事務所と



小さな倉庫、そして車が2~3台停められれば何の問題も無かったので、



移転先は、すぐに見つかると思っていた。



しかし、基本的に社員が自家用車ではなく電車やバスを利用して



通勤する事を考えれば、それなりに交通の便の良い場所でなければ



ならず、そうなってくると、やはり高額な賃貸料がネックになってしまい、



なかなか見つからない。



彼自身、それが悩みの種だったらしいのだが、ある時、懇意に



している不動産会社から、一つの物件を紹介された。



それは、市の中心部にある真新しいビル。



交通の便もすこぶる良く、ビル自体も築数年という新しい物。



ビル自体は地上5階建であり、地下には駐車場もある。



そして、そのビルの最上階である5階のフロアが全て空いている



というのである。



それでいて、毎月の賃貸料も破格の安さだった。



彼は、すぐに契約しようと思ったらしいが、それを聞いた彼の友人は、それを止めた。



友人が言うには、そのビルにいわくつきのビルであり、その5階のフロア



だけには、誰も借りる者がいないのだという。



万が一、誰かがその安さからそのビルの5階に入ったとしても、それこそ



1週間も経たずに、そのビルから出で行く。



だから、あのビルの5階はいつも空きフロアーになっているのだと。



それを聞いてしまうと、さすがに彼も躊躇したらしいが、それでも他には



良い物件など見つからず、元々彼の会社の業務形態として、夜間の残業は



殆ど無かったから、彼は仕方なく、そのビルの5階を賃貸契約する事にした。



ただ、実際、そのビルへ社員と一緒に引っ越し作業をしている時にも



異常は無かったし、真新しいビルで社員たちもかなり喜んでいたので



彼自身も、余計な事は社員に伝えず、いわくつきという事実も、彼の



胸の中にしまっておく事にした。



実際、そのビルで業務を開始してからも、不思議な事は一度も起こらなかった。



ただ、そのビルに入っている他の会社の社員と出会っても、何故か逃げるように



挨拶もろくにして貰えないという事だけが気になっていたという。



そんな時、ある社員が彼に尋ねてきたという。



このビルの人達って、エレベーターを何故か利用しないんですね?



何ででしょうか?と。



そう言われ、注意深く見ていると、確かに、そのビルの4階までのフロアーに



入っている会社の社員は、たとえ重たい荷物を持っていたとしても決して



エレベーターを利用せず、階段を使っていた。



彼自身、そのビルがどうして、いわくつきと言われているのか、は



知らなかったのだが、もしかしたら、エレベーターがその原因になっている



のかもしれない、と考えて、社員にこう説明したという。



このビルのエレベーターは誤作動が多く、中に閉じ込められる事が多い



みたいだから、出来るだけエレベーターは利用しないように、と。



社員らは、不満そうな顔をしていたらしい。



何しろ、ビルの5階までを階段だけを使って上り下りしろ、と言われ



たのだから、その気持ちも分からなくはないのだが・・・。



ただ、そのビルには幾つかの良いところもあった。



ビルは、大きな窓が付いていてとても開放的だったし、屋上への出入りも



自由。



そして、その屋上から見る景色は、とても素晴らしいもので、彼も



時間が出来ると、つい、屋上に登って景色を見て時間を潰すようになる。



もう彼の頭の中からは、其処がいわくつきのビルなのだという事実は



消えかかっていた。



何しろ、そのビルに入居してから2週間ほどの間、怪異というものは一切



起こってはいなかったのだから・・・・。



そんな時、彼は社員からこんな話を聞かされた。



それは、どうやら屋上に、近所の子供たちが勝手に登って遊び場にしている様で



屋上からは子供たちが走り回る足音や、笑い声がよく聞こえる、というものだった。



だから、彼はそのビルの管理会社に連絡して、その旨を伝えたらしいのだが、



管理会社の対応は、そっけないものであり、たぶん気のせいじゃないですか?



という回答だった。



万が一、子供が屋上で遊んでいて、誤って転落事故でも起きたらどうするんだ?



と思った彼だっだが、一度、彼も屋上からの走り回る音や、子供たちの笑い声を



聞いた事があり、すぐに注意しようと屋上にのぼったらしいのだが、其処には



誰もいなかった。



それからも、何度も彼は屋上に注意しようと上ったが、子供たちの姿を



見る事は一度も無かったという。



そして、更にこんな事もあった。



彼が、まだ夜には程遠い午後7時前に、1人で会社に残って仕事をしていた時、



誰かの視線を感じて、窓の方を見たらしい。



すると、そこには、窓の外からこちらを覗く巨大な顔があった。



その顔には目というものが、一つしかなく、大きな筈の窓ガラスにも



収まりきらない程の大きな顔に、彼は思わず、椅子から転げ落ちた。



そして、その様子をじっと見ていたその大きな顔は、しばらくすると



そのまま横に移動するかのようにして消えていったという。



更に、一度、彼が午後9時頃まで残業していたことがあるらしく、



その時は、部下2人にも一緒に仕事を手伝ってもらっていた。



その時、突然、彼の耳には読経の様な声が聞こえてきたらしい。



しかも、最初に小さく聞こえていたその読経の声は、次第に大きくなっていく。



これは、マズイ・・・・。



そう思った彼はすぐに残業を切り上げて部下と一緒に帰り支度をして



廊下へと出た。



すると、其処には、掃除婦さんが、一生懸命に掃除をしていたという。



彼がそのビルで掃除婦さんを見るのは初めての事だった。



あれ?このビルに掃除婦さんなんか、いたっけ?



そう思っていると、その掃除婦さんは、



こんばんは・・・・・お仕事大変ですね・・・お疲れ様です・・・。



と声を掛けてきた。



彼らは、思わず、



あっ、そちらこそ、大変ですね・・・・・それじゃ、お先に失礼します。



そう言って、その場から立ち去った。



それでも、こんな時間に掃除婦さんが仕事をしていてくれるのだから、もしかしたら



いわくつきというのも、単なる噂かもしれないな・・・。



そう思いながら、階段を降りていくと、今度は暗い階段から誰かが



上がって来る。



思わず、身構えていると、どうやら、それは警備員のおじさんだった。



ちなみに、彼はそのビルで警備員の姿を見るのも初めてだった。



懐中電灯で、こちらを照らしながら、



5階のフロアーの方達ですね・・・・。



ご苦労様です・・・。



そう挨拶されたという。



勿論、彼らも、先ほどと同じように、



警備員さんこそ、遅くまでご苦労様です!



そう言って、階段を降りていった。



そして、階段を降りていく途中で、いつもは、懐中電灯が必要な程暗くない



階段なのに、今夜は変だな・・・・。と思ったという。



そして、1階まで階段で下りた彼らは、無事、そのまま帰路に着いた。



そして、翌日、管理会社の方に電話をかけると、相変わらず素っ気ない



返事が返ってくる。



階段の明かりは、しっかりと全て点いていますよ。



それに、管理会社としては、あのビルに掃除婦さんも警備員も



頼んではおりませんので・・・・。



そう言われたという。



彼は、狐にでもつままれたような気持ちになったが、それでも確認すると



確かに階段の電気は全て明るく点いていた。



そして、よく考えてみると、このビルに入っている会社は、怖いからなのか、



残業をする会社というのが、一つも無いのだ。



そんな状態のビルに掃除婦はともかくとして、警備員を雇う必要が無い



のは明白だった。



それでも、彼はその事も自分の胸の中だけにしまっておく事にした。



むやみに、社員を怖がらせるのは得策ではないと考えたから・・・。



そして、彼は決定的な体験をしてしまう。



その日、彼は1人で残業をしていた。



残業といっても、午後7時頃であるのだか、どうしても今日中に



まとめておかなければいけない資料を必死で作っていた。



必死で作っていたというのは、やはり、その頃になると、彼も次第に



そのビルの事が少しだけ怖くなっていたから、出来るだけ早く会社から



退社しようと焦っていたから。



そして、仕事を片付けて、部屋の鍵をかけて廊下へと出た。



いつもなら、階段を利用するのだが、その時彼の目に入ったのは、



エレベーターが動いており、階数表示のランプが珍しく動いていた。



なんだ・・・ちゃんとエレベーターを利用する人もいるんじゃないか!



彼はそう思い、エレベーターを利用して1階まで降りようとエレベーターの入り口



付近で、下向きのボタンを押して到着を待つ事にした。



階段を使えば、あの警備員や掃除婦に会うような気がしたのもその理由



だったが、何より、彼はその時、かなり疲れていたようだ。



彼はエレベータの動きを階数の表示ランプを見ながら眼で追っていた。



何階で降りるのかな?



なんとなく、それを確かめたかったから・・・。



しかし、エレベーターは、何処にも停まることなく、そのまま5階まで上がって来て



停まった。



チーンという音が廊下に響いてドアが開いた。



既に彼はその時固まっていた。



こんな時間に、誰が5階にある自分の会社にやってくるというのか?



しかし、彼は、それが仕事関係のお客さんである事を願った。



アポイントなど入ってはいなかったが、もしも、そうでなければ



一体何がエレベーターで5階までのぼって来たというのか?



彼は、固まったまま、開いていくエレベーターのドアを凝視していた。



頼む…人間であってくれ・・・・。



そう思いながら。



しかし、開いたドアから見えたのはエレベーターの一番奥に背中を向けたまま



立っている女の姿だった。



服装も覚えてはいないという。



ただ、背が高く髪が長く、赤いヒールを履いた女だったという。



そして、背後から見た感じでは、衣服も靴もボロボロに汚れており、髪は



般若の様にボサボサの状態だったという。



彼は、その後姿を見るなり、すぐにその場から逃げだした。



その女がもしもこちらを振り向いたら・・・・。



そう考えただけで、頭の中が恐怖で満たされていく。



しかし、彼はその時初めて経験した。



腰が抜けるというのが、どういう事の中、ということを。



足がもつれて転倒した彼は、起き上がろうとしても起き上がれず、そのまま



手だけを使って廊下を這いずりながら進んだ。



その先にある階段から逃げる事しか思いつかなかったから。



しかし、初めての経験のせいなのか、手だけでは体がなかなか前へと



進まない。



そして、エレベーターのドアが閉まる音が背後から聞こえてくる。



頼む!・・・そのまま下に降りて行ってくれ!・・・・。



彼はそう願っていた。



後ろを振り返って確認する勇気など無かったが、彼にはその女がこの階で降りる



などという事は想像したくもなかった。



しかし、すぐに彼の背後から、コツーン・・・コツーン・・・・コツーン



というヒールの音が聞こえてくる。



その音を聞いて、彼は更に必死になって死に物狂いで両手を使って、階段の方へと



逃げようともがいた。



もう、恐怖で頭がいっぱいになり、何も考えられなかった。



それでも、背後から聞こえてくる、コツーン・・・コツーン、というヒールの



音は、先ほどより確実に近づいているのが分かった。



もう、気が狂ってしまった方が楽なのではないか、とさえ思ったという。



そして、不思議な音も聞こえてきた。



それは、まるで、赤ちゃんをあやす時に、母親がするような、口を開け閉めして



パクパクパくという音を出している様に聞こえた。



その音も、さっきの女がやっている事なのか?



そう思うと、彼はつい、その姿を想像してしまい、更に恐怖で体が



硬直してしまった。



もう、階段までは数メートルの距離だった。



勿論、階段まで逃げられたとしても、そこから先を、そんな状態の



自分がどうやって逃げれば良いのか?など、全く考えていなかったが、



彼にはもう、それ以外、何も思いつかなかった。



駄目かもしれない・・・・。



そう彼が思った瞬間、突然、背後から聞こえるヒールの音が変わった。



コツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ・・・・。



それは、ヒールを履いて早足で歩いている音にしか聞こえなかった。



もう、すぐ追いつかれる・・・・。



彼は絶望の中で無意識に背後を振り向いた。



自分が何を見たのかは全く覚えていないが、それでも、自分が大きな悲鳴を



上げながら一気に意識を失ったのだけは覚えているという。



そして、彼は、それから5時間以上経った午前1時頃に、管理会社の人に



助けられたという。



管理会社の社員の元に、彼の携帯から何度も無言電話が掛って来て



もしや、と思った管理会社の社員が、そのビルを確認にきて、廊下で



倒れている彼を発見したという事だった。



彼は、体にも異常が無かったので、そのままその日は自宅まで帰った。



そして、考えた挙句、現在でも、そのままそのビルで業務を続けている。



ただし、エレベーターのドアはしっかりと封印し、業務時間も、午前7時から



午後4時までに変更したという。



それからも、相変わらず、ちょっとした怪異は続いているが、それでも



実害が及ぶことはないのだという。



だから、彼に聞いてみた。



どうして、そんなビルに固執するのか?と。



すると、彼はこう言ってくれた。



まあ、新しい移転先を見つけるのも大変だしな。



それに、業務的には、このビルの立地は最高なんだ。



だから、このビルが、いわくつき、と言われなくなるまで居座って



やろうと思ってるよ!と。



彼の前途に幸多かれ、と願わずにはいられない。
  


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2018年11月10日

お盆を過ぎた海

全国的には、どうかは分からない。



ただ、こちら石川県、いや俺の家系では、こんな言い伝えがある。



『お盆を過ぎたら海で泳いではいけない!』


お盆に泳いではいけないのではなく、お盆を過ぎたら海で


泳ぐのは危険だ、という事だ。



親から戒めるように言われた、その言葉は、お盆を過ぎてからの海は



亡者がうようよしているから、迂闊に泳いでいたら、そのまま海の底に



引き込まれてしまう・・・。



そんな内容だったと思う。



それは、確かに子供である俺の心にずっしりとブレーキを掛けるには



十分すぎるものであった。



そして、大人になっていくにしたがって、その時、親が言いたかった



本意は、お盆を過ぎてからの海には、クラゲが出て、人の刺すから



危険なのだ、というものだと理解できたのだが、本当にそうだろうか?



もっと、別の意味を込めて、古の人達がその教示として、残したもの



ではないのだろうか?



そんな風に思ってしまうのは、俺がこんな事を経験しているからだ。



その時、俺は地元の海に来ていた。



確か、夏休みも終わりかけた8月の下旬だったと思う。



勿論、泳ぎに行った訳ではなかった。



友達数人と遊んでいて、どこも行くところが無くなってしまい、どうせなら



人気の無くなった海で、ぼんやりとしたり、波打ち際で遊ぶのも



たまには良いかな・・・・。



そんな気持ちだったと思う。



車を遊歩道の近くに停め、少し歩くと、いつもの日本海が広がっていた。



眼下に広がる砂浜には、当然、誰もいない。



あれ程、人で賑わっていた海が、嘘のように・・・・。



俺達は、コンクリートの塀を乗り越えると、誰もいない砂浜を海へと向かった。



やはり、海の香りは良いものだ。



いつ来ても、何か懐かしいものを感じさせてくれる。



俺達は、波打ち際には近付かず、そのまま近くのテトラポットの方へと向かう。



そして、テトラポットの上に登り、沖の方へと移動していく。



波がテトラポットにぶつかって、心地良い音を立てる。



そして、海の中を覗くと、そこには小魚やカニなどの姿を見つけられた。



俺達は、そんな事に夢中になって、時間がたつのも忘れて海の中を覗き込んでは



カニや小魚を捕まえようと躍起になっていた。



それはそれで、楽しい時間だった。



ただ、炎天下の中、少しはしゃぎ過ぎたのかもしれない。



友人の一人が、



俺、海に入りたくなった!



と言った。



小さな頃から、お盆過ぎの海には入っていけない、と教えにれてきた俺は、



その友人を止めた。



しかし、その友人に釣られるように、他の友人もうちの中に入ると



言いだしてしまう。



俺に同調するかのように、海の中に入る事を必死で止める友人もいたが、



それでも、俺を含めて5人いた友人のうち、3人が海に入る準備を



始めてしまう。



俺ともう一人の友人は、彼らを必死に制止したが、それでも彼らは



聞く耳を持たなかった。



ついには、パンツ1枚になって次々に海の中へと入っていく。



溺れても助けないからな!



そんな言葉を彼らは笑いながら聞き流した。



本当なら、彼らの体にロープでも巻きつけてから、泳がせたいくらいの



気持ちだった。



それくらいに、その時は嫌な予感でいっぱいだった。



海の中に入った彼らは、



あ~、気持ちいい!



やっぱり、誰もいない海って最高だな!



とご機嫌だった。



そんな彼らを見て、俺は、



分かったから、せめて、浅瀬だけにしとけよ!



と声を掛けるのが精いっぱいだった。



しかし、それからしばらくは何も起こらず平和な時間が過ぎていく。



俺と一緒に彼らが海に入るのを制止した友人も、どうやら昔からその様に



言い聞かされてきたらしいが、俺と同じく、その理由については



あやふやなものだと語ってくれた。



そんな俺達の心配をよそに、海の中で泳いている友人達は、



お前らも、来いよ~



気持ちいいぞ~



と声をかけてくる。



やはり、俺の気のせいだったのかな・・・。



そんな風に思い始めていた時、突然、



あれ~・・・・なんかおかしい!



あれ?・・・なんで?



足がつかないんだけど!



そんな声が聞こえた。



彼らが泳いでいるのは波打ち際からほんの5メートル位の場所。



俺も何度も泳いだ事があるが、そんな所に、深い場所など存在



していないのは、よく分かっていた。



嫌な予感がした俺は、大声で



おーい!もうあがれ!



と叫んだ。



しかし、その声が終わらないうちに、彼らの悲鳴が重なった。



ヤべーよ、此処!



なんで、足が動かないんだよ!



うわっ!足掴むなよ!誰だよ!



それは、1人から始まり、そして結局、海の中にいる3人全てが



海面から顔を出しながら必死の形相でもがいていた。



その様子は、海の中から足を引っ張られ、それに必死で抵抗している



様にしか見えなかった。



俺達は、生まれて初めて目の前で人が溺れているという現実に



しばらく、その様子を固まったまま見ているしかなかった。



すると、突然、俺の横に座っていた友人が近くに落ちていたボロボロになった



長い竹を見つけてそれを拾った。



そして、波打ち際から彼らに向かってその竹を伸ばした。



しかし、もう少しのところで届かない。



その友人は、ジーンズが海水でびっしょりと濡れてしまう位まで進み、その場所



から、その竹を伸ばすが、何故か、先ほどと同じように届かないのだ。



その友人は、自分が海の中に入って彼らを助けようと、海の中へ入って



行こうとするのを見て、俺はそれを制止した。



巻き添えになる・・・。



そんな確信があった。



そして、俺は必死に考えた。



どうすれば、彼らを助けられるのか?



長いロープでもあれば・・・・・。



そう思って、俺は辺りを見回した。



そして、その途中に不思議な光景を目にした。



それは、テトラポットの上に、女性が立っているのだ。



麦わら帽子をかぶり、白いワンピースを着た高校生くらいの女の子。



その女の子が、滑って危険なはずのテトラポットの上に平然と立ち、



溺れている彼らの姿を微笑ましそうに見ていた。



その瞬間、俺はその少女の方へと走り出していた。



何も根拠は無かったが、俺にはその少女が、とても人間とは思えなかった。



もしかしたら、彼らが溺れているのも・・・・・。



そう思っただけだ。



俺は、波打ち際まで進むと、テトラポットの上に立つ少女に向かって



ひたすら頭を下げた。



何と言ったのかは正確には覚えていない。



きっと、ごめんなさい、ごめんなさい、と連呼していたのだろう。



すると、先ほどまで長い竹を使って彼らを救おうとしていた友人も



俺の横まで走って来て、必死にその少女に頭を下げ出した。



どれくらいの間、俺達はその少女に謝り続けただろうか・・・・。



突然、背後から、



あれ?



足が着くじゃん!



と言いながら、バシャバシャと波打ち際まで逃げてきた3にかの友人



の声が聞こえた。



俺ともう一人の友人が頭をあげると、もう其処には少女の姿は何処にも



見つけられなかった。



そして、俺達は、彼らの元に行き、



大丈夫か?



だから、海の中には入るなって言っただろうが・・・・。



と彼らを叱責したのだが、疲労困憊と言った感じの彼らに、それ以上



何も言えなかった。



それから、車に乗り、その浜辺を後にするまで誰も喋らなかった。



そして、車に乗り込み、しばらく走ると、彼ら3人の一人がこう言った。



さっきは助かったよ!



信じて貰えないだろうけど、俺が溺れてる時、一瞬、自分の足元を見たんだ!



すると、沢山の手が俺の足を掴んででさ。



そして、その手が伸びてきているのが、底が見えないような深い海の底



からだったんだ!



あのまま、引きずり込まれてたら、きっとあの深い海の底まで連れて



いかれるんだろうな、と思ったら恐怖で体も動かなくなってさ!



でも、その後、すぐにいつもの浅瀬の海に戻ったんだ?



お前ら、何したの?



そう言われた俺は、



まあ、俺もよく分からないけどな・・・・。



でも、何故かあの時、あの女の子に謝るしか助かる方法は無いって



感じただけ・・・・。



そう返した。



ちなみに、溺れた彼らにも、そして俺と一緒に謝ってくれた友人にも、



その少女の姿は見えてはいなかったようだ。



あの少女が海の神様なのか、それとも妖魔なのか、は分からないが、



もしかしたら日本全国で起きている海水浴での事故も、あの少女が



関係しているのかもしれない。



そんな気がして仕方なかった。
  


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2018年11月10日

七つまでは神のうち

『ななつまでは神のうち』という言葉をご存じだろうか。



昔は、七歳までは不安定で死亡率も高く、いつ亡くなるかも



分からなかったことから、七歳までは人間の物ではなく、



神の物であり、



その生死も神のみぞ知る



存在である、という事らしい。



実際、神隠しにあって行方不明になる子供も沢山居た様であり、今と



なっては現実味のない言葉かも知れないが・・・・。



今回の話は、そういう類の話である。



これは知人の身に起こった話。



彼女は、若くして結婚した。



いわゆる玉の輿というやつだ。



元々、彼女自身、生まれた時から、とても幸せな環境の中で育った。



家庭はそれなりに裕福だったし、両親や祖父母も彼女に優しかった。



彼女は3姉妹の末っ子として生まれたのだが、末っ子という事もあり、



彼女が一番甘やかされて育ったのかもしれない。



中学、高校と楽しい学校生活を送り、やがて、彼女は地元の大学に



進学した。



そして、そこで知り合った男性と付き合い始め、大学を卒業すると



すぐに、その彼との結婚を決めた。



彼女は彼の両親と同居する事になったが、それでも、彼の両親も



すぐに彼女の事を気に入ってくれて、楽しい新婚生活だった。



夫は一流企業に勤め、大きく立派な家に住み、夫の両親も優しい。



まさに、絵にかいたような幸せな結婚生活だった。



そして、そんな幸せな時間はそれからしばらくの間続いたのたが・・・・。



それから年月が流れ、少しずつ変化が訪れる。



それは、何故か子供が出来ないということに起因していた。



夫も彼女も病院で検査を受けるが、何処にも異常は無かった。



それでも、何をしても二人の間に子供を授かる事は無かった。



彼女に優しく接してくれていた彼の両親も、いつしか態度が冷たくなり、



彼の親戚たちも、その頃には子供の話は禁句であるかのようになってしまい



その為か、誰も彼女に会おうとはせず、ただ、陰口ばかりが聞こえてきた。



そして、彼女の実家でも、彼女の味方になってくれたは両親だけであり、



二人の姉は、かなり彼女に冷たく接した様だ。



そんな環境の中で彼女は追い詰められていく。



1人で殻に籠り、誰とも話さない時間が過ぎていく。



それは、それまで順調に生きてきた彼女が生まれて初めて体験する



孤独と疎外感だった。



そんな状態は、いつしか、彼女から正常な思考を奪っていったのかもしれない。



いつしか、そんな夫や両親、そして親戚だちを見返してやりたいという



思いだけに駆られるようになっていった。



それから、しばらくして、彼女は、思い詰めた様に家を出て、しばらくの間



全く連絡がつかなくなった。



そして、1週間程経ったある日、彼女はふらっと家に戻って来た。



その時には、すっかりと元気を取り戻し、誇らしげな顔にさえ見えたという。



その元気な顔を見て、夫もその両親もとても喜んでくれたという。



音信不通だった事を怒る事もせず・・・。



そして、それからしばらくして、彼女は妊娠した。



周りの全ての人達が驚き、とても喜んでくれたが、彼女自身はまるで



さも、当たり前の事の様に、笑顔すら見せなかった。



それから、彼女はまるで計ったように、全くのズレも無く予定日に



出産した。



可愛い女の子だった。



その時、初めて彼女は喜んだ顔ではなく、男の子ではなかったという



苦渋の表情を見せたという。



どうせなら、長男をしっかりと産んで、周りの奴らを見返してやりたかった。



それが、彼女の本意たった。



しかし、生まれてきたのが女の子だったが、夫をはじめ、両親や親戚、



そして、彼女の姉達も心からの祝福をしてくれた。



その対応を、彼女は、その時とても意外なものに感じたという。



どうして、男の子を産まないのか・・・・。



そんな目で見られると思っていた。



しかし、それからも、生まれた女の子は、周りの沢山の愛情に包まれて



すくすくと成長していった。



そして、母親になり、その子の姿を見ているうちに、彼女も何かを感じた



様で、気が付くと塞ぎこむ事が多くなっていく。



その姿を見た、夫も周りの親戚たちも、彼女を心配し優しい言葉を掛けてくれた。



その度に、彼女は、大丈夫です・・・という返事を繰り返すだけだった。



しかし、彼女の子供が5歳を迎える頃になると、彼女の身の回りで



怪異が起こり始める。



最初は彼女が毎夜夢でうなされるようになった。



しかし、どんな夢でうなされているのか、は彼女は誰にも言わなかった。



そして、彼女の住む家の中で、知らない女の姿を目撃する者が続出した。



その女は、まるで祈祷師の様な服装をしており、家の中のいたるところに



出没した。



そして、彼女の娘が部屋の中で誰かと話している声も聞こえ、部屋に入るが



娘しかいないという事が何度も続いた。



娘にそれを尋ねると、知らない女の人とお話していたと説明された。



そんな状態が続いたが、彼女の娘さんも無事、小学校に入学。



楽しい学校生活が送れれば、と願っていた彼女だったが、それに反して



彼女の娘さんは学校で孤立してしまう。



そして、その理由はこんなものだった。



明るい性格の娘さんはすぐに暮らすにも溶け込み、友達も沢山出来た。



毎日、学校に行くのが本当に楽しみだった。



しかし、友達になった者は皆、大怪我をして学校を休むことになった。



階段から落ちる、自転車とぶつかる、突然倒れてきた物の下敷きになる、



など怪我の原因は様々だったが、その誰もに共通していたのは



怪我をした時に、



あの子には近づくな・・・・・。



という声が聞こえたという事だったという。



そうなると、他の子供たちの親が、彼女の娘さんと友達になるのを禁止するのも



仕方のない事かも知れない。



そして、それを見かねて娘さんに優しく接してくれた教師も、事故に遭い



入院してしまう。



いつしか、娘さんは呪われた子、として学校内で噂になっていった。



これでは、娘さんが学校で孤立するのも無理はない事だ。



そして、その時、彼女は初めて、それまで心の中だけに隠していた秘密を



夫に打ち明けた。



それは、とある禁忌とされている場所にいった願をかけてきたということであり、



其処で願をかけるとすぐに子供が授かるが、皆、7歳の誕生日に決まって



神隠しにあって行方不明になると言われている、という内容だった。



どうしても、子供が欲しかったし、周りを見返してやりたかった・・・。



神隠しなんて本当に在るなんて思ってもみなかった。



もし、そうでも、きっと守れると思っていたの・・・。



でも、母親である私には、何故か分かるの・・・。



あの子が7歳の誕生日に、そのまま行方不明になってしまうという事が。



私が間違ってました・・・・。



今の私には、あの子がいなくなった生活なんて考えられない・・・。



そう言って泣き崩れる彼女の様子をじっと見ていた夫は、



今からでもなんとか出来るかも知れない!



皆の知恵を借りるしかないな!



そう言って、両親や親戚を集めて、その話を全て話したという。



そして、助けて欲しい、と懇願した。



彼女は、最初、そんなお願いをしても、きっと冷たく罵声を浴びるだけだと



思っていた。



しかし、親戚たちは逆に、彼女に謝ってきたという。



そんなに気持に負担をかけてしまっていたのか、と。



そして、それぞれが、人脈を使い、お金に糸目もつけず、色々なお寺や神社、



そして、霊能者にお祓いを頼んだ。



全ては彼女の娘さんを護るために・・・。



しかし、いっこうに怪異は収まらず、逆に、それが怒りを買ってしまったのか、



親戚たちが事故や大怪我で入院する事になった。



そして、家の中では以前にも増して頻繁に、見知らぬ女の姿を目撃する様に



なっていった。



娘さんの7歳の誕生日は、もうすぐそこまで迫って来ていた。



そこで、彼女は、完全な駄目もとで俺に相談してきたらしい。



誰か、有能な霊能者を知らないか?と。



その話を聞いた俺は、



まあ、知らない事もないけど・・・・。



でも、性格には難があるけど大丈夫?



引き受けてくれるかどうかは、分からないけど、少しでも可能性を



上げたいのなら、大量の高級菓子と高級スイーツの引換券でも



用意しておいてね!



そう言うと、彼女は喜んでそれを受け入れた。



そして、それらを持って俺はAさんの元を訪れた。



俺が持参した物を見て、Aさんの目が変わった。



しかし、それ以上に、彼女の周りで起こっている話を伝えると、



Aさんは、かなり深刻な顔になった。



そして、



で、今度も、また私を面倒な事に巻き込む為にやって来たんですよね?



これだけの物をKさんに持たせるなんて、相手方も相当苦しんでいるんでしょうけど。



でも、これってかなり厄介ですよ。



きっと、それって○○県の○○○○に行ったんだと思いますけど・・・・。



其処って、鬼神を祀っている所です。



鬼には、祈祷も説得も通じません。



力対力でねじ伏せるしかないんです。



そう言われて、俺はAさんにこう尋ねた。



そこの鬼神って、Aさんより凄いの?



勝てないって事?



いつも偉そうに言ってるけど、鬼ごときに勝てないんだ?



そう言うと、



鬼って言ってないじゃないですか?



鬼神です・・・・鬼神!



それに、鬼ごときって、よく言えますよね?



あいつら、本当に強いんですよ。



人を殺し貪り食う為のありとあらゆる力と手段を持っています。



そして、鬼にはお経も念仏も通じませんからね。



そう言われた俺は、



でも、神という名前が付いている程の鬼が、7歳の子供を連れ去って



何をしようというの?



と聞くと、



そんなの決まってるじゃないですか?



食べるんですよ!



柔らかい子どもの肉と骨をバリバリと・・・・。



その為に、子供を授けるんです。



自分が食べる為に・・・・ね。



だいたい、神なんて名前が付いてても、結局、鬼は鬼なんです。



それ以上でもそれ以下でもありませんから・・・・。



そう返してきた。



そして、



でも、このまま7歳になる女の子が、そいつに食べられるのを黙って



見てるっていうのも、確かにむかつきますよね?



まあ、姫ちゃんも学業で忙しいみたいだし、今回は私一人で何とか



しますかね・・・・。



あっ、それと今日持って来た物は、あくまで手付けと考えていいんですよね?



この後の成功報酬も無いと、今ひとつ燃えませんから・・・・。



そう言ってくるので、俺は即答で、それを快諾した。



そして、どうやってその鬼を探して対峙するのか?と聞いたのだが、



7歳の誕生日に向こうからやって来てくれるのに、わざわざ、こちらから



出向く事も無いでしょう?



それに、向こうに出向くという事は、鬼のナワバリの中で闘う事になりますから。



それは生じく避けたいですから・・・。



分かってますよ。



それまでに、ちゃんと準備しておきますから・・・・。



そう言ってくれた。



そして、何故か娘さんの誕生日前日の夕方、Aさんから電話がかかって来た。



あっ、Kさんですか?



それじゃ、今から向かいますから迎えに来てくれますか?



俺は意味が分からず、Aさんのマンションへと向かうと、Aさんが、とても



これから、熾烈な闘いに臨むとは思えない様なラフな格好で出迎えて



くれた。



Aさんは、さっさと車に乗り込むと、成功報酬として貰いたいものリストを



俺に渡してきた。



よく、これだけ沢山のブランド品のスイーツを知っているもんだな、と



感心してしまう位にびっしりと書かれたリストを・・・。



だから、俺は、



あのさ・・・・もしかして、やる気無いの?



成功報酬リストも結構だけど、そんなラフな格好で大丈夫なの?



まるで、これからウインドウショッピングに出かけます、と



言わんばかりの服装だけど?



と嫌味を言った。



すると、Aさんは、



やる気が有るか無いかなんて、服装で判断しないで欲しいですね!



勿論、やる気があるに決まってるじゃないですか?



その為に、苦労して成功報酬として貰いたいスイーツのリストまで



作って来たんですから・・・・。



本当にそれ作るの、大変だったんですから!



そこまで、聞いて、論点が噛み合わない事を理解した俺は、そのまま



黙って車を走らせた。



彼女には、車から事前に連絡をした。



彼女の家に着くと、家族総出で出迎えてくれた。



あの・・・こちらが有名な霊能者の先生ですか?



今日は宜しくお願い致します・・・・。



そう言われて、Aさんは、



あっ、霊能者じゃないですから・・・。



それに、有名でもないし・・・・。



それに先生というのも止めて貰えますか?



仕事以外で、そう呼ばれるのは勘弁してほしいので・・・。



と相変わらず、へ理屈をこねている。



それでも、家の周りを見ると、



あー、やっぱり、鬼の結界が既に張られてますね。



ロックオン完了って感じですね!



それと、今夜は



確実に危ない事になると思いますから、娘さん以外はこの家から離れてて



貰えますか?



と告げると、さっさと家の中に入っていく。



そして、俺は、彼女に呼び止められて、



あの・・・本当にあんな人が凄い霊能者なの?



なんか、若くて綺麗なモデルさんって感じで、とても強そうな霊能者には



見えないんだけど?



と言われてしまう。



だから、俺は、



まあ、綺麗とか若いとか、モデルさんみたいと言う言葉は本人が図に乗る



から聞かせないでね!



でも、まあ、彼女がやって駄目なら、きっと誰がやっても駄目・・・。



そういうレベルなのは間違いないから・・・。



とだけ言うと、俺も家の中へと入っていく。



家の中に入ると、Aさんが何かを壁に貼り付けている。



何してるの?と聞くと、



今回は、より強力な結界を張ります。



もう既に、鬼が結界を張ってるので、ちょっと面倒くさいんですけどね。



でも、こちらの結界の中で対峙するという事は、こちらのテリトリーで



闘えるという事なので、しっかりやっておかないと・・・。



それを聞いて俺が、



じゃあ、今回は俺が雑用しなくていいんだ?



と言うと、



こんな大事な事を雑用係りに任せられる訳ないじゃないですか・・・。



と冷たく言われてしまう。



そして、俺は思い出したかのように、こう尋ねた。



ところで、娘さんの誕生日は明日のはずだけど、どうして前日の今日、



娘さんの所に行こうと思ったの?と。



すると、Aさんは、やれやれといった感じでため息をつくと、



本当にKさんみたいに、何も考えずに生きていけたら幸せ



かもしれないですね。



あのですね。



鬼って、日の光を嫌うんです。



つまり、太陽の光が苦手なんですよね。



だとしたら、夜のうちに、娘さんの所にやってくるのは自明の理。



確かに、誕生日の夜という選択もあるんでしょうけど、ずっと食べたくて



待ち焦がれていた食べ物を、Kさんは、わざわざギリギリの時刻まで



食べませんか?



普通なら、誕生日に切り替わった直後に、やって来ると思いますけど?



そう言われて、俺は、



いや、俺は、どちらかというと、好きな食べ物は後回しにする方なんだけど?



と、答えると、それきりAさんは口を開かなくなった。



そして、娘さんと対面する。



かなり怯えているようだが、とても鬼の餌として狙われている様には



見えなかった。



というよりも、こんな可愛い子を食べにくる鬼というものの存在が



許せなく思えた。



そして、Aさんは、娘さんを見ると、いつもの生意気な態度が嘘のように



優しく接しだした。



本を読んであげたり、一緒にゲームをしたり・・・。



なんとも微笑ましい光景だった。



とても、これから鬼がやって来るとは、到底思えない程に・・・。



そんな俺の気持ちを感じたのか、Aさんは、突然冷たい口調で、



何のんびりしてるんですか?



鬼が来たら、私が闘ってKさんが、この子を護らなきゃいけないんです



からね?



自覚してます?



と言われてしまう。



そして、ちょうど日付が変わる頃、突然Aさんが、



やっぱり来ました!この子をお願いします!



そう言って、廊下へと出ていく。



俺は少し様子を見てみようと廊下を覗こうとしたが、何故か襖は重く閉ざされ



びくともしない。



きっと、Aさんが鬼が入り込めないように何かをしていったのだろう。



と、思っていると突然、家中の明かりが消えた。



娘さんは恐怖で俺にしがみついてくる。



大丈夫だから・・・・。



あのお姉さんがやられたら、今度はおじちゃんが、ちゃんと君を



護ってあげるから・・・。



おじちゃんの方があのお姉ちゃんよりずっと強いんだから安心してね!



と何の根拠もない嘘を言うと、少しだけ安心したように笑ってくれた。



廊下からはAさんの声が聞こえてくる。



鬼神なんて崇められていい気になってるんじゃないの!



あんたたちなんて、所詮、人を食らうだけの為に生きてる鬼でしょうが!



その言葉に呼応するように響く大きな唸り声と、家が震えるほどの震動に



俺は思わず固まってしまった。



それにしても、そんなモノを平然と相手にするAさんという存在が更に



分からなくなってくる。



もしかすると、俺などが気安く話しかけられない様な聖人なのではないか、と。



そして、聞こえてくるAさんの声。



ふざけんなよ!



てめぇ!



いい加減にくたばれよ!



ほんっとに、ウザいんだけど!



やったね!



ザマーミロ!



それを聞いて、俺は、



やっぱりAさんは、Aさんなんだ!



と一瞬でも聖人かと思った自分を後悔した。



そして、まばゆいばかりの光が、襖を通して部屋の中まで入り込み、



部屋の中が、白く、そして明るくなった。



そして、訪れる沈黙。



どっちが勝ったんだ?



俺と娘さんは、思わず聞き耳をたてた。



すると、突然、



えーっと、Kさん。



私が渡したリストって、ちゃんと持ってます?



という声が聞こえた。



俺と娘さんが思わずにっこりと笑ったのは言うまでもない。



そして、部屋の襖を開けたAさんは、かなり疲れて様子で、



やっぱり手強かったですね・・・。



本当は奥の手は使いたくなかったんですけど・・・・疲れるから。



でも、そう簡単にはいかなかったですね。やっぱり・・・。



そう言って面倒くさそうに、乱れた髪の毛を手でまとめている。



結局、その後、彼女の家では怪異は完全に収まり、娘さんも元気に



歳を重ねている。



そして、その後、Aさんが苦労して作成したという欲しいスイーツリスト



に書かれていた全てのスイーツを贈られたAさんは、それからしばらくの間は



とても機嫌が良かったのは言うまでもない。
  


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2018年11月10日

止まった時計

これは友人の体験した話。



その時、彼は、見知らぬ場所で目を覚ました。



その場所は明らかに彼が来た事の無い場所だった。



周りには民家も無ければ、建物らしきものも一切無かった。



ただ、まっすぐな白い道がどこまでも続いていた。



そして、その白い道を彼は黙々と歩いていた。



どうして、歩き続けているのか、自分でも分からなかった。



ただ、心の中で何かが彼に囁きかけていた。



この道をまっすぐに進め、と。



だから、彼はひたすら、まっすぐにその道を歩き続けた。



彼は元々、そんなに素直な性格ではなかった。



右に行け、と言われれば、つい左に行きたくなる性格。



しかし、その時は選択肢はなかった。



目の前には、ただまっすぐな道が続いているだけ・・・。



要は、止まるか、歩き続けるか、だけであった。



彼は、いつも良く着ている普通の服装だった。


ただ、買ったばかりのブランド品の腕時計のガラスが割れ


時計の針も完全に停止していた。


あれ?買ったばかりなのに、なんでだ?


彼はぼんやりとそんな事を考えたが、すぐに考えるのを


止めた。


思い出したくないという気持ちの方が強かったから・・・。



そして、目の前には、見たことも無い道ではあるが、何故か安心できる、



そんな雰囲気が満ち満ちていた。



道自体は白い無機質なものだったが、回りの風景は建物などが



無い以外は、取り立てて変わった風景には感じなかった。



道の両脇には、鬱蒼とした森が広がっており、その森から一段



高いところに、その白い道が通っていた。



それにしても不思議な場所だった。



普通に考えればあり得ない風景・・・・。



まるで、未来にでもタイムスリップしたかのような真白な道。



そして、それとは不釣り合いに道の両脇に広がる森。



それなのに、自分自身には焦りも不安も無い。



だから、彼はこう思った。



これは夢の中の世界なのだと・・・。



いつかは目が覚めていつもの朝が来る・・・。



自分の頬をつねれば、たちまち目が覚めるに違いない、と。



しかし、彼は不思議と、その夢から覚めた糸は思わなかったという。



どうせ夢ならば、この先に何があるのか、を見届けたい。



そんな気持ちだったという。



それにしても、不思議だった。



彼は先ほどから、この白い道の上を歩き続けている。



そして、自分自身、体力に自信も無ければ、日頃の運動不足も自覚していた。



それなのに、どれだけ歩いても全く疲れなかった。



息も乱れず、汗もかいてはいない。



それどころか、どんどんと先に進みたくなっている。



歩けば歩くほど体が軽くなって来る。



本当に不思議だった。



しかし、彼は、



どうせ、夢なんだから・・・。



そんな風に考えると、その不自然さにも説明が付いた。



そして、それから彼は、体感的には丸一日くらい、黙々と歩き続けていた。



それでも飽きるという事も無かった。



そんな時、彼の目の前の風景が変わったという。



気が付くと、彼の目の前には古ぼけた駅が建っていた。



彼は思った。



ここなら誰か他の人に会えるのかもしれない、と。



彼は疑うことなく、自然にその駅の中に入っていった。



その駅は何故か懐かしい匂いがした。



間違いなく、彼がその駅を訪れるのは初めてだった。



にも拘わらず、その駅に着いた途端、彼は例えようも無い程の



安心感に包まれた。



もう少しだ・・・。



もう少し行けば・・・・。



そう思った時、彼はふと考えた。



どうして、自分は、もう少し行けば・・・と考えたのだろう、と。



もう少し行けば何があるというのか?



もしかしたら、自分は以前にもこの駅に来た事があるのではないのか?



そして、このまま進めば、そこに何があるのか、という事も知っている



のではないのか?



しかし、そんな事を考えながらも、彼は自然に駅の中を進んでいく。



改札口は無かった。



目の前にある階段を上ると、そこには単線だけのホームがあった。



そして、ホームにあるベンチに腰をおろした。



この線路は片道なのか?



それならば、どうやってここを通る電車は戻るのだろうか?



そんな事をぼんやりと考えていると、まるで彼がベンチに座るのを待っていた



かのように、向こうから電車の近付く音が聞こえてきた。



真っ白な電車。



そして、異様に長く連結された車両。



それにしては、その電車の中には誰も乗っている様子が無かった。



おいおい、これじゃ、完全に赤字路線だろ・・・・。



そう思いながらも、彼はその電車が何処に向かうのかも分からないまま



無意識にその電車に乗り込んだ。



この電車に乗らなければいけない・・・。



そんな思いが頭の中に広がっていた。



彼は、そのまま座席に座った。



彼が乗った車両には彼以外の姿は無かった。



それでも、不思議と不安感は無かった。



それよりも、誰とも会いたくない、という気持ちの方が強かった。



それよりも、彼はその電車に乗った時、更に懐かしいものを感じた。



間違いなく自分は以前、この電車に乗った事がある。



そんな確信があった。



しかし、どれだけ考えても、それがいつの事だったか思い出せない。



彼はつい、懐かしくて、その電車の中を見て回りたくなった。



座席から立ち上がった彼は、そのまま車両の中を進んだ。



次の車両・・・・そして、また次の車両、と。



しかし、どれだけ進んでも相変わらず、彼以外には誰も乗っていない。



それにしても、不思議だった。



彼は、いくつもの車両をどんどんと進んだ。



しかし、どれだけ進んでも、いっこうに一番最初の車両には辿りつけない。



どんだけ長いんだよ・・・・・。



そう思って彼は、近くの座席に座った。



そして、その座席の車窓から外の風景を見た。



窓の外には何処までも続く田園風景が広がっていた。



一面の緑がとても心地良かった。



こんな時間も良いな・・・。



ずっと乗って居たくなる・・・・。



そう思って彼はぼんやりと外の風景を眺めつづけていた。



すると、誰かがその風景の中に立っているのが見えた。



大きく手を振っている。



電車はゆっくりと進んでいたから、そこに立っている人も、ゆっくりと



近づいてくる。



電車からはかなりの距離があった筈だった。



しかし、彼には何故か、その人が誰なのか、そして何をしているのかが



とても良く見えたという。



それは、彼の母親だった。



そして、大きく手を振りながら何かを叫んでいた。



降りろ~



すぐに降りないと駄目だ~



そう聞こえた。



彼は不思議だった。



彼の母親は数年前に亡くなっていた。



夢だから、そんな事もあるのだろう、と思ったが、その母親の姿と声を



聞いた時に、彼は初めて、得体のしれない焦燥感を感じた。



知らないうちに涙がこぼれていた。



そして、彼は、急いで立ち上がると、その座席の窓を全開にして、おもむろに



その窓から体を出した。



怖いとか危険だという感覚は無かった。



彼はそのまま、車窓から飛び出した。



すると、そのまま急に意識を失ったという。



彼が次に目を覚ました時、目の前には高く白い天井が見えた。



周りでは、慌ただしく誰かが動き回っていた。



何故か体はピクリとも動かなかった。



しかし、耳と目から入って来る情報で、彼はそこが病院なのだと



分かったという。



そして、目を開けた彼に気付いた看護師の動きがさらに慌ただしくなる。



医師らしき男性が何かをしている。



そして、その横には彼の妻と子供たちが嬉しそうに涙を流していた。



その顔を見た時、彼は何故かとてつもない安心感を感じてそのまま再び



目をつむった。



皆だが流れているのが自分でも分かったが、彼はそのまま深い眠りに落ちた。



そして、次に目を覚ました時、彼の眼には妻と子供たちの嬉しそうな顔が



真っ先に映った。



体は相変わらず全くと言って良いほど動かず、感覚も無かった。



更に、自分がどうして、こんな所に寝ているのか、という事も全く



思いたせなかったが、それでも、死の淵から戻った、もう一度生きたい、



そんな気持ちが溢れていた。



それから、彼は順調に回復し、半年後には退院できた。



体には後遺症が残っていたが、退院し、再び家族と生活出来る事が彼には



何より嬉しかった。



今でも彼には、。その時の記憶は戻っていないが、どうやら彼は高速道路を



仕事で走っている時、大きな事故に巻き込まれ、危篤状態になった



らしい。



家族は医師から、たぶん助からない、と言われていたそうで、彼が意識を



取り戻した時、医師たちも口を揃えて奇跡だと驚いていたという。



そして、彼はこんな事を言っていた。



きっと、あの白い道と長い電車は、あの世に行くための道筋なのかもしれない。



そして、自分はきっとあのまま死ぬ運命だったのだろう・・・。



だから、あの時、亡くなった母親の姿を見つけられなかったら、間違いなく



あのまま俺は死んでいたんだ・・・・。



まだ、死んじゃいけないって・・・・。



母親が教えてくれたんだよな。



だから、一度死んだ人生だから、尚更、家族を大切にして生きていかなきゃな!



そう言ってくれた。
  


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2018年11月10日

新築の家

彼女は俺の古い友人。



彼女も昔、バイクに乗っていた時期があり、その頃から細く長く



付き合いが続いている。



彼女の夫も、バイクに乗っていた時期があるようで、そのおとなしく



控え目な性格もあってか、俺との相性はすこぶる良い。



そんな彼ら夫婦は、結婚した際、親がそれまで住んでいた家をそのまま



譲り受け、そこでの生活をスタートさせた。



その家自体は古いものだったが、それなりに立地もよく生活の便も



良かったから、かなり気に入っていたようだ。



しかし、古い家なりに、色々と不便なところもあり、雨漏りや



壁の劣化などもあり、思い切って家を建て替える事にした。



色々な住宅メーカーをまわり検討した結果、デザインと機能性が



決め手となり、ある住宅メーカーに決めた。



35年ローンでの新居購入だったので、かなり悩んだらしいが、



それでも、新らしい生活のスタートに胸を弾ませていたようだ。



家を建て替えている間は、夫の家に間借りした。



慣れない嫁姑の関係に戸惑いもしたが、それでも新居は4か月



程で無事に完成し、彼らは、すぐに引っ越しをし、新居での



生活が始まった。



対面式のキッチンや、床暖房、そしてオール電化と、かなり凝った



造りの家であり、彼らは、友人達を招いては、彼らの新居をお披露目



していた。



まさに幸せの絶頂だったのかもしれない。



それから、彼らの家では怪異が頻発するようになる。



最初は、ほんの思い過ごしかと思ったという。



誰もいない廊下から人が歩くような音が聞こえてきたのだ。



しかし、それはどんどんとエスカレートしていく。



階段をのぼる音が聞こえる。



誰もいない筈の2階から物音が聞こえる。



1人で部屋にいると、ドアをノックされる。



それは気のせいといえるレベルの事なのかもしれないが、彼らにとっては



非常事態だった。



それまで、同じ場所に建っていた古い家ではそんな事は一度も起こらなかった。



そして、今住んでいる新居も、以前の家の場所に立て替えをしただけ。



だから、土地がらみの怪異という事は考えられなかった。



しかも、35年ローンで建てた新居。



簡単に逃げ出すわけにはいかなかった。



だから、必死に対抗策を講じた。



家の隅々に、霊験あらたかな粗塩を置いて家中の気を清めた。



それは、相談した神社から勧められた方法だった。



そして、確かに、ほんのしばらくの間は怪異は治まっていた。



しかし、すぐにまた怪異は起こり始める。



更に恐ろしく顕著な形で・・・。



突然、2階のガラスが割れて飛び散った。



それはよく見ると、間違いなく外からではなく内側から割られた



形跡があった。



突然、2階の部屋に置いてあるコンポが大音量で鳴り始めた。



急いで止めに行くと、セットした覚えの無いCDがセットされており、



音量はフルボリュームになっていた。



2階の部屋で、彼女が掃除していると、突然、ドアが凄まじい力で



ドン!ドン!と叩かれた。



恐る恐るドアを開けると、そこには、廊下が水でびっしょりと濡れていた。



そして、その頃になると、個室に一人きりで居る事自体が恐ろしくて



堪らなくなっていた彼女は、トイレに入った際、ドアを閉めず少しだけ



開けていたそうなのだが、誰かの視線を感じ、ふと顔をあげると、



其処には、ドアの隙間から彼女を覗き込んでいる女が立っていたという。



彼女は声にならないような悲鳴をあげて、そのまま失神した。



そんな事が続き、彼らは疲弊しきっていたのだろう。



俺が彼らの家に遊びに行った際、どこか暗い顔の二人に違和感を感じた



俺は、



なにかあったの?



と聞いてみた。



すると、そこで初めてその家で起こっている事を打ち明けてくれた。



俺は、急いでAさんに電話をかけた。



そして、Aさんに助けを求めた。



しかし、Aさんは、かなり忙しいらしくなかなか、首を縦に振ってくれない。



だから、俺は、



35年ローンがかかってるんだから、もっと親身になってよ!



と語気を強めた。



すると、Aさんは、少し黙ったままでいたが、すぐにこう言ってきた。



実は、さっきからずっとKさんの電話の後ろで女の笑い声が聞こえてるんですよ。



うふふ・・・うふふふ・・・・って。



そう言われ、俺はスマホを耳から離して聞き耳をたてたが、俺には



何も聞こえない。



そして、Aさんは、こう続けた。



良いですか。



今から言う通りにしてくださいね。



たぶん、それで解決するはずですから・・・。



2階の寝室に出窓が付いてると思うんですけど、その出窓のちょうど



真下の壁。



そこをぶち破ってみてください。



本当は私がぶち破りたい所なんですけど、今回はKさんに譲りますから。



そう言われ、俺は、



別に俺はAさんと違って破壊でストレス発散出来るタイプじゃないんだけど?



それに嫌だよ!



新居の壁をぶち破るなんて・・・・。



そう言うと、Aさんは、



でも、その壁を壊さないと永遠に解決しませんよ。



だから、さっさと壁をぶち壊して、その中に在る物を取っ払ってしまって



ください!



そう言って一方的に電話が切られてしまった。



俺は、さすがに言いずらかったが、彼らに、その電話の内容を



伝えた。



すると、彼らは、気にせず、すぐにぶち壊してくれ!



そう言ってきた。



そこで、俺は、彼女の夫にも手伝ってもらって、なんとか壁を壊すことが



出来た。



そして、そこで俺達が見たものとは・・・・。



壁の内側にある柱に、あるものが打ちつけられていた。



それは、長い髪を巻きつけた太い五寸釘と、『呪』と書かれたお札だった。



俺は、実は触るのも嫌だったのだが、彼らの不安そうな顔を見ていると、



放っておくわけにもいかず、それをなんとか撤去した。



そして、それを撤去する際、一瞬、地震かと思ってしまうほど、



家が揺れた。



そして、それを取り払ってからは彼らの家で怪異は一切起こってはいない。



しかし、やはり疑問が残る。



一体誰が何の目的でそれを家の柱に打ち付けたのかという事。



しかも、家が建ってからでは、到底、そんなものを打ち付ける事は



出来ない。



だとしたら、家を建てている最中に、それは柱に打ち付けられた事に



なるのだが・・・・。



  


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2018年11月10日

喪服

これは、俺の知人の話。



彼女は、昔はかなり孤独な幼少時代を過ごしたようだ。



彼女が幼い頃、両親が相次いで病気で亡くなった。



一人っ子だった彼女は、祖父母の家で面倒をみる事になる。



しかし、祖父が、かなりの偏屈者だったらしく、親戚は誰一人として



祖父母の家には近づかなかった。



だから、彼女は親戚との交流を全く知らずに育った。



それでも、彼女は祖父母を恨んだことなど無かった。



祖父母はいつも彼女に優しく接してくれていたから。



ただ、祖父母の家も、あまり裕福ではなかったようで、彼女が学校に



行き始めると、そのおかねの工面に苦労した。



教材費や給食費なども、滞納してしまう事もあったらしく、それが



原因となり、彼女は学校で孤立していく。



彼女自身はとても優しくおとなしい性格だったから、友達になりたいと



近づいてくる者をいたのだが、親達はそれを許さず、彼女は孤立した



環境の中で学生時代を過ごしていく。



そして、中学に入ると、家計を助けるために、学校から許可をもらって



バイトに勤しんだ。



学校が終わると、午後7時頃までは毎日、バイトに精を出す。



そんな生活だったから、部活動はおろか、友達との楽しい時間を過ごす



という事も無理な話だった。



そして、高校に入った頃、祖父が亡くなった。



家計は更に厳しくなり、彼女は、朝にバイトをこなしてから、学校に行き、



そして、学校が終わるとすぐにバイトに行く、という生活を送る様になる。



勿論、学校からの許可はもらっていたが、そういう噂はすぐに広がってしまう。



実際、何も悪い事をしている訳ではないのだが、その頃の風潮なのか、



貧乏な者は、いじめられるという通説の通り、彼女はかなり陰湿な



いじめに遭ったらしい。



靴を隠されたり、教科書を隠されたり・・・・・。



それでも、彼女は誰も恨む事はしなかった。



先生にも、それを悟られないようにして全てを自分だけで解決した。



それが、帰って、いじめる側の怒りを買ったのかもしれない。



それから、いじめは益々エスカレートしてしまう。



かばんを焼却炉で燃やされた事もあった。



体操服が、学校指定のものでないという理由なのか、ズタズタに切り刻まれて



校庭に捨てられている事もあった。



それでも、彼女は誰も恨んだりしなかった。



それよりも、そんな貧乏な境遇に生まれてきた自分が悪いのだ、と



思い、責めるのはいつも自分自身だった。



そして、いつ頃からか、彼女は死ぬ事を考え出す。



自分が生きていれば、周りの人達に嫌な思いをさせてしまう。



そんな気持ちで・・・。



高校を卒業すると、小さな会社に就職した。



そこでも、彼女は地味な存在であり、いじめられる事はなかったが、



やはり、孤立した状態で働き続ける事になった。



彼女が生きている理由は、祖母を養わなければいけないから、という



ただ、それだけだったが、やはり会社の給料だけでは生活も



侭ならず、彼女は会社に内緒でバイトを始めてしまう。



初めての夜のバイトは、それなりに収入も大きかったが、失って



いくものを沢山あったという。



そんな折、彼女が夜、バイトしているのが、バレてしまった。



勿論、いかがわしい店でバイトをしていたわけではなかったが、その会社は



そういう点では厳格だったらしく、彼女のバイトは大きな問題になる。



そして、ちょうど、その時、祖母が急死してしまう。



祖母を亡くしたことで、彼女自身、生きている理由を失ってしまい、



彼女はそのまま会社を退職し、毎日、優しかった祖母の写真だけを見て



暮らしたという。



そして、写真を見ながら、



私なんか、生まれて来なければ良かったんだよね?



おばあちゃん、もうすぐ、そっとに行くからね・・・・。



そんな事を呟いて過ごした。



そして、少ないお金が底をついてきた時、彼女は死を決意した。



誰にも知られずに、このまま消えていこう・・・・・。



そう思ったという。



そして、彼女は、飲めないお酒を飲んで泥酔した状態で港から海に飛び込んだ。



昔、両親に連れてきてもらった海の記憶だけが、彼女の記憶として残っており、



どうせならば、その大好きな海で死ねれば、と思ったから。



そのまま、彼女は死ぬはずだった。



しかし、目が覚めた時、彼女は病院のベッドの上に寝かされていた。



偶然、港で小休止していたトラックの運転者さんに助けられた、と聞かされた。



彼女はどうして、そのまま死なせてくれなかったのか?



どうして助けたりしたのか?



と、その運転手を生まれて初めて恨んだらしい。



しかし、かなり海水を飲んでおり危険な状態だった彼女のそばを少しも



離れずに、見守ってくれたという話を聞いて、彼女は訳が分からなくなった。



どうして、他人の為にそこまでするのか?と。



だから、もう一度死ぬ前に、その運転手に会ってみたくなったという。



そして、その機会はすぐに訪れた。



彼女より少しだけ年上の大柄な男性は、彼女を見るなり、涙を流して



喜んでくれたという。



自殺しようとしたことに対して、一言も叱ろうともせずに・・・。



彼女は、その時、彼の事をもっと知りたくなったという。



それから、彼が見舞いに来るたびに色んな話をしてくれた。



仕事で行った先での楽しい事、辛い事、悲しかった事。



それらは、狭い世界で生きてきた彼女にとってはどれも、初めて聞く



話ばかりだった。



そのうちに、彼女は彼と会って、色んな話を聞くのが、とても楽しみになっていく。



そして、何度か、彼女から自殺したことを話そうとしたらしいが、



あっ、それはもう昔の話でしょ?



過去なんて気にしてたら、せっかくの未来が台無しになっちゃうから、



もう忘れればいいよ・・・。



と優しく言葉を掛けてくれたという。



そんな時間を過ごしていくうちに、彼女は彼を好きになってしまったという。



そして、いつしか、自殺したいという気持ちが無くなっている自分に



気付いた。



そして、退院の日、彼は彼女に掛った治療費と入院費を全て支払ってくれた。



彼女は、それでは申し訳ないと、絶対いつかお返ししますから、と言うと、



彼は照れくさそうに、



お金は返さなくて良いです。



ただ、これからも、たまにでいいから僕にあってくれると嬉しいんだけど?



と言ってくれたという。



それからの彼女の生活は、それまでとは全く違うものになった。



新しい職場で働きだした彼女は誰よりも、精力的に仕事に向きあい、そして



休日になると、いつも彼との時間を過ごした。



遊園地、映画館、ドライブ、そしてディナー。



その全てが彼女にとって至福の時間だった。



一度、彼のトラックの助手席に乗り、遠くの町まで行った事があったらしく、



其処で見た景色は、彼が以前彼女が入院している時に話してくれた通りの



ものであり、彼女は、それが嬉しくて思わず泣き出してしまい、彼を



困らせてしまった。



そんな二人だから、結婚するのにそれほど時間はかからなかった。



中古で小さいながらも、一軒家に二人は住んだ。



結婚してからも彼はそれまでにも増して彼女に優しく接してくれた。



彼女は、思ったという。



ああ・・・これが幸せというものなのか、と。



しかし、その幸せも長くは続かなかった。



仕事中に、高速道路で多重事故に巻き込まれた彼は、病院に緊急搬送され、



急いで駆け付けた彼女の顔を見た直後、そのまま帰らぬ人となった。



保険金がおりて、お金に困る事は無かったそうだが、それでも彼女は



絶望の底に再び突き落された思いだった。



それでも、彼の葬儀には沢山の友人や同僚が参列してくれ、彼女は改めて



本当に貴重で大切な人を亡くしたのだと悲しみにくれた。



俺も、また彼女が自殺へ向かうのではないか、と気になってしまい、



事あるごとに彼女の家を訪れるようにしていた。



何しろ、その頃の彼女は、まさに生きた屍の様に、全く生気が



感じられなかったのだから。



しかし、ある時、俺が彼女の家に訪問するといつもとは全く違っていた。



彼女は、まるで、それまでの姿が嘘のように生き生きとしていた。



常に笑顔で答えてくれ、以前にも増して良く笑った。



正直、その時、俺は彼女が悲しみの深さから、精神に異常をきたしたのでは



ないか、と疑った。



なにしろ、その時の彼女は、当たり前のように喪服を着ていたのだから。



しかし、俺のそんな疑念が彼女にも伝わったのだろう。



彼女は明るく笑いながら、こう言ってくれた。



Kさん、私が頭がおかしくなったと思ってるでしょ?(笑)



でも、違うんだよ!



あのね…Kさんだから、言うんだけどね。



彼が、まだ、私のそばに居てくれてるの!



それが、ある日分かったの。



そして、喪服を着ている時だけは、私にその姿を見せてくれるの。



だから、彼に会いたくなったら喪服を着るんだ(笑)



だから、私、今、幸せだよ!



以前にも増して、いつも彼と一緒に居られるんだから・・・。



こういうのって、信じてくれる?



そう笑いながら聞かれた俺は、



うん、勿論、そういう事もあるのかもしれないね!



と答えてきた。



そして、後日、俺はその事をAさんに聞いてみた。



そんな事があるのか?と。



そして、もしも、それが事実だとしたら、その事で亡くなった彼が苦しむ事は



無いのか?と。



すると、Aさんは、俺に奢ってもらったドーナツを口に頬張ながら、



こう言ってくれた。



まあ、そういうのも、良くあることだと思いますよ。



普通はなかなかそれに気付けない事も多いんですけどね。



彼はきっと彼女が心配で仕方ないんでしょうね?



そして、彼女も彼に会いたくて仕方ない。



確かに、49日が過ぎて、あの世に行ってから、再びこの世に戻ってきたのなら、



彼にも苦痛が伴うかもしれませんけど、それ以前に、彼がこの世に留まる



事を決意したのだとしたら、苦痛は伴ないませんよ。



まあ、確かにしばらくの間は、あちらの世界には行けなくなっちゃいますけどね!



いいんじゃないですか?



ラブラブで・・・・・・。



どちらかが、死んでいたって、それはあくまで魂の話ですから、実際には気持ちが



あれば、いつだって繋がれますからね。



だから、彼がいつも近くに居てくれてると感じるのなら、間違いなく



そうだと思いますね。



まあ、私はリア充は嫌いですけど・・・・。



しかし、そう言ったAさんの顔は、少し嬉しそうに笑っていた。
  


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2018年11月10日

その部屋から出てはいけない

これは知人が体験した話。



その日彼は急な出張が決まり、ネットで宿を探していた。



しかし、どこのビジネスホテルを見ても、満室。



ちょうど、行楽シーズンだった為、ビジネスホテルにも、一般客が



流れ込んでしまい、カプセルホテルすら空いていない状態。



これは、車中泊も覚悟しないといけないかな、と思っていると、



同僚が、こんな事を聞いてきたという。



それは、



夜、決して自分の部屋から出てはいけない・・・。



この約束が守れるか?



そんな内容だった。



その時、困り果てていた彼は、



もう、普通にベッドで寝られるのなら、どんな約束だって守るよ!



そう返したという。



すると、同僚は、それなら、という事で、何処かに電話をかけた。



そして、何やら話していたが、それでも暫くして電話を切ると、



うん・・・ホテル、予約出来たぞ!



そんな言葉が返って来た。



全く訳が分からなかった彼は、その同僚に尋ねた。



どこのホテルを見ても満室状態なのに、いったいどうやって宿を



予約出来たのか?と。



すると、どうやら、その同僚も、彼と同じ出張先で宿が取れずに



困っていた時、偶然、現地で聞いてみたところ、なんと宿が取れた、



という事だった。



そして、その時、言われたのが、



その部屋は通常は絶対にご案内しない部屋なのですが、とてもお困りの



様ですので今回は特別にその部屋をお使いください。



ただし、夜になったら、何があろうと絶対にご自分の泊っている部屋から



廊下には出ないでください。



それが、その部屋をお使い頂く上でのお約束になります。



そして、万が一、その約束を破られて、そこで何が起こっても全て



自己責任という事になりますので・・・・・。



そんな内容だったという。



そして、その同僚は、しっかりとその約束を守った。



最初は、いわくつきの部屋なのだろう、と思っていた同僚も、その快適な



部屋にとても満足してしまい、それから2度ほどその部屋を使わせて



貰っているのだという。



ただ、その同僚がその部屋に泊まった時には何も異変は起こらなかったらしく、



どうして、その部屋から出てはいけないのか?については、全く分からない。



そう言っていた。



それでも、ようやく宿泊先が決まり彼は安心して出張に出かける準備をした。



当日は車で現地に入り、客先を何軒か回ってから、教えられたホテルに



到着したのが、午後6時頃だった。



そして、ホテルのフロントで、紹介してくれた同僚の名前を出すと



すぐにルームキーを出してくれた。



そして、長々とフロントで同僚から聞かされていた約束事を聞かされる



のかと思っていたが、予想を反してすぐに部屋へと案内された。



そのホテルはビジネスホテルというには、かなり豪華であり、利用している



客層も、かなりリッチな客が多い様に見えたという。



そして、普通はビジネスホテルの場合、ルームキーを渡されてから



自分一人で部屋まで行くのが当たり前なのだが、何故かその時は



ホテルマンが一人、彼を部屋まで案内してくれたという。



最上階から一つ下の階でエレベータを降りると、そこから真っ赤な



絨毯が敷き詰めらたれ長い廊下を歩いて行った。



そのホテルはかなり広いらしく、どこまで行っても廊下の左右には



ドアが延々と続いていた。



そして、そのドアが途切れ、それから、かなり歩いた先にその部屋のドアが



あった。



明らかに他の部屋とは雰囲気が違っていた。



他の部屋よりも、大きく重そうなドアを開けると、そこにはかなり広い



スペースの部屋が広がっていた。



あっ・・・この部屋はきっとスペシャルな部屋なんだろうな・・・。



彼はそう思ったという。



そして、部屋に入ると、ホテルマンがこう話しだしたという。



こちらが、本日お泊り頂く部屋になります。



ところで、お客様、夕飯は既にお済みでしょうか?



もし、まだのようでしたら、速やかに夕飯を御済ませください。



そして、ご入り用な物も、事前にご購入ください・・・。



午後9時を回ると、こちらの部屋ではルームサービスもご利用いただけません。



つまり、私どもホテルマンがこの部屋を訪れる事は絶対にありません。



そして、それ以後の部屋からの外出も絶対にお控えください。



それは、お客様の身を護るだけでなく、この部屋を提供させて頂いた



私どもへのマナーの意味もございますので・・・。



例え、自己責任といっても、この部屋でお客様の身に何かが起こるのは



私どもと致しましても、絶対に避けたいと思いますので・・。



ですので、絶対による9時を回られてからは、部屋のドアを開ける事も



ドアから廊下へ出る事も絶対にお止めください。



万が一のことがあり、お客様が助けを求められても、当ホテルの従業員は



一切対応致しかねますので・・・。



そう言われたという。



これが、同僚の言っていた約束というやつか・・・・。



彼はそう思ったという。



しかし、同僚の話では、数回泊まったが、何も起こらなかったという事を



聞いていた彼は、その言葉に、しっかりと頷いて応えたという。



そして、彼は、荷物を部屋に置くと、そのまま外出し、夕飯を済ませ



ビールとつまみを買ってきて部屋に戻った。



部屋に戻ると、時刻は午後8時を少し回ったくらいだった。



彼は、シャワーを浴びるとテレビをつけ、ベッドの上に横になって



買ってきた缶ビールを飲み始める。



350mlの缶ビールの3本目を飲み始めた頃には、昼間の仕事の疲れ



からか、かなり酔いが回ってしまった。



そして、彼は、そのまま知らないうちに眠ってしまった。



心地良い眠りに就いた彼は、先刻、ホテルマンから聞かされていた



話への警戒心など、すっかり消えてしまっていた。



そして、彼は、ドアをノックする音で眠りから目覚めた。



時計を見ると、時刻は既に午前0時を少しだけ回っていた。



部屋の明かりも、そしてテレビも点けっぱなしになっていたが、何故か



テレビの画面は砂嵐状態で、何の放送も映ってはいなかった。



そして、また、ドアをノックする音が聞こえた。



彼は、リモコンでテレビの電源を消して、ドアに神経を集中させた。



コンコン・・・・コンコン・・・・・。



確かに、誰かがドアをノックしている。



彼はおもむろにベッドから起き上がると、ドアの方へと近づいていく。



そして、



はい?誰ですか?こんな時間に・・・・。



とドアの外にいる者に向かって声をかけた。



しかし、返事は無く、またノックの音だけが聞こえた。



彼は少し気分を害し、



ちょっと、いい加減にしてよ!何時だと思ってるの!



そう声を荒げると、ドアのロックを解除して、ドアのノブに手をかけた。



そこで、彼は、あの時ホテルマンが言っていた事を思い出した。



ホテルマンがこの部屋を訪れる事は絶対に無いって言ってたよな?



だとしたら、ドアの向こうにいるのは誰なんだ?



そう考えると、彼は得体の知れない状況に、気味悪さを感じた。



だから、一度開けたドアのロックをそーっと、もう一度掛け直した。



その瞬間、突然、ドアの部がガチャガチャと音を立てて回った。



彼は驚いて思わず、後ずさりしてしまった。



そして、ドアの向こうから声が聞こえてきた。



この部屋は私の部屋!



早く部屋の中に入れなさい!



それは女の声だった。



ただ、明らかに幽霊ではなく、人間の声に聞こえたという。



どっかの部屋に泊ってる女が酔っ払って自分の部屋を間違えてるのか?



それとも、メンヘラ系の女なのか?



そう思った彼は、



この部屋は俺が予約した部屋ですから・・・・。



貴女こそ、部屋番号を間違えてるんじゃないですか?



そう冷たい口調で言ったという。



すると、その女は突然、口調が激変し、ゲラゲラと笑いだし、



そうか、今夜はこの部屋に泊ってるんだな?



そうか・・・・そうか・・・・。



と汚い口調で返してきた。



彼は完全に頭に血がのぼってしまい、



あんた、頭がおかしいのか!



他の部屋の客にも迷惑だ!



早くどっかに行けよ!



そう返した。



すると、ドアの向こうからは、何も聞こえなくなった。



なんで、あんな変な女が、ホテル内をうろついてるんだ!



彼は、すぐにフロントに電話をかけたが、何故か繋がらない。



そして、思い出した。



”一切対応しない”というのは、こういう意味なのか、と。



彼はもう一度ドアの方に近づくと、ドアに耳を当てて、外の様子に



聞き耳をたてた。



しかし、相変わらず、何の音も聞こえてはこない。



彼は、そのまま寝るのも気持ち悪かったので、ドアのロックを静かに外した。



いつもの癖で、キーチェーンを繋いだままで・・・・。



すると、突然、ドアノブが回り、ドアが凄い勢いで開かれた。



キーチェーンで繋がれたままのドアは大きな音を立てて、少しだけ開いた



状態で止まった。



彼は、突然の出来事に、心臓が凄い勢いで脈打っていた。



そして、その少しだけ開いたドアの間から、女の顔が勢いよく現れた。



年齢が判断できない顔であり、帽子を被ったその顔は、皮膚が焼けただれ



所々が紫色に変色していたという。



そして、その顔が大きく開かれ、ゲラゲラと笑った。



その姿を見て、彼はそれが、人間ではないと確信したという。



うわぁ~!



思わず大声をあげて、尻もちをついてしまった彼の眼には、ドアの隙間から



伸びてきた手が、ドアのキーチェーンを外そうと、うごめいているのが



見えた。



在り得ない程、長く細い腕だった。



関節とか骨とかいうものを全く感じさせないような腕の動きだった。



彼はしばらくの間、その手の動きを茫然と見ていたが、やはり命の危険を



感じたのだろう。



一気に起き上がると、ドアの方へと突進し、ドアに体当たりする様にして



ドアを閉めた。



その女の腕がドアに挟まり、何か液体の様なものが滴り落ちた。



しかし、その女は痛みというものを感じないのか、自分の腕がドアに



挟まれたのが、嬉しくて仕方ないと言った感じに、更にゲラゲラと



笑ってくる。



そして、ドアに挟まれたその腕も、まるで動じないかのように、うねうねと



自由に動き回っている。



バケモノ・・・・。



そんな表現しか、頭に浮かばなかったという。



このままでは、いつかドアが開けられてしまう・・・。



そう思った彼は、無意識にドアを自分から開けて、その隙間から、その



女の体を思いっきり足で突き飛ばした。



その咄嗟の機転は功を奏し、その女の腕は、ドアの隙間から消えていった。



その瞬間、彼は、ドアを閉め、すかさずドアをロックした。



彼は、そのままベッドに潜り込んだ。



そして、蒲団をかぶって、必死にお経らしきものを唱え続けた。



その間、今度は、ドアをドンドンと叩く音が聞こえていたが、彼は



自分がいる部屋のドアが他の部屋とは違いとても頑丈なのを確認していた。



だから、よもや、そのドアが破られる事は無い、と願いつつ、必死に



お経を唱え続けた。



凄まじい恐怖だったのだろう。



彼は、そのまま体中の力が抜けるように、意識を失ってしまう。



そして、朝の日差しで彼は眼を覚ます。



何故か部屋中に、焦げ臭い匂いが充満しており、彼の寝ていベッドの



隣が緑色に変色しており、その部分だけが、まるで氷の様に冷たかった。



ハッと我に返った彼は、急いでベッドから起き上がると、一気にドアの



所まで走り寄った。



ドアの鍵が開いた状態になっていた。



あの女は、ドアの鍵を開けて、部屋に入って来た・・・・。



そして、ついさっきまで、俺の隣で寝ていたのか・・・・。



そう考えると、もうその部屋には居られなかった。



彼は、浴衣姿のまま、1階のフロントまで降りると、其処にいたホテルマンに



事情を説明し、部屋から荷物を持って来て貰った。



そして、そのまま、逃げるようにチェックアウトをし、そのホテルから



立ち去った。



そして、彼は今でもある異変を感じているのだという。



それは、自宅の部屋で寝ていても、朝起きると、焦げ臭いにおいが



充満している時があり、そして、彼のベッドの一部分が冷たくなっている



のだそうだ。



もしかしたら、あの女が着いてきてしまつたのかもしれない・・・。



そう言って、怯えていた。



しかし、それ以後も、彼の同僚は、そのホテルを何度も利用しているが、



怪異というものには、一切遭っていないということである。



だから、



彼だけがどうして?



そう思わずにはいられないのである。



彼が犯してしまい、同僚が犯していない禁忌とは、いったい何なのだろうか?



  


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2018年11月10日

北海道

これは俺の体験談である。



大学時代に初めてバイクで北海道を訪れて以来、すっかり魅了されて



しまい、それから毎年のようにバイクで北海道を回るのが恒例になった。



最初は大学のバイク仲間と一緒に回っていたのだが、やはり北海道という



土地柄なのか、1人でのんびりと回る方が楽しい事に気づき、大学の



夏休みまでにバイトでお金を貯めて北海道ツーリングに備えた。



とはいえ、お金はそれほど必要ではなかった。



勿論、フェリー代金とかガソリン代、飲食費などは必要不可欠



なのだが、その当時は、JRの各駅が、バイクツーリングの



ライダーさんの為に、駅を寝床として開放してくれていたから、



昼間、走れるだけ走って夜には寝易そうな駅で泊まり、見知らぬ



ライダーさん達と酒盛りをして楽しんでいた。



そんな感じだったから、妻との新婚旅行も北海道に決めた。



勿論、妻は海外に行きたかったようで猛反対していたが、それでも



初めての北海道旅行は、すぐに妻を魅了してくれた様であり、



それから、数年間は妻との北海道旅行が毎年の恒例行事になった。



新婚旅行は、会社にわがままを言って、3週間という長期休暇を



もらった。



どうせ北海道に行くなら、のんびりしたかったし、何より、それだけ



の時間があれば、妻もきっと北海道を好きになってくれるだろう、と



思ったから。



小松空港から羽田へ行き、そこのホテルで一泊した。



そして、翌朝、羽田から一気に釧路空港へ。



飛行機で北海道に向かうのは初めてだったので、かなり緊張していた。



特に、釧路空港は、その広さとモダンな造りに圧倒されたが、何より



圧倒されたのは、飛行機が釧路空港の滑走路に近づいた時。



まるで、山の間を縫うように高度を下げていき、いつ翼が山にぶつかる



のかと、気が気ではなかった。



そして、釧路空港で、オープンカーをレンタルして旅行はスタートした。



最初に向かったのは釧路湿原。



妻もそのスケールの大きさに圧倒されていた。



そして、メインの知床へ。



知床五湖に到着するころには、空は曇り雨が降り出した。



しかも、そこには急ごしらえの警告看板があった。



なんでも、数日前に知床五湖を回っていた方がヒグマに襲われて



大怪我をしたというもの。



そして、その年はヒグマの人間への被害が多い発生しているとの



警告看板だった。



そして、そこには、



それでも行くのであれば、他のグループと合同で行動し決して単独行動は



しない事。



そして、何が起きても自己責任でお願いします!



そんな事が書かれていたと思う。



勿論、俺は即中止しようと思ったが、妻は全く動じず。



結局、雨の中を二人だけで知床五湖へと向かい歩き出した。



俺達の前にも後ろにも、誰もいなかった。



そして、俺の頭の中には、数日前にヒグマに襲われた人がいる、という



事実が、どんどんと大きくなってくる。



もしも、ヒグマが現れたら・・・・・。



そう考えると、その時、どうやって妻を護ろうかと思案し始める。



しかし、手に持っているのは、武器にはなりそうもない傘しかなかった。



そんな事を考えて歩いていると、森の中から聞こえる小さな音すらも



ヒグマではないか?という不安を煽ってくる。



そして、10分ほど歩いたところで俺がギブアップ。



妻からの冷たい視線を浴びながら、駐車場へと戻っていった。



そして、そのまま知床のペンションへと向かった。



それからは妻の機嫌をとりつつ、ペンションでのんびりと過ごした。



そして、翌日は知床で遊覧船に乗り、知床の海を回る。



俺の頭の中には、知床なら、何処に居たってヒグマに遭いそうなイメージが



あったが、遊覧船に乗っている間、必死にビデオカメラを回す俺の前に



ヒグマが姿を現す事はなかった。



そして、それからはウトロ漁港でのんびり過ごす。



漁港では、生きたままのウニをそのまま食べさせてもらって、その感動が



凄まじく、思わず実家に、保冷パックで送ってしまう。



それから、ウトロ漁港でまる二日、のんびりと過ごした。



季節はずれの流氷がまだ残っており、俺は、流氷の上で寝ている子どもの



アザラシを発見。



どうしても、そのアザラシとお友達になりたくて、果敢にも流氷の上を



歩いて行った。



ところどころ、流氷も溶けだしていて、危ない場所もあったが、順調に



アザラシに近づいていくと、通りかかった漁師さんが、



おーい…そんな所にいると危ないぞ!



アザラシを狙って、海の中にはシャチが来てるかも知れんからな・・・。



シャチは人間は襲わんが、アザラシと間違われたら、そのまま食われてしまうぞ!



そう言われて、すぐにその場から逃げだす俺。



そして、それを冷たい目で見ている妻の目が少しだけ怖かった。



それにしても、ウトロ漁港で丸二日間、ぼんやりと海を見て過ごしたが、



あんなに贅沢な時間の使い方は初めてだった。



とても、素敵な時間であり、老後は出来る事ならウトロ漁港の近くに



のんびりと住みたい、と思ったのは妻も同じだったようだ。



ウトロ漁港にあるコンクリートの山に登って上からぼんやりと海を



眺めていた。



とても貴重な時間だった。



それから旭川に美味いラーメンがあるとのことで、車で移動。



長い行列で待った末に食べたラーメンは???だった。



まあ、グルメ情報とはそんなものなのだろう。



その時は北海道を完全にぐるりと一周するつもりだったので、そそくさと



旭川を離れ、一路、稚内を目指した。



その途中、飲んで牛乳のうまかった事!



そして、何か所かで熊牧場にも立ち寄ったのだが、その中の一つで



偶然、鉄の柵に寄りかかって休んでいたところ、背後から唸り声とともに



がシーンという大きな音が!



思わず振り返ると、その熊牧場でも最も大きいであろうヒグマが大きな手を



ぶんぶんと振りかざしていた。



俺の背中との距離は50センチも無かったと思われる。



思わず、その場から逃げかえったのは言うまでも無いが、まさかあんな通路から



離れた場所に、あんな巨大なヒグマが展示されているとは思いもしなかった。



そんなこんなで稚内に到着したが、特に見る物も無く、さっさと昆布を



買って、その場から立ち去る。



それから、色々と回ったが、摩周湖、屈斜路湖と神秘的な水の色に癒される。



特に宿泊した屈斜路プリンスホテルでは、その奇妙な建物の構造も驚いたが



どうやら、俺が外を散策していた時に、もう一人の俺が部屋に戻ってくるという



奇妙な事件が発生した。



口数が少ない以外は完全に俺とうり二つだったと妻は断言していた。



結局、クッシーを発見して大儲けしようとしたが、ついには発見には



至らなかった。



そして、網走刑務所などでは、明らかに霊的な空気を感じて早々に退散。



ただ、網走湖荘というホテルで食べた海鮮ラーメンは、私の中での



ベスト3に間違いなく入るラーメンだった。



ちなみに、北海道の宿に泊まると、海鮮料理ばかりでおもてなしを



されるので、洋食メニューの店やファミレスが恋しくて仕方なかった。



だから、道すがら、くるまやラーメンを見つけた時には、勿論、そそくさと



お店に直行したのは言うまでも無い。



そして、トドが大好きな俺は、道すがら、色々な水族館に立ち寄ったのだが、



とある水族館では、信じられない程の巨大なトドに巡り合えた。



嬉しさのあまり、トドのプールのすぐ近くからカメラ撮影をしていたが、



どうやらトドの機嫌を損ねたらしく、水面に浮きあがった際、何かを



頭に吹き付けられた。



触ると、妙にベトベトしていたが、近くにいた子供が、



あ~、あの人、トドに鼻水かけられてるよ(笑)



との声に、すぐに髪の毛に付着した者を必死に取ろうとしたが結局、



宿泊先のホテルでシャワーを浴びるまで、それが取れる事は無かった。



そして、それからも、ヒグマに興味があった俺は、ヒグマと関連の在る



施設をくまなく巡ったのだが、その中で、歴代最大といわれている



北海太郎というヒグマの剥製を見に行った。



しかし、その大きさは期待はずれというのが素直な気持ちだった。



だた、その後、カムイコタンで屋外に展示されていたヒグマの剥製を



見て、その大きさに圧倒されてしまい、その夜、恐怖で眠れなかったのは



言うまでも無い。



そして、ヒグマの獣害事件としては絶対に外せないであろう、三毛別



の事件跡地を訪問。



素直にその場所に行くと、恐ろしいという感情と共に、悲しい気持ちになった。



妻と二人でしっかりと手を合わせてお祈りをさせて貰った。



色々あったが、旅の終わりに近づいた時、最後の贅沢として、札幌グランドホテル



のスイートルームに宿泊。



そこを拠点にして、丸3日間、札幌を満喫したのだが、どうやら同じフロアの



スイートルームにチ○ゲ&飛鳥のお二人もツアーの宿泊先として利用して



いたらしく、やたらと厳重な警備だった。



せっかくの新婚旅行なのに・・・・。



だいたい、こんな豪華なホテルをコンサートツアーで利用してんじゃねぇよ!



と文句を言っていたら、チ○ゲさんと偶然、廊下でバッタリと会ってしまい、



すかさず、



あの~、チ○ゲさんですよね?



実は新婚旅行でこのホテルに泊ってるんですが、良かったらサインして



頂けませんか?



というと、チ○ゲさんは、



それはおめでとうございます。



と握手をしてくれ、そのうえ、何処にすればよいですか?



と聞いた上で、俺のTシャツの背中にサインをしてくれた。



うん、まあ、なかなか良い人だった。



そして、そこでは結婚してから初めての夫婦喧嘩など、色々とイベントが



発生したが、一番記憶に残っているのは、テレビでやっていたニュース。



どうやら、札幌近郊の線路で、ヒグマが電車にはねられて死亡した



という内容だったのだが、そのヒグマの大きさは完全にモンスター級。



こんな巨大なヒグマが、札幌近郊の線路を歩いていたのか、という



驚きと、こんなんじゃ、夜中に気楽にコンビニにも行けないじゃん!



と思い、恐怖に浸食されていった。



そして、北海道旅行中、人生初めてのオープンカーで好い気になって



走り回っていた俺は、35キロオーバーで白バイのお兄さんに



赤色の素敵な切符を切って頂きました。



新婚旅行が終わり、会社に戻るとすぐに免亭となってしまい、それから



数ヶ月間、俺は社内の冷たい視線にさらされながら、車内勤務を続ける



羽目になってしまった。



あー、こんな事を書いているとまた、北海道旅行がしたくなってくる。



まあ、本当に老後は北海道に移住するのも悪くないかな?と思いつつも、



やっぱりヒグマが怖いからな~と優柔不断な性格は治りそうもない。
  


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2018年11月10日

もう一人の住人

これは知人が体験した話。



彼女は、元々、大阪の大学を卒業した後、そのまま大阪の企業に



就職し、ずっとOLをしていた。



親は大学を卒業したら地元である金沢市に戻って来て欲しいと



思っていたらしいが、彼女はそれを拒んだ。



やはり、大学時代に覚えた都会の楽しさは彼女にとっては捨てがたい



ものだったらしく、自分が一人娘だということも分かってはいたが、



紆余曲折の末に、大阪に残る事を決めた様だった。



それから、数年経ち、彼女の両親が相次いで病気に倒れてしまう。



彼女自身、大阪での暮らしに辛さも感じるようになっていたらしく、



彼女はそれまで勤めていた会社を辞めて、実家に戻る決意をした。



それまで、少しだけ関係が上手くいってなかった両親も、その事に



関しては素直に喜んでくれたという。



そして、実家に戻った彼女だったが、すぐに就職先は見つかったものの、



両親は、入院したっきり自宅には戻って来ない。



仕事が終わると、両親が入院している病院にお見舞いに行ってから



帰宅する。



そんな生活が続いたという。



そして、彼女が戻った実家だが、以前、彼女が住んでいた時とは違い



かなり大掛かりなリフォームがされており、彼女は実家に居ても



何か落ち着かなかったという。



まるで、自分が知らない家に勝手に上がり込んで生活している様な感覚。



彼女は、仕事から帰っても、誰とも話さず、ひとり暮らしをしている



時と何も変わらなかった。



だから、時間が余ってしょうがなかったのだろう。



そこで、彼女は、ネットショッピングで時間を潰すようになる。



しかし、両親の入院費が、今後どれだけ嵩むかも分からない状態では



何も買わず、ただ、色んな商品を眺めているだけだったという。



そんな時、彼女が夜、帰宅すると、宅配便の不在通知ず郵便受けに



入れられていた。



彼女に心当たりは無かったが、とりあえず宅配便のドライバーに連絡すると、



すぐに荷物を持って、やって来てくれた。



しかし、そこでトラブルが発生する。



ドライバーが持ってきた荷物は、明らかに彼女自身は注文などした覚えが



無かったから。



しかし、どうやらネットショッピングで購入された商品だと判り、とりあえず



その場は彼女が折れて代金を支払った。



しかし、届けられた商品は明らかに男性用の下着だった。



彼女は入院している父親に確認したらしいが、当然、そんなものは



注文などした覚えは無いと言われてしまう。



彼女は何か嫌な予感を感じたという。



しかし、それからも、注文などした記憶の無い商品が彼女の元に



届けられ続けた。



そして、その全てが男物ばかりだった。



勿論、その全てに彼女は心当たりは無く、ネットショップに対して詳細を



調べて貰った。



すると、その注文の全てが、午前2時~3時の間に受けつけられていた。



当然、そんな時刻に彼女が起きているはずはなく、彼女はネットショップに



抗議したらしいが、アンドロイド端末からの注文という事まで指摘



されてしまうと、さすがに強気に出るわけにもいかず、彼女は電話口で



丁寧に謝罪して、ようやく全ての商品を返品させて貰う事になった。



そして、彼女が、スマホからの注文を出来なくするように設定すると、



覚えの無い商品が届く事は無くなった。



それからは、彼女は全てに対して敏感になってしまう。



そして、敏感になった目でよく見ると、それまで気付かなかった



事が見えてきた。



それは、彼女が触った物が、彼女が帰宅すると、微妙に位置がズレテいる



という事だった。



最初は気のせいかと思っていたが、それはごく僅かだが明らかに位置が



ずれて置かれていた。



クッション、テレビのリモコン、玄関の靴、など、その全てが、本当に



僅かだが、置かれている位置が違っていた。



そして、彼女は決定的な事に気付く。



それは、夜、寝る前に歯磨きをしようと洗面所に行き、歯ブラシを



口に入れた時に気付いた。



歯ブラシが、直前に誰かが使ったかのように濡れているのだ。



その時、彼女は確信したという。



この家には私の他に誰かが住んでいる、と。



今、こうしている間も、家の中に居る誰かにじっと見つめられている・・・。



そう思うと、居ても立っても居られなかった。



彼女はすぐに警察に駆け込み、誰かが自分の家に居る!



と助けを求めた。



勿論、その日のうちに、警察は動いてくれたらしく、すぐに



彼女の家にやって来て、家中をくまなく調べた。



しかし、何処にも誰の姿も無かった。



それでも、彼女は必死に警察に訴えつづけたが、証拠が無い以上、



警察も引き上げるしかなくなる。



再び、独りぼっちになった彼女は、もう家に居る事は出来なかった。



その夜は、近くのビジネスホテルに泊まり、翌日には友人に頼んで



家の中を一緒に調べて貰った。



もしも、誰かが隠れてこの家に住んでいるとしたら、絶対に



その形跡が残されているはず・・・・。



しかし、どれだけ探しても、結局何も見つからなかった。



友人たちには、気のせいじゃないか、と言われたが、彼女にはそれまでの



経緯から、誰かが家の中に居るという確信があった。



そんな時、彼女の友人を通して、俺に相談があった。



その友人というのは、俺の仕事上の関係もあったから、俺はいつもの



Aさんに頼んで協力を依頼した。



最初に彼女の家を訪れた時、彼女は不思議そうな顔をしていた。



こいつらは、一体何者だ?という感じで。



しかし、そんな事など全く気にしないAさんが家の中を色々と



見て回った。



そして、しばらくすると、俺達が待つリビングにやって来て、こう言った。



まあ、予想はしてましたけど、これじゃ、警察がどれだけ調べても



何も見つからないでしょうね!



いいですか?



貴女の家に、もう一人居るのは、人間ではないんです。



霊・・・って奴ですね。



まあ、信じようが信じまいがどうでも良いですけど・・・。



で、見回ったついでに、家の中に護符を何枚か貼っておきました。



これで、この家は霊にとって快適な場所ではなくなりましたから、そのうち



すぐに逃げていくと思いますよ。



そう説明した。



すると、彼女は、



霊・・・ですか?



なんで、そんなものが、うちに居るんですか?



というか、そんなものと一緒に生活なんか出来る訳ないです。



すぐに退治とか、出来ないんでしょうか?



と返した。



すると、Aさんは、少し笑いながら、



まあ、浄化出来ない事はないんですけど・・・。



でも、そこまでの悪い霊ではないですしね。



つまり、何処かで貴女を見て、一目惚れされたみたいですよ。



だから、自分の存在を知って欲しくて、買い物したりしたんだと



思います。



まあ、歯ブラシを共用されるのは、嫌ですけどね(笑)



でも、良かったじゃないですか?



霊とはいえ、男性に好かれて・・・。



結構、イケメンでしたよ(笑)



それに、あの霊は絶対に貴女に危害は加えませんから。



だから、まあ、・・・・・・安心してくださいね。



そう言って、俺達はその場を離れた。



結局、Aさんが帰ってから、その家では不思議な事は一切起こらなくなった



ということだ。



ただし、それからというもの、彼女は、色んな所で、同じ男性の姿を



目撃するようになった。



かなり、イケメンらしく、彼女もまんざらでもないらしいが、きっと



その男性というのが、彼女の家に住み着いていた霊らしいのだが、



彼女には、言えそうもない。
  


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2018年11月10日

・・・・への最終電車

これは知人から聞いた話。



彼は、過疎化した村で高校時代までを過ごした。



彼が、生まれた頃は、その土地にも沢山の人が住んでおり、山奥の



土地ではあったが、人で溢れていたのだという。



しかし、とある事故があってから、どんどんと人口が減り始めた。



その事故とは何だったのかは、今でも分からないらしいが、とにかく



その事故が、人口流出の原因になってしまっていた事だけは確かだった。



沢山いた友達も、そして親戚も、どんどんとその土地を離れていく。



彼はそれが悲しくて、両親に対して、



自分たちも他の土地に移り住もうよ!



と何度も言ったらしいが、彼の両親は決して首を縦には振らなかったという。



日用品が買える店も、どんどんと減っていき、日常生活にも支障をきたす。



それなのに、いっこうにその土地を離れようとしない両親に、彼は



怒りに似たものを感じていたらしい。



彼が高校生になる頃には、その土地には全部で10軒にも満たない



家族が住んでいるだけになってしまった。



だから、食料や消耗品などの日用品を買うのにも、遠く離れた町



まで行かなければならず、その不便さは想像に難くない。



そして、昔は1日に何10本とあった列車も、その本数を減らしていき、



その頃には、1日に数本の電車が通るだけの駅になってしまっていた。



しかも、電車は朝と昼と夜にそれぞれ1本ずつ。



更に終電の時間も早かったので、彼は高校時代も部活動など出来ず、毎日、



母親から頼まれた食料などを買い込んで、夜7時までには、街の駅を



発車する電車に乗らなくてはならないという生活を送っていた。



高校生とはいえ、彼も家族の生活を支える役割をしっかりと但っていた。



実際、彼の両親もそうだったが、遠くの町や市に働きに出ている者は



少なく、ある意味、自給自足の生活が形成されていたが、それでも



必ず必要な物というのは存在するものであり、そういう時には



学生とはいえ、遠くの町まで毎日出掛けている彼の存在は、それなりに



村人たちに認知され、そして便利に使われる結果になっていた。



だから、彼は本心では、それが嫌で仕方なかったという。



本当なら学校が終わってから友達と遅くまで遊んでいたかったし、



部活動にも精を出したかった。



しかし、そんな事をして最終電車に乗り遅れでもしたら、彼は翌朝、



学校が開くまでの間、一人きりで駅の待合室で時間を寝て、時間を



潰さなければいけなかった。



そして、家族たちから頼まれる買い物も彼を憂鬱にしていた。



その品物は多岐にわたり、それらを買い揃えるだけでも至難の業。



更に、その大荷物を持って電車に揺られて一人きりで帰って来なければ



いけなかった。



その荷物の重さと、両手いっぱいに荷物を持った歩き辛さは、今でも



忘れなれないという。



そんな彼だが、最も嫌だったのは、最終電車に乗るという行為そのもの



だったらしい。



だから、彼は授業が終わると、急いで買い物を済ませて、さっさと



電車に飛び乗った。



最終電車には絶対に乗りたくなかったから・・・。



それでは、何かそれほど嫌たったのか?と聞くと、彼はこんな話を



してくれた。



毎朝、彼が乗る電車には、だいたい10人くらいの乗客がいるらしい。



しかし、彼がよく利用していた最終電車には、いつも彼一人しか



乗っていなかった。



だから、彼は、



俺一人の為に、電車を走らせてしまって申し訳ないな・・・。



そんな風に思っていたそうだ。



ただ、重たい荷物を持っての乗車だったから、電車が空いている、という



事はとても助かる事だった。



ただ、ある日を境にして、彼が乗る最終電車には、1人、また一人と



乗客が増えていった。



しかも、彼が村で見た事も無い人ばかりだった。



彼の村には観光客用の宿泊施設など存在しなかった。



それに、観光客が来るような、目ぼしい観光地など在る筈も無く、彼は



その乗客たちが不思議で仕方無かったという。



勿論、彼は村人の顔は全て知っていたから、それらり人達が、村人で



ない事は間違いなかった。



それに、その乗客たちは、まるで生気の無い顔で、ぼんやりと



うつむいているだけ・・・・。



服装自体も、かなり古いものに感じられたという。



この人たちは一体何者なんだ?



そんな事を思っているうちに、乗客はどんどん増えていき、座席が



全て埋まる程になっていく。



それなのに、電車の中は、静かすぎた。



まるで、彼が1人で乗っていた時と同じように、しんと静まり返っており、



誰かが話す言葉も全く聞こえなかったという。



そして、それらの乗客たちは、彼とおなじ駅で降り、そして、全員が



行列をなして、山の方へと歩いていく。



山の中に何があるんだ?



というか、こいつらは何者なんだ?



いつしか、彼はそんな事を考え出してしまう。



だから、ある日、彼は決心した。



その乗客たちがどこに行っているのかを確認しよう、と。



彼が乗る最終電車は、街の中にある駅に停車して、そのまま終点である



彼が住む村まで行くという運行になっていた。



ただ、彼が、学校がある街の駅から電車に乗り込むと、いつも既に



電車の中は満員状態だった。



だから、彼は、その満員の乗客たちが、いったいどこの駅から乗ってくるのか、



とても興味があった。



だから、その日は、学校が終わると、そのままその電車の始発駅まで移動した。



そして、人生で初めて、その電車を始発駅から乗ってみる事にした。



しかし、どれだけ待っても、誰も乗って来ない。



そして、彼は、授業の疲れが溜まっていたのか、知らないうちに寝入ってしまう。



そして、ハッとして目を覚ました時には、既に電車の中は満員状態になっていた。



彼は、それほど長い時間眠っていたわけではなかった。



ほんの5分くらいだったという。



しかし、その5分の間に、乗客は、彼一人という状態から、いっきに満員状態



へと変わっていた。



彼はまるで狐につままれたかのような気持ちになった。



相変わらず、乗客たちは、ただうつむいて黙って席に座っているだけ。



そして、電車は彼が降りる終着駅へと到着した。



いつもは、一番最初に降りる彼だっだか、その時はあえて他の乗客が



全て降りるまで席を立たなかった。



そして、全員が降りたのを確認して、彼は急いで席を立ち、で電車を降りた。



駅の周りは、いつものように、すっかり暗くなっている。



そして、その暗い中を、その乗客たちは列をなして、山道を歩き始める。



いつもながら、とても不思議な光景だった。



そして、彼はその列から少し離れて、後をつけていった。



その列をなしている者達は、誰も一言もしゃべらず、ゆっくりと、そして



黙々と山道を歩いていく。



実は、こんな山奥に、マンションでも建っていたら面白いんだけどな!



そんな事を思いながら、彼は、静かに、その列の後をつけた。



そして、その列は、どんどんと山の奥に向かって歩いていく。



少しの乱れも無く、整列して歩いていくその乗客たちが、彼には少し



滑稽に感じたという。



しかし、彼はその乗客たちが歩いていく山道の先には何が在るのかを



知っていた。



それは、何が起こったのかは知らなかったが、間違いなく、昔、大規模な



事故が起こったという炭鉱だった。



彼は少しだけ気味が悪くなったが、それでも、ひたすら乗客たちの後を



静かに追いていく。



そして、大きく曲がった道に出た時、その乗客たちの姿が一瞬見えなくなった。



彼は見失っては大変だと思い、慌てて、その曲がり角まで走った。



そして、そこで固まってしまった。



そこには、乗客たちが全員立ち止まって、振り返る様にして彼の方を



睨んでいた。



その顔は、とても恐ろしいものに見えた。



電車に乗っている時には間違いなく人間だと思っていたものが、その時には



どう見ても人兼゛には見えないモノになっていた。



うまく言えないが、その時、彼の脳裏に浮かんだ言葉は、



”亡者”という言葉だった。



彼は、そのまま固まっていたが、その乗客たちが顔だけてなく、体の向きも



彼の方に向けた時、まるで金縛りが解けたかのように、一気に今来た道を



走って逃げだしていたという。



どれだけの時間、走って逃げたのかは覚えていないが、その間、ずっと



背後からは山道の砂利を踏みつけるように、



ジャリ・・・・ジャリ・・・・ジャリ・・・・ジャリ



という音が聞こえていた。



彼はそのまま家に辿り着くと、急いで家の中に入り玄関の鍵を閉めた。



そして、恐怖で固まっていた彼は、そのまま布団にもぐりこんだ。



起きていてはいけない!



そんな気がしたという。



なかなか眠れなかった。



家の外からは、相変わらず、砂利を踏みしめるような



ジャリ・・・・ジャリ・・・・



という音が聞こえていたが、彼にはどうする事も出来なかった。



そのまま布団の中で震えていたが、それでも、そのうちに眠りに



就く事が出来たという。



そして、朝になって、学校に行く頃になると、昨夜の事がまるで夢で



あるかのような気がしていたが、家の外に出た時、家の周りに、沢山の



足跡が付いている事に気が付いて、また、固まってしまった。



結局、それ以後、彼は2度と最終電車には乗らないようにしたのだが、



そのせいか、2度と怖い思いをする事は無かった。



それから、彼が成人してから、両親から、その村で過去にどんな事故が



発生したのかを教えて貰ったが、その事故によって沢山の民間人の命が



奪われたと聞いて、再び恐怖した。



きっと、あの夜に見たのは、その犠牲者たちだったのだと確信したから。



その村も今では完全に廃村になってしまい、そこに住む者は誰も



居なくなってしまったそうである。
  


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2018年11月10日

廃墟からの脱出

これは友人が体験した話である。



友人は、廃墟探索を趣味としていた。



そして、常に一人で行動していた。



ただ、彼の場合、心霊体験を求めての廃墟探索ではなく、今は誰も



居なくなった廃墟に出向き、そこで前にどんな人達が此処で過ごして



いたのか、という事に思いを馳せるのが好きなのだという。



そこで、1人で止まった時間の中を過ごしていると、とても



ノスタルジックな気分に浸れるのだという。



しかし、廃墟というのは、その殆どが心霊スポットになっている。



勿論、単なる噂が独り歩きをしている場合が殆どなのだろうが、



中には本当に危険な場所も確かに存在するのだと思っている。



そんな場所に彼はたった一人で出向き、写真やビデオを撮りながら



廃墟探索を進める。



勿論、夜に廃墟に行く事はしないのだが、廃墟の殆どは昼でも



暗く建物も老朽化しているから、危険なのは間違いない。



そして、これから書くのは、彼が数年前に廃墟探索に出かけ、



そこで体験した話になる。



その日、彼はいつもの様に、たった一人で隣県にある廃墟に出掛けた。



いつも、そうなのだが、廃墟探索に出掛ける時には、家族に嘘をついて



家を出る。



だからその日も、家族には釣りにでも行って来る、と言って家を出た。



ご丁寧に釣り道具一式と奥さんに作って貰ったお弁当を持って。



少し後ろめたい気持ちもあったが、廃墟探索に行く、等といえば、



間違いなく反対されるのだから仕方なかった。



彼は、実はその廃墟に行くのは2回目だった。



前回、訪問した時には友人と一緒だった。



しかし、どうしても入口が見つからず断念したという経緯があった。



確かに玄関はあったが、厳重に鎖で封鎖されており、他の入り口も



探してはみたのだが、どうしても見つからず断念せざるを得なかった。



しかし、とある廃墟マニアの友人から、その廃墟への入り方を聞いた。



その友人は、その廃墟に入ったわけでは無かったが、それでも、彼に



とっては願ってもない情報だった。



車で廃墟に向かっていた彼は、いつものように手前の公園で奥さん



お手製のお弁当を食べた。



彼はいつも廃墟に行く前に腹ごしらえを済ませる。



お弁当には、彼が大好きな卵焼きと赤ウインナーが入っていた。



彼はいっきに弁当を平らげると、近くの自動販売機で缶コーヒーを



買って、一気にに飲み干した。



そして、これから向かう廃墟に胸を躍らせていた。



廃墟に着くと、教えられたとおりに大きな木に登った。



木自体が傾いており、登るのはそれ程難しくはなかった。



そして、その木から伸びている太い枝を伝って廃墟の2階の窓に近づいていく。



すると、友人が言っていた通り、2階の窓は鍵がかかっておらず、手で



簡単に開ける事が出来た。



彼は、結局、前回訪れた時の雪辱を果たし無事に難なくその廃墟に



潜入する事が出来た。



しかし、彼はその時、もっとよく考えてみた方が良かったのかもしれない。



どうして、玄関が厳重に封鎖されていたのかという事を・・・。



その廃墟といわれる建物は以前は簡易宿泊施設だったらしい。



鉄筋の4階建ての建物であり、かなりの広さだった。



そして、昼だというのにやたらと内部は暗かった。



そのままでは前に進むのも困難な程に・・・・。



だから、彼は持参した強力なライトを点けた。



そのライトは通常は、業務用として地下での作業などで使用される



ものらしく、その明るさはとても頼もしいものだった。



彼は、先ず、先に上の階から見て回ることにした。



建物の中は簡易宿泊所らしく、廊下の左右に幾つもの部屋が並んでいる。



彼は、その建物を隅々まで見て歩いた。



さして、珍しいものも無かったが、それでも、やっと念願かなって侵入



する事が出来た事に、とても満足していた。



そして、4階を見て回っていた時、そこに梯子があるのを見つけた。



どうやら、それは屋上へと繋がっているらしく、彼は思わずほくそ笑んだ。



廃墟に侵入して、その建物の屋上から眺める景色が彼は一番好きだったのだから。



たとえ、どんなに苦労して侵入しても、屋上から景色を眺める事が



出来れば全ての苦労は一気に喜びへと変わるのだという。



屋上へ上がる扉は少し錆びついているのか、開けるのに苦労したという。



しかし、なんとか、扉を開ける事に成功し、彼はようやく屋上へと



のぼった。



そこで、彼は思わず声を出してしまう。



それは、景色が素晴らしいとかいうのではなく、そこに真っ黒な猫が



いたから・・・。



やせ細った猫ではあったが、元気はあるらしく、屋上に上がって来た彼を



見て、その猫は彼に近づいてきた。



人間に慣れてるって事は、飼い猫なのかな?



それしても、どうやってここまで入って来たのだろう?



彼はそう思いながら、そこに腰かけて猫に向かって手招きした。



すると、猫は彼のすぐ近くまでやって来て体を摺り寄せてくる。



彼は、持参したリュックからお菓子を取り出すと、その猫にあげた。



猫を飼った事が無かった彼は、猫がそんなお菓子を食べるかどうかは



不安だったが、どうやら、その猫もかなりお腹が空いていたらしく、



彼が手渡したお菓子を一気に平らげてしまった。



嬉しくなった彼は、お弁当のおかずを残した事を思い出して、それも



猫に差し出した。



すると、今度もその猫は嬉しそうに食べている。



彼は何か嬉しくなってしまい、その光景をしばらく眺めていたという。



しかし、どうやら空の雲行きが怪しくなってきたのを見て、さっさと



廃墟を回ってしまおうと立ち上がった。



猫は、彼があげた弁当の残りを、まだ食べている途中だったが、



彼は、その様子を微笑ましく見ながら、梯子を降り始める。



4階へ降りる扉は、猫が屋上から脱出出来る様にと開けたままにしておいた。



そして、彼はまだ探索していなかった1階へと降りていった。



1階へ降りると、更に暗い空間が広がっていた。



食道、そして浴室、そのどれもが、ついさっきまで誰かが使っていた



かのように生活感に溢れていた。



そして、彼は1階の一番奥に向かう為に長い廊下を歩いていた。



すると、前方に何か穴が開いていた。



彼は立ち止り、その場にしゃがみ込むと開いた穴の中を見た。



どうして、こんな所に穴が開いてるんだ?



彼がそう思って、ライトで照らそうとした時、突然、背後から突き飛ばされる。



そして、彼は、そこに開いていた穴から落ちてしまう。



下の様子は全く分からなかった。



そして、何が起こったのかも分からなかった。



彼は、そのまま暗闇の中に落ちていった。



それから、どれくらいの時間が経過したのだろうか・・・。



彼は真っ暗な中で目を覚ました。



そして、穴の中に突き飛ばされた事を思い出した。



一体誰が?



それに、廃墟だと思っていたのに、誰かが住んでるってことか?



そう思いながら、彼は自分の体を確認した。



体中に痛みはあった。



しかし、ゆつくりと指を動かすと、ちゃんと動いてくれた。



骨は折れてないか・・・。



彼はホッと胸を撫で下ろした。



こんな所で骨折でもしようものなら、単独では廃墟から脱出できなくなる。



警察沙汰は御免だったし、家族にも廃墟探索がバレテしまうのだけは



避けたかった。



それにしても、辺りは真っ暗であり、一寸先の視界も確保できなかった。



だから、彼はそこでじっとしながら、自分の目がその暗闇に慣れてくれる



のを待つしかなかった。



元々、暗闇というものに恐怖心を持ち合わせていなかった彼は、



キョロキョロしながら、自分の目が暗闇に慣れてくれるのを



待った。



すると、次第にぼんやりと周りが見えてきた。



そこは、一見すると倉庫の様になっていた。



しかし、何故か、机と椅子、そして長い鎖が2本垂れ下がっていた。



もしかして、ここで誰かを監禁していたのか?



まさかな・・・・。



彼は興味津々に辺りを見回した。



そして、頭上を見上げると、そこには彼が落ちてきた穴がポッカリと



口を開けている。



あんな高さから落ちたのか・・・・・。



よく骨折しなかったもんだ・・・・。



そう思って、不幸中の幸いを噛みしめていた。



すると、暗闇の中に誰かが立っているのが見える。



シルエットから、それが女だというのが分かった。



なんで、こんな所に女がいるんだ?



普通なら、恐怖で固まってしまうところだが、廃墟探索を生き甲斐に



しているだけあって、彼の感性は普通ではなかったのかもしれない。



彼は、その女性に声をかけようとした。



あの・・・・・・・。



すると、何処からか声が聞こえた。



それも女性の声だった。



彼が目を凝らしてみると、どうやら白いワンピースを着ている若い女性だった。



話しかけちゃ駄目!



此処から出られなくなるよ!



大声でそう言われて彼は思わず口をつぐんだ。



彼は訳が分からず、二人の女性をキョロキョロと見渡していた。



すると、頭上から、強い視線を感じる。



彼は、そちらの方を見た。



すると、そこには頭上の穴から覗く沢山の顔があった。



ライトも無く、はっきりとした顔は分からなかったが、どうやら



それらの顔は、悪意を持って自分の事を見ているというのが



分かったという。



こいつらが、俺を穴に突き落したのか?



そう思った時、怒りが込み上げてきたが、次の瞬間、それは恐怖に



変わった。



その顔ひとつひとつが、やたらと大きかったのだ。



そして、穴の周りだけではなく、穴の全てを埋め尽くしているその顔に



彼は恐怖した。



少なくとも、人間ならば、そういう覗き方は出来ない筈だった。



もしかして、幽霊っていうやつなのか・・・・。



過去に幾度も廃墟探索をしてきて、初めて彼は霊と遭遇してしまった



事で完全に体が固まってしまう。



その時、先ほど声をかけてくれた女性が彼の方に近づいてきた。



そして、彼の頬を叩いた。



しっかりして!



そんなんじゃ、此処から逃げられないよ!



私は貴方を助けるために来たの!分かる?



今ならまだ、此処から貴方を逃がしてあげられる・・・。



だから、私と一緒に来て!



そう言って、彼の手を掴んだという。



手は柔らかく、そして暖かかった。



彼は、そこで九死に一生を得た気持ちになった。



この女性は間違いなく味方だ!と。



ありがと!ありがと!



そう言いながら、彼はその女性の手を掴み返した。



すると、動かないで!



とその女性が語気を強めた。



その女性の方を見ると、どうやら、その女性はもう一人の女を



睨みつけている様だった。



動かないで!って事は、もしかして、その女が動こうとしていたのか?



そう思うと、時間差で恐怖が襲ってくる。



そして、その女性は彼に向って、



足は大丈夫?



歩ける?



と聞いてくる。



彼は、無言で頷くと、その女性は彼の手を引いて動き出した。



そして、こう言ったという。



これから、此処で起こる事は絶対に見てはダメ!



声を出してもダメ!



貴方の居場所が、。あいつらにバレちゃうから。



そして、恐ろしい声が聞こえたりするけど、私を信じて!



だから、外に出られるまでは絶対に目を開けないで声も出さず、追いてきて!



そう言われ、彼は眼を閉じた。



その女性は急ぐでもなくゆっくとり歩を進めた。



まるで、彼がしっかりと付いてこられる様に・・・。



途中、階段の様なところも通ったし身を屈めて通らなければいけない



場所もあった。



ただ、彼は少しも怖くなかったという。



何故か、その見ず知らずの女性に安心して全幅の信頼を寄せる事が



出来た。



しかし、途中、彼の耳には、聞いた事も無いような不気味な叫び声や



笑い声が聞こえたし、彼の衣服を引っ張られるような感覚もあった。



普通なら絶対に悲鳴をあげていたと思う。



しかし、彼は必死に声を堪えた。



自分を助けようとしてくれる人がいる・・・。



それだけで、十分、恐怖に耐える事が出来たという。



どれくらいの時間、歩き続けただろうか・・・・。



突然、彼の手を引っ張る女性の手の感覚が無くなった。



え?ちょっと待って!



あの・・何処にいるの?



もう目を開けても大丈夫なの?



彼は、小声でそう言ったという。



しかし、彼の耳には何も返って来なかった。



だから、しばらく、そのままの状態で待っていた彼だが、痺れを切らして



目を開けてしまう。



すると、そこはもう既に廃墟の外であり、すぐ横に彼が乗って来た



車が停まっていた。



夜になっていたのか、辺りは闇に包まれていた。



出られた?



本当に助かったんだ!



そう思うと、体中に喜びが満ち溢れてきた。



だから、彼は命の恩人である女性の姿を探した。



しかし、女性の姿は何処にも見当たらなかった。



彼は、仕方なく、車に乗り込み、さっさとその場から退散しようと思った。



車に乗り込み、エンジンをかける。



そして、車のライトを点けた時、真っ黒な猫が目の前を横切っていった。



あ・・・あの屋上の猫だ・・・・。



彼はそう思って、追いかけようとしたが、すぐに猫の姿は闇の中に



消えてしまったという。



そして、彼は、その日無事に家へと帰宅する事が出来た。



少し怪我をしていたが、釣り場で転んだということで済ませたという。



そして、それから彼はある結論に達したという。



それは、あの時、彼を助けてくれたのは、間違いなく、あの屋上で



出会った黒猫だということ。



どうして、そう思うの?と聞くと、



だって同じ匂いがしたんだから・・・・。



彼は嬉しそうにそう答えてくれた。
  


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2018年11月10日

シャワーから始まる怪異

これは友人が体験した話である。



その日、彼女は仕事が多忙を極め、自宅マンションへ帰ったのは



既に午前1時を回っていた。



一人暮らしの彼女は、買ってきたコンビニの菓子パンを食べながら



ぼんやりとテレビを見ていた。



番組の中身は全く頭に入って来なかったが、それでも、馬鹿馬鹿しい



お笑い番組は彼女の疲れを和らげてくれた。



パンを食べ終わった彼女は、シャワーを浴びようか、と迷った。



マンションという事もあり、いつもなら、そんな時間にシャワーを



浴びる事はしなかった。



しかし、仕事で嫌な事もあり、更に夏の暑さでかなり汗をかいて



いた事もあって、きっとこのままではぐっすりと安眠できないと



思ったのだろう。



彼女は既に午前2時を回ろうかという時刻にシャワーを浴びる事にした。



最初は、隣の住人が煩くないようにと、最新の注意を払いながら



シャワーを浴び始めた彼女だったが、蒸し暑い夜に浴びるシャワーは



一気に汗が引いていき、とても気持ち良かった。



だから、ついついいつもよりも長くシャワーを浴びてしまっていた。



やっぱりシャワーを浴びて正解だったわ・・・。



そんな事を考えながら、彼女は熱いシャワーを浴び続けた。



その時、ふと、誰かが浴室のドアの横に立っている気がした。



ドキッとした彼女は、シャワーを出したままで、恐る恐るドアの方を



見るが、当然誰も居ない。



そして、一応、念のために浴室のドアを開けて、様子を窺った。



あれ?なんで?



その時、彼女がつけたままにしてきた筈のリビングのテレビの音が



全く聞こえなかったという。



あれ?私、無意識にテレビ消しちゃったのかな?



そう思った彼女は、少し怖くなってしまい、急いで髪を洗ってシャワーを



終わらせようと思ったという。



シャワーで髪を濡らしシャンプーをつけて泡立てる。



長い髪の彼女はいつも髪を洗う時にとても時間が掛ってしまう。



それでも、何故かその時は胸騒ぎがして、そして妙な圧迫感を感じ、



いつもよりも素早くシャンプーを洗い流そうとしていた。



その時である。



突然、彼女の肩に何かが乗った様な感覚を覚えた。



その感触は見なくてもすぐに分かったという。



人間の手。



そう、誰かの両手が彼女の両肩を軽く掴むようにして乗っていた。



彼女は完全にパニックになった。



幽霊という感じはしなかったという。



手は特に冷たい事もなく普通に柔らかかった。



だからこそ、



誰かが家の中にいる・・・。



私以外の人間が・・・・。



そう思うと、一人暮らしの彼女には恐怖以外の何物でもなかった。



声を上げようかと思った。



しかし、もしも強盗だとしたら声を上げたりすれば命の危険もある。



彼女は、震えながら、それでも必死にシャンプーをさっさと洗い流し



視界を確認しようとした。



しかし、そんな時に限って、なかなかシャンプーの泡は消えてくれない。



彼女は自分の長い髪を後悔したという。



すると、突然、彼女の肩から手が離れる感覚があった。



一瞬、彼女は、安堵したという。



しかし、次の瞬間、その手らしきものは、彼女の背中や足を



ペタペタと触りだす。



彼女は、その瞬間、相手は男であると確信し、自分の危機的状況に



絶望した。



そして、思ったのは、



何をされたとしても命だけは守らないと・・・。



という事だった。



しかし、次の瞬間、彼女の耳もとで、うふふ、という笑い声が聞こえた。



女?女なの?



彼女は、一瞬、絶望から立ち直ったが、次に考えたのは、何故女が



自分部屋に侵入しているのか?という事。



もしかしたら、友達?



いや、もしかしたら、実家の妹?



しかし、そう考えるのは無理があった。



彼女は、必死で視界が確保できる程度まで泡を洗い流し、そして、



前方にある鏡を見た。



そこには確実に誰かが映っているはずだった。



しかし、何故か、鏡には自分以外の手も足も映り込んではいなかった。



気のせいだったの?



でも、確かに誰かが触っていたと思ったけど・・・。



彼女は、気を取り直して、急いで髪を洗い流し、リンスまで



終わらせた。



こんな時間にシャワーなんか浴びたから、居ないものまで感じちゃうんだ。



シャワーからあがったら、さっさと寝よう!



そう思って、シャワーを止めてバスタオルを手に取った。



そして、浴室から出る時に、何気にもう一度浴室内を見てしまった。



彼女は引き攣り固まったしまう。



そこには、浴室の換気扇の高さの場所に、巨大な女の顔だけが



浮かんでいたという。



悲鳴を上げたかったが声が全く出なかったという。



彼女は、急いで浴室から出ると、そのままリビングに走った。



リビングに着くと、やはりテレビが消えていた。



正確にいうと、テレビは点いていたが、画面は砂嵐の状態であり、



音声もオフになっていたという。



すると、突然、リビングの明かりが消えて真っ暗になる。



彼女は既に恐怖のあまり、泣いていたという。



彼女は真っ暗なリビングの中で全く動けずにいた。



恐怖で完全に体が竦んでいた。



すると、突然、背後から声が聞こえた。



綺麗な髪ね~



それは低い女の声だった。



彼女の頭の中に先ほど浴室内で見た巨大な顔の女しか浮かばなかった。



彼女は恐怖で目を閉じるしかなかった。



しかし、次の瞬間、背後ではなく彼女の真正面から女の低い声が聞こえた。



ほら・・・・目を開けてよ・・・・。



彼女は、絶対に目を開けたくはなかったという。



しかし、その女の言葉を聞くと、まるで催眠術にでもかかったように



思わず目を開けてしまった。



そこには、紛れもなく、先ほどの女の顔が在った。



今度は顔だけではなく、ちゃんと体もあった。



その女は服は着ていなかったが、それが逆に、細すぎる体を強調しており、



とても異様に映った。



そして、その女は、じっと彼女の顔を見つめながら、自分の髪を



手ですいた。



すると、その動きに合わせるかのように、その女の髪がバサッ…バサッ・・・と



束になって落ちていった。



それはとても不気味な光景だった。



彼女は、そのまま意識を失い、気が付いた時にはすっかり朝になっていた。



夢かと思った。



いや、夢だと思いたかった。



しかし、彼女の足元には、しっかりと彼女の物ではない長い髪が束に



なって落ちていたという。



彼女はすぐに引っ越しを考えたが、お金が無くて断念した。



しかし、それ以後、彼女の部屋では怪異は一切起こっていないという事だ。
  


Posted by 細田塗料株式会社 at 08:49Comments(0)
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